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あの伝説の旅人とついに初対面



2017年6月24日(土曜日)
【イタリア】 シエナ





あれはまだ日本を旅しているころ。


何かの調べ物でネットをいじっていた。






ランダムにサイトを巡り、どうやってそこにたどり着いたのかも、何を調べていたのかも覚えてないけど、その時たまたま変な言葉を見つけた。






ゼロトゥマックス。






なんだそれ?



よくよく見てみると、何やら1人の日本人男性が、エベレストの登頂を果たした時の挑戦方法のことだった。





それは、




所持金ゼロ
標高ゼロ
燃料ゼロ




という状態から地球の最高点であるエベレストを目指すというもの。


何も持たない状態から、インドの海沿いをスタートして人力のみでエベレストに登るという、まさしくゼロからマックスというやりかただった。







それ見たとき、マジでぶっ飛んでるなと思った。



本当、世の中にはイカれた人がいるもんだって。



しかもその人は世界一周をしている途中で、このゼロトゥマックスをやらかしたみたいだった。





正直、ちょっと嫉妬した。




どう考えてもすごい。


しかもその不器用極まりない挑戦方法に親近感すら覚えた。



俺もそのころお遍路を、ほぼゼロ円、歩き、野宿、通しでやっていた。






どうせやるならゼロからやりたい。


できるだけ誰も踏んでない道を歩きたい。



くだらんこだわりかもしれんけど、それはもうこだわりというよりかは性根みたいなもんだ。












旅人って自己顕示欲の強い人種だと思う。


俺こそ1番カッコいい旅をしてる、って多くの人がどっかで思ってるもの。



若いころなんて特にそうだ。





あのころ俺は日本を旅していたけど、俺の旅が最高ってどっかで思っていたから、こんなイカれたことをやらかしてる人を心ではスゲェと思いつつも、別にたいしたことないし、なんて強がっていた。



負けたって思いたくなくて、それ以上はその人のことを調べなかった。



















それから何年か経ち、日本の旅を終えて俺は世界の旅に出た。



6000円とギターと寝袋を持って船でロシアに渡り、そこから先は路上演奏で金を稼いで西回りで世界一周するというもの。



金は全然ない、海外に友達も知り合いもいない、英語もろくに喋れない。



でもギターと歌があればきっとなんとかなるって思っていた。








そんな旅の中、色んな友達が出来たんだけど、特に仲良くなったのがカッピー。


サックス吹きながら路上パフォーマンスで世界2周目をしていたカッピーに出会ったのはエジプトのダハブだった。



一緒に路上やったりアメリカ横断したり、今でもほぼ毎日メールするくらい仲よしだ。






そんなカッピーが前回の旅の途中で、こんな人に会うんやけど知ってるー?ってメールをくれた。




その人も世界一周をしている旅人さんだったんだけど、


なにやら日本を出発した時の所持金が160円、韓国からママチャリでユーラシア大陸を横断、ママチャリでチベットを横断し、ヒマラヤを越え、ガンジス川を手漕ぎボートで下り、転覆して死にかけ、旅の途中で始めたマジックの路上パフォーマンスで稼ぎながら旅をしてるという、もう完全に頭のネジぶっ飛んでるようなことをしてる人だった。






ママチャリで世界一周て。

所持金160円て。










ぶっ飛びすぎてる。




俺が言うのもアレやけど、いくらなんでも無茶すぎるやろ?

俺もさんざん言われてきたけど、俺の無茶さなんてこの人に比べたら可愛いもんだ。




その人は現在イタリアが気に入って何年も滞在しているらしく、今もイタリアのどこかの路上でマジックを披露して暮らしているんだそう。






カッピーからその話を聞いて、いやぁ、世の中にはイカれた人がいるもんやなぁと思った。









いやぁ、まさかその旅人さんが、昔俺が悔しく思ったゼロトゥマックスをやらかしたあの人と同一人物だったとはなぁ。






あの日、若いころ、俺もゼッテー誰にも負けない旅をしてやるって思わせてくれたあの人に今日、とうとう会うなんて信じられんなぁ。



繋げてくれたカッピーありがとう。




































郊外の駐車場で目を覚ました。


ちゃんと朝の日陰を計算して車を止めたら、こんだけ暑くてもちゃんと快適に眠ることができる。



水の補給をしたらシエナの旧市街の中へ向かった。



すると、路地裏にたまたまこんなお店を見つけた。






あれ?浴衣?

