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魅力的な人

2016年10月1日(土曜日)
【オーストリア】 シュタイアー






なで肩ーズ。





シュタイアーの町の入り口にいる5人組。


いやぁ、なで肩だなぁ。



いかり肩の人は仲間に入れてもらえないんだろうねーってカンちゃんと話しながら彼らの横を通って町の広場にやってきた。









今日は土曜日。





朝9時の広場ではマーケットが開かれており、野菜や果物、パン、サラミ、ジャムなど、様々な屋台が並んで人々がお買い物をしている。

まだ太陽が昇りきっておらず、斜めからの日差しが建物の上の部分を照らしている。











日本だったら金曜日土曜日は深夜が路上の時間になるので、土曜日にこんなに朝早くギターを持って出歩くことなんてまずない。



だいたい日本にいるときはそうだ。

日の出を見るっていったら、飲みにいって騒いで夜を越した時であって、早起きした朝ではない。


ヨーロッパでこうして路上旅をしていると、規則正しい生活が送れる。













オーストリア独特の丸いパンとカプチーノの朝食5ユーロ。570円。


吉野家の朝定食が恋しいなぁと思いながらバターを塗ってかじりつくと、フワッと香ばしい匂いが鼻をぬけた。


















朝から人通りの多いホコ天で早速路上を開始すると、ブブルーザの若オーナーのお兄さんがやってきて笑顔で何かをギターケースに置いた。


それはブブルーザのアイス引換券だった。

3枚も。しかもミディアムサイズ!!


いつも素敵な演奏ありがとうと言ってもらえて気合いが入る。


よーし、今日の路上終わりはチョコレートのミディアムだ。

頑張るぞ!!























今日は日本人デーだった。

だいたい日本人のかたってあんまり声をかけてくれないのが普通なんだけど、今日は通りかかった人全員が話しかけてくれたんじゃないかな。


前回の一周中に比べると全然違う。やっぱりカンちゃんがいると話しかけてもらいやすいのかな。




最初は出張で来てるというサラリーマン風のおじさん3人。

3人で30ユーロくらいサッと入れてくれて、頑張ってね!と去っていった。大人!!








次が交換留学でオーストリアにやってきているお兄さん。

ズバズバ物を言うお兄さんで、かなりプライドが高そうだ。

実際自分でもプライドあるんで、と言っていた。



印象に残ったのは、交換留学と語学留学を一緒にしてもらいたくない、ということ。


交換留学ってのは大学で行われている制度のひとつであって、キチンと高成績を出し、何倍もの倍率という狭き門をくぐった者だけが行くことができるもの。

いわば選ばれし者。

もちろん外国の大学で勉強をし、単位も発生する。



それを、大学を休学して外国に行って英語とかの勉強をしてる、お金を払えば誰でも行ける語学留学とは一緒にしてもらいたくないんですよね、って感じだ。




なるほどなー、そういうのってあるんだなぁ。

確かにそれは分かる。

めっちゃくちゃ頑張って努力して勝ち取ったものを、誰でもできることみたいに思われたくはないよな。


若い彼らなら、なおさらそこのところ一緒にされたくないってのもよく分かる。



俺は他の奴らとは違うんだ、って俺も10代の頃からずっと思ってたなぁ。



人がいっぱいこの道を歩いてるから、俺はこっち行く。

このやり方はもう誰かがやってるから、俺は違うやり方でやる。



っていう道の選び方を馬鹿らしいと言う人もいるけど、若い頃はそれくらい突っぱねてないといけないとも思う。












さらに今度は別の交換留学生のお兄さん2人。

あっ、と思ったらそのお兄さんの1人が、昨日一緒に風船を割ろうとして全然割れなくて苦戦した彼だった。


昨日はどうもーって挨拶してそれからしばらく立ち話してた。

恋愛沙汰はないですねぇ……と笑ってる2人が爽やかで仕方なかった。

いいなぁ、めっちゃ青春やん。










そして最後のかたがリンツに在住のおばさま。

オーストリア人の旦那さんと一緒だったんだけど、この人がもう尋常じゃないくらい上品なかたで、俺とカンちゃんが太陽の光でギャアアア!!と消滅するバンパイアみたいに思えるほど上品オーラ放ちまくってた。



「あらぁ、宮崎から。私は青森の出身なの。オーストリアはこれから寒くなりますからね、本当にお体には充分お気をつけて旅されてくださいね。」



腰が低くて、言葉遣いがウルトラ超綺麗で、日本人は行儀がいいという印象を一手に引き受けて体現してるおばさま。


いやぁ、日本人ってこんなに美しい国民なんだって気づかされるくらい素敵なおばさまだった。


30年以上オーストリアに住んでらっしゃるそうだけど、どんなに長く外国に住んでも日本人的な美しさを忘れないこのおばさま、すっごい素敵。










いやぁ、日本人っていいなぁ。


あんな世界の端っこ、東洋の端っこの小さな小さな島国。


ヨーロッパを世界の中心と考えたら、この世の果てみたいなアジアの終わりだ。


なのに超経済大国で、最先端のテクノロジーを持ち、なおかつ深い歴史と遺産を持ち、豊かな自然に恵まれ、美しい礼儀の文化を持つ。


そりゃ欧米人からしたら、めちゃくちゃロマンをかきたてられるだろうな。

日本って本当ブランド国だ。



ああああああああああああ!!!!!

