スポンサーリンク 厳しいヨーロッパの冬の始まり 2016/10/13 2016/09/07~オーストリア②, ■彼女と世界二周目■ 2016年10月2日(日曜日)【オーストリア】 グムンデン ~ バードイシュルこの配管、3.5ユーロ。400円。安すぎるううううううううう!!!!!安すぎ!!!!そんでデカすぎ!!!2人で食べても多いくらい超巨大なのに破格すぎる値段!!!!普通ケバブの値段の相場はサンドイッチスタイルのドネルが3.5ユーロ、ラップスタイルのドゥルムが4ユーロ。どちらも1人サイズだ。2人で食べたら900円くらいする。それがこれなら1人200円。昨日シュタイアーの交換留学生のみんなに教えてもらったんだけど、シュタイアーにあるコロッセオっていうケバブ屋さん。マジで値段設定とサイズがどう考えてもおかしい。しかもコスパだけじゃない。包む生地をその場でこねて焼いてくれるのでモッチモチ。味も濃い目で、今まで食べたケバブで3本指に入るクオリティ。なのにこの値段と量。中華料理だったらドイツのビスマルにあったボボさんところが半端ない量だった。ケバブだったらこのシュタイアーのコロッセオ。オムライスだったら上野毛の吉兆。あれはキツかった…………デカ盛りはバッグパッカーの味方!!というわけで昨日は配管食べて車を走らせ、夜の山の中を駆け抜けて次の目的地までの途中で寝た。そして朝、目を覚まさせたのは太陽の光ではなくて雨の音だった。バタバタバタという雨が車体を叩く音が車の中に響いている。そして寒い。寝袋の中にいるのに首元が冷たくてもぞもぞ動いてしまう。しばらくして寝袋から出て車の外に出ると、ブルルっと震えてしまった。こいつは寒い。周りに連なる山々は白く煙っており、目の前に広がる湖の湖面は雨に乱されて静かに波紋をつけている。ここはグムンデンという湖沿いの町。ここに来たのはレンタカー旅を始めてまだ3日目とかそんなもんだった。あの日も同じく雨だったのを思い出す。まだヨーロッパの車旅の仕方を何にも知らなかったよなぁ。あれから3ヶ月。アルプスを抜け、ドイツを突っ切り、北欧の大自然の中を縫って北極圏まで走りまくった。今はもう田舎でも都会でもどこでも走る自信があるし交通ルールもわかっているけど、最初のころはミラーは擦るわ、駐車ルールがわからなくて罰金とられるわ、色々苦戦した。ヨーロッパを車で回るという案をトルコでアユムさんに教えてもらった時はめちゃくちゃ興奮したもんだ。ヒッチハイクと野宿で回るつもりだったこのヨーロッパを車で回れる?好きなところに、好きな時に、好きなだけ自由に行ける。どんな田舎の森の中でも、山奥の村にも、地図を見て気になるところがあったら時刻表を睨みつける必要もなく、ただハンドルをきればいいだけ。ヒッチハイクをしてて、ドライバーさんと会話しながら窓の外に過ぎ去る山の上の古城を眺めて、あそこに行ってみたいなぁ、っていつも思ってた。それがレンタカーなら行き放題だ。チケットの予約もいらない、重い荷物を引きずって何キロも歩かなくていい、雨に濡れてビショビショの寝袋にくるまらなくてもいい。走り疲れたら車を止めて寝ればいいだけだ。雨になんかもちろん濡れないし、冷房も暖房もついている。日本ではずっと車中泊の旅をしていたので、どんな風に車の中を作れば快適に寝られるかも充分わかっている。マットを敷いて寝袋をかぶれば、墓場のベンチで寝てたあの頃がアホみたいだ。ていうか墓場のベンチて……………そしてなにより値段がそんなに高くないのが決め手だった。3ヶ月レンタカーしてわずかに20万くらい。ガソリン代や各町でのパーキング代なんかはかかってくるけど、それでも毎日のホテルや電車・バス代を考えたらはるかに割安だ。それに重い荷物を常に車に置いておけるのでいつも手ぶらで町歩きができる。これがある程度の先進国だったら世界中どこでもレンタカーできるんだからもはや、海外を旅する=バッグパック、という概念は跡形もなく吹っ飛ぶ。物価の高い先進国ではレンタカーで快適に、そして経済的に旅をする。途上国に行けば物価が安いのでホテルに泊まりながら回ればいい。マジで現代の世界は予想以上に様々なシステムが快適に作り上げられている。下手したら日本で暮らしている以上に。アユムさんほどの、職場は世界中のカフェです、っていうボーダレスビジネスマンになったら、どれほどこのグローバルなシステムを活用しながら快適に生きてることか。本当、アフィリエイトも含めて今の旅はアユムさんがいなかったら成り立っていない。今ごろ雨に震えてカンちゃんともケンカしてたかもしれない。アユムさんにトルコで会えたことはマジで大きな転機だったなぁ。とにかく、レンタカー旅最高ってこと。マジでオススメします。でも車上荒らしとかには本当に気をつけて。ブルルっと震えて車に戻った。