スポンサーリンク トロールがいなくなったあの日 2016/12/11 2016/09/07~オーストリア②, ■彼女と世界二周目■ 2016年11月26日(土曜日)【オーストリア】 バードイシュル ~ シュタイアー朝起きると、よっしゃ雨降ってない!!霧は濃いけどこれなら歌える!!今日の気温は5℃!!うん全然大丈夫!!暖かいほう!!通りに行くと土曜日でしかもクリスマスマーケットが始まったところだから人通り半端ない!!!うおおおおお!!!!気合い入る!!!!そう、今日が長かった今回のシェンゲン旅、最後の路上になる。明日シュピッツに帰ってイングリッドおばちゃんとレイモンドパパにお礼を言いに行き、それから最後の町、ウィーンへと向かう。残り数日だけど毎日予定が入っているのでおそらく路上をする時間はないはず。今日、このバードイシュルが最後の路上だ。北欧、中欧で6ヶ月間歌いまくった最後の路上。今日のこのコンディションならば過去最高記録も狙える予感がする。今までの最高は6万円。果たしてあの浜松の夜を超えることができるか。お昼前にいつものハンバーガー屋さんに行って、朝昼ごはん。カンちゃんはハンバーガーで俺はボスナっていう食べ物。太いソーセージをパンで挟んだもので、見た目ホットドッグがパワーアップしたような感じだ。だいたいどこのファストフード店にもあるのでずっと気になっていたんだよな。うん、このお店だったらなんでも美味しいわ。ソーセージがジューシー!!このハンバーガー屋さんの位置からはちょうど向こうにホコ天の通りが見えるんだけど、まぁとにかく人が多くてうずいてうずいてしょうがない。こんな最高のシチュエーション、裸のゆまちゃんが誘惑してるようなもんだ。早くパイを揉みに行かないと!!じゃなくて歌いに行かないと!!でもここは我慢。ひたすら我慢。はやる心を落ち着かせてゆっくりボスナを食べる。そう、このバードイシュルの路上ルールは1日5時間まで。どの時間帯に当てるかがとても大事になってくる。経験上、このバードイシュルの土曜日は15時からが熱い。だとしたら12時スタートで17時までというのが、俺がはじき出した完璧な時間帯だ。うううー、我慢できんー。合コン後のゆまちゃんが目の前で泥酔してフラフラ歩いてるというのに。もうここは紳士を装って大丈夫?家まで送っていくよ?って行ってカラオケに行く他の合コンメンバーたちの目につかないように忍者のごとく姿を消し、ゆまちゃんのアパートまで送っていき、ベッドに寝かしてあげて、こうしたほうが楽だからねーってブラを外して、お水を飲ませてあげるふりをしてちょっと後ろから抱きかかえて、さてじゃあ俺は帰るねって女の子も期待してしまったところであっさり帰ろうとしたらゆまちゃんが手を握ってきて行かないでーって言われて即イク!!!!着衣でイクーーーーー!!!!!既婚者です。というわけで12時きっかり、警察署でライセンスをゲットして路上スタートぶちかまし!!!昨日はいたジプシーの犬連れアコーディオン弾きたちが今日はいない!!!!メインストリートを完全に独り占め!!!!町の人の反応もバッチリ!!!!!もう残念ながら喉の調子が絶好調すぎてゆまちゃん好き!!!4時間みっちり。後半で雨がパラついてきたけど、軒下に入りながら歌い続ける。夜が来てクリスマスツリーの明かりが灯り始めても、人通りは減ることなく賑わっている。町に歌を響かせる。ギターを丁寧に弾いて、言葉を乗せる。音が反響して、とてもいい雰囲気だ。いやぁ、今日の俺、歌うまかったな。あがりは4時間で555ユーロ。67000円。ついに浜松を超えたぞ。この旅中にいつか10万を出してみたいな。バードイシュルを出て車を走らせた。明日シュピッツに帰るので、少しだけでも近づいておこうと、途中にあるシュタイアーまでやってきた。「フミ君、最後の路上お疲れ様でした!!いつも稼いでくれてありがとうー!!」最後の路上お疲れ様でしたということで、2人の大好きな中華料理を食べに行った。シュタイアーにある中華料理屋さんが前から気になっていたんだよな。店員さんたちも俺のことを知ってくれていて、あなた歌グッドグッドー!と笑顔で言ってくれ、一杯梅酒をサービスしてくれた。「美味しいね。」「うん、美味しいね。美味しいの食べられて幸せだなぁ。」カンちゃんとパクパクご飯を食べ、それから町を散歩した。このシュタイアーの古い町並みもイルミネーションで飾り付けられており、キラキラ輝いていた。石畳が照らされ、夜の向こうから寒そうなカップルが寄り添って歩いてくる。町のショーウィンドウもクリスマス一色だ。星やハートのモチーフがたくさん並んでいる。綺麗だなぁ。広場の真ん中にクリスマスマーケットが出ており、たくさんの人がホットワインを飲みながらガヤガヤと賑わっていた。そういえば土曜日だもんな。酸っぱい匂いに唾液が出てくる。それにつられて俺たちも1杯ホットワインを頼んだ。マグカップにたっぷり入れられて出てくる赤ワインからはシナモンの匂いのする湯気がたちのぼり、教会の塔が光る夜空に消えていく。寒い野外なのにみんな楽しそうにマグカップを傾けており、笑い声があちこちからおこっていた。「あー、楽しいなぁ。贅沢だなぁ。ヨーロッパ満喫してるねぇ。幸せだなー。」カンちゃんが嬉しそうにそう言う。2人とも自由で、たくさんの愛する人に囲まれていて、健康で、お金もある程度はある。前の旅みたいにボロを着て、毎日節約して、橋の下で野宿する旅も素敵なもの。あれはあれで最高に刺激的で、気高い旅ができた。でも今回みたいにそんなに節約もせずに、やりたいことをやり、行きたいところに行き、食べたいものを食べて毎日を過ごしていると、ヨーロッパの当たり前の生活にどんどん馴染んでいく感覚になる。人々の生活レベルの視点が生まれてくる。暮らすように旅する。今回はもっと現地に溶け込む旅をしようと日本を出てきたけど、今のこの状態はまさにそうだ。暮らすように旅しよう。「楽しいね。あー、こんな生き方が理想だったなぁ。我慢しなくていいんだなぁ。」隣のカンちゃんを見ていると、ふと、前のトロールのことを思い出した。あの日、マレーシアで消えてしまった相棒のトロール。今思うと、あの消えてしまった日はカンちゃんと出会った次の日だった。ずっと1人ぼっちで旅してきて、カンちゃんと出会ったタイミングでトロールがいなくなってしまうなんて、なんかちょっとハッとさせられてしまう。あの時、俺は違う彼女がいた。だから別にクアラルンプールでは、カンちゃんが運命の人だとは思わなかった。でも、今俺はこうしてカンちゃんと結婚した。あの時トロールは、もう俺がいなくてもいいやろ、と去っていったんじゃないかな。きっとそうだ。トロールがいなくなったときはしばらく立ち直れないほど悲しみに打ちひしがれたけど、そう考えるとなんだかスッキリした気がした。俺はこんなに可愛い子をゲットしたんだもんな。まぁ、またしばらくしてトロール戻ってきたけどね。ホットワインであたたまって、2人寄り添って町を歩いた。