スポンサーリンク 車旅の始まりはおとぎの世界と白ワイン 2016/6/20 2016/06/11~ オーストリア, ■彼女と世界二周目■ 2016年6月11日(土曜日)【オーストリア】 シュピッツさぁ、ついにこの日がやってきた。ヨーロッパをレンタカーで回るという、リキみすぎて闘争のカタルシスがアレになりかけて勇次郎とても強い。シャオリイイイイイイイイイイイ!!テンションおかしなことになりながら起きて宿のレセプションに行き、空港行くのでタクシーぶちかましちゃってください!!とお願いするけど英語1ミリもわからない人で話が通じなかったので仕方なく歩いて行きました。4キロです。たったの1時間!!!これからの車旅のこと考えたらもうただのエクササイズですよ更家さん。疲れたくても疲れられないんですよ!!車なら!!!うわああああああああああああ!!!!ハマショー好きいいいいいいいいいいい!!!!!!朝っぱらからぐったり疲れたところでやっとこさ空港に到着。アライバルターミナルに入ってキョロキョロすると、端っこのほうにバジェットのカウンターを見つけた。ふぅ、これが最後の関門だ。場合によっては国際免許証を受け付けないオフィスがあるとかなんとかいう話を聞いている。でももうここまでスーパー順調にきてるんだ。爽やかアジアンカップル丸出しの笑顔でカウンターに3点セットを華麗に並べる。日本の免許証国際免許証ドライバー名義のクレジットカード「オー、かなり長いこと借りるんだね!!」「そうなんです!!なので快適なやつよろシャス!!」そしてついに……………これもんでござる。「これ乗っていいのおおおおおおおおおおおおおおおこ!!!!??!!!?乗り回していいのおおおお!!!!生まれつきのスピード狂なのさなのおおおおおおこ!!!!!!!!」「うわー!!いい車ー!!中も広いー!!」これから3ヶ月のシェンゲン旅の相棒!!シュコダ、ファビオコンビ!!ただのいい車です。信号で止まったら勝手にエンジン切れるエコ的なやつです。エンストしたら勝手にエンジンかけてくれるやつです。鍵についてるボタンでドアのロックできるやつです!!それは普通か。中も結構広くて、後部座席を外して倒したらなかなかのフラットスペースができて、これなら荷物も寝床も問題なしだ。「ああああ!!車の中を快適空間にアレンジするー!!住みやすく配置するー!!」大喜びのカンちゃん。俺もたまらなく嬉しい!!!!そんなレンタカーの気になるお値段はというと、85日借りて17万円くらいです。ここに1日200円の保険料、国境を越えるための追加金の5000円、税金諸々が加わって20万円です。つまり1人1日1200円でヨーロッパを超自由に旅することができる!!!移動のバス代、電車代、さらに毎日の宿代、荷物を全部持って歩かなくていい気楽さ、雨に濡れて逃げ惑うこともない。すべてひっくるめて20万円です。ウルトラ、ウルトラお得。しかも好きなところに好きな時に好きなだけ行くことができる。山の上の展望台にも、森の奥の静かな湖のほとりにも、大都市の郊外にある隠れ名所にも、好きなだけ行ける。もちろん、ガソリン代は別でかかる。でもそれを加えても、どう考えてもレンタカーはお得だ。うわああああああああああああああ!!!!!死ぬほど興奮するけど、とにかく安全運転心がけます!!!!「よっしゃあ!!それじゃあそろそろ行くぜべらんめぇ!!俺のスーパードライビングテクニックでこの世の果てまでノーリミットだぜ!!!」「フミ君、そっち助手席だよ?」「きょおおおあたおおおおおおお!!!!ハンドルが逆うううううううううううう!!!!!!」なにこれ?なんでハンドルが反対なんですか?これが噂の左ハンドルというやつですか?ぬおおお……………ミッションレバーが右側にあるとか違和感すぎるぞ…………「ま、まぁそのうち慣れるかな!!俺そこそこ運転には自信あるし!!よおおし!!左折!!あれ?どうしてウィンカーが動くんだろう?」という一連のお決まりのやつをやってから、さぁ空港の敷地から道路に出るぞコノヤロウ!!!!というところでまた車線を間違えてしまって、曲がりきれずに中央分離帯でどん詰まり!!「うーん、やっぱり最初は難しいなぁ。あれ?…………あれ?なんで?………バックに入らない。」「え?どうしたの?」「いや、ギアがバックに入らないんだよ。あれ?ここの絵にはちゃんと右下がバックって書いてるのに入らない。え?どういうこと?」「ちょっと、私レンタカーのところに聞いてくるね!!」何度レバーをぐるぐる回してもまったくレバーが入らない!!レバーを下、左下、左、左下、下、右下、前でボタン同時押しでパワゲイザー出せるくらいぐるぐる回しても全然ダメ!!ちょ!!待って!!早く切り返して進まないと道の真ん中で止まってるから迷惑すぎるのにバックにまったく入らない!!なにこれ故障車なの!?チキショウ!!こんなポンコツかしやがって!!!!