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笹寿司の息子にバカにされても仕方ない


2016年9月25日(日曜日)
【オーストリア】 シュタイアー ~ リンツ





今日もお城の塔の中で目をさます。





石壁とレンガの床に歴史が染みついており、朝の光にくすぐられているようだ。


もしかしたらここでお姫様が寝起きしていたかもしれないんだよなぁ。面白いなぁ。

子ワニも気持ちよさそう。












キッチンに行き、今日も明るい朝の食卓を囲んだ。










「じゃあ僕は準備があるから先に行ってるね。後からエヴァと来てね。」


ピシッとした服を着込んだティムさんがササっと食事を終えて家を出て行った。


今日の日曜ミサ。ティムさんはその神父さんだ。









俺たちも食事を終え、身支度をして家を出た。

綺麗なシャツを着てヒゲもゆうべ剃った。ミサにのぞむ準備は万端。


ただ朝っぱらから喉ならしもしていないのにたくさんの人の前でちゃんと歌えるかな………






教会には向かいの公園を抜けていくんだけど、ひんやりとした朝の空気が立ち込めていて、木々の葉っぱは薄く茶色に染まり出している。

静寂が落ち葉をさらって、ジャリ、ジャリという歩く音がやけに大きく聞こえる。


足元にはドングリや松ぼっくりが落ちていて、もう秋は始まっているんだなと思った。























教会というか公民館というか、そんな十字架のかかげられたコミュニティスペースに着くと、たくさんの人たちがガヤガヤとすでに集まっていた。


老若男女、お爺ちゃんお婆ちゃんから小さな子供たち、生まれたての赤ちゃんまで、だいたい50~60人の人たちが部屋の中にいた。


いきなり入ってきた謎のアジア人のことをいぶかしむことなく、誰もが当たり前のように笑顔で自己紹介してくれたくさんの人と握手をする。



中には、というか聞いただけでも10人は俺が町で歌ってるところを見たよと言ってくださった。

小さな町だからな。



そして驚いたのは路上でアコーディオンを弾いてるおじさんもこの集会に来ていた。


ブルガリアから来てる人らしいんだけど、カトリーナが、本当パパは誰彼構わずこのサービスに呼びたがるのよと笑っている。


ティムさん懐の深い人だなぁ。


















生演奏の聖歌から会はスタートした。




ギターを弾いて歌っているのはティムさんの長男のクリスティアン、そして横でカトリーナもマイクを握って歌っている。


もう1人の息子のデイビッドは後ろのほうでミキサー卓の前に座っている。


きっと何年も前からこうして家族みんなで会を手伝ってきてるんだろうな。

2人ともとても上手だ。







合唱が終わるとティムさんが前に出てお話を始めた。


こうした外国のミサには何度か参加させてもらっているので流れはわかるんだけど、いかんせん毎回英語圏じゃないので何を話しているかは謎。

まぁ英語だとしてもきっと難しいお話だろうからなかなか理解できないだろうけど。






ティムさんらしくユーモアを含んでみんなを笑わせながらお話は続く。

リンゴを持ち、それについて話しているんだけど、参加者の1人にリンゴを持ってもらい、それを奪い取る演技なんかも交えている。


きっと、人がどう生きるべきなのか、どう助け合って生きていくのか、という素敵なお話をしているんだろう。


参加者の人たちもみんな真剣に話に耳を傾けている。










「それじゃあナオ、出番だよ。こっちにおいで。」



ヒィィ!っと小さな声を漏らしてちぢこまるカンちゃん。

そう、今日はティムさんの趣向で、聖書の読み上げをカンちゃんにも参加してもらうことになっていた。


地元のおじさん、カンちゃん、そしてブルガリアのおじさん。



この3人でみんなの前に立ち、それぞれの言語で聖書の一節を読むという、なんとも素敵な企画だ。


人種、国境を越えてキリスト教の愛の教えは世界中に根づいている。






「汝のなんとかがなんとかかんとか………………」



緊張しいのカンちゃんも、なんとかみんなの前で声を張って聖書の一文を読み上げる。





ティムさんが前もって日本語訳の紙を渡してくれていたんだけど、漢字の読みが特殊だから朝から、ここなんて読むの!って聞いてきていた。


間違ったって誰もわからないんだけど、そこはきっちり正しい言葉で読み上げたカンちゃん。


人々はみんなその聞きなれない日本語の聖書朗読を微笑みながら聞いてくれていた。





「さぁ、では次はフミの番だよ。今日は特別ゲストの日本人シンガーに1曲シェアしてもらいます。」



ふぅ、まぁまぁ緊張するけどやれることをやろう。


