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ついにカンちゃんがインドにやってきた

2016年4月14日(木曜日)
【インド】 アラコナム






カデルの家。

朝早くに起きて支度をし、まだ日が昇り始めたばかりの薄ピンク色の空の下、車に乗り込んだ。



カデルが運転する横に座り、アラコナムの町をすり抜け、田舎の一本道を走っていく。





どこまでも続く道。

ヤシの木が原野の中に散らばり、ところどころに汚い池が空をうつしている。


とても静かで、寝ぼけ眼にはまだ夢の中のようにも見える。












あれは去年のこと。


本の出版をし、CDも発売し、世田谷区民会館ホールでの大きなライブを終え、ドタバタに走り回った東京での夏。


ラジオに出たり、いろんな取材を受けたり、たくさんの偉い人たちに会ったりして、それなりに忙しくて、それなりに緊張して、今まで歩いてきた路地裏の風景とは違った場所を覗かせてもらった。







あの夏が終わって、世界一周からそのままの勢いで駆け抜けた熱い日々がひと段落したんだけど、その時にはすでに次にやりたいことは決まっていた。





インドでやり残したことにもう1回チャレンジしに行こう。








そして日本中をライブ行脚しながら、各地でリコーダーを集めて回った。


たくさんの人が協力してくださり、最終的には102本のリコーダーが集まった。


これを持ってインドに渡り、ストリートチルドレンに配って一緒に演奏して稼いでやる。物乞いじゃなくて、ちゃんと何かの対価としてお金を稼ぐということを教えたい。

その思いは、集まったリコーダーを見てさらに固いものになった。
























「え、じゃあ私どうすればいいの?待っとけばいいの?」



その時、付き合い始めていたカンちゃんが結構真面目な顔してそう言ってきた。



インドに行く期間はおそらく3ヶ月。

それくらい待っててもらえるんじゃないか。大丈夫じゃないか。


そう伝えるとカンちゃんは不服そうな顔をしていた。


そしてハッとした。




俺はまた待たせようとしている。

今までこうやってどれだけの人を傷つけてきたのかわかってるはずなのに、性懲りも無くまた、待ってて、というお決まりの言葉を口にしている自分に驚いて呆れた。









20歳のころから始めた旅の人生。

いつも恋人がいて、いつも待たせてきた。

そのことで旅に制約ができて、とことん自由という旅が出来てこなかったのに、やはりいつも恋人がいて、待たせてる男と待つ女をやってきた。



本当懲りない。




そしてまた、また待たせようとしている。











「カンちゃんも…………行く?」



この言葉を初めて恋人に言った。


旅は1人でするもの、そうやって14年も旅を続けてきた。

俺がそう思っていたのもあるし、付き合う彼女たちが旅とは無縁の生活をしている人たちばかりだったというのもある。






しかしカンちゃんは旅大好きの女の子。

10代の頃からアメリカに住んでて、インドネシアにも住み、1人で世界中を回るバッグパッカーだし、インドの安宿とかにヨユーで泊まれるような子だ。

俺なんかよりよほど海外経験豊富。




そんなカンちゃんとなら、一緒に旅できるかもと思えた。


俺がカンちゃんのことを大好きで仕方ないってのもあるし。











「いやー!!行く行くー!!ヤバっ!!楽しみすぎる!!仕事先にいつ言おうかなー。」





カンちゃんの天秤は一瞬で旅に傾いた。





「もうさ、どうせならインドだけじゃなくてその後に2人の行きたいところを思いっきり回ろうよ。お互いの好きな国や町を見せあおうよ。」



「えー!素敵すぎる!!でも……お金どうしよう………」



「俺が歌って稼ぐから心配しなくていいよ。」



「…………わかった!!でもフミくんに頼りきりにはならない!!私も自分で稼ぐ!!」




そうしてカンちゃんはそれから海外で稼ぐ方法を色々調べ始めた。

各国の色んな面白いものを女子目線で買ってそれを通販サイトで売る。他にも旅関係のサイトにレポートを寄稿するバイトなど、稼ぐ方法はそれなりにあるみたいだった。





「2人で行きたいところ行きながら稼いで、それでお金貯めて日本に帰ってきてからゲストハウスやろうよ。カンちゃんは大阪でゲストハウスで働いてたからノウハウも分かってるし、お互いのこれまでの旅の経験を活かして楽しい宿を作ろう!」