そこにレンタカー屋さんに行っていたカンちゃんが走って戻ってきた。「フミ君!!バックは押しこむんだって!」「え!?なに下ネタ!?」なんとバックに入れるためには一度レバーを真下に押し込んでから動かさないと入らないという近未来的な作り!!ふぅ………とにかくなんとか空港から出発。ちなみに41800キロスタート。この3ヶ月で何キロ走るかな。さぁ、車旅となると大事なのが生活道具です。車中泊がメインになりますので、キッチン用品や水のタンクなど、必要なものはたくさんあります。でも今夜すでに予定が入っていることもあり、あんまりゆっくりお買い物してる時間はないので、というわけで必ず必要なものだけ買っていくことにしましょう。ヨーロッパの車旅でもっとも大切なものはこれだ!!!辛ラーメン40個。寝るスペースがなくなりました。その足でスーパーに行って瓶ビールを20本ほど買いました。完璧。もうこれで無敵。きゃああああああああああああ!!!!!北欧のフィヨルドの谷間で、車のトランクを開けて辛ラーメン食べるとかホテルの最上階で夜景見ながらディナー食べるのの2億倍素敵!!!!!怖い!!辛ラーメンが好きすぎる自分が怖い!!ちなみにカンちゃんは18歳の時にアメリカで辛ラーメンに出会い、あまりの美味しさに辛ラーメンだけを毎日ひたすら食べていたら足の爪がポロリと取れたらしい。足の爪がとれた時が本当の辛ラーメン好きになれた瞬間なのです。僕なんてまだまだ、本当のファンからしたらかぶれレベルですね。精進します!!!スロバキアからオーストリアへの国境越えはどこがボーダーだったんだ?というほど、まったくあっさりしたものだった。本当にそれらしきものがひとつもないまま地図上で黒い線を越えて、初めて自分の運転する車で国境をまたいだ。右車線の運転は確かに怖いし、うっかり反対車線を逆走しそうになってしまいそうになりながらハンドルを握る。でも言ったら2車線道路の右側を走ってるようなもんだ。ある程度運転経験があればなんとかなる。でもやっぱりとっさにギアチェンジをしないといけない時に戸惑ってしまって発進が遅れてしまうんだけど、さすがはヨーロッパ。誰もそんな下手な運転にクラクションを鳴らしたりしない。そして外国の道路によくあって日本にないものといえばラウンドバウト。交差点がロータリーのように丸くなっており、その円に進入して回りながら行きたい方向に円を抜けるというもの。ヒッチハイクをしながら何度もこのラウンドバウトを通ったけど、実際運転してみるとかなり便利なものだ。左回りの一方通行なので左だけを見て進入すればいいし、信号じゃないので時間のロスにならない。あとは他の車のスピードがすごい。さすがはアウトバーンを200キロでかっ飛ばす国なので、普通の道でも平気で100キロとかでビュンビュン走る。でもその分、車がハイスピード仕様で作られているのでかなり速度が伸びる。1速で30キロ。2速で60キロまで引っ張れる。3速の80キロでエンジンブレーキもかからないほどだ。おかげでかなり速い。景色はとにかく素晴らしかった。町を抜けるとどこまでも草原と丘陵が広がり、その中にポツポツと赤い屋根の家々が散らばっている。小さな村の中にポツリと教会の尖塔が立っているのを見ると、まるで何百年も前の絵本の中の世界だ。空はどこまでも広く、ただただ草原が広がり、名もなき小さな村に入ってはまた草原へ変わっていく。寂しげで、芳醇で、あまりにも美しくて、運転しながらドキドキが止まらない。あの丘の上の家にはどんな人が住んでいるんだろう。どんな朝ごはんを食べて、どんな服を着てるんだろう。どこにだって行ける喜びが身体中から溢れ出しながらアクセルを踏み続けた。やがて車はドナウ川を渡り、小さな町に入った。木々に隠れるようなほんの小さな町。懐かしい見覚えのある駅前。小さいけど、設備のしっかりした先進的な駅。ここだ。あの日、本当にあてもなくテキトーにチケットを買って電車に乗り、やってきたこの駅。夜に着いて1人トボトボと歩いていると、目の前にライトアップされた巨大な大聖堂が夜空に浮かび上がった。1人で、うわぁ!と声を上げたあの旅の初めの頃。また戻ってきたぞ、メルク。ウィーンや他の町をすっ飛ばしてこの町にやってきたのは理由がある。前回も歌って稼げたことがそれではなく、とある人と約束しているから。このメルクからドナウ川沿いに走ったところにある大きめの町、クレムスで路上をやっている時に、あるご夫婦が声をかけてくれた。実質喋ったのは30分くらいだったんだけど、とても仲良くなり、それからメールをずっとやりとりしていた。イングリットおばさんと旦那さん。いつもこのバッハウ地方の季節ごとの美しい写真を送ってくれるイングリットおばさんに、また必ず行きますとメールを送り続けて3年半か。ついにここに戻ってくることができた。このバッハウ地方はドナウ川沿いに広がるエリアで、白ワインの産地として有名だ。世界遺産にも登録されている。