気温は13°Cくらいか。ここ1ヶ月くらいずーっと暑いくらいの最高の天気が続いていたんだけど、誰もが日曜からガタッと天気が崩れると言っていた。夏ももう終わりだよと。そして天気予報通り、見事に雨が降り出して気温がグッと下がった。茶色く色づいていた木々の葉も、この雨で地面に散っている。これからヨーロッパの本格的な冬がやってくる。車の中の防寒対策も考えていかないといけない。そして路上も。寒くて指がかじかんで動かなくて、体が震えて声に勝手にビブラートがかかるあのキツい季節。冬場の路上はマジでキツい。でもずーっとそれでやってきたんだ。マイナス15°C以上でも、雪が頭に降りかかりながらでも歌ってたんだからなんとかやっていけるはず。でもカンちゃんは大丈夫かなぁ。あの過酷な冬の路上に耐えられるかどうか。頑張ってこの冬を乗り切らないと。「うーん……寝袋から出たくないけど…………そろそろお化粧しやんとー…………」静寂の湖に浮いたボートも、サマーシーズンが終わって役目を終えたようにロープに繋がれていた。ドイツとの国境の町、ザルツブルクから南に下ったところに深い山々に囲まれたエリアがあり、その中にいくつもの美しい湖が散らばっている。それぞれの湖畔には小さくて可愛らしい町や村が隠れるように散らばっているんだけど、このグムンデンもそのひとつ。昔は道もちゃんと整備されていなかっただろうから、湖畔の集落の主な交通手段は船だったんだろう。隔絶されたそれぞれの村はどこも本当に小ぢんまりとしていて、どこか秘密めいていて、思わず探検してみたくなる。グムンデンは比較的大きな町なんだけど、それでもそんな湖畔のロマンが漂う美しい場所だ。のんびり湖沿いを走っていると、左手に綺麗な風景が見えて車を止めた。湖の真ん中にポツリと大きな城か教会らしきものが浮かんでいて、曇天の下、そびえる山々を借景にしてまさにファンタジーの世界だ。ノルウェーに行けばこんな景色はいくらでもあった。スケールも向こうのほうが格段に上だ。でもあのはるか遠い北欧の果てまで行かなくても、オーストリアならこの景色が日帰りで堪能できる。湖に浮かぶお城には橋を渡って行くことができ、雨の中、傘をさしてカンちゃんと少し観光をし、また車を走らせた。今回の目的地はあのハルシュタット。湖畔の美しい町として超有名な世界遺産だ。この湖がいくつも散らばるエリアの奥地にあり、結構遠く、前回の世界一周でもパスしていた場所なのでずっと楽しみにしていた。これだけ有名な場所なんだから一体どんな美しい景色が待っているのか楽しみにしていたんだけど、なんせ今日から天気がガタ崩れだ。どうせなら天気のいい時に行きたかったけど、まぁこればっかりはしょうがない。今週いっぱいはこの山の中にいる予定なので、どこかのタイミングで観光しに行くとしよう。雨にけむる幽玄な湖と断崖が織りなす景色の中、車を走らせていくと、やがて少し大きめの町に入ってきた。バードイシュルという町だ。この辺りでは1番大きな町のようで、観光の拠点になる場所なのかな。でもこの町自体もなかなかあなどれない。山々に囲まれ、周りを囲うようにぐるりと川が流れ、小ぢんまりとした建物が密集している様子は日本の山奥の温泉街みたいだ。どれも可愛らしい木造の建物で、面白いのはどの民家も屋根の軒が大きくせり出しているところ。きっとここは豪雪地帯なんだろうな。家屋の作りが雪国のそれで、確かに気温も他のエリアに比べてかなり低い。とりあえず町歩きでもしようと川沿いの駐車スペースに車を止め、傘をさして散策に出かけた。一応ホコ天になってるメインストリートもあり、ささやかながらお店も並んでおり、中心には大きな教会もある。通りの向こうには白くかすむ山が迫っており、山里の風情がすごくノスタルジックだ。そうした自然の中に抱かれた町並みの美しさもあって、どうやらなかなかの観光地らしく、たくさんの観光客が歩いていた。日曜日なのでほぼ全てのお店が閉まっており寂しげな雰囲気なんだけど、通りは結構な数のアウトドアファッションの人々が歩いている。アジア人の姿も多くて、みんなこの町からのハルシュタットという流れで観光して回っているのかな。変なライオンがいっぱいいる。お、あんなところにも。電話ボックスが古本置き場というセンス。イカしてるなぁ。それにしても…………ついさっきから雨が止んでいる。今日は日曜日。路上はお休みの日。でもこの綺麗で静かなホコ天。そしてこの観光客の数……………「神田さん、やっちゃいます?」「やっちゃいます?でも日曜日だからお休みしなくていいの?」「この状況が目の前にあるんだったら歌わないのは犯罪!!よし!!やろう!!」ストリートパフォーマーはサラリーマンじゃなくて自営業だ。休みはいつでも選べるし、働いたら働いただけ収入がある。