居酒屋で焼き鳥食べたいいいいいいいいいいいい!!!!!!



今日のあがりは3時間半で358ユーロ。40800円。



ていうか暑い!!!!







そしてブブルーザのオーナーさん!ありがとうございました!!















路上を終えたら車に戻ってとあるところに向かった。


シュタイアーでやり残していたことがある。


というかどうしてもやりたいことがあった。


正確には会いたい人がいる。







先週末にシュタイアーで歌っている時のこと。


1人のアジア人のおじさんが立ち止まって歌を聴いてくれた。


歳は60を少し越えたくらいか。

白髪の髪の毛、アジア人の一般的な体格、革ジャンにジーパンという格好は飾らない服装なんだけど、どこかキマっている。

ヨーロッパにいる渋いおじさんといったファッションが、きっとこちらに在住の方なんだろうなとうかがわせた。




歌いながら人だかりの中でそのおじさんが妙に気になっていたんだけど、しばらくしてそのおじさんの奥さんらしき人が話しかけてきてくれた。


オーストリア人の奥さんだったんだけど、そのおじさんはやはり日本人で、それだけでも少し驚いた。

日本人の男性と欧米人の奥さんというカップルは結構珍しい。



「喉大丈夫かい?枯れてへんか?」



おじさんはバリバリの関西弁で、大阪のご出身。

なんとオーストリアに住んでもう40年という、人生の大半をヨーロッパで生きてきたかただった。


よかったらウチに遊びにこーへんか?と、この豪壮な石造りのヨーロッパのど真ん中でコテコテの大阪弁がすごく懐かしくて和んだんだけど、その時俺たちはティムさんのご家族にお世話になっていた。


残念に思いながらもお断りさせていただいた。


おじさんはニッコリ笑って、腹が減ったらいつでも連絡してきぃやとアドレスを書いた紙を渡してカッコよく去っていった。この腹が減ったら、っていう誘いかたがまた渋い。






タイミングが合わずにひとつの出会いを逃してしまったわけだけど、これから先もまだまだ出会いは続いていく。

今回は縁がなかったことにしよう、と思っていたんだけど…………



俺もカンちゃんもずっとあのおじさんのことが引っかかっていた。


親しみある関西弁ってのもあったかもしれんけど、なんだかおじさんには不思議な魅力があった。

飾らない出で立ち、話しかた、笑うときの目尻の下がりかたとか、妙にカッコよくて渋かった。


いつもは人見知りであまり積極的に飛び込んでいかないカンちゃんも、あのおじさんとまた会いたいなぁって言うくらい。


どんな人なのか経歴もないも知らないけど、ヨーロッパに40年、そしてなにか只者でないオーラを秘めている雰囲気。


あの魅力的な人にもう一度会ってお話してみたかった。





そして今俺たちはシュタイアー。このタイミングで戻ってきたんなら行かない手はない。


なんだかドキドキしながらアドレスの紙が示す場所に向かった。



















たどり着いたのはシュタイアーから5キロくらい離れた山に囲まれた田舎の集落だった。

周りを山に囲まれており、細い農道みたいな道が民家の間をのびている。


谷を挟んで反対側の山の斜面にもポツポツと民家が散らばっているのが見えた。





こんなのどかなところに住んでるのか…………とゆっくり進んでいくと、やがて1軒の家の前に着いた。


こりゃデカい………

緑に囲まれためっちゃ大きくて綺麗に手入れされたお家。どうやらここがそうらしい。





恐る恐る家に近づいていくと、庭で奥さんがガーデニングをしているところだった。


俺たちを見つけると、一瞬誰だ?という顔をしたけどすぐに先日のストリートミュージシャンだということに気づいて笑顔で手を振ってくれた。




「こんにちはー、すみません突然お邪魔してしまって。」



「いいのよいいのよ。さぁこっちに来て、彼は家の中にいるから。」




今回俺たちはアポを取ってない。

電話番号だけ教えていただいていたんだけど、電話をかけることができなかったので直接来てアポだけとってまた後日出直すことにしていた。




家にお邪魔すると、奥から服を白く染めた旦那さん、池田さんが出てきた。



「おー、よく来たねぇ、まぁ上がって上がって。」



「あ、突然お邪魔して申し訳ありません。電話することができなくて、またお時間ある時に来ようと思いまして。」



「そうかいそうかい。今夜は僕たちちょっと友達の家にお呼ばれしてもろうとってな、もうすぐ出なあかんねん。ほんで手ぶらで行くことはできへんから今うどん打っとったんやわ。うどんすき作って行こう思うてな。まぁテラスにでも座ろうか。」



あ、服や手が真っ白だったのはうどんを打ってたからか。

もうこの時点でめっちゃ興奮。お友達の家にお呼ばれされてうどんを打って行くという池田さん素敵すぎる。





でも家に上がらせていただいたらさらに興奮するものを見つけた。



「うわあああああ!!!すごいいいいい!!!」



「和室だあああああ!!!!」



広々とした洋風のお宅なんだけど、一室が畳の和室になっていた。

床板があってそこには壺なんかが置いてあり、まさに完全なる渋い日本の空間!!!!