前回はメルクからヒッチハイクでクレムスまで行ったのでゆっくり回ることはできなかったんだけど、ささやかで可愛らしい村々が川沿いに散らばり、廃墟の古城や、立派な教会もあるとてもロマンチックな場所。大きな町はないけど、本当に美しい地方で、ドナウと共に生きてきた人々の歴史がありのままに残っている。そんなバッハウに住んでいるイングリットおばさんが、いつかここに戻ったら必ずうちに泊まってね!とずっと言ってくれていたのだ。今や車旅なので寝床の心配はないんだけど、ずっと前からの約束。そしてイングリットおばさんと旦那さんとみんなでまたゆっくり語り合いたい。ちょうどタイミング良く今日がメルクの花火大会だということをイングリットおばさんに教えてもらえて、さらに楽しみにしてここまで飛ばしてきた。あぁ、この愛するバッハウで有名な花火大会を見られるなんて嬉しすぎる!!!!駅裏の無料の駐車場に車を止めてあの日と同じ道を歩いて坂道を下り、中心部にやってきた。小さな町の真ん中にあるショッピングストリートは、ささやかだけど人がたくさん歩くとても美しい通りだ。しかし、そこには人影がまったくなかった。花火大会だよね?なんでこんなに閑散としてるの?その理由はもちろん雨だ。今日は夕方くらいからずっと雨が降り続いていたのでもしかしたらと思っていたんだけど、案の定、花火大会は延期になっていた。しかも明日の日曜日ではなく、丸々1週間の延期。ダメだ………1週間も滞在するほど日数の余裕はない…………残念に思いながらイングリットおばさんにメールすると、すぐうちに来て!待ってるわ!と返事が来た。うーん、花火大会で路上できたら最高だったろうになぁ。残念。懐かしのピザ屋さん!!ここで路上の後毎回ピザ食べてたなぁ。7.7ユーロのお代にこれ出してみた。ちゃんと5ユーロ札が帰ってきた。ヨーロッパ好き!!!メルクの大聖堂のすぐ横を流れるドナウ川沿いに走っていく。豊かな森におおわれた山々の間を、悠々とたゆたうドナウ。山の斜面一面に広がっている茶畑みたいな植物は、全てがブドウだ。どこまでもどこまでもブドウ畑が広がっている。これらのブドウからバッハウの白ワインは作られているんだ。そんなおとぎの国のような光景の中を走っていくと、しばらくしてスピッツという村に入った。小さなレストランが数軒あるだけのほんの小さな村だけど、家並みは本当に綺麗で、可愛らしく、あちこちに花が咲いており、ここは夢の世界か?と錯覚してしまう。そんなスピッツの村から山側に入り、うねうねの細い道を登っていったところにイングリットおばさんの家はあった。周りには民家が数軒あるんだけど、そのどれもが絵本の中のようなとんがり屋根の作りだ。まさにヨーロッパのど真ん中。田舎の暮らしがそのままに根付いた土地を雨雲がおおい、ファンタジーの世界に迷い込んだようだった。「フミー!!オー、フミがスピッツに来るなんて。ささ!!早くうちに入って!!」小雨の中、外に出迎えに来てくれたイングリットおばさんが思いっきり抱きしめてくれた。そして小さなカンちゃんのことも抱きしめてくれるイングリットおばさん。家はとても大きく、イングリットおばさんの趣味で溢れたとても素敵なインテリアだ。絵や刺繍、たくさんの音楽、小物や洋服、写真、全てのものにイングリットおばさんのこだわりがあって、そしてどれも可愛らしかった。おばさんの手芸はどこの国も可愛らしいものを作るんだな。そんなインテリアに混じって、1人の男の子の写真がたくさん飾ってある。これはイングリットおばさんと旦那さんの息子さん。しかし彼は今この世にはいない。生まれてすぐに病気にかかり、障害を持って車椅子生活になり、そして29歳で彼、ラルフはこの世を去った。イングリットおばさんにそんな悲しい影は見えない。彼女の大きな愛は、その影すら包容力に変えているように思えた。「私はサンフラワーが大好きなのよ!傘もお皿も、なんでもサンフラワーがいいの!!アハハハ!!」家の中にはいたるところにヒマワリが咲き誇っていた。イングリットおばさんの笑顔みたいだと思った。ガレージの奥にあるワインセラーから白ワインを持ってきてくれるところはさすがにバッハウだった。プレッツェルみたいな味のするスティックをかじりながらワインを飲んでいると、旦那さんが帰ってきて、また大きくハグをした。「フミ、ナオ、いつまでスピッツにいる?ここはあなたたちの家なんだからいつまででもいていいからね!」用意してくれた部屋はとんでもなく豪勢なものだった。ふかふかの布団、清潔な室内、全てが完璧すぎて、そして家庭の温かみがある。憧れ続けたバッハウ。外はしとしとと雨が降っておとぎの世界を濡らしている。音もなくたゆたうドナウ。住みたいと思える町は世界中に行ってもそんなになかったけど、ここはマジで住める。住みたい。住まわせていただきたい。それくらいバッハウに抱かれている喜びが全身を包んでいた。この日は夜遅くまでみんなでワインを飲みながら賑やかに語り合った。