え?日本が好きな人のお店?



かと思ったらまさかの在住日本人のかたが経営してる日本専門店だった。














きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!


焼きそば大量買いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!



ついに見つけた!!!!この焼きそばウルトラ美味いんです!!!!


完全に日本の焼きそばで、これに豚肉と玉ねぎ入れて食べたら鼻から麺出しながら全裸です。マジで。



いやぁ、まさかのシエナに日本専門店とは……………


こっちに嫁いだかたがやってるお店でした。



そんなに需要があるのかな?って心配してしまうけど、おかげで僕らは死ぬほど助かりました!!!!






















それから中華料理屋さんで美味しいお昼ご飯を食べたら、カフェでネット作業に没頭した。



旅人さんは17時にこの町に到着するみたいで、広場の時計塔の下で待ち合わせをしている。




なにやら今夜、この町でマジックの仕事が入ってるらしく、それに合わせて北部の町から移動してきてるみたい。



旅の中で始めた路上マジックらしいけど、今ではこうしてイタリア中を飛び回るくらい人気のパフォーマーになっているってことなんだな。



しかもなんとこの前イタリアズゴッドタレントっていう、アメリカンゴッドタレントのイタリア版に出演したとのこと。


そんな人気テレビ番組に出演するなんて、どんだけすごいマジックパフォーマンスなんだろう。







今夜は土曜日。


旅人さんにお会いし、できるならパフォーマンスを見させていただいて、時間があれば俺もそのまま路上に出よう。



路上の大先輩さんに恥ずかしくない歌を歌わないとなぁ。



あー、緊張する。

















作業に没頭していると、あっという間に待ち合わせの時間になった。


















ドキドキしながら広場に行き、時計塔の下まで来たけどまだそれらしき姿はない。










ていうかどんな人なんだろう…………





あー!!どうもどうもおぉぉぉ!!って言いながら、向こうからものすごいアンモニア臭を放ちながらドレッドを引きずった原始人みたいな変人が歩いてきたらどうしよう………




それとも修羅場をくぐり抜けすぎて顔中が傷まみれで花山薫みたいになってて、これで15歳………!!って栗山さんがビビるような人が歩いてきたらどうしよう。




旅人のレベルが高すぎて怖い!!!!!














「あー、どうもどうもー、はじめましてー。」




するとそこに佐川運輸の配達員さんが声をかけてきた。



こんなシエナの時計塔の下で佐川運輸の配達員さん?



いやぁ、そういった知り合いは僕にはいないはずだけど。





「ま、ま、まさかゼロトゥマックスの、ゼロさんですか?」



「いやー、お会いできて嬉しいです!そこのカフェでも入ってお茶しましょう。」









でた。





旅人界の生きる伝説、ゼロさん来た。(仮名)






まさかの佐川運輸の配達員さん。





あのシマシマの服着て軽快に荷物運んでそうな、普通の見た目の兄さんきた。









ぐおおおおおおおおおおお!!!!!!!


ゼロさん見た目普通うううううううううううううう!!!!!!



普通の髪型、普通の服装、服装の顔、普通の喋り方、チンチンも普通!!!それは知らん!!!!




なんて普通のかたなんだ!!!!!





もっとこう、数々の修羅場をくぐり抜けてきた俠客立ちで握撃で腕が爆ぜる系のゴツい人かと思ってたのに!!!!!!