しんと静まる部屋の中、みんなの視線がギターを抱える俺に集中する。


準備を終えたらデイビッドを呼んでカホンで入ってもらった。


ニコニコと喜んでいるデイビッド。


そして2人で上を向いて歩こうを歌った。



大きな拍手と歓声が起こり、ティムさんがどういう内容の曲なの?と聞いてきて、簡単に説明すると、とても美しいとまた拍手してくれた。


少しは貢献できたかな。
ふぅ、よかった。

















それからもティムさんの話が続き、クリスティアンたちの聖歌が合唱され、最後にコミュニケーションタイム。


だいたいミサの最後には、参加者たちが入り乱れて手当たり次第に握手をしたりハグをしたりキスをしたりして隣人愛を深める時間があるんだけど、今日は真ん中に置かれた大きなカゴに山盛り入ったみかんやリンゴなんかのフルーツを取り、それを参加者同士で交換し合うというものだった。


これもまたティムさんの趣向だ。

本当素敵な人だよなぁ。























たくさんの人が、素晴らしいパフォーマンスだったよと声をかけてくれ、肩を叩いてくれた。




















会が終わると、そのままお食事の時間になった。


なにやら今日はサンクスギビングの日らしく、外でバーベキューをし、みんなで食事をするということ。


中庭に出るとたくさんのソーセージが焼かれており、サラダや煮込み料理なんかの鍋がテーブルに並べられていた。

















というわけで暖かい太陽の下、みんなでガヤガヤとお話をしながらご飯を食べた。


アコーディオンのおじさんがやってきて演奏を始めるとティムさんと娘のカトリーナが踊りだし、小さなお人形さんみたいな女の子たちがキャッキャとはしゃいでいる。


おじさんも、おばさんも、若者も、みんなが同じ場所で同じ時間を共有し、絆を深めていた。
























こんな時間、日本にはまずない。

会社の社員とか友達で集まって食事会なんてのはたまにあるけど、こんなにも異業種でバラバラの世代が集まって休日の午前中に、それも毎週時間を共にすることなんて考えられんことだ。


これが宗教のもとに行われているんだからもはや完全に別世界。



そりゃ人に優しくなる。

愛を分け与えたくなる。

励まして、勇気づけて、困ってる人に手を差し伸べるという行為が自然に出来るようになるはず。






でも、こんな時間を持たない日本人だって、お爺ちゃんお婆ちゃんに教わった道徳はしっかり心に根づいている。

物を盗んだり、人を傷つけたりせず、相手を思いやる気持ちを誰もが普通に持っている。


日本人は無宗教だっていうけど、仏教の十戒はみんなが守るべきことだとして認識しているもんだ。


人とのコミュニケーションが希薄だと言われる現代でも、ちゃんと日本人の道徳心は受け継がれていってる。



いや、ていうかハナから人はそんなこと備わって生まれてくるのか?

じゃあどうして人は殺し合いをやめられないのか。




ってこんなことを考え始めたらもうマジできりがない。

なんにしても、人と人が時間を共有し、相手を慈しみ、穏やかな繋がりを持って助け合うことはとてもとても大切なことだ。


俺も誰かを助けられる人間になんないと。

















「よーし!それじゃあ家に帰ってスシ作ろうぜ!!」



ミサが終わり、皿洗いのお手伝いをしている間に参加者たちもみんな帰って行き、ティムさん家族と数人の友達たちとお城に帰った。


今日、このシュタイアーを出発する予定だったんだけど、クリスティアンがなにやらお寿司を作りたいと海苔とスシ米を買ってきており、みんなで海苔巻きを作ることになっている。


これだけみんなでやってから出発することにしよう。






というわけで家に帰って早速作り始めた。














クリスティアンが材料を用意していたので、てっきりクリスティアンが作るもんだと思っていたのに、いつの間にか、せっかく日本人がいるんだから2人に任せるよ!!という展開になってしまっている。


よーし、そういうことならそこらへんの中国人が作ってる見よう見まねのニセモノスシじゃない本場の味をブッ込んでやろうじゃねぇかこの敬虔なキリスト教徒たちめ!!









と言いたいところなんだけど……………






スシどころか巻き寿司すら作ったことねぇし…………








いや、俺は宮崎人だ…………!!

ここはレタス巻き発祥の地の出身である俺がめちゃくちゃ美味いレタス巻きを作って、オーストリア人たちの口を将太の寿司を食べた時のオッさんの口くらいキモい形にしてやる!!




よーし!!それじゃあ米炊きからだコンチクショウ!!


将太の寿司を思い出せ……………




そう!!!米炊きで1番大事なのは水!!!


