こんにちは!神田です。
フミくんがお腹いっぱいなのに、私が空いてるとか。
どっちかがコーヒー飲みたいのに、ひとりはそんな気分じゃないとか。
そういうのがなぜかないよねって昨日話してました。
こういう小さい「同じ」て嬉しいよねって。
おわり
2017年8月28日(月曜日)
【オーストリア】 リーエンツ
ここめっちゃいい寝床。
車通らないから静かだし、景色すごいし、真横にジャバジャバ出てる水場があるし、後ろにゴミ箱ある。
完璧。
もうちょっと気温高かったらヒャッホーイ!!って全裸で水浴びするところだけど、8月後半のチロルは最低15℃くらいです。
紅葉狩りイケそうです。
秋服になってセーター着てる女子好きです。
丈長目のニットセーターの女の子可愛いです。
マフラーで髪の毛がモコってなってるの好きです。
耳当てもいいですね。
鍋つかみ手袋してる子とか、どう考えてもスケベですよね。
もう秋だなぁ。
日本も花火大会が終わって、ほんの少し肌寒くなってきたころでしょうか。
故郷が恋しくなる季節です。
そんなセンチになる初秋の空の下、オーストリアのリーエンツでサンマじゃなくてケバブ。
ここすごい美味しい。
エルビスとブルースブラザーズがいる建物の下に入ってるケバブ屋さん。
ソースが二段階になってて、甘めのスィートチリソースがめっちゃ合う。
お肉も焼きすぎで乾きすぎのカピカピじゃなく、ちゃんと柔らかくてジューシー。
ケバブ屋さんたるものみんなこうであってほしいものです。
腹ごしらえしてホコ天にやってくると、今日もいるいる。
月曜日からものすごい数の人がホコ天を埋め尽くしてる。
すげえええ!!リーエンツの賑わい半端じゃねぇ!!!
ローカル半分、観光客半分って感じで、ローシーズンの倍は人が歩いてる!!!
ただの最高の路上じゃねぇか!!!
でも気になるのはあのローカルバスカーの女の子!!!
キョロキョロっとホコ天を見渡してみると………………よし、今日はまだ来てない。
別に彼女が演奏してようが知ったこっちゃないんだけど、あんなことがあったのでやっぱりちょっと気まずいんだよな。
とりあえずいないみたいだから、のんびり1人で歌わせてもらおう。
「昨日はすまないかった!!申し訳ない!!!」
ワインショップに行くとハネスおじさんがすぐに謝ってきてくれた。
「僕らは全然大丈夫ですよ。それよりお腹の調子はどうですか?」
「いやぁ、土曜の夜にスモークサーモンを食べたんだよ。多分それが原因でね…………日曜はほとんどトイレにいたよ。」
そんな大変な体調だったにも関わらず、わざわざ俺たちのために窓に張り紙をしてくれていたんだな。
ハネスおじさん優しいなぁ。
今日がリーエンツはラストだよね?路上頑張って!!と言ってくれたハネスおじさん。
よーし、それじゃあ頑張っていい歌歌うぞ。
今日も反応は絶好調。
月曜日だというのに週末並みの反応で、コインがポンポン入っていく。
観光客のイタリア人もグラッツェってニコニコしながら入れていってくれる。
こりゃいい感じだなぁと歌っていると、たまにお店からハネスさんが出てきて、演奏していた曲に対してジョークを言ってくる。
アイネンシュタルンは1つの星、だよね。でもアイネンストーンだったら墓石だね!!ぶー!!ウケる!!って爆笑しながら店に戻っていく。
本当町全体がすごく温かい空気で、やりやすいことこの上ない。
苦情を言う人もいないし、まずみんなとても紳士的だ。
ギターケースにコインをホイッと投げ込んできたおじさん。
でもギターケースの底は柔らかいクッションになっているので、たまーにコインが跳ねて外に出てしまう。
するとそのおじさん、跳ねたコインを拾うと自分の服でコインを拭いてからギターケースに優しく置いてくれた。
別にコインが泥の中に落ちたわけじゃない。
綺麗な石畳の上だ。
でも、地面に落ちたという事実に対して、礼儀としておじさんはコインを拭いてくれた。
ヨーロピアンのそういう細かい心遣いにすごく嬉しくなる。
そうやって楽しく歌っているところだった。
ハネスさんのお店から犬がテクテク歩いて出てきた。
ハネスさんのお店には12歳になる結構歳をとった中型犬がいる。
いつもお店の玄関にペタンと座ってて、自由きままに通りを歩いたりしているお店の看板犬だ。
こいつ。
俺が目の前で歌ってると、たまに近くまで歩いてきてくれるけど、なかなか気難しいやつなので触ろうとしたらグウウウ………って言われてしまう。
そんな看板犬がおもむろにホコ天のど真ん中でウンチをしだした。
あらあら、やっちゃったなぁと思いながら見てると、ポトポトと小さなウンチが地面に落ちた。
そして看板犬はまたテクテク歩いてお店に戻っていった。
この看板犬のウンチはおとといもあったんだけど、その時はハネスおじさんがすぐにお店から出てきてティッシュで拾い上げて処理していた。
が、今ちょうどお店の中で接客をしているハネスおじさん。
お客さんの相手をしており全然気づいていない。
歌いながら一部始終を見ていた俺。
目の前にウンチが落ちているけど、演奏を止めることはできない。
その間も人々は行き交っており、ウンチに気づく人もいるけどほとんどの人がまったく足元を気にせず上を歩いていく。
ああああ、ちょっとちょっとちょっと、ちょっと待って!!!その方向ヤバい!!ああああああ!!!危ない!!!