ビビりながら一緒にカフェのテラスに座ると、流暢なイタリア語でメニューをとってくださるゼロさん。



さすが、イタリア暮らしが長いので言葉も完璧だ。




「いやぁ、カッピーからお話は聞いています。ブログもちょくちょく見させてもらってました。でも僕が行ってない国のブログは読みたくなくて、飛ばしてしまってるんですよね。すみません。」





もう本当、とにかく腰の低さが、え?腰あります?ってくらい低くて、丁寧で、気遣い半端なくて、話しやすいことこの上なくて、マジでこの人があのゼロトゥマックスのイカれた旅人なのか?と疑ってしまうほど。



でも、そんなすごいことをやってきた人ほど普通の見た目になっていくのかなって思えた。




「僕こそカッピーから話聞いてます!!っていうか、世界の旅に出るずっと前からゼロさんのことは知ってました!!」



「いやぁ、最近はずいぶん甘えちゃってるんですけどね。昔ほどの勢いはありません。」



「ゼロさんって今どれくらい旅してるんですか?」



「15年ですね。一度も日本には帰ってないです。」



「ええええ!!!一度も帰ってないんですか!?」



「自分の中で世界一周に出て一時帰国は考えられないんですよね。金丸さんも一時帰国せずにやりきってますよね。素晴らしいです!!」





15年ってのもすごいけど、その間一時帰国をしてないって半端じゃない。



半端じゃない信念とこだわり。




ここまで来ると待つ人のいない世捨て人なのかな………って思ってしまいそうだけど、この15年の間に6回、ご両親がゼロさんのところに会いに来てくれているらしい。



こんなハードな旅をしていながらも家族との関係を良好に保っているところもまた、ゼロさんのすごいところだなと思った。





「どうして日本を出発した時の所持金が160円だったんですか?」




「その当時、お金に縛られる生き方に疑問があったんですよね。働いてお金を得る、っていうことに人生の時間を費やすってのがわからなかったんです。だからそんな所持金になっちゃったんですよね。」




「あ、あとママチャリでスタートしたってのもなんでだったんですか?」




「それはですね、カッコいい自転車じゃなくても出来るってのを証明したかったんですよね。金丸さんもクレジットカードを持たずに回ってたんですよね?素晴らしいです!!クレジットカードがあったらどんなピンチになっても、とりあえずカードを切ればその場をしのげますからね。カードなしで回ったのはすごいです。」





すげすぎる。


すげすぎるほどシンプルな理由。


でも確固たる信念、考えかたに基づいたスタイル。



もちろんゼロさんもクレジットカードは持っていない。








俺も、旅に色んなルールをつけるのが好きだ。


いや、ルールというか、そうなってしまうというか。




ひとつの大きな目標に向かってチャレンジをするのならば、自分の思う最高のスタイルでやり遂げたいもの。


これはちょっとキツイから………って自分の心を騙しながらやり遂げたものなんてなんの価値もない。



映画の中の高倉健さんが、故郷を出て行く若者に、「一度出て行ったなら簡単に出たり入ったりするな、やり遂げるまで戻ってくるな。」と力強く言うシーンがあるけど、そういう思いがあるから、世界一周の一時帰国は絶対にしたくなかった。



