スポンサーリンク アルプスにはためくタルチョ 2016/11/2 2016/09/07~オーストリア②, ■彼女と世界二周目■ 2016年10月22日(土曜日)【オーストリア】 フェルトキルヒオーストリアではいつも朝ごはんに悩む。9時くらいに町に出てきても開いてるお店はパン屋さんくらいのもんで、パンとコーヒーで優雅にやるしかない。ケバブでガッツリというわけにはいかない。なのでどうしてもマクドナルドの朝マックに足が向いてしまうんだけど、今日めっちゃいい朝ごはん発見。町中にある大きなスーパーマーケット、インタースパーの中にイートインコーナーがあるんだけど、そこのブレックファーストがマジで美味しかった。チーズ、ハム、サラミ、ベーコン、野菜、ゆで卵、さらにサーモンの切り身まで。様々な具材がグラム売りされており、それをプレートによそっていつものオーストリアの丸パンと合わせてこれで3ユーロ。安い!!丸パンは真ん中から半分に切り、そこにバターを塗って色んな具材を乗せてかじりつくとマジでビックリするほど美味しい。香ばしくてパリパリしたこのパンは本当に何個でもいけそうだ。今まで食べたパンの中でもトップレベルにお気に入り。オーストリアに来たなら絶対オススメ。めっちゃ安いし。というわけで朝から大満足のご飯をカプチーノで流し込んで中心部にやってくると、うおおおおおお!!!人すげぇええええええ!!!!いつものメインストリートにマーケットが出ており、ズラリと並ぶ色んなお店!!!野菜、果物、お魚、お肉、パン、お花、もうたくさん!!道を埋めつくさんばかりの人がうじゃうじゃ歩いており、賑やかで、活気にあふれ、まさにこれがヨーロッパのサンデーマーケットだ!!やべぇ!!めっちゃ焦る!!早く歌わないといけないんだけど、店が通りを埋め尽くしててなかなか隙間がなくてやる場所が見つからん!!しかもいつもはいないのに今日の人出を狙って3組もバスカーが出てきてるし!!!ギターとカホンのブルースコンビ、アコーディオンのおっちゃん、それとトランペット吹き!!みんな音楽系!!!ぐおおお!!みんな朝から元気!!というわけで俺も急いで歩き回り、なんとか八百屋さんと魚屋さんの隙間にスペースを見つけて、そこで演奏開始!!!よし!!こんな朝っぱらから声出ない!!それでも根性で歌っているとすぐに人だかりができて拍手が起こる。袋をたくさん抱えたお買い物中の人々が立ち止ってくれ、どんどんチップが入っていく。よっしゃー!!マーケットやっぱりすげぇ!!というところで警察登場。「ハーイ、パフォーマンスのライセンスは持ってるかい?」「ぬひょう!!!持ってないでございます!!」「そうか、それなら警察署で取れるからね。そしてこのマーケットエリアはパフォーマンス全面禁止だからね。」「あ!マジですんません!!2秒で移動してライセンス取りに行きます!!」「うん、でも今日はもう3組パフォーマーいるから充分かな。」「ウケるー。それウケるー。」ぎゃあああああああああいいいいいいやああああああいあああいああいい!!!!!!1番稼げる土曜日に死亡宣告ううううううううううう!!!!!!!!ど、どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする…………………そ、そうだ!!よし!!このお巡りさんにゆまちゃんの厳選動画集をコッソリ渡してなんとかしてもらうしかない!!!「そ、そうですか………………終わりですね…………わかりました…………とりあえずお巡りさんのアイフォーンのエアドロップをオンにしてもらっていいですか?僕からプレゼントがありますので。」「しょうがないなぁ。よし、今からオフィスに電話しといてあげるからライセンス取りに行ってきな。ここのマーケットは13時に終わるから、それからならこのメインストリートで歌っていいから。」「よっしゃああああああああ!!!もうそんなお巡りさんには篠田あゆみも一緒にどうぞ!!」