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路上やってたらワニもらった

2016年9月24日(土曜日)
【オーストリア】 シュタイアー





目が覚めるとそこはお城の塔の中。





ここはオーストリアの小さな町、シュタイアーの丘の上に立つお城。




マジかとベッドの中で思うんだけど、向こうの部屋から聞こえてくる朝の支度の音がとても生活感がある。


昨日路上で歌っているところに声をかけてくださったご家族のお家に泊めていただいたんだけど、ゆうべは男たちの集まりに参加させてもらったりしてなかなかの急展開の1日だった。


ベッドの脇ですでにお化粧をしているカンちゃんは昨日に比べてだいぶ風邪の調子も良くなったようだ。
























のそのそとベッドから起き、支度をしてキッチンに行くと、エヴァママとティムさんがこれ以上ない爽やかな笑顔で迎えてくれた。


ゆうべはすぐにマンギャザリングに行って帰ってきた頃にはすでにママは寝ていたので、やっとゆっくり話す時間ができた。


といってもゆうべカンちゃんは女性たちだけで家で夜を過ごしたので色んなお話をしていたよう。



ママは日本が大好きで色んな日本の本を持っていたりして、可愛い娘さんのカトリーナはいつか世界一周をするのが夢だという活発でとても人懐こい女の子。


カンちゃんの話す旅のエピソードにワアアアオオ!!クーーール!!とすごく盛り上がったそうだ。



「ハーイフミ!ゆうべは楽しかった?」



「ゆうべフミがみんなの前でギターを弾いて演奏してくれてね、とても素晴らしい会になったんだよ。」




エヴァママ、ティムさん、カトリーナと息子のデイビッドたちの若夫婦もやってきてみんなで賑やかに朝の食卓を囲んだ。










窓の外から差し込む朝日が気持ち良くテーブルの上の食事を照らしている。


するとみんながお互いに手を握り合って輪を作りだした。


あ、映画でよく見るあれだ。

こんだけ海外で生活してるけど、何気にこの食事前のお祈りって初めての経験だったかもしれない。


俺たちも手を繋ぎ、そして目を閉じる。




「この食事、そしてフミ、ナオというゲストが来てくれたことに感謝します。アーメン。」



「アーメン。」



「アーメン。」



「さぁ、ボナペティ!!」



「うちの食事は朝ごはんが1番美味しいのよ。それにティムが早くに町のマーケットに行って新鮮なパンを買ってきてくれたからね!!いやー!日本大好きなのよー!!」




今日は土曜日。

朝市がすでに出ているようで、ティムさんがわざわざ朝ごはんの食材を買いに行っていたようだった。


なんて贅沢なんだろう。朝ごはんのパンを買いに朝の市場に出かけるなんて優雅だよなぁ。







オーストリアスタイルの食べ方は、丸いパンをナイフで手の上で半分にカット。


そこにバターを塗り、生のハムやベーコン、そしてチーズを乗せて食べる。



これがすごく美味しい!!



パンの優しい香りとモチモチ具合、ハムの塩気もバターの甘さもパーフェクトで、コーヒーを飲むと体の隅々が目を覚ましていくようだ。

こんなに美味しいパン、久しぶりに食べたな。



カンちゃんも美味しい!と驚いていて、2人でたくさんパンを切ってハムを乗せた。




「たくさん食べるんだよ。今日も歌うんだろうから元気をつけていかないとね!」



「ありがとうございます!でも日本ではこうやって最後のパンが残ったりしたら誰も最後のひとつには手をつけないで遠慮をしたりするんですよ。」



「あー、それはオーストリアでもあることだよ。分かる分かる。でもオーストリアでは田舎に泊まったら、どんどん料理が出てきて止まらないんだ。もう無理ですって言ってもどんどん出てくる。そうやってまだ食べな!っていうのを最低3回は断ってやって出てくるのが止まるんだ。だから残さず全部食べてくれよ。」