クレジットカードも嫌だったし、親に金を送ってもらうなんてもってのほか。



なるべく陸路にこだわり、金がなきゃヒッチハイクして野宿すればいい。


そこに一点の恥もない。





世界一周って、それくらい想いを詰め込んでいい大冒険だと、今でも思ってる。








じゃあなんでそうする必要があるのか?と聞かれると、上手く答えられない。



なんでわざわざキツい方法をとるのか。





そんな俺の迷いを吹っ飛ばすかのように、ゼロさんがこんな言葉をさらっと口にした。







「だって楽じゃないですか。」






マジで痺れた。





だって楽じゃないですか。




もうこの言葉に集約されてる。ゼロさんという凄まじい旅人が。





キツイことする理由なんてそれだけでいいんだよな。そんなもんでいいんだよ。




最近では逆に、え?キツいことわざわざするとかマゾなんですか?なにその昭和の感じ?汗臭いー。ネットを使ってスマートに旅しましょうー。っていうのが風潮だと思う。


今回の俺も含めて。




旅のスタイルなんて人それぞれだし、押しつけることはできないけど、やっぱり俺はゼロさんみたいに不器用に困難な道を突き進む人のほうが好きだなぁ。




「まぁ今はなまったもんですけどね。仕事が入ってるときとかは飛行機使ったりしますし、電車も乗りますし。チャリダーの風上にもおけませんよ!!はははー。」




本当に腰が低くて、話しやすくて、自分のしてきたことを鼻にかけたりしてなくて、俺もカンちゃんもすごいゼロさんのことを好きになった。






あー、あの日、すげぇと思わせてくれた人がこの人でよかった。
























しばらくお喋りしてからゼロさんはお仕事の打ち合わせに行ったんだけど、早めに終わったみたいでまた戻ってきてくれた。




「いやー、オファーはもらってたけど会ったこともない人だし、どんな感じでパフォーマンスするのかわからなかったけど、今見てきたらいい感じだったのでホッとしました。」




たまたま路上を見た人がメールでオファーをくれる、というお仕事の入りかたが多いみたいで、そうなるとまったく何も分からない状況で現場入りということになるんだそう。



ゼロさんにもやっぱり得意不得意なシチュエーションがあるらしく、イベントのステージで何百人も前にやるってのは難しいとのこと。



小さなマジックが多いので、路上でお客さんの近くでやるのがゼロさんはやりやすいみたい。



今日のオファーは路面でやってるパーティーの余興みたいな感じらしい。


それならゼロさんのステージだ。





「いやぁ、すごいです。マジックでパフォーマンスするってまだ全然想像つかないですよ。」



「全然難しいことなんかしませんよ。ホラ、こうやってここにあるスプーンを持って、こうやってこうやってこうやって。」






ふおおおおおおお!!!!!



え!?スプーンが曲がった!!!



ぐにゃぐにゃになってる!!!ヤバい!!すげぇ!!!




「カンちゃん!!スプーンが曲がりまくってる!!」



「ビビるー!!曲がったー!!」



「もうー、こんなことで驚いてくれるなんていいお客さんだなぁ。」





いや、確かによく見たらどういう仕掛けなのかはわかる。


手の中にスプーンの半分を隠して、曲がってるように見せてるだけのトリックなんだけど、手際がすげぇ!!!!


本当っぽく見せる技術がすごいから、曲がってるように見えてしまう!!!!



やべええええええ!!!!!



本当のマジックのやつだ…………



こりゃみんな喜ぶわ…………































「じゃあ、晩ご飯でも行きませんか?お互い路上前に元気つけときましょう。」



もうすぐお仕事の時間になるってのに、俺たちのことを気遣ってくれるゼロさん。



中華料理屋さんに連れて行ってもらったんだけど、ここがまためっちゃ美味しかった。




「金丸さんはお酒は飲まないんですか?どうぞ飲んでください。」



「あ、僕路上前は飲まないようにしてるので。」



「偉いですねー。僕も芸の前は飲まないようにしてます。手元が狂いますからね。」





ゼロさんが芸って言うとめっちゃ重みが違う。





「ゼロさんってずっと旅してきて、今イタリアにずっといますよね。そんなにイタリアが気に入ったんですか?イタリアって路上稼げなくないですか?」



「そうなんですよ。でもそんな稼げないイタリアだからみんなが笑顔になってくれたら嬉しいんですよね。あえて難しいところでやってウケたいってのが芸人の誇りです。」





うう…………なんてストイックな人だ…………




俺は今回の旅ではアフリカなんかの稼げないところにも行ったりしてるけど、基本はお金を貯めて日本に帰るのが大きな目的のひとつ。


なので、旅をしながらも出来るだけ稼げるところを選んでいる。





ドイツに行けば稼げるのは分かってる。


でもそこで自分の芸を磨くためにあえて厳しい環境に身を置くってところにパフォーマーとしての向上心が現れてる。



いやぁ、勉強になります……………














よし、それではご飯を終えたらもっと勉強させていただこう!!!









