2004年 9月4日~
美瑛の農家さんの現場は順調に進んでいた。
掘削して、転圧をして、基礎の準備。
型枠を組んだり、鉄筋を縛ったり、鳶の頃に一通りはやったことあったけど、知らないことばかりで全てが勉強になる。
色んなことにコツがあるなぁ。
北海道は凍結深度というものがかなり深いので、本島だったら50センチくらい掘ればいいところをこっちは1メートルくらいの深さに基礎を作らないといけないんだそう。
冬になり地面がしばれると、基礎ごと家が少し浮く。
そして溶けると隙間に石や泥が入り、またしばれて、と年々家が浮いてきてしまうんだそうだ。
作業着をドロドロにしながら基礎コンクリート打設。
本当勉強になる。
基礎が終わったら柱材の切り込みに入った。
作業場で、山田親方が自分で引いた図面を見ながら、角材に線を書き込んでいく。
これが墨つけ作業。
この線に合わせノコやノミ、電動工具でホゾを切り込んでいく。
ホゾ、アリ、オンタ、メンタ、色んな専門用語がある。
山田親方の頭の中にはすでに家屋の骨組みが立体で出来上がっているのだ。
山田親方の切り込みのお手本を見せてもらった。
スパーン!!と軽々と切断された角材の切り口を見ると、1ミリくらいの墨の線がちょうど0.5ミリだけ切り取られている。
「墨を引くときはこうやって芯に引くべ?だからこうやって墨の中心を切る。これが墨半分だ。」
墨内、墨外の切り方もあるので、気をつけないと数ミリの誤差が出てしまう。
本当大工って奥が深い。
作業場の中に流れるラジオからは、昨日からの台風の状況を伝える声が引っ切りなしだ。
「ペンネーム◯◯さんの畑では、例年にない豊作だと思われていたのが、昨日の台風でまったく売り物にならなくなってしまったそうです。」
「私たちに出来ることは直売所とかに行って少しでもたくさんの野菜を買うことですねぇ。」
ここ富良野でも電柱が折れたり、なぎ倒された木が学校のフェンスをペシャンコにしたり、農家のD型倉庫の屋根が吹き飛ばされたりしている。
山田親方が言うにはここ20年くらい、こんな風はなかったということ。
北海道ってのはもともと台風のこない土地だったみたいだけど、それも毎年少しずつ変わってきてるんだそうだ。
仕事を終えたらソッコーで山部ハウスに戻って変身。
身綺麗な格好をしてギターを抱える。
なんと今日はこの山部地区で演奏する機会をもらっている。
先日お会いした歌謡喫茶店「チェリー」のマスター、島さんから、今度、歌謡コンクールがあるんだけど特別ゲストで歌ってくれないか?ってオファーをいただいた。
その『山部歌謡祭り』のチラシを見てみると、出演者の名前の1番下に太文字で、
「ゲスト 金丸文武」
って書いてる。
なんかめっちゃすごい人みたいで緊張してしまう。
こりゃ下手なことはできん。
責任重大だぞ…………
過疎の集落によくあるやたら立派な福祉センター。
すでにチャリンコや車ががたくさん並んでいて、交流ルームには爺ちゃん婆ちゃんたちがひしめいている。
まだ1時間ほど時間があるとのことなので控え室にいると、飲んでくださいとジュースや赤飯が出てきた。
そこに中田さんファミリー登場。
さらに山田親方ファミリー登場。
さらに中田さんのお友達の松永さんもやってきて、みんながみんな差し入れ持ってきてくれて、机の上に食べ物がズラリと並んだ。
なんか一世一代のステージみたいやん!!!
施設の中の交流ルームみたいなところにイスが並べられ、150人くらいの人たちが歌を楽しんでいた。
ステージには原色の派手なスーツを着込み、ピチッと髪を撫でつけた司会のおじさん。
演歌の司会ってみんなこんなだな。
『ファンキーモンキーベイベー』を歌った兄さんは肩にヤザワタオルをかけて、『歩』を歌った爺さんはダンボールで作った将棋駒を抱えてる。
小林幸子みたいなドレスのおばちゃんもいる。
みんなみんな手作り感あふれる衣装で、いかにも田舎の人たちの和やかな歌謡コンクールって感じだ。
全員の演目が終わってから、最後に3曲歌った。
ツカミのためにこの前の仮装盆踊りのヒマワリを持って行ったんだけど、あああ!!この子があのヒマワリやってた子だったんだー!!ってみんな覚えてくれていた。
「えー、今はお金を貯めるために富良野で働いてます。なので大工仕事は是非、山田工務店におねがいします。」
MCのウケも上々で、いい感じで歌うことができたかな。
色んな人が、頑張ってね!!今度ウチにご飯食べにきなさい!!って声をかけてくれる。
島さんからもらったギャラは、事前に話してたものより全然多くて1万円。
気に入ってもらえたようで、またイベントのたびに声かけるからねって言ってもらえた。
中田さんや川渕さんからおひねりももらったりして結局18000円にもなってしまった。
たくさんの人たちからいただいた差し入れを両手にどっさり抱えて家に戻った。
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