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バスの中にあるアフリカの素顔



2017年3月28日(火曜日)
【タンザニア】 アルーシャ ~ イリンガ





朝5時20分。


まだ真っ暗な中、宿を出た。





今日のイリンガ行きのバスはターミナルから6時出発。


町はまだ寝静まっており、ひと気もなく、不気味な静寂だ。



アスファルトをキャリーバッグが転がるゴロゴロという音だけがやけに大きく聞こえる。


アフリカでこんな暗いうちから動きたくないけどバスがこの時間にしかないから仕方ない。









次第にバスターミナルに近づいていくと、パラパラと人が見え始め、敷地にたくさんのバスがヘッドライトをつけて集まっていた。


真っ暗なターミナル内はアイドリングするバスのエンジン音で埋め尽くされており、この時間でもヘッドライトに照らされた人たちが慌ただしく動き回っている。


アフリカの朝は早い。





「ヘイチナ!!どこに行くんだ!!」



「ダルエスサラーム!?ナイロビ!?チナ!!」




すぐに客引きたちが群がってくるけど、俺たちはもう昨日のうちにチケットを買っている。


客引きのおじさんにチケットを見せると、無数にあるバスの中から俺たちが乗るバスまで連れて行ってくれた。







バスはこれまでのミニバンやミニバスではなく、大きな長距離バスだった。


荷物を荷台に入れ、車内に入ってチケットに書かれている番号のシートに座った。


ちゃんと指定シートだ。





朝ごはんを食べたかったけどこの時間はまだ軽食の屋台すら出ておらず、売店で食パンしか売ってない。


まぁどっかで食事休憩でもあるだろう。



今日はこれからイリンガまで12時間の移動。


長い1日になりそう。



バスは定刻通り6時にターミナルを出発し、勢いよくアクセルをふかして走り出した。


























荒野の向こうに朝日が昇ってくると、あっという間にアフリカの大地が姿を現した。


どこまでも広がる草原の緑。


その中にのびる一本道を疾走していくバス。



運転手さんがかなりのスピード狂で、ぐんぐんアクセルをふかし、乱暴にハンドルを切るたびに窓の外に追い抜かされていく車が一瞬で後ろに消えていく。







俺たちがこれから向かうのはイリンガという小さな町。


そこを越えるとムベアという都市があり、その先に次の国であるマラウィがある。


このあたりは国境が密集しており、マラウィ、ザンビア、モザンビークの国土が近接している地域になる。




どこに行ってもいいんだけど、俺たちが目指すのはマラウィだ。



とても小さな国なんだけど、人が暖かく、物価が安いマラウィはウォームハートオブアフリカなんてふうに呼ばれているらしく、ゆっくりと過ごしたい俺たちはアフリカに来る前からかなり期待していた。



国土のかなりの範囲が湖になっているというところも、どこか惹かれる。


治安に不安があるアフリカの中で、勝手にオアシスのようなイメージを持っているけど、その通りだったらいいなぁ。





イリンガはそのマラウィまでの中継地点。


小さな町だけど、近くに何かの遺跡もあるとのこと。


何日か滞在したらマラウィを目指そう。



















太陽が昇り、ジリジリと地面を焦がし始めたころ、バスはどこかの町のターミナルに止まった。


何人かの乗客が荷物を置いたまま外に降りていく。



お、休憩かな?


ターミナルの中にはボロボロの小屋が並んでいて、何かしら売っていそうなのでお腹も空いたし何か買いに行くことに。






しかし降りようとしたら入り口のところに大量の人たちがいて、バスに乗り込もうとしていた。


こ、これは危険か…………?



こんなにたくさんの人たちが乗ってきたら、外に出ている間に席を奪われてしまいそう。


座席指定のチケットだけど、このアフリカでそんなもんが通用するか怪しすぎる。





お腹は空いているけど、12時間移動で席を奪われたらたまらないので席に戻った。


するとドヤドヤドヤー!!と新しい乗客がなだれ込んできて、あっという間にバスは満席に。



うん、俺たちの前に座っていた兄さんの席に思いっきり赤ん坊を抱えた女の人が座ってますね。




あ、危ねぇ…………やっぱりそうなるわな…………





しばらくして戻ってきた兄さん。

自分の席に平然と女の人が座ってるのを見て顔をしかめてる。




走り出すバス。


女の人にどいてくれと訴える兄さん。



しかし女の人は一切どく気なしで、根が生えてますもんでって感じで微動だにしない。




うわぁ…………兄さん可哀想…………ちゃんと指定席なのに…………

赤ん坊を抱えてるし、兄さんも言いづらいよね……………





だいたい席数よりも人の数が多いのはどういうことだ?