時間は21時。


町に街灯がともりはじめ、土曜の夜の活気が満ちてき始めた。








ゼロさんについていくと、広場を抜けてメインストリートとは逆の路地のほうに入っていく。



こんな外れのほうで何かイベントをやってるのか?と思って入っていくと、路地がホコ天になっており、たくさんのテーブルが通りに出されて人々が賑やかに食事をしていた。










テントで食事が出され、簡易的なバーカウンターもある。


イベントというよりかは、この路地だけの地区会といったアットホームな雰囲気。



通りにはいくつものカラフルな国旗のような旗が飾りつけられており、人々も首に同じ柄のスカーフを巻いていた。







あ、これか。


そういえばゆうべ仲良くなった地元の兄さんが、シエナにはパリオのために来たのかい?って言っていた。




全然知らなかったんだけど、来週の週末にこのシエナに伝わる伝統的なお祭りが行われるらしく、すでに1週間前から町はお祭りムードでパレードなんかが行われているとのこと。



約800年の歴史を持つかなり有名な競馬祭りらしく、シエナの町にある17の地区が、町内会ごとに競い合うんだそうだ。




この細い路地で楽しそうに行われているお食事もそれぞれの町内会が資金造成のためにやっているもので、お祭りに向けて1週間毎日こうやってパーティーが繰り広げられるみたい。



大人たちがお酒を飲み、子供たちが駆け回り、一角ではプロジェクターを使って地区の人々のことをうつしたムービーの上映までやっている。




いいなぁ、俺も子供のころこうした地区の行事とかに遊びに行ってたよなぁ。



お祭りで太鼓の練習したり、お月見会に行ったり。





地区同士で競い合うなんて、すごく楽しそうなお祭りだよ。


みんなこの祭りのために1年間、待ちに待ってきたんだろうな。


もしかしたらお祭りの時期じゃなければ、シエナの町ももう少し静かなのかもしれないな。







ちなみにユーチューブでパリオ祭りって調べたら動画見られます。



尋常じゃないくらいウルトラ盛り上がりまくってて、後からやっぱ行けばよかったな…………って思いました。
















さぁ、今回のゼロさんのお仕事はこの町内会パーティーの余興だ。


こんなにアットホームに盛り上がってる中で、いきなりアジア人がマジックを始めるなんてかなり異質な状況だけど、きっとゼロさんはこんなシチュエーション、いくらでも経験してきてるはず。



うー、こっちが緊張してきた!!







と思ったら、もう向こうで始めてる!!!!




ゼロさん、花山薫とスペックですか!!!



路上さえあれば一瞬でバトルスタートですか!!!!








俺たちも近づいてゼロさんのショーを見学させてもらった。



ゼロさんの腰には小さなポシェットがつけられており、いたって軽装。



そのポケットからいろんな小道具が出てきて、小さなマジックを繰り広げていく。



コミカルな動きで、おどけながら観客の笑いを誘い、イタリア語でジョークも織り交ぜている。










煙が出たり、鳩が飛び出したり、火柱が上がったりなんて派手なものはない。




トランプや指輪、ハンカチなんかの小物を使ってのマジックなので、みんな2メートルくらいの距離まで近づいてきて円を描いている。






もうとにかく楽しい!!!!




