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白川郷、飛騨高山、そして下呂でゲロまみれ








2006年3月22日 【岐阜県】





白鳥からさらに山奥に入っていくと、しだいに雪が多くなり始め、百名瀑の阿弥陀ヶ滝への入り口に着いたときには完全に雪の壁で道が消えてしまっていた。


このままスゴスゴ帰るのも悔しいので、雪の壁をよじ登り足をズボズボ突っ込みながら林の中へ突入した。









横を川が流れているのでどこが雪庇になってるのかわからずかなり怖い。


こんな雪に閉ざされた森の中を歩いていると、俺なにやってんだ?って疑問が湧いてきて、でもすぐに体の火照りが忘れさせてくれる。








吐息を吐きながら、木にしがみつきながらなんとか奥地に進んでいくと、やっと滝が現れた。





んー、あまりたいした滝ではない…………


こんな苦労して来たのに…………



でもやっぱり俺は滝が大好き。


日本中に分布する名瀑。


ドランゴンボールのキャラクターのようにそれぞれ個性がある。











足ズボズボ突っ込みながら必死こいて車に戻り、ガチガチに冷え切った足でアクセルを踏み、雪をかぶった山脈の間をすり抜ける。


岐阜の山は深い。

どこまでもひたすら山。


そんな山深い地に、ほんの小さな隠れ里のような集落があるという。


日本の古き良き山里の生活をそのままに伝える茅葺き屋根、合掌造りの民家群。


そう、あの有名な世界遺産、白川郷だ。


ついに来たぞ。

























ポツリポツリと大きな萱葺き屋根の木造民家が雪の中にうずくまっており、走っているとわずか30秒くらいで集落を抜けてしまった。


それだけ小さな地域に密集しているようだ。



今度は車を降り、みぞれ降る農道を歩き回ってみた。





歩いてみるとその民家の大きさを実感する。


木造の巨大な屋根がすごい迫力だ。


これが見世物ではなく実際に人の住む日常の姿とは思えないほどのファンタジー感。









この屋根の葺き替え、「どこどこの家が葺き替える。」となったら、今では業者に頼む家もあるらしいが、基本は村の人総出で協力してやる作業『結』が昔ながらのやり方らしい。