強引にチケット売りすぎやろ。




まぁ南米でもこんなのはあったか。

真ん中の通路にバケツとか置いてギッチギチに座らせて、後ろのトイレに行くにはその人たちの頭の上をよいしょって乗り越えていかないといけないという人間アスレチック状態。


ここはアフリカ。南米でもあるならここでもあるわなぁ。




しばらく抗議していたら女の人の旦那さんらしき人が隣の席で立ち上がり、奥さんをそっちに座らせて兄さんは席に戻ることができた。


旦那さんは立ったままバスに揺られている。
















それにしてもお腹が空いたと思っていたら、ちょうどどこかの停車ポイントで物売りの兄さんが車内に入ってきた。


年季の入った段ボールの入れ物にぎっちりとジュースやお菓子を詰め込んでいる。


ご飯を食べたいところだけど、迂闊に席も離れられないので兄さんからクッキーとジュースを買った。


ジュースが1000シリング、50円。
クッキーが3000シリング、150円。



クッキーの包装が厳重すぎてなんか怖い。








それにしても物売りの勢いが半端じゃない。



バスは小さな町に立ち寄りながら走っていくんだけど、止まるたびにすごい勢いで物売りの人たちがバスを取り囲んできて、窓の外で品物を頭上に掲げて大声で叫び散らかしてくる。


窓を開けてそこから品物を買うというやりかただ。







ていうかジュースとかクッキーとかの軽食ならわかるんだけど、それ今買う人いる?!っていうものをウオラアアアア!!って掲げてる人とかいる。






ウオラアアアアアア!!!




油!?








ヨッシャイエエエエエイ!!!





卵!?



その後ろ絨毯!?







シャモジ!?



その頭に乗せてる壺みたいなの何!?







この人の達人感がすごい。











イヤッホゥウウウウウウ!!!!!