ゼロさんが、僕のショーは勢いですからね、と言っていたのがよくわかった。



次から次へとシンプルだけど驚かされるマジックを繰り出していき、どんどん引きつけられていく。



人だかりはどんどん増え、それにつられてまた人が足を止める。




みんな笑顔になり、驚いて、子供なんかワアアアアオ!!!って目をひんむいて目の前のマジックを見つめている。



もう彼ら小さな子供からしたら、このトランプが宙を舞ったりする出来事が、超スペクタクルでエキサイティングなことなんだろうな。



10代後半の、ちょっと生意気そうな若者たちでさえ、マジックを見始めると、おいおいマジかよ!!すげぇぜ!!って感じで盛り上がってる。






もちろん俺たちが見ててもめっちゃすごい!!!



え!?どうやってるの!?!?え!?今のどこから出てきたの!?って本気でビビってしまう!!!!



こんな2メートルの近距離で見てるというのに、まったく気づかないうちに色んなものが次から次へと出てくる。





観客の中の子供や大人に協力してもらって、いじりながら進行していくのもとってもアットホーム。



目をひんむいていた子供の手のひらから、今度は実際に玉が溢れ出してきて、もう子供狂喜乱舞!!!




すげぇ!!!すげすぎる!!!!


なんて素敵なパフォーマンスなんだ!!!



ゼロさんの周りが笑顔に溢れてる!!!!














そうして最後のマジックが終わると、フィニートー!!で終了。



20分のショーがだいたいひと回しみたいだ。




俺はいつも1時間でひと回しにしているけど、ゼロさんこの20分で汗びっしょりかいている。



俺のパフォーマンスは通りがかりの人に聞いてもらったり、本を読んでる人とか、カフェでお茶してる人とか、何かしてるところにふわっと聞こえてくるBGMのようなもの。


なので常に人だかりができてるわけではない。



そして人だかりが出来ている時ってのは、いつも以上に体力を消耗する。精神的にも結構疲れる。






ゼロさんはそれを始まりから終わりまで、20分間、全力で集中してやってるわけだ。


絶対にミスが許されない状況での20分間って相当しんどいはず。




さっき聞いていた話では、この20分間、観客の足を止め続けなければショーにならないんだそう。



マジックが終わり、フィニートー!!ってなったところで初めてチップを入れに来てくれるので、きっちり最後まで楽しんでもらうことが何より大事みたい。



なるほどー、俺みたいに曲の途中で入れに来てくれる人は確かにこうしたショーでは少ないのかな。





そしてこの路上のショーで絶対にやらかしたらいけないのが、崩壊っていうものらしい。



パフォーマンスの最中に観客の円が崩れ、人が流れて行ってしまったら最悪で、もうその20分は終了なんだそう。




そ、それは確かに怖すぎる…………


すごい緊張感の中での戦いなんだなぁ……………



















ゼロさんはまだこれからこの町内会で何回かやるようなので、ここで俺も自分の路上に出ることに。



お互い早く終わったほうがそっちに行くということで別れ、昨日と同じ路上ポイントにやってきた。



22時を過ぎたメインストリートはもうとんでもない人通りで溢れかえっており、あちこちのバーでビールカップを持った若者たちが楽しそうに飲みまくっている。



おじさんもおばさんも、お爺ちゃんもお婆ちゃんも、そこらへんの石段に座ってこの土曜の夜を楽しんでいる。





こうなるとなかなか辛い。


あまりの雑踏に演奏がかき消されてしまって、反応がもらえなくなってしまうんだよなぁ。







それでもなんとか声を絞って歌っていく。




うん、まぁなんとか反応はもらえてる。お札も入れてもらえたぞ。






























そうして1時間経ったところでゼロさんがやってきた。


どうやら向こうの仕事が終わったみたいだ。





ゼロさんはまだポシェットをしたまま。



あ、まだ臨戦態勢のままだ……………





「ゼロさん、僕ちょっと休憩するんですけど、今日は路上はやらないんですか?」



「そうだね、やってみようかなー。」



「イタリアってやっぱり路上は夜がいいんですよね?」



「そうです、昼間は全然ダメです。夜でも、晩ご飯が終わってジェラートを食べ始めたころがベストですね。」




やった!!あの伝説のゼロさんの路上が見られる!!