ウンチをまたぐ女の子。
ちょちょちょ!!!!だ、ダメ!!!その歩幅だとあと5歩でいってしまう!!!ああああああああ!!!!
ウンチの数センチ横を踏むベビーカーを押してるお母さん。
もう気になって気になってたまらないんだけど、演奏を聴いてくれてる人がいるので俺がストップすることはできない。
なので横にいるカンちゃんにハネスおじさんに報らせに言ってとお願いした。
「で、でも今接客中だよ。」
「そうだけど、このままじゃ誰かが踏むよ。教えてあげたほうがいいって。ハネスおじさんのお店の評判が悪くなっちゃうよ。」
「でもー、お客さんの相手してるところにウンチの話なんかできないよおおお。」
お店の玄関に行き、中を覗いてはもじもじしてるカンちゃん。
観光客がボトルを買おうとしてるみたいで、テイスティングをさせているところみたいだ。
カンちゃんがもじもじしてる間にも通行人は足元を見ずにガンガン行き交っている。
ああああ!!!踏む!!
また踏む!!!今度こそ踏む!!!
それでもまだもじもじしてるカンちゃん。
あああ!!じれったい!!
もうすぐ曲が終わるから俺がハネスおじさんに言いに行く!!
と思っていたら、カンちゃんが戻ってきてバッグの中をガサゴソやりだした。
するとポケットティッシュを取り出したカンちゃん。
そしてポケットティッシュで落ちてるウンコを拾い、ゴミ箱に捨てた。
「カンちゃん……………偉い!!!俺の嫁すごい!!」
「全然お客さん帰らんのやもんー。ポケットティッシュ持っててよかった。」
ちょうどカンちゃんが拾い上げたところを誰も見ていなかった。
もちろんハネスおじさんも気づいていない。
誰も気づいていなかったウンチが、誰にも気づかれないままなくなった。
下心を出して言えば、このカンちゃんのやったことを褒めてもらいたい。
でもそれをいちいちハネスおじさんに伝えるか?そんなこともちろんしない。
誰も見ていなくとも、カンちゃんのやった良いことは、きっと巡り巡ってカンちゃんに帰ってくる。
だからカンちゃんの周りには素敵な友達が集まってるんだろうなぁ。
良いお嫁さんだなぁって、本当再確認。
ウクライナで俳優やってるというおじさんとお喋りしたりしつつ、めっちゃ平和で楽しい路上を3時間。
人出はまだまだ続いているけども、週の初めだしこの辺にしておこうかな。
それじゃあ片付けようかなぁと思っているところで、ふと向こう側に見覚えのある顔が見えた。
「ああ!!リンダさん!!」
「アラアアア!!カエッテキマシタデスネ~!!」
去年リーエンツに来た時にお世話になったリンダさん。
一緒に教会のミサに行き、家に泊めてくださり、本当によくしてくださった。
今日でリーエンツを出るところだったので最後にこのタイミングで会えてよかった。
「コノマエハ、家ノマエニギフトタクサンアリガトウネ。」
あ、よかった、前回リーエンツを出る前にリンダさんの家の玄関にお菓子とかの食べ物をたくさん置いて行ったんだけど、リンダさんの家はアパートなので違う人が持って行ったりしなかったかちょっと心配してたんだよな。
よかった、ちゃんと受け取ってもらえたみたいだ。
「リンダさん、僕らこの前ルルドに行きましたよ。」
「アッソー!!スバラシイデスー!!タクサンオハナシガアリマスネー。今日ハウチニトマリマスカ?カレーヲツクリマス。」
嬉しいお誘いではあるけどお断りさせてもらった。
正直リンダさんはあまりお金を持っていない。
前回家にお邪魔させてもらったとき、殺風景な部屋には物があまりなく、そんな中からカレーを作ってくださった。
温めたらできるインスタントカレーにツナ缶を乗せて、心からのおもてなししてくれた。
もちろん美味しかったけど、あれは心が締め付けられた。カンちゃんも、もうリンダさんの家には行けないと言っていた。
リンダさんの負担にはなりたくない。
リンダさんの前の旦那さんは日本人。