村の男たちがみんなで萱を運び、編み上げ、ひとつの屋根を葺き替えるらしく、それが一大イベントみたいになるらしい。


だいたい30~40年で葺き替えるものらしく、村の男たちはみんながこの技術を持っているとのこと。


そしてここでは骨組みの結びができないと1人前の男として認められないという。


なんか外国の奥地の、◯◯が出来たら成人、的な感じだな。


屋根に上がれるのは男だけらしく、女たちは屋根に上がっている時の男が1番かっこいいという。















「合掌造りもそうだけど、この『結』っていう村人みんなでの作業も含めて、世界遺産だもんで。」



博物館みたいなところで地元のおじちゃんに少し話を伺うことができた。









村のことは村人同士で助け合ってやる。


村というのは隔絶された1つの社会。


ましてこんな山奥ならなおさら。


そこだけに根付いた文化や風習がある。



やはり山にはロマンがあるなぁ。

人間とはこうやって生きるものだと教えられた気がするよ。






ちなみに白川郷に行くならばいつくかの狙い目の時期がある。


まず1月・2月の土日。

深い雪に閉ざされるこの時期、村全体がライトアップされて、それはそれは幻想的な光景になるそう。



4月の雪解けの時期は葺き替えの季節。

運が良ければ『結』が見られるかもしれないとのこと。


今年も4月9日に一軒葺くというから見たいすぎる。



春から初夏にかけては田植えの緑が美しい。


でも1番見たいのは11月の消火栓の一斉放水。


火に弱い家を湿らせるためか、村中に水のアーチがかかるんだそうだ。


まるでお伽の国だな。













陽が傾くとみぞれが雪に変わり、山々に囲まれた里はあっという間に一面真っ白の世界に変わっていく。



白川郷、堪能した。



マジですごかった。


今でこそめちゃくちゃ有名な観光地として全国から観光客がやってくる場所になったけど、本当は昔からずーーーーっのこの姿で連綿と受け継いできた形なだけなんだよなあ。


江戸時代にも、この葺き替えとかやってたんだよなぁ。


ただの普通の村として。


先人の遺産を残していくって人間として、国としてとても大事なことだ。










さぁ、少しでも先に進むかと車を走らせていく。


早いとこ飛騨高山まで行こうと360号線を飛ばすが、くそ、ここも冬期閉鎖だ。


これだから冬の山は…………



雪の積もったアスファルトにタイヤの跡をつけながら、慎重に山の中を走り続けた。













翌日。








飛騨高山に到着した。


そして駅裏の施設にこっそり車を止める。


だって市内のパーキング高ぇんだもん…………


こんな山の中なのに結構都会だわ。







飛騨山脈の深い深い奥地に拓ける町、飛騨高山市。


木工芸品などの山の文化を発展させつつ、天領地であったことから江戸の華やかさを伝える高山祭りや、小京都と呼ばれるほどの神社仏閣の古刹を擁しており、その風情からたくさんの観光客が訪れ、特に日本三大美祭という高山祭りには全国から見物客が押し寄せ、飛騨の幽谷に活気の明かりが点る。


こいつは探検しがいのある町だぞ。















郡代所跡の高山陣屋、雪国特有の軒の低い民家の連なる町並みをそぞろ歩く。


シーズンには藤の花が軒から下がるというからとことん風情のある町だ。



それにしても歩いているとやたらと目につくのは酒林。


杉玉とも呼ばれるそれは、造り酒屋の玄関に飾る酒屋の目印のようなもので、仕込みを終えた春に飾る青い葉が、秋になり茶色く枯れていくことで今年も秋上がりのいい新酒ができましたというサインになる。


高山は昔は50軒以上もの蔵元があった一大酒造地。


今は8軒と減ってしまったが、協力し合いながら交代で蔵を一般公開し観光客を楽しませている。





そのうちの1軒、『平瀬酒造』にやってきた。


おじちゃんおばちゃんたちとの合同見学なので一般的な説明のみだったが、造り中の蔵の中を見学できるのは貴重なことだ。


今、搾ったばかりの無ろ過生原酒の試飲もさせていただいた。


日本酒の本来の姿は秋上がりの燗と俺は思うが、こういう瑞々しい季節物というのも四季の美しい日本では立派な楽しみ方の1つだ。




高山名物のみたらし団子は普通のトロトロのタレがかかっているやつではなく、醤油でカリッと焼いているもの。


1本60円。


そいつをかじりながら東山地区の寺院群の中を歩き、江名子川のほとりを歩く。


このあたりは観光客も少なく、のんびりと町の生活をながめることができる。





そして桜山八幡宮にお参りしたら、高山のメインといってもいい屋台会館へ。





高山祭りで運行される実際の屋台4台が展示してあり、820円とちょっと高いが、まぁ高山まで来て屋台を見ないわけにはいかないからな。



日本三大美祭の名に恥じぬ絢爛豪華で巨大な屋台を見て回るが、それより受付の色白な巫女さんが可愛すぎてマジ屋台どうでもいい。









さて、とりあえず高山観光はこのへんにして、さらに山の奥地に向け車を飛ばした。





眼前にそびえるのは雪化粧に染まる日本の背骨、北アルプス連峰。


いやぁ、すげぇとこまで来てるなぁ。

日本は美しいなぁ。


でもこれがここらの人にとってはごく日常の風景なんだから旅情が止まらんわ。






槍ヶ岳、穂高岳、と北アルプスの3000メートル越えの名峰の真下、谷底に湧いているのが奥飛騨温泉郷。


とりあえずどん詰まりの新穂高温泉まで行ってみることにした。


地図を見るとこの先は広範囲にわたって車道がなく、ほとんど手付かずの山岳地帯だ。


かなり大規模なロープウェーが穂高岳の中腹に伸びていて2156メートルまで15分で駆け上がる。


写真を見る限り半端じゃない絶景を味わえるロープウエーのようだが、往復2800円。


安いことは安い………………と思う……………



でもそんな金ないからやめとこうか……………



やめ…………いや、やっぱ行こうかな……………いや節約かな……………




節約!!!!