「いやー!楽しみすぎるそれ!!今までたくさん外国行ってきたけど、お金の心配をしなくていいなんてすごすぎる!!フミ君ってすごくいい旅してきたんだねー!!」





それからカンちゃんと2人旅の夢をたくさん膨らませ、ついに俺の出発の日が来た。


カンちゃんは仕事の都合であと2ヶ月は働かないといけなく、ちゃんと仕事を勤め上げてから追いかけるね!ということになった。





前回の旅の始まりとは違い、飛行機で日本を出てシンガポールへ。


そこからはこのオンザロードアゲインに書いてきたとおり。








ついに、14年旅してきて初めての人との旅。

それが今日から始まる。


今日、カンちゃんがインドに着く。

































チェンナイ空港のインターナショナルアライバルに着くと、出口の周りにはお迎えやタクシーのドライバーでたくさんの人だかりができていた。

人ごみの中にカンちゃんの姿を探すけど、それらしき女の子は見当たらない。

インド人だらけなので、アジア人の女の子がいたら目立つはずなんだけど。







俺が最初にこの空港に着いた時、ワイファイが見つけられなかったので根性で1人でアラコナムに向かった。

ヤケクソで人に道を尋ねまくって、奇跡的にあのど田舎のアラコナムにあるカデルの学校までたどり着いたんだけど、そこでママからカデルに電話してもらうとカデルは空港で俺のことを探していたという申し訳なさすぎることになってしまった。


