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辛いことばかりだった大阪に戻ってきた








2006年3月16日 【大阪府】

 



雨の大阪。




ミナミの心斎橋アーケードを歩く。


懐かしいキャッチ場所。





来る日も来る日もここで女の子に声をかけまくってたあの日々。


安い99ショップのレトルトハンバーグ食べて、ビールを浴びて、家出少女たちと遊んで、ろくな毎日じゃなかったけど、他じゃ絶対できない経験をさせてもらえたのかな。


あの頃戯れていたメンバーは今ごろどこに行ったんだろう。

段ボール拾いの爺ちゃんはどこに行ったんだろう。







働いていたホストクラブがあったビルに登ってみた。


結構高いビルなので宗右衛門町のゴミゴミとした雑居ビル群を見下ろすことができる。


閉店したあと、酔っ払った頭でいつもここから朝の街を見ていた。



女、仲間、酒酒酒…………


全部薄っぺらい関係だった。


エムさん以外。









ひっかけ橋に行ってみると、改修中なのか橋がまったく別物になっていた。




飛び込めないようにアクリルボードの塀ができ、橋自体もピカピカのモダンなものになっている。



なんだか閉塞感がある。


いくらきれいになるっていったって、ここは大阪で1番いじっちゃいけない場所だったと思う。


あの汚い黒ずんだ橋の上、殴られ屋がいて、ファイアーパフォーマンスやってる人がいて、頭のおかしいオッチャンがわめいてて、なんかあれが古き良き大阪の風景のひとつだった気がする。



もうあの日々も過去のこと。


先に進もう。











難波にある大好きなたこ焼き屋『大阪で一番おいしいタコヤキ君』で腹ごしらえして、大阪城へ向かう。


車はもち路駐。

大阪は相変わらず路駐天国だ。





尾張の貧しい百姓のせがれとして生をうけ、信長の草履係から天下人にまで登りつめた豊臣秀吉。


身分制がはっきりしていて家柄がとことん重んじられる時代に、これはとんでもない奇跡だよな。


信長没後、政治の主権を握り、居城として大阪城を建てた秀吉。


地震や火災による被害で天守閣は昭和年代の再建だが、立派な石垣なんかは当時のままだ。


お城を含む敷地は今でもスーパー広いんだけど、昔はこれの4倍の面積があったというから、いかに秀吉の権力が絶大だったかがうかがえる。







ところで、僕は旅に出る前まで『大阪冬の陣・夏の陣』って猪木の興行の名前だと思ってました。



え?!!そうじゃないの!?




って思ったあなた。




そう!!そんなこと知らなくても生きていけます。






関ヶ原の合戦で石田光成をやっつけて天下統一を果たした徳川家康。


が、家康からしたら豊臣秀吉の子、秀頼がまだ生きていることが気になる。


秀吉が死んだとはいえ、豊臣の血筋はまだまだ力を持っている。

そのうち面倒なことになるかもしれない。


死にかけてた秀吉から「家康ー、秀頼のこと頼んだぎゃー…………」と遺言を言われていたくせに、そこは鳴くまで待とうの家康でももう待ちきれない。


早いとこ豊臣の血は絶やしておきたい。



そんで無茶苦茶な難癖をひねくり出して秀頼がいる大阪城を取り囲み戦争スタート。




が、大阪城は天下の堅城。


正攻法では時間がかかる。


というわけでここは一旦和睦の申し入れ。


自分からケンカ売っといてやっぱり仲良くしましょうよってアホかこいつ?とあきれる秀頼だが、母ちゃんの淀殿が、まぁいいやんかと和睦を受け入れる。


ここまでが冬の陣。






この時、和睦の条件として、


「もう闘わないんだからこんなもの不要じゃないですか。いらないいらない!!」


と、城の堀を埋められてしまう。



そんでもって城が落としやすくなったところでまた難癖をつけて再戦。


これが夏の陣。


もちろん大阪城3日で落城。


これにて戦国時代は終了。


豊臣の時代を完全に終わらせて天下泰平の徳川さんの時代到来というわけだ。


戦国時代は戦の理由なんてなんでもいいんだな。






さて、600円払って天守閣に入城してみた。












1階から8階まで城の歴史や夏の陣・冬の陣の解説、秀吉の生涯など、ハイテクな映像やパネルでわかりやすく展示してある。


今まで行った城の中で1番充実した設備だな。


もちろんこの前の犬山城みたいなリアルな迫力は全然ないけど。






それにしても夏の陣の真田幸村はすごい。


なかなか決断ができない情けない秀頼にしびれを切らして、もう頼りにならん!!ボケが!!とわずか3500の兵で単身家康軍に突撃し、数万の軍勢をかき乱し、一時は本陣まで蹂躙、家康に自刃まで覚悟させたという獅子奮迅の攻撃を見せた真田幸村。


最後は囲まれて壮絶な討ち死にをしたという。


んー、武士の鑑だな。










さてさて、大阪城で真田幸村のカッコよさを学んだところで、この勢いであそこに行きましょうか。



いやぁ…………かなり気がひけるんだけど、ここまで来て行かないのもなぁ…………



大阪時代、血を見なかった日がなかった恐怖の鳶会社。


めちゃくちゃズタボロにしごかれて毎日のように乱闘騒ぎしてたあそこに行くなんてまぁまぁ真田幸村の気分だけど、ここは幸村先輩を見習って勇気振り絞って突撃してみるか。


「関係ないモンが何しにきとんじゃ?お?」とか言ってボコボコにされる可能性もなきにしもあらず。








車を走らせて懐かしの道を通り、会社の前に到着した。


事務所の横にある食堂の中から男たちのガヤガヤという声が聞こえてくる。


こ、怖え…………

ここでよく殴り合いしてたよなぁ…………




おそるおそる食堂のドアを少し開けて中を覗く。



うわー、いっぱいいるよ……………




「ん?……………お!!ワレ何しとんねん!!」




いきなり目が合ったのは会社の絶対神、宮本部長。


ひいいいいいい!!!!




