2017年6月6日(火曜日)
【イタリア】 アルベロベッロ ~ マテラ ~ ジョイアタウロ
美味しい朝ごはんを食べ、今日も午前中だけアルベロベッロで路上をした。
あがりは2時間で73ユーロ、9000円。
アルベロベッロ稼げます。安定です。
ただ今日は真後ろの公園でブイイイイイイン!!って草刈りやってたり、トゥルッリの教会のほうにハンドパンのパフォーマーが出てきたりして、昨日ほどの反応ではなかったな。
あと昨日から町の中で物売りをしてる兄さんと仲良くなった。
観光地によくいる物売りで、セルカ棒やケータイ充電器なんかを持って通りをうろうろしている。
他にライバルもいなくて兄さん1人で独占しており、商品も観光客向けであれはなかなか稼ぐだろうな。
俺もiPhoneの充電ケーブルがちぎれかけていたので兄さんから5ユーロで買った。620円。
「兄さんはどこから来てるの?」
「バングラデシュだよ。」
「あ、ダッカ行ったことあるよー、バングラデシュ人ってみんなフレンドリーだよね。ところでこういう物売りってマフィアにお金とか払わなくていいの?」
「はははー、そんなことないよー。お店の人はみんなお金を払ってる。でも俺はなんにも払わないでいいんだ。路上販売だからね。でも警察が来たら逃げないといけない。それだけさ。1人でストレスフリーで気楽なもんさ。」
バングラデシュからこんな遠い国に来てこっそり稼いでるんだなぁ。
しかし闇商売ではあっても兄さんはイタリア語が喋れて、周りのお土産物屋さんの人たちともにこやかに会話して上手くやっていた。
いやぁ、いい町だったな。
アルベロベッロ最高だよ。
宮崎帰ったら若草通りのアルベロベッロ行って甘いジンジャーエール飲も!!
辛いの苦手!!
バイバイ、アルベロベッロ!!
というわけで水を補給してから車に乗り込んで次の目的地へと向けて走った。
今日は忙しいぞー。マジで。
日程を考えると本当は今日の朝にアルベロベッロを出発しないといけなかったのに、午前中歌ったおかげですでに昼過ぎ。
時間的に相当厳しい。
明日の朝までに、ブーツのカカト部分からつま先まで移動しないといけない。
なぜかというと、明日の朝、俺たちは船に乗る。チケットももうネットで取ってある。
向かう先はもちろん!!!!
あのシチリア。
憧れ続けたシチリア島に、とうとう行く!!!!
もうイタリア楽しみ!!って言ってた内の7割くらいがシチリアのことですからね。
なんたってニューシネマパラダイス。
あのシネマパラディソの舞台。
あの大好きな美しいシチリアに行けるのかと思うと、興奮が止まりませんよ。
やっば!!!シシ~リアやし!!
シチリアじゃなくてシシ~リアやし!!!
ああああ!!!トトとアルフレードを探しに行くぞおおおおおおおおおお!!!!
「アルフレード~~!!アルフレード~~~!!!」
「アルフレード~~~!!!」
映画館が火事になった時にトトがアルフレードを救出したあのシーンの真似をしながら車を飛ばしていく。
アルベロベッロからブーツのつま先まではかなり遠いので、途中から高速に乗ってかっ飛ばさないと今日中に着くのは不可能。
寄り道してる暇なんかない。
でも寄り道しましょう。
このアルベロベッロのすぐ近くにもうひとつ美しい世界遺産の町があるという話を聞いている。
アルベロベッロで出会った日本人旅行者のみなさんも、もれなくツアーでそこもセットで回っているらしく、距離も車で1時間ちょいくらいの場所だ。
のどかな農地の中をトコトコ走り、しばらくしてその美しいと聞いていた町、マテラにやってきた。
いつものように裏路地で地元の人たちに混じって路駐して町の中心部へと向かうと、小ぢんまりした町中に結構立派なホコ天が現れた。
おお、ここも路上できそうだなぁ。
いい感じのホコ天だ。
まぁ今日はもうこれ以上は時間がないのでスパッと観光したら先に進もう。
ご飯がまだだったのでサッとピザを食べ、ホコ天を奥へと歩いていく。
路地があちこちにのびていて雰囲気のある町だなぁ。
でも今のところ別にどこにでもある普通の古い町って感じだけどなぁ。
ふーん。
ん?なんか人がたくさん集まってカメラを構えてる展望台みたいなところがあるぞ?
なんか見えるのかな?
まぁ、普通のヨーロッパの景色かなー。
ズゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
なんじゃこりゃああああああああああああああ!!!!!!!
すげえええええええええええええええええ!!!!!!!!
丘の斜面にびっしりと民家が敷き詰められており、もうなんか蟻塚かなんかみたい!!!!!
すべての建物がくすんだ黄色というか灰色で統一されており、ところどころに教会の塔が飛び出し、今日の曇天の空もあいまってなんか伝説の秘密めいた町みたいな怪しさが漂っている!!!!!
なんだこのおとぎ話は!!!!
イタリアすげすぎる!!!!
さっきまで可愛らしいメルヘンの町だったのに、1時間離れたら今度は化石のようなドラクエの町!!!!
どんだけいろんな顔持ってんだよ!!!!