知的でユーモラスなティムさんの笑顔は朝の日差しに本当によく合う。


素敵な人だなぁ。

クリスチャンの神父さんだからというわけではないんだろうけど、本当に穏やかで、人への慈しみに溢れている。

いつも思うのはクリスチャンである程度の高い信仰心を持った人たちって、人格もそうだけど、人との付き合いかたがとても上手いように感じる。

押しつけがましくなく、それでいて包容力がある。


人を受け入れる器を持ち合わせた人なんだろうなって思う。



















そんな楽しい朝ごはんの時間を終えたら、すぐに町に出かけた。

今日は土曜日。人々は朝の涼しい時間帯にマーケットにお買い物に出るので午前中が人出が多くなる。


そして午後になると早めにお店が閉まり出すので、だいたい10時から14時の間が路上の狙い目だ。



よっしゃ気合い入れていくぞーと、家を出ると目の前お城という違和感。


ていうかここお城の中なんだよな………


うーん、すげすぎる……………











建物の隙間の生活路地みたいな小径を抜けて行くとすぐにホコ天のショッピングストリートに出る。





朝のひんやりとした石造りの町は、まだ太陽が高くなくて影になっており、少し肌寒いくらいだけど、路上にはこれくらいがちょうどいい。


人通りは確かに平日に比べてかなり多く、たくさんの人が買い物袋をさげて行き交っていた。




さぁ、頑張るぞと歌い始めたんだけど、やっぱり朝イチはまだ声が出ない。



さっき起きたばっかりで喉が開いてないので高音が出しづらいので、ゆっくりと慣らしながら歌っていると、パッとギターケースに何かが置かれた。


ん?と見てみると、それはアイスクリーム。




顔を上げるといつもの大人気アイスクリーム屋さんバブローザのスタッフの女の子が笑顔で親指を立てながら店に戻っていった。





このお店のおかげで稼げてると言っても過言ではないのに、さらにこんな差し入れまでしてくれるなんて、どこまで素敵なお店なんだよ。

オーストリアナンバーワンのアイスクリーム屋さんだぞ?





そんなナンバーワンアイスクリームを毎日欠かさず食べてる俺とカンちゃん。

結婚式で痩せなあかんのにアイス美味しいー!!と嬉しそうにしている。


今日も変わらずとてつもなく美味しいアイスを食べると、なんでか喉の通りがよくなる。


なめらかになって声が滑り出てくる。


もう本当シュタイアー最高だよ。































いい感じで歌い続け、午後になっても人通りが途切れない。

天気のいい土曜日ということで地元の人も観光客もみんなバブローザのアイスを食べに来ており、行列ができ、この広場にたくさんの人が集まっている。


そんな場所で歌ってるもんだから常に人だかりと拍手が絶えず、チップが入り続ける。
















デイビッドとデイビッドの奥さん、カトリーナも路上を見に来てくれ、ゆうべマンギャザリングでお喋りしたピーターおじさんも奥さんと見に来てくれ、みなさんのお喋りしながらとても楽しい時間がすぎる。



ピーターおじさんからはまたアイスクリームの差し入れをいただき、これで4回目のバブローザ。






「このお店っていつからあるんですか?」



「今2年目だよ。息子の友達が開いたお店でね、ビッグサクセスだよ。まだオーナーは31歳とかそんなもんじゃないかな。」



そうか、だから4年前にもシュタイアーに来てるけど記憶になかったんだ。


31歳とかでオーストリアナンバーワンのアイスクリーム屋さんを作って連日大繁盛なんてすごいことだ。













アイスクリームを食べ終え、喉も絶好調。

日がこの細いショッピングストリートに差し込んできて暑いけれど、もうちょい頑張ってみるか!!


気合いを入れて歌い始めるとすぐに人々がアイスクリーム片手に集まってきて、拍手が起こる。






周りにたくさんの人がいると気が抜けない。一挙手一投足を見られているんだから、体勢にも気をつけて演奏しないといけない。


棒立ちはダメ。


ブレイクでアクションをつけたり、足でリズムを刻んだり、大げさくらいがちょうどいいもんだ。


そうして歌っていると人だかりはどんどん増え、こうなったら喉が枯れるまでいってみるかと思っていたところで、ギターケースに何かが置かれた。





ん?なんだこれ?















え?









ワニ?










これワニ?










え?







