12月10日 月曜日
【ボスニアヘルツェゴビナ】 サラエボ
いやあ、快適ですね。
ホステルって素晴らしいですね。
これから物価の安い国では多用しそうですよ。
なんだかいっぱしのバッグパッカーに出世した気分ですよ。
みんなこうして快適にブログの更新や、ネットでチケットを調べたりしてるんですね。
充電の心配をする必要もないし。
楽すぎる!!!
そんな楽すぎる環境なので、他のバッグパッカーさんたちはホステルから出ずに、部屋でノートパソコンをパタパタ叩いてます。
1日どこにも行かない人もいます。
あんた何しに来てるの(´Д` )
僕はと言えばグータラしてるわけにもいかないので今日も路上です。
え?昨日警察に怒られたじゃないかって?
まぁ大丈夫でしょ。
町の人はみんな受け入れてくれてたし。
1時間やって場所変えて、また1時間やって、って感じでゲリラ的路上作戦だ!!
外に出ると一瞬で鼻水が凍ります。
昨日よりはるかに寒い!!!
マイナス15℃くらいです。
昨日はメインストリートの真ん中あたりでやってて怒られたので、今日は端っこのほうへ。
指が凍傷おこしそうなくらい寒い中で歌う。
ハーモニカの鉄の部分が凍てついて唇の感覚もなくなる。
うー、気合いだ気合いだ気合いだ気合いだ気合いだ。
順調に稼いでいるとすぐ向こうでジープスの子供が地べたに座りこんで歌いはじめた。
日本にはない、ジープス音楽の物悲しいメロディ。
小さい女の子が震えながら幼い声をあげている。
下手だけど、シチュエーションもあいまってとても胸に響く。
女の子の母親らしき人がやってきて、売り上げのチェックをしている。
もっと小さな赤ちゃんを抱えて通行人に手を差し出している。
向こうの方から歩いてきたおじさんは、手を頭上にバッ!と振り上げ、バッ!!と振り下ろし通行人に手を差し出す。
あんた物乞いなのに偉そうすぎ(´Д` )
みんなみんな荒んだ表情。
極寒の霧が立ち込める町の中、様々な人間が歩いていた。
そんな路上で、意を決してイマジンを歌った。
かなり怖かったけど声を張り上げた。
想像しよう
天国なんてない
簡単なこと
僕らの足の下には地獄はなく
僕らの頭の上には空があるだけ
想像しよう
今日という日を生きる
想像しよう
国のない世界を
難しくない
殺される理由も死ぬ理由もなく
宗教もない
想像しよう
平和に生きることを
想像しよう
何も持たないことを
あなたなら出来る
欲も飢えもなく
みんなが愛し合う
想像しよう
世界を分かち合うんだ
みんな俺を夢見がちなやつだと言う
でも俺は1人じゃない
いつか君も僕たちと同じように考えて欲しい
世界はきっとひとつになる
笑う人もいるだろうな。
なんて現実を知らない奴だ、って。
そうだよ、俺は平和ボケした日本人だよ。
でもこれまでの旅の中でみんなが言ってくれた人間はみな同じ、という言葉が本当なら、俺にもこの歌を歌う権利はあるはず。
ユーゴスラビア紛争は終わった。
中東はまだまだ不安定だし、日本と中国も小さな争いが絶えない。
でも確実に世界はひとつになりつつあると思う。
そんなサラエボの路上。
午後になってもう一度路上。
凍えながら宿に戻ると、この宿のボスがいた。
「イエー!!ジャパニーズフレンド!!なんぼ稼いできた!!?」
テンション高いな(^-^)/
数えると午前と午後をあわせて106マルクあった。5000円。
ボスニアヘルツェゴビナの平均月給は4万円。
「マジか!!?嘘だろ!?このサラエボでそんなに稼いだの?!たった2時間で!!ちょっと歌ってみてよ!!」
談話室でギターを弾いて歌った。
「………コノヤロウ!!てめースゲーじゃねえか!!よし!!フミ!!お前今週いっぱい宿泊タダ!!」
マジいいいいいいいい!!!!!!!