いやぁ、ものすごい数の物売りがバスに群がってくるんだけど、買う人はほとんどいない。


それでも彼らはこうやってやってくるバスやってくるバスに駆け寄っていき、品物を頭上高く掲げている。




彼らも俺たちも同じ人間。こうやって高いところから見下ろしていると、他に仕事を選ぶことはできんかったのかなぁってどうしても思ってしまう。


難しい問題が色々あるんだろうけど、きっとアイデア次第でいろんな商売ができると思うんだけどな。


でもそれは選択肢が無限に存在する日本で育った人間だから思うことなのかな。






















窓の外に広がるなんにもない荒野。



なーんにもない。



乾いた大地に風が吹き渡る。



そんな中に、大地の一部かのように茶色い建物が見える。




それは土壁の家で、地面と同じ色をしているのでほとんど同化している。


トタン屋根の家はかなりいいほうで、草の屋根をかけただけの原始的なものや、ビニールを乗せただけの家なんかが多い。



道路から見えるだけでこんなにあるんだから、きっともっと入り込んだところに少数民族とかの集落があったりするんだろうな。













こんななにもない不毛な大地で暮らす彼らには、俺たちの想像もつかないほど狭い選択肢しかないのかもしれない。



なにもないから全てがある。



いつか砂漠の民のベルベル人のおじさんが言っていた言葉を思い出すけど、本当にそうなのかなと考えてしまう。


空はとても綺麗だ。














途中お昼休憩で買ったご飯。




ポテトに牛肉乗ったやつ。

ポテトを卵でとじたオムレツ。



アフリカの人ポテト好きやなぁ。


合わせて7000シリング、350円。



















日記を書くのに疲れて、窓の外を眺めた。

するとさっきまでと土の色が変わっていた。



赤茶けた土が広がり、いかにもアフリカっぽい。

その中に散らばる民家もまた赤茶けた土を塗り固めたもので、大地から生えているみたいに見えた。



乾いた土けむりのあげながら走るバス。


カンちゃんは俺の体にもたれてすぴーすぴー寝息を立てている。





そんな乾いたゴツゴツとした荒地の斜面に、少し大きな水たまりというか池があった。


よく見てみると、その池の中で真っ黒い肌の子供たちが元気に泳いでいた。


濁りまくった茶色い水の中で泳ぐ子どもたち。
あんな汚れた水だけど、すごく気持ちよさそうだ。


きっと彼らの大切な遊び場なんだろうな。






すると子どもたちが俺たちのバスに気づき、こっちに手を振った。


振り返そうかなと思ったけど、なんだか手を挙げられなかった。



バスはお構いなしにアクセルをふかしてその前を通り過ぎていく。








「あ!!あれ!!」



そんな子どもたちの池を通り過ぎた時、見覚えのある木が見えた。


太い幹、いびつな枝、その雄大ないでたち、


間違いない!!




「カンちゃん!!バオバブ!!バオバブだよ!!」



「へぇえええ…………私バブバブちゃうしー………むにゃむにゃ…………え?バブバブ!?」











カンちゃんを揺すり起こして窓の外に散らばるバブバブの木を指差した。


アフリカの写真でよく見る、天をつくような巨大なバブバブではないけど、これは確かにバブバブの木だ。


大地に突き刺したような力強い幹は表面が滑らかで、ブサイクな枝をのばしてたくさんの葉を茂らせている。



よく見ればそんなバブバブの木が見渡す限りの草原の中にたくさん散らばっていた。



「うわー!!すげー!!」



「すごい!!ふみ君アフリカでバオバブ見たいって言ってもんね!!」



「うん!!バオバブの木、大好きだから見たかったんだよー!!こんなにたくさんあるー!!」







バオバブといえばマダガスカル。


有名なバオバブ街道はあの国にあるんだけど、マダガスカルは島国なので飛行機で飛ばないといけない。


そうなると時間的にもお金的にも厳しいのでバオバブ無理かなぁと半分諦めていた。



それがこんなにたくさん!!


バオバブって別にマダガスカルにしかないものじゃないんだ!!!





あー、このずんぐりむっくりした可愛らしい姿、バランスの悪い太い幹、他のどの木にもない独特なこの形が大好きだ。



なんてファンタジックな木なんだろう。

なんてアフリカの大地に合う木なんだろう。



あー、嬉しすぎるよ。旅している実感が胸を満たしてくれる。











感動してたまらなくて、何枚も写真を撮っていると、バスの中に笑い声が響いた。


ん?なんでみんな笑ってるんだと思ったら、バスの中のモニターでコメディ映画が流れていた。


この辺りの映画らしく、出演者は全員アフリカ人、言葉ももちろんスワヒリ語だ。




お茶目な顔のおじさんがお風呂でシャワーを浴びていると下着の替えがないことに気づき、タライを股間にあてて裸で外に出ると、そこにいた女の人がキャアアアアアアア!!!!と逃げていく。