ギターケースの中に子ワニがいる。






え?って思いながら顔を上げると、おじさんが笑顔で親指を立てて歩いて行った。








周りの観客たちも、なにあれ?とざわついている。





動揺しながらもとにかく曲をやりきり、かがんでギターケースの中に入っている子ワニを手に取った。
















ええええええ!!!!!!

ワニやし!!!!!!






ワニやし!!!!!!ってめっちゃ驚く俺を見て、観客たちみんな大笑い。


そして数人が寄ってきて、それ本物!?と聞いてきた。




子ワニなので1メートルくらい大きさなんだけど、確かに剥製にされた本物のワニだ!!!

目にはビー玉がはめこまれ、口には鋭い歯がギザギザとはえている。


皮もしっかりボコボコと模様をつけており、マジの子ワニの剥製。





えええええええええ!!!!!と再度驚くと、また広場に笑い声が響き渡った。





世の中、バスカーはごまんといるけど、子ワニ入れられた人は絶対おらん!!!!


俺も、レシートとか石とかコンドームとか植木とか今まで色んなものギターケースに入れられてきたけど子ワニは究極すぎる!!



ギターケースに子ワニが入ってる状況が面白すぎて次の曲で吹き出しそうになってしまった。


だいたいさっきのおじちゃんどこでこんなもん手に入れてきたんだ!?


想像したらめっちゃ面白いわ!!



土曜日の昼下がり、美しいヨーロッパの町を子ワニを持って歩くおじちゃん、路上シンガーがいた、子ワニをギターケースに入れる、そして笑顔で親指立てる。


なにそれ!!!


最後とか、礼はいいんだぜ、みたいな渋い感じで去っていくし。








いやぁ、とにかくオッちゃんありがとう。


ていうかこれどうしよ……………



今日は明日休みなので頑張って4時間。

まだまだ人通りはあるけど、この辺で切り上げた。あがりは380ユーロ。43200円。

















ティムさんの家に帰って、子ワニいります?と見せると、オワオオウウ!!!どうしたんだこれ!!オーマイゴッド!!とめっちゃ笑顔で驚いているティムさん。




エヴァママもカトリーナもやってきて、目をひんむいて口を押さえて子ワニを見ている。


な、なんかわからんけど敬虔なクリスチャンの家にこんな恐ろしいもの持って入ってまずかったかな……………


とはいっても誰かにあげないと、こんなもん持って空港なんか行こうもんなら、こいつ頭ワイてんのか?と拘束されかねん。






これは珍しいし面白いものだけど、うーん、アンティーク屋さんに持って行ったら売れるかもね、と言うティムさん。

とりあえず明日デイビッドにもいるかどうか聞いてみるか。

















明日、日曜日のサービスに参加させていただくので今夜もお城に泊めていただくことになり、みんなで晩ご飯の食卓を囲んだ。


テーブルに用意されていたのは大きなオーブン料理で、太いズッキーニを丸々使ってその上にひき肉とチーズが乗ったもの。





その周りには見たことのない小さな豆みたいなのが敷きつめられているんだけど、よく見たらこれジャガイモだった。


ミニジャガイモ。

可愛らしくて、すごく便利そうだけど、なんと値段は普通のジャガイモの倍だそう。


うん!味も美味しい!!







バットの下にたまっているソースは、パンをちぎって塗りつけるようにして味をつけて食べる。

日本だったらあんまり行儀のいい食べ方ではないけど、外国だったらよくやる食べ方だ。



「フミ、今日の路上はどうだった?いい感じだったかい?」



「最高でした。多くの人が声をかけてくれて、ウチに泊まりに来ないかい?って言ってくれる人もいて、すごく温かい路上でした。」



「そうか、それはよかった!!一般的にオーストリア人は外国人や知らない人に対して壁を作る人種なんだ。そして人の前ではハーイ!ってニコニコするんだけど、裏ではその人のこと悪く言ってたり、二面性がある。なかなか大変な国民なんだよ。」