「そのかわり金曜日がこのホステルの5周年で、パーティがあるんだけどその時に歌ってくれ!!洗濯もタダ!!」
ま、また、滞在がのび…………
まぁ、面白そうだから………
あ、彼女のキレる顔が(´Д` )
実はドブロブニクを出発した時に大きなミスをおかしていたのだ。
ドブロブニクからサラエボに向かう道の途中、ボスニアヘルツェゴビナの国境を越えたすぐのところにモスタルという地方都市があるんだけど、その町がこの国の1番の観光地なのだ。
ボスニアヘルツェゴビナと言えばこれ!!というものすごく綺麗なトルコ建築の橋があるのがモスタル。
下調べが足りず、わざわざモスタルの町にバスが止まったというのにそれを知らず素通りしてしまうという旅人らしからぬミス。
ま、まぁ、縁がなかっということだよね!!そうそう!!全部は回れないからね!!
いいいいあああああ気になるうううううう!!!
というすっごいモヤモヤに悶えていたところで、このお誘い。
よし、金曜日までにモスタルまで行って戻ってこよう。
モスタルにはどうやって行けばいいですか?
とたずねると、さすがはこの国を代表する観光地。そしてさすがはホステル。
バッチリ壁にモスタル行きのバスの値段と時刻表が貼られていた。
サラエボ発……8時
モスタル着……10時
モスタル発……14時
サラエボ着……16時
往復値段……28マルク(1400円)
小さな町なので4時間もあれば充分回れるだろう。
あああ、ホステルって便利いいいい。
さて、今夜はサラエボ初日に出会った若者たちが、面白いところに連れて行ってあげると言っていた月曜日。
ホステルで待っていたら彼らが迎えに来てくれた。
ちゃんと約束守るんだもんなぁ。
「今週いっぱいタダで泊まれるって!!??すごい!!?たった1日だけの滞在のはずが1週間になっちゃったね!!ハハハハ!!」
彼らと向かったのは中心部から結構離れたところにある、静かな裏通りの建物。
なんだ?
ここで何かやってるのか?
ボロい建物に入ると、入り口で怖そうなおじさんにボディチェックを受ける。
ヨーロッパのナイトクラブにはたいがい用心棒がいて、ボディチェックを行っている。
さて、中に入ると………
すげえーーーー!!!!
なんだこれえええええ!!!!!
広いホールの中に、ものすごい数の人々がひしめいていて、みんな酒を片手に大盛り上がり。
アコーディオンとギター、パーカッションのバンドが席を回りながら賑やかな演奏をしている。
タバコの煙が充満し、映画の中の光景そのまんまだぞ!!!
どうやらここはかつての映画館みたい。
ホールがそのままパブとして利用されている!!
ビール片手に破れたシートに座る人々。
映写室の窓もちゃんとある。
すげえすげえ!!
もうニューシネマパラダイスの世界そのまんまだよ!!!
「気に入ったかい?月曜日は特に盛り上がるんだよ。今でもアマチュア映画が上映されたりするんだよ。」
キーノボスナという名前のこの古い映画館。キーノというのは映画という意味。
映画館ってなんかレトロで郷愁を誘うよね。
バンドがボスニアの伝統的な曲を奏でると、みんなで大合唱になる。
つい20年前に凄惨な紛争が起こっていたとは考えられないよ。
紛争の間、恐ろしくて家から出られなかったとみんなが教えてくれた。
この美しい曲をみな怯えながら歌っていたのかな。
それから次のクラブに移動。
そこは大きなダンスクラブで、赤い照明の中で人々がセクシーに体をくねらせていた。
ここは今までのヒップホップやハウスのクラブじゃない。
サルサだ。
踊ってる人たちもめちゃ上手い。
本格的すぎて、まるでコンテストでも見てるようだ。
サラエボではポピュラーなのかな。
ひたすら飲みまくり、みんなと別れたのが3時くらい。
フラフラしながら、宿に帰る。
ひと気のない町、道路の真ん中を雪を踏みながら歩く。
静かだなぁ。
野良犬がいたのでなでてやった。
雪の上にゴロンと転がってお腹を見せてくる。
なでなでしてまた宿に向かった。
ゴメンな、今日は俺帰るところがあるんだ。
静寂の町に犬の遠吠えが響いた。