しかしその旦那さんがリンダさんを置いて日本に帰ってしまい、私お金ないけどあの人助けてくれないぃ、って寂しそうに言っていた。
毎日毎日、1日に何回も教会に行き、祈りを捧げ、清貧を全うしてるリンダさんの家では、まだ結婚前だった俺とカンちゃんは別々のベッドで寝ることになったよな。
キリストが心の拠り所になっているリンダさんに、今回ルルドやモンサンミッシェルなんかの聖地に行ってきましたと話すと、目を輝かせて喜んでくれた。
また10月くらいに戻ってくるので、その時ゆっくりとお話することにしてリンダさんと別れた。
リンダさんは去年と同じ、白いヨレたジャケットを着ていた。
でも可愛らしい笑顔はあのころのままだった。
元気そうで本当によかった。
それからハネスおじさんのところに挨拶へ。
おととい買ったワインが美味しかったので、せっかくだからもう一本買っていこうかな。
「お疲れさん!!歌い終わったあとはこれだよね。」
ニコニコしながら白ワインをグラスにそそいでくれるハネスおじさん。
あああ!!よく冷えた白ワインが美味すぎるーー!!!
白ワイン、グラスにたっぷりで2ユーロ。260円。
「ハネスおじさん、ゆうべワインを飲んだらすごく美味しかったのでもう1本ください。」
「おお、そうかいそうかい、じゃあこれね。代金はナシだよ、フミ。」
「ちょ!!ダメです!!それはダメです!!プリーズ!!」
「俺は1日いい音楽を楽しんだんだからそれはとっておくんだフミ。」
「ダメです!!プリーズ!!プリーズプリーズミー、オーイエーです!!」
「ぬぬぬ…………ビートルズはいいバンドだ。」
なんとかして代金の6ユーロ、780円を受け取ってもらえた。
本当に、ハネスおじさんがこうした優しくて知的でユーモラスな人なので、このお店にやってくる人たちもみんなとても素敵な人たちばかり。
みんな50歳前後くらいのおじさんおばさんなんだけど、全員英語が話せるし、上品で会話が上手で、すごく楽しい。
俺たちのどんな話題でも楽しく膨らましてくれて、あんまり楽しくてグラス2杯目に突入してしまった。
「そうだフミ、ナオ、ひとつお願いがあるんだけど。実は僕には17歳になる娘がいるんだけど、毎年誕生日に彼女の写真を撮ってそれをアルバムにしてるんだよ。彼女がまだお腹の中にいるころからずっと続けてることなんだ。そこで来年の18歳の誕生日のために日本語のメッセージがあったりしたらクールだと思うんだけど、何か書いてくれないかい?」
おお、なんて光栄なオファーだ。
もちろん全力でやらせていただきますが、何て書けばいいだろ?
ちなみに17歳の時は、その誕生日写真アルバムにイッツマイライフ!!って書いてボンジョビに送ったらソッコー嬉しい言葉を書いた返事が来たんだそう。
さすがボンジョビ!!
ボンジョビからムショクでいいんですか?落差すごすぎじゃないですか?って思いながらめっちゃ何書こうかカンちゃんと悩んだんだけど、
18歳っていう、そろそろ生き方を決めなさいと周りに急かされる時期にこの言葉を贈りたいと思った。
字が下手。
書道バスキングできんな………………
18歳で生き方決めるなんて到底無理な話。
まだ何にも世間のこと知らなくて、親や先生にこれがいいんじゃないか?って勧められためっちゃ少ない選択肢の中から自分の一生の道を決めるなんてもったいなさすぎる。
自分に合った生き方がどこにあるのか、探す前から決めたらいかんと俺は思う。
「ワアアアオ………素晴らしい!!ファンタスティックだよ!!きっと娘も喜ぶよ!!」
「これが日本語なのかい?」
「どれどれ?うーん、これは我々アルファベットを使う人間からするとミステリアスな言語だ。」
お店の中でみんなでお話をして、なんならちょっとギターも弾いて、すごくすごく楽しい時間だった。
出会いに恵まれ、地元の人に受け入れられ、こんな素敵な路上が毎回できたら最高なんだけどな。
あー、最高の1日だったな。
ほろ酔いで焼きそば最高。