「そうですか?今のところみんな優しくてオープンな人が多いような感覚です。壁や裏表があるのは日本も一緒ですね。」



「それはきっとフミの音楽がそうさせてるんだよ。フィルターみたいなものだよ。悪い空気を持った人間は寄ってこないようになってるんだね。」




いや、めっちゃ禍々しいウンコの臭いを放ってるホームレスとかに囲まれたりしますけどね……………




最近は確かに変な人に絡まれることはほとんどなくなってはいる。

場所とりの技術が上がったのもあるかもしれないけど、苦情もほとんど言われないし、追っ払われることもない。


昔に比べてある程度、演奏がそうさせているのはきっとあると思う。最近町で歌っていてよくそれを感じる。
町の人のウェルカム度合いが以前とは全然違う。


でも人を選別するフィルターだけでなく、悪い人も穏やかにさせるくらいの演奏ができないとまだまだだ。




「逆にティムさんはどうして僕らを招いてくれたんですか?」



「僕らはゲストを招くことが大好きなんだよ。新しい人が家に来るのはとてもいいことだからね。それに聖書にも書いてあるんだ。ゲストを家に招くことを忘れてはならないって。これは子供にとってもいいことだしね。」



「ゲストが大好きな日本人だなんてキャアアアアア!!嬉しいわ!!日本ではトイレのフタが温かいって本当なの?」



ノリノリのエヴァママが日本のことについて色々聞いてくるのがすごく可愛い。なんかここまで言われると日本って外国人からどんなふうに見られてるのかすごい気になるなぁ。

アジアの小さな小さな島国のひとつなのに。


そんなにクールな国なのかなぁ。















お泊まりのお礼にビールをいっぱい買ってきていたのでみんなでそれを飲み、それから白ワインを飲みながら色んな話をした。


日本の特徴、オーストリアの特徴、歴史のことや美味しい食べ物、話は尽きず、また新しいワインボトルが開く。


そうこうしていると誰かが家に入ってきて、キッチンにやってきた。


男前の彼はティムさんたちの長男だ。

別のアパートに暮らしているんだけど、わざわざ日本人のゲストがいるって聞いて遊びに来てくれたようだ。






「ハーイ!コニチハ!!ワタシハクリスティアンデス!!」



挨拶くらいは日本語が喋れるクリスティアン。
彼もまた日本が大好きらしく、そしてとても良い奴。


ていうか子供が3人とも奇跡的にフレンドリーでオープンな心を持っているという、子育ての天才ティムさんとエヴァママ。



確かにこの2人の子供だったらそうなるか。

家族全員からポジティブなオーラがほとばしってる。






そしてみんながめっちゃ仲が良いのにも驚く。距離が近い。

カトリーナにいたっては、お父さんの横にぴったりくっついて座って、お父さんの太ももの上に足を乗っけて肩にもたれている。

まるで小さな女の子がお父さんに甘えるような体勢だけど、カトリーナはもう年頃の16歳だ。

日本だったらまず考えられない距離。



そしてティムさんもそんなカトリーナの足をなでなでしている。


ちょ、ティムさん、カトリーナもう年頃ですよ、ってこっちがドギマギしてしまう。







「フミ、オーストリアでは握手をするときに両手で掴んできたら、ウェア!って嫌がられるよ。」



「え?どうしてですか?日本ではこれが丁寧な握手なんです。」



「なんていうか、強引な印象になるんだ。この人は僕をコントロールしたがってる、優位に立ちたがってる、って思われてしまうんだよね。まぁ日本人だからってみんな分かってくれると思うけどね!アハハハ!」



この愛に溢れた家族と一緒にいると、なんだか自分たちも明るくなってくるように感じる。

良い空気を持った人は、悪い人を寄せつけないだけでなく、周りの人をみんな良い空気に変えてしまう。


俺も路上でそれができたらなぁ。




「フミ、子供ができたらビッグチェンジだよ。色んなものが大きく変わるんだ。人間としての大きな成長ができるんだ。旅というアドベンチャーは本当にいいことだけど、子供を持つってのはベストアドベンチャーだよ。」



「あら、子供ができたって成長するのは女だけ。男はいつまでたっても子供のままよ!!」



「アッハッハッハー!!」



「アハハハハー!!」




平和にもほどがある笑い声がお城の中に響く。

あー、ワインが進む。

めっちゃ楽しいなぁ。







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