ワクワクしながら少し離れてカンちゃんと眺めていると、別に何か大きな声や動作でお客さんを集めるわけでもなく、フンフンフーン、と鼻歌を歌いながら小物を使って手遊びみたいに小さなマジックをチロチロとやっているゼロさん。




またその手際がいいもんだから、通行人からしたら、え!?今あの人、手からなんか出てきたよ!?って感じだ。



そうして通行人の興味を引いていると、パラパラと足が止まり始め、あっという間にものすごい数の観客の円が出来上がった。







すげぇ!!





そうして観客の小さな男の子を呼んで名前を聞き、みんなに紹介し、その男の子の手からいきなり玉がぶわーーっと溢れ出ると、観客から歓声が上がった。



こうなるともう完全にゼロさんの世界。




次から次へと矢継ぎ早に繰り出すマジックに観客はさらに増え、引きつけられ、みんな大盛り上がり。



面白いのは子供も大人もみんな同じ反応をしてること。






息を飲んで、嘘でしょ!?って顔をして、ゼロさんがおどけた声を出すと、みんなワーっと笑う。



すごくピュアに、そのパフォーマンスを楽しんでいる。


目をキラキラさせて、ケータイをいじる手を止めて眺めている。




なんかこう、ラ・ストラーダの映画を思い出した。


大道芸をやる主人公たちを人々が取り囲み、みんなで笑っているあのほのぼのとした空気。





ゼロさんのパフォーマンスももちろん素晴らしい。

でもこのヨーロッパの人々も素晴らしい。



もしこれが日本の土曜の繁華街だったらどうだろ?



あ~~ん!?どこに仕掛けがあるんだ~~!?って面倒くさく絡んだり、冷めた目で眺めては税金とかどうしてるの?とか言ってきそうだ。



余計なことは置いといて、今目の前のパフォーマンスを楽しんでくれるこのヨーロッパの路上文化はやっぱり素敵だなぁ。






フィニートー!!とショーが終わり、ゼロさんが控え目に前に小さなバケツを置くと、1人目がコインを入れに来てくれた。


するとゼロさん、バケツの中から、え!?こんなに入れてくれるの!?って驚きながらあらかじめ入れておいた財布を取り出した。



ワッハッハッハーとまた笑いが起きる。



最後まで楽しませてくれるなぁ。






観客たちの多くが我先にチップを入れてくれ、そして一緒に写真撮ってくれない!?ってお願いされてツーショット写真を撮っている。




いやぁ、すげぇ、これぞ路上。


これぞ路上パフォーマンス。



路上の真髄を見させてもらったよ。



















「ゼロさん、もしよかったら一緒にやってみてもいいですか!?」



「いいですね、やってみましょうか!」




無理言ってゼロさんとコラボパフォーマンス!!



俺はテンポのいい曲を歌い、それに合わせてゼロさんがリズミカルにマジックを披露するというスタイル!!!




うおー!!!あの伝説の路上パフォーマーとコラボしてるー!!!!




すぐに観客の円が出来上がり、めっちゃいい感じで楽しんでもらえてるんだけど、ぶっちゃけ俺いるのかな!?



みんなゼロさんのことしか見てない!!



でも観客の足元を見てみると、曲に合わせてリズムを刻んでくれてる人もいる!!



うん!!悪くないか!!




正直みんなゼロさんのことばっかり見てるので、俺としてはめっちゃ楽!!!








そして20分で、お互い息を合わせてジャーンとフィニートすると、人々がチップを入れに来てくれる。


やべぇ楽しい!!!


いえばマジックとのセッション!!!



こんなセッション初めてだ!!!