というわけでAVの話なんか1ミリもしないで無事ライセンスゲット。無料。ただこの町のライセンスは時間と場所の指定系だ。何時から何時の間はこの通りのこの場所、何時から何時の間はこの店の前、といった具合に振り分けられる。他のパフォーマーとかぶらないように警察側でプログラムを組んでくれているんだろう。あとはアンプを使わないとか6人以上のグループはダメとか1時間で場所を変えるとか、そんなところ。あ、あと1番痛いのが、12時から14時の間はすべてのパフォーマンスをストップしなければいけないというルール。最も稼げる時間帯に止めないといけないのは相当痛い。でもルールだからな。というわけで午前はマーケットの中で1時間、ライセンスをとってからマーケットの外で1時間。それから2時間のお昼休憩を挟んで、14時前にメインストリートに行くとマーケットもほとんど終わって後片付けをしているところだった。いつもの目の前のカフェにはマーケット帰りの人たちで溢れており、どこも満席の賑わいだ。そして天気も最高にいい!!あー、やっといつもの感じでゆっくり歌えるぞ。そこからは本当にいい時間だった。たくさんの人が話しかけてくれ、カフェから拍手が起こり、子供たちが踊ってくれる。おとといシャワーを貸してくれたハルバルトさんも通りかかって、またハグをしてくれた。もう本当フェルトキルヒ大好き。もはや完璧だわ。「ハーイ、僕は日本に150回以上行ったことがあるんだよ。仕事でね、日本中に行ったことがある。奥さんはネパール人だけど日本で知り合ったから2人とも日本のことが大好きなんだよ。」カフェでずっと演奏を聞いてくれていたおじさんがやってきてそう声をかけてくれた。ピシッとした身なりで、どこか大物な感じが漂っているおじさん。後から奥さんも見に来てくれたんだけど、まぁ上品を絵に描いたような素敵な人で、日本語もペラペラだった。「よかったら路上が終わってからウチに遊びに来ないかい?日本食をご馳走するよ。長くヨーロッパにいたら味噌汁とか恋しんじゃないかい?」「うわああああああああ!!!!味噌汁うううううう!!!」「じゃあ、僕は先に家に帰って食事の準備をしてるから終わったら遊びに来なよ。」おいおい、なんてこった。オーストリアでオーストリア人に日本人が日本食をお呼ばれするってどういう状況だ?出会いがどめどない!!オーストリアすごすぎる!!それからも少し歌っていたけど喉が疲れてきたので今日は4時間で終了。今日のあがりは437ユーロと33.5スイスフラン。53000円。スイスフランが入るなぁ。これどうしたらいいだろ?国境が近いこの辺だったらお店でも使えるかな?路上を終えたらネパール人の奥さんがやっているお店に向かった。ホコ天の通りにある奥さんのお店はカシミアの専門店で、服やアクセサリーに混じってネパールの本なんかが置いてあった。ネパールまだ行ったことないんだよなぁ。今回行けるかなぁ。それからお宅に案内していただいたんだけど、まぁ素敵なアパートだった。木造の階段、古めかしい通路、室内の天井には梁がむき出しになっている。いかにも古民家といった感じなんだけど、綺麗に改装されており、これぞヨーロッパといった感じのオシャレなアパートだ。「この建物はね、1280年に建てられたものなんだよ。地下にはワインセラーもあるんだよ。エドジダイより古いのさ!」いやいやいや、エドジダイどころかカマクラバクフですよ!!!そんな建物が日本にあったらソッコーで国宝か重要文化財になるというのに、このヨーロッパでは普通の住居として人が暮らしてるんだからマジでハンパじゃない。ご飯の前にシャワー浴びたらいいよと、屋上にあるシャワールームを貸していただいたんだけど、その屋上からの眺めが最高に綺麗だった。山々に囲まれたこのフェルトキルヒの町。赤いくすんだ屋根が絨毯のように広がり、山の紅葉とすごくマッチしている。教会の塔がいくつもそそり立っているんだけど、屋根の一角に見覚えのあるものが飾られていてテンションが上がった。パタパタとはためいているのはあのタルチョだった。