山の奥地に旅情が溢れかえる旅館群が現れた。


すげぇ、これが奥飛騨温泉郷か。

マジで秘境だな。


開放感溢れる露天風呂がそこらじゅうに散らばる中、川沿いの露天風呂で汗を流す。





山々の連なり、川のせせらぎ、木造旅館の佇まい。


日本って本当深いな。


ヤバい秘境、でもマニアには超常識みたいな場所が、この狭い国土の中に無数に存在してる。


マジで全部見ようと思ったら50年くらいかかるよ。













お風呂に入って高山市内に戻り、食堂『くぬぎそば』で腹ごしらえをしていると、隣のテーブルにいた地元の爺ちゃんが太鼓のバチをヤスリでこすっていた。



「春の祭りが4月の14日15日だもんで、もう準備にかかってんだにー。」



ぬうう……………マジか…………


祭り見たい…………


しかも4月の9日は白川郷で『結』があるし…………




んー、こりゃもう見ろってことだよなぁ。

またルート練りなおしだな。













高山の飲み屋街は、細い路地の頭上に無数のネオン看板がせり出した、演歌がよく似合う雰囲気だった。


早速ここらで1番大きそうな飲み屋ビルの下で歌い始める。


が、まだ全然チップ入ってないのに雨がパラついてきやがった。



「おっ!!兄ちゃん日本一周か!?よし来い!!雨降ってきたしな。」



ちょうどそこに通りかかった元気なおじさんたちが声をかけてくれ、飲みにいくぞということに。


この雨じゃ今日はもう無理だなと、親父と同い年くらいのおじさん方4人とスナック『綾乃』ってとこに入店。



「よーし、カラオケ歌おうかな。」



「お!!たか坊!!いつの間にこんな曲仕入れとったん?この色男!!」









4人ともめちゃくちゃテンション高くて、ここが岐阜の山奥かと思うと、なんかその一員になれたようで嬉しくなる。


お店の中でも2~3曲歌って1万のチップをいただき、うまいもんたらふく食べさせてもらった。






それからちょいワルおじさんの日野龍平さんと『綾乃』のママ、小料理屋『花希』のママも加わり4人で次の店に行くことに。


とってもお洒落なバーでワインと日本酒で乾杯。





「金丸、歌は心だ。お前の歌には心がある。上手く歌えるかなんてクソくらえだぞ。」



うれしいことを言ってくれる龍平さん。



世界中を旅していたというマスターの歌も飛び出し、ワインを飲みまくって店を出たのは……………





3時ごろ……………






だった気がする……………





ああああ………………飲みすぎた……………










翌日。







「げぼぉぉぇぇぁぁぁ!!……………おえっ!!…………オウエッ!!!ビチャビチャ!!!おええええええええええええええ!!!!」




もうだめ……………死ぬ………………


何食っても吐く……………




ゲロ吐きまくりながら下呂温泉に到着。



日本三名泉の1つとして名高いゲロだが、何もする気が起きない。ゲロ吐きすぎて。


フラフラしながら元湯の共同浴場『白鷺の湯』に入ったら、少しは気分もマシになった。










車の中でひたすら死んでたらあっという間に夜になってしまった。


今日は金曜の夜。



なんとか歌いたいが下呂の町には飲み屋街がない。


かといってこれから長距離走るのもな……………






あー、金曜の夜に歌わないのなんて超久しぶりだな。


罪悪感…………


もうぜってー吐くまで飲まねぇ……………



下呂でゲロまみれです……………




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