さらに窓の外には縁側という、シンプルだけど海外では見ることができないものがあり、中庭には綺麗に手入れされた日本庭園が広がっていた。




完全に日本。

しかもめちゃくちゃクオリティの高い日本の文化がそこにあった。




「何年もかけて作っとるところなんや。まだふすまとかつけたいんやけどなかなか時間がなくてな。まぁ座って座って。いやぁ、来てくれてありがとうな。お茶でええか?」




お気づかいなく!と言ったんだけど、出てきたのは神の飲み物。


緑茶。







ぐおおおおおおおおおと!!!!?!!!!!!!青臭いのがたまらんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!


美味すぎる!!!!!

緑茶美味すぎる!!!!!!!





「ははは、ずっと旅しとったら懐かしいやろ?」




家着でラフな格好の池田さん。

お忙しいところだったけど、たくさんお話をしてくださった。




池田さんがこのオーストリアにやってきたのは40年前。

まだこのあたりの田舎には道もろくになく、さらに冷戦真っ只中でドイツが東西に分かれていた頃だ。

あまり国外に出ることもできず、ずっとここで暮らしてきたそう。


すげぇ……………ドイツが東西に分かれていた頃て……………



「仕事もなかなか見つからんころでなぁ。ずっとガラスのカットをやって生きてきたんやわ。」




なにやら切子細工のお仕事をしていたという池田さん。

日本の大きなガラスの会社から受注して、こちらで切子グラスを作っていたんだそう。



ちょっと見てみるか?と工房を見せてくださると、そこには見事な切子細工が並んでいた。


よくガラス工芸品屋さんで見る、ものすごく細かいカットの入った切子のグラス。

あれが棚に整然と並んでいて、横には使い込まれた機械や製作途中の素のガラスが置いてある。




「まだあの頃は仕事も多くてな。切子細工も人気があったんやけど、最近は流行りやなくなってな。ワシももう歳で目がよう見えへんからなかなか細かい作業でできへんのやわ。ははは。」



すげぇ………

池田さんはずっとこのオーストリアの地で切子細工を作る職人さんだったんだ。














それからも色んなお話をお聞きさせていただいたんだけど、お出かけ前のお忙しい時間にあんまり長居するわけにはいかないので早めにおいとますることにした。



「またこの辺りを通る時にゆっくり遊びにくればええ。前もって教えてくれたらゆっくりご飯食べようや。よっしゃ、うどん切るぞ。」




奥さんが、これ持っていきなさいとガーデンで取れたトマトを渡してくれ、今日はこれで車に戻った。


またオーストリアにいるうちにお邪魔させていただく約束をさせてもらったんだけど、やっぱり池田さんはものすごく魅力的な人だった。




なんだろう、飾りっ気がなくて親しみやすくて、渋くて、ヨーロッパに40年も住んでいるという経歴を若者に語るような人でもない。


すごく自然体で、一緒にいて心地よかった。




いやぁ、カッコいい人だなぁ。

俺別にファザコンでもないんだけど、カッコいい人生の先輩に出会えるともっとお話したくなる。


またお会いするのが楽しみ!!


池田さん、今日はお忙しい中、お時間割いていただきありがとうございました!!

















カンちゃんと素敵な人だったねー!!とシュタイアーに戻り、その足でとある場所に向かった。

やってきたのはティムさんのお家。


昨日泊まりにおいでと誘っていただいてお断りしたままだったし、町を出る前にメッセージだけ残しておきたかった。


ノートを切ってメッセージを書き、封筒に入れて家の前に置いといた。


封筒の中にはさっきブブルーザでもらったけど食べきれなかったアイスの引き換え券も挟んだ。


ティムさん、いつもありがとうございます。

無事に旅してまた会いにきます。


















シュタイアーを出て車を走らせる。

草原を抜け、夜が迫る山の谷間に入っていく。






会いたい人は世界中にたくさんいる。


昔お世話になった人も、まだ見ぬこれから出会う人も。


すべての人たちとの時間を完璧にすることはきっと出来ないけど、俺たちなりに彼らとの時間を大事にしよう。


そしてもっともっと人との心のやり取りを勉強して、優しい人間になろう。




あああ、でも余計なこと考えすぎないようにしなきゃ。

俺たちがその出会いを楽しむことが1番大事だよな。






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