チベット仏教の象徴である色とりどりの旗が連なったこのタルチョ。ブワッと記憶がよみがえる。中国の雲南からバスを乗り継いで東チベットへ向かったあの日々。3000メートルをゆうに超える高地には木々がなく、どこまでも草原の山々が広がっていた。空が近く、真っ青で、何もない草原の緑だけがとても鮮やかだった。そんな草原に散らばっていたのがタルチョだった。膨大な数のタルチョが草原の山々に張り巡らされ、まるで蜘蛛の巣のように大地を覆っていた。どこまでも神秘的で現実味のない光景。それが今こんなところで見られるなんて、とても嬉しかった。アルプスから吹き下ろす風が旗を揺らし、タルチョに書かれた仏教の教えを遠い頂へと運んでいっていた。「ウチの主人は日本食が得意でね!お寿司なんかも作っちゃうのよ!!」ご飯、味噌汁、うどん、他にも炒め物やたくさんの料理を出してくださった旦那さん。さらにはのり玉とかカツオなんかのフリカケ、果ては卵かけご飯なんかしたりとめっちゃ懐かしい日本のご飯を堪能させてもらった。器も日本のものだし、もちろん箸もある。食後にはお酒が出てきたんだけど、なんとそれが日本酒!!!しかも純米と純吟!!!しょ、焼酎までえええええ!!!!!すげすぎる!!!!!!あまりのラインナップに失神しかけながらみんなで乾杯した。「明日はブレゲンツに行くのかい?だったら湖沿いの遊歩道が狙い目だ。観光地だから日曜日はたくさんの人が遊歩道を歩くはずだ。」旦那さんのマルコスさんもまたミュージシャンとしてバンドを持っている人。昔、道頓堀のひっかけ橋の上で路上ライブしたことがあるという。一体何者ですか?そんなマルコスさんが言うには、明日俺たちが向かうブレゲンツは湖沿いの美しい町で、たくさんの観光客が訪れる場所なんだそう。いつもは日曜日はお休みの日だけど、明日はブレゲンツの遊歩道で歌って月曜日に休んだほうが得策だぜ!と言う。ブレゲンツが面しているボーデン湖はなにやらヨーロッパで1番大きな湖とのこと。そういえばこの湖、覚えてる…………この湖のドイツ側にコンスタンツという町があって、4年前そこで歌ったことがある。確かに湖沿いの綺麗な町だった。そしてその日、路上を終えて徒歩でスイスへの国境に向かい、あの忌まわしい事件が起きた……………スイス国境全裸事件……………いやぁ…………あれは辛かった…………全裸て……………あの湖の反対側の町に行くんだなぁ。「そしてナオ、君はフミが歌ってる時にパソコンで仕事をしてるのもいいけど、何かマラカスなんかの簡単な楽器を持っておいて、子供が来た時に渡して参加させたりなんかしたらウケるんじゃないか?人だかりはさらなる人だかりを呼ぶからね。なるべく目立つことが重要だよ。」うーん、それは………遠慮しとこうかな。町の人により楽しんでもらうのは大切なことだけど、そこまでいくと歌のお兄さんだ。小さな子供を集めてみんなで陽気に楽しくワーイ!ってのは俺のスタイルではない。でも旦那さんの言葉には経験からにじみ出る説得力がある。人だかりが人だかりを呼ぶ。奇をてらったやり方なら人だかりを集めることはきっとそんなに難しくはない。アイデア次第だ。でもその集まった人だかりをすぐにバラけさせずに、膨れ上がらせるには間違いなく実力が必要。本当に上手い人は演奏だけでものすごい人だかり作るもんなぁ。マルコスさん、たくさんの金言をありがとうございます!!もっとレベル上げないとなぁ。クールで理論的なマルコスさん、空気を読んで周りへの気遣いを絶やさない素敵な奥さん、お2人に何度もお礼を言ってアパートを出た。美味しい日本食、シャワーをいただき、そしてたくさんのお話をして、本当に嬉しかった。やれることはきっともっとある。もっと磨いて、練習して、創造することを忘れず、やれることを怠らずにやろう。もちろんカンちゃんを大事にすることも忘れずに。まぁそれは大丈夫かな。いや、その油断がヤバイか。俺の周りにいる尊敬すべき素敵な人たちのような人間に、いつかなりたいな。