その代わり雨の3日も降れば芸人殺し。今やれるんなら今やるぞ。というわけでギターをとってきて、すぐにホコ天の真ん中あたりで路上を開始した。人通りはまぁまぁ。通りのお店は全て閉まっているので場所は選びたい放題だ。すごく静かなので音がよく響いて気持ちよく、すぐにチップが入り始める。アウトドアファッションの観光客、カラフルな中国人観光客がほとんどなんだけど、その中に面白い格好をしている人たちがいる。オーストリアの伝統衣装だ。緑色をメインカラーにして、スウェードの半ズボン、ボタンダウンのジャケット、それに羽根つきの帽子をかぶっており、スナフキンみたいな服装だ。ガタイのいいおじちゃんもそんな可愛い格好をしているし、渋い爺ちゃんが緑色のジャケットを羽織っているところなんて、マジで吟遊詩人って感じだ。そういえば町を歩いている時に気づいたけど、どこの服屋さんにもこの伝統衣装が1番前に飾られていた。どうやらこの町は、この伝統衣装が日常的に着られているような昔ながらの慣習が残った山里のようだ。とにかく渋い!!そこに馬車までやってきた!!鞭を片手に手綱をひいている御者さんが俺の前を通る時に笑顔で手を上げてくれる。うーん、こりゃ本当に昔ながらの町だなぁ。あまりに面白いシチュエーションにテンション上がりながら演奏していたんだけど、30分くらいして雨が降り出した。なんとか軒下に入って演奏を続けるが、しぶきもかかるし、さすがに寒くなってきて1時間で切り上げた。あがりは79ユーロ。9100円。うおお…………この町めっちゃ稼げるやん…………雨さえ降らなければだけど………………「お風呂に入ってあったまりたいね………………」「うううう………寒いいいい…………温泉入りたいいいいいい……………」そんなことを話しながら車に戻ってるところだった。駅前の通りに何かの建物を見つけた。これなんだ………………なんか温泉街の施設みたいな雰囲気を醸し出して………………こ、これは!!!!!!「神田さん!!これ温泉らしいよ!!!」「温泉だあああああああああああ!!!!卓球するううううううう!!!!」山奥の温泉街の雰囲気を感じたのはどうやら間違いではなかったようで、実際このバードイシュルはオーストリア有数の名泉として知られている町だった。「ああああああああああああ!!!!温泉入ってお肌すべすべなるうううううう!!!!」「熱燗飲みながら温泉入って浴衣の君はススキのかんざしで俳句ひねるうううううううううう!!!!!!君を抱く気にもなれないいいいいいいいい!!!!」大興奮で建物に飛び込んで受付カウンターに一直線!!!!温泉やったああああああああああ!!!!!入浴料、4時間で17.8ユーロ。2050円。無言で建物を出る敗者2人。高すぎるよ………………2人で4000円て………………この冷え切った心と体をどうしてくれるんだよ……………日本の温泉は高くても1000円くらいだぞ!!!共同浴場は200円とかだぞ!!ちくしょう!!!この建物、中はかなり広い施設になっていてスーパー銭湯みたいな感じみたい。ネットで調べてみたら、町の中でこの施設だけが天然温泉をひくことが許可されているんだそう。バードイシュルとその周辺はスキー場がたくさんあるウィンタースポーツの人気エリアなので、冬場にスキーで冷えた人たちがみんなこの温泉に入りに来るんだろうなぁ。いいなぁ……………いいなぁ!!!!!!スキー場と温泉ってなんてエロい組み合わせなんだ!!!どうやらこのバードイシュル、スパリゾートと美しい大自然の景観で、かつてのオーストリアの皇帝フランツヨーゼフ1世さんが別邸を持っていたような格式のある町でもあるらしく、フランツさんはその別邸で第一次大戦の宣戦の署名をしたという歴史もあるという。なんだか深い味わいのある町だなぁ。これはしばらくはこのバードイシュルを拠点にしてみるかな。雨でどうしようもなくて、今日はさっさと寝床を探してしまおうと、町から離れた田舎道を走った。草原が広がり、牛がこっちを見ているのどかな集落が雨にけむっている。やがて森の奥に入っていき、荒れた道が終わったところに小さな湖があった。人里離れた静寂の湖。そのわきに何かの建物があった。どうやらホテルか何かのようだけど、シーズンオフで営業しておらず、閉ざされていた。ううう……寒い。雨がひどくて車の外に出たくない。荷物を入れ替えないと寝床が作れないのでやるしかないんだけど、うーん、寒くて嫌だ。これから厳しいヨーロッパの冬が始まる。まだまだこんなもんじゃない。朝起きたらガラスに雪が積もっていて車内が真っ暗なんてことも普通だ。「よし!やろうか!!」「うん!!」意を決して車を飛び出し、暗闇の中、2人でバタバタと荷物を入れ替えて寝床を作った。作り終えてすぐに車内に飛び込むと、服も髪の毛も、結構雨で濡れてしまっていた。