「ゼロさん、僕邪魔じゃないですか?」



「いやいや、僕のパフォーマンスは音がないですからね!やっぱり音があると人は足を止めやすいですから。」



















それからも何回しか一緒にやらせてもらい、その度に人だかりと拍手が通りに起こった。



ヨーロッパの片隅、山の中の小さな城壁の中で、日本人2人の路上パフォーマンス。



うーわ、路上楽しい。



路上やっててよかった。







24時を過ぎ、人通りはまだまださらに増えていってるけど、さすがに酔っ払いが増えてきたし、2人とも疲れてきてきたのでこの辺で終わることに。



ゼロさん!!勉強させてもらいました!!



今日のあがりは1時間半で105ユーロ。13000円。



















路上が終わり、それからお酒を飲みながら3人で色んな話をした。


どこの国が良かったとか、どこが綺麗だったとか、やっぱりゼロさんは路上パフォーマーではあるけど、その前にチャリダーであって、世界一周中の旅人さんなんだよな。



稼げるかどうかなんて二の次で、今も旅、冒険に対する情熱を持ち続けてるんだなぁって感動してしまった。



もう今乗ってるママチャリは5代目なんだって。











そんなゼロさん、長く付き合ってる日本人の彼女さんがいて、今もイタリアの北部の町で待ってもらってるとのこと。


彼女さんも旅好きのかたらしく、一緒に自転車旅をしたりしてるみたい。



いやぁ、ゼロさんの彼女さんだったらきっと素敵なかたなんだろうなぁ。





「ヤッケンは酒飲みですよー。昼間からウィスキーとか飲みながらヘビーメタルの音楽を聴いてます。村上製作所のショーさんもすごいお酒飲みますねー。九州の人だから底なしに飲むんですよ。ショーさんはチャカッ、チャッチャッ、ってあれなんて言うんですか?ファンクって言うんですか?ショーさんはすごい演奏が上手です。」




ゼロさんはこれまでイタリアに来た世界一周バスカーたちにたくさん会ってきており、結構それらの人たちのブログにも登場してきていた。



確かヤッケンさんのブログではめっちゃ長いこと一緒に滞在してた覚えがある。




ヤッケン面白いよなぁ。


カンちゃんとかヤッケンのことめっちゃツボだもんな。




ショーさんはユーチューブで見たことあるけど確かにすごい上手い。


確か長崎出身の人だったよな。





ブロガーの中でも音楽やってるやつらはみんな我が強そうで、個性があって、ブログ読むたびにライブハウスで絡んできたやつらみたいで親近感が湧く。















気がついたら夜中の3時を過ぎていた。


だいぶ酔っぱらってしまい、フラフラになったんだけど、ゼロさんはシャキッとしたままだ。



本当はもっともっと書きたいことがあるんだけど、ゼロさんがものすごく謙虚なかたで、顔も名前も伏せているし色んなことを隠して書いてます。


でもそれはネガティヴなことを隠して良い風に書いているんじゃなくて、むしろ逆。



良いことを隠してます。


僕そんなんじゃないですから、ってゼロさんはいつまでも腰の低い笑顔です。











10年くらい前のあの日、実家のパソコンの前で、へー、こんなイカれたことやってる人がいるんだーって悔しい思いをしたのをはっきり覚えている。


俺の中で、ゼロトゥマックスのあの人はいつも別格の存在として頭の片隅にあった。





あの人と今日、こうして一緒に過ごすことができたなんて、もうマジで奇跡だよ。



旅面白いなぁ。


本当に旅は色んな出会いをもたらしてくれる。









昨日会ったアユムさんもド級の一匹狼。

今日のゼロさんもド級の一匹狼。




みんなこだわりと信念を持って自分の生きかたを貫いている。



俺も頑張ろ。


自分の心に正直に、誰かの真似じゃなく、自分だけの生きかたを楽しもう。



なんでそんなわざわざ辛いことするのって聞かれたらこう答えよう。


だって楽じゃないですか。



あ、早速真似になってるか。







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ロンドンのホテルをアゴダでとってくださったかたがいました!!


ロンドン行くかたがめっちゃここからとってくださっててありがたいです!!!いつかお礼してください!!!


どうもありがとうございます!!

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