「すっげええええ!!!カンちゃんこれはヤバい!!!!」
「こんなすごい景色久しぶり!!!!」
2人で興奮しながら丘の斜面を降り、その蟻塚みたいな民家の隙間をぬって歩いた。
坂道、石段、無数の路地が張り巡らされ、マジで歴史映画の中に迷い込んだような錯覚だ。
もちろんこれらは今も人が暮らす普通の民家だ。
洗濯物が石段の頭上で揺れている。
これらの異様な民家のことを洞窟住居、サッシと呼ぶらしく、はるか昔にバルカン半島の人たちがイスラム勢力から逃れるために海を渡ってやってきて住み着いたのが起源なんだそう。
丘の下には川が流れており、その対岸には何もない荒れた崖が広がっているんだけど、よく見ると崖にポツポツと穴があいているのがわかる。
あれがもともと古くからの洞窟住居だったよう。
衛生環境も悪く、小作農の人々の住居になっていたことから、これらのサッシは南イタリアの貧しさの象徴とされ、イタリアの恥部とまで言われていたんだそう。
しかしこれらの洞窟住居の景観や構造が貴重なものであると見直され、世界遺産に登録されると、世界中から人々が訪れる一大観光地へと変貌。
貧しさの象徴だったサッシはホテルやレストランに姿を変え、今ではただのオシャレスポットだ。
とにかくすげぇ。
どこに行っても迷路迷路、迷路。
少し開けた高台の上に、巨大な岩をくりぬいた岩窟の教会もあり、不思議なエネルギーに満ちているように感じられる。
あまりの景観に写真を撮りながらぐるぐると迷路の中をさまよった。
ここに人が住んでるんだよなぁ…………
大きな町が少ないこのあたりの南イタリアは、きっと昔はすごく貧しい地域だったんだろなぁ。
独特な文化景観を残す、時代に取り残された僻地、南イタリア。
いやぁ、面白いところだなぁ。
マテラに大満足して車に戻ると、急いでブーツのつま先へと向かって走った。
この辺りには高速道路は作られておらず、海沿いの一本道を走っていかないといけない。
寂れた海辺の田舎道。
古いセメントのアパートが並び、ベランダの鉄の手すりが潮風で錆びついている。
公営団地みたいな、昭和の匂いがするノスタルジックな町をいくつも通り過ぎていく。
電信柱に貼られたサーカスの興行ポスター。
名もなき町、名もなき人々、名もなき通り。
胸が少しざわつく。
子供の頃に住んでいた延岡の遠い遠い記憶が浮かんでは消える。
誰も知らない、誰もやってこない、忘れ去られた小さな町の片隅で、空きカン蹴っ飛ばして学校から帰ってた。
夕日と鉄塔とスクラップ工場。
ここは南イタリア、あのブーツの土踏まずのあたり。
ここにも人の暮らしがあって、みんなささやかな幸せを胸に生きている。
誰にも知られずに。
イタリア人、運転せっかちすぎ。
カレーかと思ったらカピー。
しばらくして土踏まずを抜けたところからようやく高速道路に乗ることができた。
この区間、完全に高速道路なのに不思議なことにインターにゲートがなくて、チケットをとらないうちに高速道路を走り出した。
あれ?どういうことだ?
チケットがないから、どこから乗ったかわからんやん。
マッセリアノーラってところから乗ったんだけど、降りるときどうすればいいんだろ?
わかんないけど、とにかく高速道路をかっ飛ばした。
朝から歌い、観光で歩き回って、さすがに体が疲れてる。
地図を見るとブーツのつま先まではまっだまだ気が遠くなるほど遠い。
気合いだぞー…………気合いだぞー……………
「気合いだぎゃああああああああああ!!!!!!!」
「な、なに!?ビックリする!!!」
ちょっと眠くなってきていきなり絶叫したりしながら集中してハンドルを握る。
「眠くなんかないぞおおおおおおおおお!!!!!アルフレードオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
「トトオオオオオ!!!アルフレードアルフレード~~!!!」
うおおお!!シシリアが俺たちを待ってるぞーー!!!
何時間くらい走ったかな。
逆にテンション上がって頭が冴えてきた。
夜の中をアクセルをふかし続け、ブーツの親指あたりまでやってきた。
そうして23時半くらいにサービスエリアに入った。
イタリアのサービスエリアはイギリスのサービスエリアみたいに2時間以上の駐車は有料なんてケチなシステムはない。
日本と同じく、ここで夜を越すことができるよう。
サービスエリアのお土産って地域色でるよなぁ。
入れ物もオシャレでそのまま使えそう。
はぁ、さすがに疲れたわ……………
でももうつま先は目と鼻の先。
船の時間は朝の10時。
明日起きて少し走り、港から船に乗り込んだらあのシシリアだ。
やべええええ……………
シシリアだってよ……………
あの憧れのシシリアに明日行けるんだ………………
ぶっちゃけ、数日前までの路上でまったく稼げなくて、このままイタリアを回っていって大丈夫なのか?と不安になっていた。
こんなに全然稼げないならば南イタリアは行くのをやめて、ナポリくらいから北上して早めにイタリアを抜けてしまったほうがいいんじゃないか?と本気で考えた。
カンちゃんと、そのほうがいいかもね…………って本気で話し合い、半分くらいその気になっていた。
イタリアでチマチマ稼いで金を減らすのも、ドイツあたりでしっかり稼ぐのも同じ1日。
貴重なシェンゲンの1日だ。
しかし、せっかくこんなに楽しみにしていたイタリアを中途半端にして逃げ出したりなんかしたら、一生後悔する。
イタリアに来て、フェリーチケットまでとっているのにシシリアに行かないで引き返したりなんかしたら、どう考えても後悔する。
あー、諦めんでよかったよ。
「シシリアどんなところなんだろうね。」
「ねー、シネマパラディソみたいなあんな風景が見られるかな。」
カンちゃんとシシリアの話をしながら、最近ハマっているサラダをつまみながらビールを飲んだ。