究極の水、その日の湿度、米の乾き具合をすべて加味して分量を決めて拝み洗い!!!



でも1ミリもわからないのでテキトーに水をジョボジョボ入れてIHで加熱!!!



そしてこのままはじめくちゅくちゅ中で出す!!あ、違うか、はじめちょろちょろ中ぱっぱだ。






よし!!とりあえず米はオーケー!!






次は卵焼き!!!


お父さん!!お母さんが作ってくれたふうわりした卵焼きが食べたいよぅ!!

ふうわりした卵焼きが食べたいよぅ!!




「卵焼きのフライパンじゃないと形が整わないー!!」



そんなもん海外にあるわけないので頑張って丸フライパンで卵焼きを作るカンちゃん。



「ちょっと待って!!その卵焼きには何を入れたの!?砂糖と醤油をちょっと、それに白ワインね………ふむふむ………………お米を炊くときに気をつけることは!?」




クリスティアンが一生懸命レシピを紙にメモしている。


もうただでさえ日本大好きなファミリーなのに、そんな俺たちがスシを作るという大イベントを行っているので欧米人たちはもうめっちゃ興味津々。

キッチンを取り囲んで俺たちの動きをビデオに撮り、凝視している。














「まずは………タコのウインナーだ!!お次はほーら、りんごのうさぎちゃんだよーーーっ!!ハンバーグにスパゲティ、アイスクリーム!!最後は楊枝に旗つけて!!金丸文武さんのお子様ランチちらし寿司の出来上がりだァぎゃはははははははっぎゃはははははははっははは腹、腹痛え……!!」




と笹寿司みたいなことを言われないかビビりながらとりあえず具材完成!!


わお!!このまな板の具材の写真だけでめっちゃビューティフルだよ!!写真を部屋に飾りたい!!と写真を撮りまくってるみんな。


ちゃ、ちゃんと巻けるかな…………………












そして米も炊き上がり、合わせ酢も投入してシャリ完成。

いよいよ巻く段階まできた。



巻き簾がないので器用なデイビッドが竹串を並べてガムテープで止め、ビニールをかぶせて即席の巻き簾まで作ってくれた。





えーっと……………………どうやって巻けばいいんだろう……………






と、とにかくやってみるぞ!!!!!

























ゴミ完成。






泣きながら走って森の中に姿を消したくなりました。






いや、もちろんこれは食べ物なんだからゴミなんかじゃない。食べられることは食べられる。


でも小政さんからしたらただのゴミ。

シンコ君号泣。


佐治さんボロクソ。







カンちゃんもチャレンジするんだけど、さすがのカンちゃんも経験がなくてうまく巻けなくて苦戦している。


俺も!!俺もやる!!とファミリーのみんなが次々挑戦するんだけど、やっぱりそんなにすぐ出来るようなもんじゃなくて、お店で食べるような形にならなくて本当中華料理店で巻き寿司出してる中国人のみなさんゴメンナサイ……………調子乗りました…………………












ただ1人、器用なデイビッドだけがばらんばらんにならないお寿司を作れて、私の自慢の息子よ!と喜んでるエヴァママ。

本当仲のいい家族だなぁ。

















日本人としてのいいところは全然見せられなかったけど、みんなでガヤガヤととても楽しい時間になった。


これでもう完璧だ。

そろそろ出発しないと。




「みんなで見送るよ。来てくれて本当にありがとう。とても素敵な時間を共有できたよ!!」



ティムさん、エヴァママ、3人の子供たち、そしてコミュニティで出会ったたくさんのクリスチャンのみなさん、


シュタイアーの思い出はアイスクリームだけじゃない。

こんなにも素敵な優しい人たちに出会えた。


この縁を大事にしないと。




子ワニはデイビッドがひきとってくれた。








みんな、本当に本当にありがとう!!!!

そしてこれからもよろしくね!!!!

















「あぁー、いい時間だったー…………いい数日だったなぁー。」



「そうだねー、なんだか体の中が綺麗になったような感覚だよ。浄化されるね。」



この数日の思い出にひたりながらハンドルを握り、シュタイアーを抜け出して向かうのはリンツ。


この辺りでは1番の都会なんだけど、まだ行ったことはないので路上ができるかどうかもわからないけど、まぁなんとかなるだろう。










「また素敵な人に出会えたらいいねー。」



「ねー、俺たちも人に優しくなろうね。」




田舎道の入ったところに広いパーキングエリアを見つけてそこに車を止めた。


夕日が沈んでいく。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


アメリカのホテルをアゴダでとってくださったかたがいました!!


今こうしてヨーロッパにずっといると、あの新しい国の新鮮さがとても懐かしいです。


どうもありがとうございます!!

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