そうならないよう、空港から動かないでねとカデルがカンちゃんに念を押している。


2ヶ月ぶりの再会、そしてそれがインドだということにドキドキが止まらなくて、手に汗をかきながら到着口をじっと見つめていた。












しかしなかなか出てこない。

もう飛行機は1時間ほど前に到着しているので、イミグレーションも越えて荷物もピックアップしているはず。


あー、ドキドキするな。

どんな顔して再会すればいいんだろ。花束も何もない。

















ここからだと出口が見えにくいのでちょっと待つ場所を変えようと人ごみを縫って反対側に回っていた時だった。


端っこの方に小さな女の子が立っているのが見えた。

インド人のオッさんが横にくっついて話しかけている。しつこいタクシーの運ちゃんか。






「あああああああ!!!カンちゃんーーー!!!!」



「あああああああ!!!フミ君ーーー!!!」






大きなキャリーバッグ、インドに似つかわしくない洋服、それは紛れもなくあのカンちゃん。


真面目なインド人であるカデルが一緒にいるのが少し気になったけど、構わず抱きしめた。


すでにこの気温で首に汗をかいているカンちゃんの肌がとてもとても懐かしかった。

カンちゃんの体、カンちゃんの匂い、カンちゃんの声、いくら抱きしめても足りないくらい柔らかくて、可愛くて、人とくっつくことの喜びがあふれ出すようだ。



あああ、会えた………………

本当にこのインドで会えるなんて。




俺たちの様子を見て、カンちゃんにくっついていたタクシー運ちゃんは別の客を探しに離れていった。









「ハジメマシテ!!インドヘヨウコソ!!」



「カデルだー!!はじめましてー。」




カデルの家に滞在している間、よくビデオ通話でカデルとも話していたカンちゃん。


英語ペラペラのカンちゃんだし、カデルもカンちゃんのことをすごく気に入ってくれているのですぐに仲良くなり、前からの友達のように笑いながらみんなで車に戻った。
























途中、ご飯を食べたりココナッツを飲んだりしながら車を走らせアラコナムに戻ってきた。



「わー、ここでずっと生活してるんだねー、フミ君。」



何もないただの小さな町であるこのアラコナム。

俺にとってはすでにホームタウンくらいにリラックスできる町なんだけど、カンちゃんにとっては当たり前に見知らぬインドの田舎町だ。


この牛、このクラクション、このボロい建物は日本人にはかなり衝撃的だと思う。






しかしカンちゃんはバッグパッカーだ。

すでにインドは3回目だし、カンちゃんはこうした個性のある国が大好き。

お化粧もちゃんとして、旅先でもオシャレを欠かさないような子だけど、道端にあるボロボロの屋台のご飯を食べ、小屋みたいな安宿に泊まれる女の子だ。


そんなカンちゃんだったら、この何もないけどインドの素直な顔を見ることができるアラコナムをきっと好きになってくれると思えた。























「カンチャン、セルバムスクールヘヨウコソ!!」




学校に到着し、家に入るとパパとママが最大の笑顔で迎えてくれた。





「カンダ!!モストウェルカム!!」



「カンダ!!イートランチ!!」





面白いことにカンダというのはこのタミルナドのヒンドゥーの神様の名前らしく、パパたちもすぐに名前を覚えた。

神田がインドでも神様の名前だなんて面白いな。





「いやああああ!!美味すぎて死ぬううううう!!!!」





カデルの家のこれぞインドという家庭料理に大興奮しているカンちゃん。








カンちゃんはパクチーが大好きだ。

他にも、日本人があまり得意としない海外の独特な風合いの味付けを好んで食べるので、このタミルナドのご飯は最高に美味しいだろうな。


ああ、もう、カンちゃんがここにいて嬉しすぎる。




カデルリクエストのお土産。


















カデルいわく、インドはすべての県がそれぞれのカレンダーを持っているよ、ということで、今日はタミルナドのニューイヤーらしい。


学校が休みなのでやることもなく、カンちゃんと3人で学校の中を歩き、敷地を案内して回る。


昨日までストーブを使っていたという日本から、この灼熱の南インドに来て汗をかいているカンちゃんの肌はとても健康的に美しい。


私焼けやすいからすぐに黒くなってまうー!!と困った顔をしている。


原野に散らばるヤシの木が太陽に照らされて熱風に揺れている。











元気いっぱいで明るくて、それでいて繊細で、頭が良くて、オシャレで、おとぼけで、誰からも愛されるカンちゃん。



カンちゃんはいつも、私外国で嫌な思いしたこと一度もないー、と言っている。


普通インドとか東南アジアとかをバッグパッカースタイルで回ってれば、嘘をつかれたりぼったくられたりして必ず腹をたてる。

俺なんかすぐムキになるから、こうした観光立国を回ってたらほぼ毎日何かにムカつきながら旅してる。



それがカンちゃんはないという。

みんないい人ばっかりだよーって言ってる。



これは、カンちゃんのほがらかな人柄が周りをいい人にしてるってことだと思う。




周りの人間を味方にするか敵にするかは自分自身の意識や行動次第なんだってことを、カンちゃんからよく学ばせられる。




















夕方になり、原野に真っ赤な太陽が沈み、夕闇が大地を覆う。

月が光り、夜風が吹き、ヤモリが鳴く。


そんなアラコナムの夜。









晩ご飯を終えて、いつものように外にタバコを吸いに出るんだけど、今日はカンちゃんと一緒だ。

2人で月明かりの下で向かい合う。



2ヶ月ぶりの再会だというのにカデルがいるから2人きりになれず、おかげでまだキスもしてない。




「カンちゃん、いつもここでタバコを吸いながらカンちゃんに電話してたんだよ。それが今目の前にいるんだなぁ。」



「ねー、面白いねー。」




カデルの学校の後にも行くところがあるので、2人きりになれるのはまだ当分先だ。

こうなると初めてのキスをテキトーにしてしまうのがもったいなくなる。

どんなシチュエーションでするのが1番いいかなぁ。


カッコつけてするのか、それとも何気なくするのか。カンちゃんが喜ぶ顔を見たい。









「わー、すごいなぁ。すごい自由だー。私今すっごい自由だよー。」




星空が広がっていて、オリオンが見える。

暗い夜の中にカンちゃんが笑顔で空を見上げている。




そうだ、俺たちは今とんでもなく自由だ。



仕事をやめ、お互いの親にも挨拶し、憂のないよう色んな準備をしていきている。


旅のお金も自分たちで稼げるし、前回みたいに2年という旅の期限もないので先を急ぐ必要もない。




お互いに旅が大好きで大好きで仕方ない上に、嬉しいことにこの星にはまだ面白そうな場所がたくさん残っているからありがたい。



なにより、俺たちの親や周りの大事な人たちがみんな健康であることを本当に幸せに思う。


旅に出られるための条件は色々あるけれど、すべてが完璧に揃ってる。







「これからずっと一緒なんだね。」



「そうだね。ずっと一緒に色んなところな行けるね。」





そのうち、タバコくらい1人で吸わせてくれないかな?とか言うようになるの?と笑いながら聞いてくるカンちゃん。


そんなこと絶対にない。

1秒でも多く欲しい。この人生の中でカンちゃんと体が触れ合っている時間が。






「あのバッグ、何があんなにたくさん入ってるの?お化粧品とかたくさん持ってきたの?え?コテも持ってきたの!?」



「持ってきたけど仕方ないの!だって私が汚くなるの嫌でしょ?女子力キープします!!」






2人きりで手をつないだ。



嬉しい。本当に嬉しいよ。ありがとうカンちゃん。

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