2004年 9月26日
あーーーーーーーーーー、指痛いよーーーーーーーーーーーーー。
昨日ぶった切った指がジンジンうずいて仕方ない。
はぁぁ、めちゃくちゃ痛い…………
病院に消毒に行って包帯を取ると、もうめっちゃグロい。
なんかもうイモムシみたい。
でも傷口は上手いこと塞がっていて、関節のシワも合っている。
さすがお医者さんだなぁ。
包帯を巻き直してもらったらヒロちゃんの通ってる中学校へ向かった。
うわぁ、学校なんてすげぇ久しぶりだ。
校内は学生と親たちで賑わっていて、明らかに親世代じゃない俺とユウキはめっちゃ浮いてる。
バザーの食券を持って教室でやってるPTAの食堂にうどんを買いに行くと、バンダナを巻いて爽やかな格好をした山田親方がうどんを茹でていた。
「山田さん!!」
「おーー、はっはっは、変なとこ見られたな。」
山田親方大変だなぁ。
仕事、PTA、家族との時間、いいお父さんだ。
うどんを食べてると、ヒロちゃんが仲良しグループと一緒にやってきた。
「えっとねー、え?言っていいしょ?」
「ちょっと…………待って…………」
教室の入り口のところで女の子がモジモジしている。
「あの子が文武兄ちゃんに言いたいことあるんだって。」
「なに?」
「言うよ!!」
「えーー!!いやーー!!待ってーー!!」
「カッコいいから握手してくださいって。」
「キャアアアアアアアアアアアア!!!!」
逃げていく女の子。
「ホラ!!はっきり言いなよ!!ホラ行って!!」
「恥ずかしい!!無理!!」
懐かしいなぁこういうの。
中学生ってこんな感じだったよなぁ。
まぁ、悪い気はしないよね。ありがとう!!
普通に握手してみんなでお喋りした。
ヒロちゃんが俺たちのこと自慢げに話してくれてるのが嬉しいな。
「あ、ヒロちゃんのお兄さんですか?」
話しかけてきたのはヒロちゃんの担任の先生だった。
前に富良野の夏祭りの時、三日月食堂っていう、北の国からの「子供が食べてる途中でしょうが!!」のあのお店の前で路上やったんだけど、あれを見てくれてたみたい。
若くて結構美人な先生だ。
「ヒロちゃん、日誌とかにお兄さんたちのこといっぱい書いてますよ。」
ホント、こんな北海道の田舎で妹ができたみたいだよ。
日本酒、男山の蔵元に行ったり、旭川の骨董市に行ったり、バタバタと過ぎていく毎日。
美瑛の現場はとうとう建前が始まった。
これまで切り込んでいた柱や梁を組み合わせていく。
寸分の狂いもなくピタリと収まる角材。
さすが山田親方。
すごいなぁ。
ちなみに大工の世界では今でも寸尺で長さを計算する。
1間が1818ミリ、1尺が303ミリ、1寸が30.3ミリ、1分が3.03ミリといった具合。
ログが盛んなカナダの寸法は12インチが1フィート。
そして1インチが8分割される。
つまり8進法から12進法に変わるというややこしいもの。
1インチが1センチでもないし、日本の大工が向こうに行っても仕事にならないんだそうだ。
左手の激痛を我慢しながら木材を運ぶ。
でもこんな片手じゃろくな仕事ができない。
お風呂では怪我してる手にビニール袋をかぶせて入ってるんだけど、片手で頭なんか洗えないし、タオルを浴槽のヘリにかけて、それに体を擦りつけて洗ってる。
不便極まりないわ。
でも痛みはだいぶ引いてきたかな。
建前作業は2日間でバタバタと進み、あっという間に母屋木の頂点、棟木が架かった。
垂木をはわせ、四分板を敷いていく。
これで棟上げだ。
そんな屋根の上で、山田親方が曲芸ばりの逆立ちをした。
うわっ!!!!
危ない!!!!
大丈夫か!!!!
みんなの心配をよそに軽やかな身のこなしでサッと立ち上がる山田親方。
「いやー、なまったわー。昔は逆立ちで棟木の上を歩けたんだがなー。」
これもまた棟上げの時の大工さんのお約束みたいだ。
すると、農場主さんの息子君が走って俺たちのところにやってきた。
「ほら、雪虫。」
見ると掌の上に1匹の羽虫がいた。
体に青白い毛が生えている。
この雪虫とは北海道の冬の季節便りで、こいつが飛びはじめると、ああ、そろそろだなぁって、人々は長い冬に向け準備を始めるんだそうだ。
憧れていた北海道の冬がもうすぐそこまでやってきていた。
リアルタイムの双子との日常はこちらから