うひー!恥ずかしい!!みたいな表情をするおじさん。



それを見て乗客のみんなが大笑いしていた。




窓の外に流れる土でできた集落。見渡す限りの荒野。











みんなみんな、当たり前に俺たちと同じ人間。

同じことに笑い、悲しみ、空の美しさに心を奪われ、人生に儚さを感じ、生きている。



文明にまみれて生きてる俺たちと、あの集落で牛を追う人生のどっちが優れた人生なんだろう。


優れた人生なんてないんだけど、物質社会で育った俺の頭にはそんな愚問がこびりついていて、それを風が吹き飛ばそうとしている。


アフリカには人生観を変えるだけの力がある。






















日が沈み、ヘッドライトがアスファルトを照らし出した頃、バスはイリンガの町に到着した。


想像していたよりも大きな町で、バスターミナルの周りにはたくさんの建物が密集して、人が溢れ、活気に満ちていた。





バスを降りると一瞬にして客引きたちが群がってくるけど、これは俺たちだけを狙ったものではなくて、現地の人でも客引きの対象だ。


別に観光地でなくとも、この強引な客引きはアフリカの日常風景なんだな。




バスターミナルの周りにはローカルマーケットが広がっていてかなり面白そうだったんだけど、もう時間も遅い。


真っ暗になる前に早く宿に入ろうと、調べておいた宿に向かった。











宿は町から歩いて15分くらいの静かな通りにあるはずなんだけど、地図を見ても分かりづらいし、それらしき看板もない。



もうほとんど真っ暗になってしまって、これだと宿も見つけにくい。




この辺りだと思うんだけどなぁ、とウロウロしていたその時、後ろから英語で声をかけられた。


それは欧米人のおばちゃんで、アリゼティホテルを探してるの?と聞いてきてくれた。



「そうです!そのホテルです!」



「私もそこに泊まってるのよ。あそこは分かりづらい場所にあるからね。着いてきて。」



はぁ、助かったと着いて行くと、車道を曲がり、未舗装の急な下り坂に入っていくおばちゃん。


外灯なんかあるはずもなく、水の流れでできた溝でボコボコになっており、歩きにくいことこの上ない。




慎重に慎重に土の地面を歩いて下り坂を下りていき、真っ暗な田舎のあぜ道を奥へ奥へと進んでいくと、そこに鉄の門があった。


アリゼティホテルと書いてある。




こりゃゼッテーわからんわ…………

おばちゃんに会えてよかった。









「ハロー!!ようこそ!!道が分かりにくかったでしょ?」





宿のスタッフはまさかの欧米人の若い女の子で、泊まっているお客さんたちもみんな欧米人。


ただとても小さな隠れ家みたいな宿なので、宿泊者も5~6人くらいで、みんなフレンドリーでアットホームだ。



町から離れたあぜ道の奥にあるのですごく静か。





そして欧米人向けのバックパッカー宿なだけあってキッチンも綺麗だし設備も充実してる。ワイファイも今まででダントツ早い。









さらにはビールが売っていて、3000シリング、150円で冷蔵庫で冷やしたキンキンのビールが飲めるってのもこの設備の整っていないアフリカではほぼなかったことなのですごく嬉しい。


最近ずっと常温のぬるいビールだったからな。








しかもサービスでピーナッツ食べ放題というのが嬉しすぎる!!ビールがすすむじゃないか!!





ビール代の支払いも自己申請で、勝手にビールを取ってノートに何本飲んだかってのを自分で記入して後払いするか、冷蔵庫の上に置いてある入れ物に自分でお金を入れておくかのどっちか。





こんな盗み放題のやりかた、アフリカでは考えられない。


みんな正直に過ごしていて、この宿の中だけ治安がヨーロッパだ。



はああああ、めっちゃ居心地いい…………





値段はドミトリーが1人15000シリング、750円。

ダブルルームが35000シリング、1750円。


250円の差なら断然個室だ。

















「晩ご飯まだだったら、歩いて5分くらいのところにバーベキューハットっていうレストランがあるからそこがベストよ!」



荷物を降ろし、身軽になって教えてもらったレストランに向かったんだけど、ここがまた最高だった。




スワヒリメニューからウェスタンメニュー、インド料理もチャイニーズフードもあってめっちゃ悩む。


そして頼んだのはジンジャーチキンカレーと卵チャーハン。



「うめええええええ!!!!なにこれめっちゃ美味い!!」



「いやぁ!!これインドクオリティだ!!こんな美味しいインドカレー久しぶり!!嬉しい!!」






これがまためっちゃ美味しかった。

かなり本格的な味でスプーンが止まらない。




「いやぁ、カンちゃん、イリンガめっちゃいいね!!小さな町だからのんびりできるし、観光客ほとんどいないし、ご飯も美味しいし冷えたビールも飲めるし宿のみんなはめっちゃ信頼できるし、最高だよ!!」



「ねー!!見所もちょこちょこあるみたいだし、ここでしばらくゆっくりしよ!!やったー!!ゆっくりしよー!!」



「ゆっくりしよー!!帰ってビール飲むぞー!!」




こりゃいい町見つけたぞ。しばらくイリンガ滞在決定だ。


タンザニア楽しくなりそうだー!!










~~~~~~~~~~~~~~~~~~


イギリスのホテルをアゴダでとってくださったかたがいました!!


ああ!今思えばイギリスのスーパーの品揃え尋常じゃなかったなぁ。なんでも、マジでなんでも買えたもんなぁ。

アフリカでは野菜もお肉も買うの一苦労。でもそれが楽しいけど。


どうもありがとうございます!!

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