「ワレちょっと来いや。」




引っ張られて奥に連れて行かれる。




こ、殺される!!!!


うわああああああ!!!!





すると向かったのは食堂の隅のテーブル。



そのテーブルにいたのは会社の会長、常務、社長、幹部の皆々様。


どっからどう見ても仁義なき戦いの出演者たち。





「会長、こいつ3年ほど前に働いてた若いもんなんですけど酒飲ませたいと思います。失礼します。」



「し、し、し、シツレイシマス!!!」



「おう。」




はあああああああああ………………


た、助かったああああああああ………………






会社で1番仕事ができるといわれている優しい知念さん、洋楽好きの小澤さん、そして恐怖のアニキ、ヒロシさんと4人で飲む。


全員が組の職長クラスの方々で若い衆からは鬼のように恐れられているメンバーだが、組の人間じゃなくなった今、みんな驚くほどやさしい。



「よし!!飲み行くで!!」



「え?明日大丈夫ですか?」



「ええ、ええ。わしらこの前も3日寝らんで行きよったからの。」



結局この夜は4人で守口のクラブで吐くまで飲みまくった。


3年も経った今でもこんなにやさしく迎えてくれるなんて、本当に嬉しかった。


この会社ではいきなり夜逃げしたり、ボコボコにされて飛んだり、とにかく後味悪くいなくなるやつばっかりだったけど、最後まで気合いで頑張ったことでこうして今も笑顔で迎えてもらえている。


逃げるって、帰れない場所を作るってこと。


そんな人生絶対嫌だ。


どこに行っても、帰る場所があるような人間関係を作っていけるようこれからも頑張ろう。












翌日。








よし、今日は大阪北部を攻めるぞ!!



箕面市の森の中を走り百名瀑の箕面滝を見て、駐車場代がアホのように高い勝尾寺を素通り。



県北ののどかな風景広がる能勢町にやってきた。


やわらかな日差しとおだやかな風が心地よい。


ああー、春だなぁ。








この能勢町。


普通なら絶対来ないであろう何もない田舎町なんだけど、ではなぜやってきたのか。


ここは酒飲みの間では有名な日本酒『秋鹿』の秋鹿酒造があるからだ。




事前電話で蔵見学が出来ないのは聞いていたがそれでも蔵の前まではやってきた。





蔵の周りには干した酒袋が風に揺れている。


追いこみの時期で、蔵人さんたちが忙しそうに走り回っている。


とりあえず事務所に入っていき、お話をうかがった。






この蔵の最大の特徴はやはり米。


仕込みに使う山田錦のほとんどをこの能勢で契約栽培しているとのこと。


自社田では80歳を超える現役社長が自ら稲を植えているという。




普通の蔵は兵庫県産の山田を使う。


仕込み水でさえヨソの清流から運んでくるところもある。


それに比べ秋鹿はまさに地酒。


しまも全量純米。


なんてこだわりだ。





能勢山田錦の純米吟醸『歌垣』を購入した。


久しぶりの気合いの入った日本酒ゲット。


ああ、夜が楽しみだ。



















妙見山にお参りしてから大阪市に戻ってきた。


今日はどこで歌ってやろうか迷いつつ、十三を通り過ぎ梅田に向かう。





東京でいう六本木と銀座のように、大阪では若者の街がミナミ、大人の金持った人たちのネオン街がキタとなっている。


よっしゃ、そういうことならば超高級クラブ街の北新地で歌ってやる!!







今夜は花キン。


街はお祭り騒ぎ状態で沸き立っていて、そんな中をギターを持って歩く。


まったくもってきれいな通りに高級そうなテナントビルが立ち並ぶ北新地。


頭の悪そうな呼び込みや立ちんぼはここにはいない。



みんなホテルマンのようにピシッとしているし、歩いている人もスーツにトレンチコートって感じでジェントルマンを絵に描いたような人ばかり。


同伴や見送りに出てくる女の人たちもモデルや女優さん並にスタイルがよくきれいで、あと着物率がやたら多い。


そういえば3年前、京都の円山公園で出会ったおばちゃんが言ってたな。




『北新地でそんな格好しとったらどこのはぐれかと思われるで。』




上等じゃねぇか。







ネオン街のど真ん中、宮殿のようなビルの前でギターを鳴らした。


こんなとこで路上やるやつなんていないのか、みんなギョッとした目で見ていく。


でも反応はいい。


しかもみんな見栄の塊なのか、それとも別に痛くもなんともないからなのか、置いていく額が一桁違う。



わずか1時間半で3万円に!!!


す、すげぇ北新地!!!!









ああ、それにしてもここんところ順調だなぁ。


大阪最大のネオン街でも稼げたことだし、これならどこに行ってもやっていけそうな自信もついてきた。


最近ホントめちゃくちゃ歌ってるもんなぁ。


旅の前半は知らない街にビビって全然路上やってなかったけど、北海道からの下りではアホみたいに毎日歌ってきた。


やっぱり逃げ腰になってるんじゃなくて、とにかくぶつかってぶつかってぶつかって、自分をキツい状況に追い込まないと歌に真実味が乗らないんだろうな。



手持ち金もだいぶ増えて心にゆとりがある。


さぁ、これで3年越しの大阪も完了。






よーし、行くぞコンチクショー!!


次の県だ!!





【和歌山県・2度目の大阪編】


完!!!!




リアルタイムの双子との日常はこちらから





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