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優しさに甘えてて怒られた日







リアルタイムの双子との日常はこちらから






2004年 10月3日



今日は朝から麓郷に向かった。


2年間温め続けた北海道小屋建設計画の場所探しをしよう。


中田さんや鈴木親方、いろんな人に相談しまくった結果、原野・荒廃地を探し出し、めぼしをつけてそこの地主さんに交渉に行くという手順が良さそうだった。



原野・荒廃地は土地の税金がかからない。

建物には固定資産税がかかるが、微々たるもの。


北海道には放置された土地がいくらでもあるそうだ。


まずは足を使うぞ!!








原始ヵ原周辺は、広大な畑の隙間隙間に草ボーボーの原野がたくさん見られる。


どこでもいいわけではない。


やっぱりそれなりに景色が良かったり、草原の中だったり、孤独な美しさのあるような場所がいい。


立地やロケーションを吟味しながらトロトロと走っていく。









途中、原始の泉っていう湧き水で喉を潤した。

周りを見渡すと、明らかに荒廃地という草ボーボーの土地。


そびえる十勝岳と、どこまでも広がるパッチワークの畑風景。


うん、ここいいな。







富良野は1997年に開基100年を迎えた新しい町。


だからまだ大半が手付かずの原野だ。


道南から始まった開拓は札幌、旭川と広がり、そこから南下して美瑛、上富良野、中富良野、富良野、南富良野と拓かれてきた。



その中にはアイヌの人たちの部落もたくさんあったようだ。

自然と共生して暮らしていた彼らだけど、そうした開拓によりどんどん追いやられ、今では観光資源のひとつにされてしまっている。


アイヌの人たちも、このがんじがらめの現代社会では今までのように生きていくことが出来なくなり、熊の置物を彫ったりアイヌ衣装を土産物にしたりして暮らしているようだ。



開拓時代には相当ひどい仕打ちをしていたみたいで、北海道の年配の人たちにとってアイヌの話題はタブー的なものになっているのも感じる。


みんな口をつぐむし、こっちも気を遣ってなかなか聞けない。


きっと凄惨な出来事とか、差別とか、色々あったんだろうな。



でも今となっては俺たちみたいな若い世代にはそのリアルな歴史は伝えられてない。


学校でも、何があったかなんて習わない。


真実を勉強しなきゃなぁ。














麓郷からぐるっと山のほうを抜けて鳥沼公園ってとこにやってきた。


北の国からで宮沢りえとジュンがボートに乗った池のある公園。


静まり返った池には誰でも乗っていいボートがあって、ユウキとウッヒョオオオオオオオ!!!とぶつけ合って遊んでいたら、管理人のおじさんに死ぬほど怒られた。


すみませんでした…………









それから農家さんなら何か情報を持ってるかもしれないと、メロンの萩原農園に行って、おじさんにどこか余ってる土地がないか相談してみた。



「まぁこれ食え。」



差し出されたメロンを食べながら話を聞く。



「土地か。100坪くらいあればいいか?」




い、いや………10坪もあればいいです…………


北海道の人のスケールでけぇ。



「1週間ほど時間くれ。知り合いとかにも聞いといてあげるよ。」



そう言ってくれた萩原さん。

忙しそうにブドウ畑の中に潜り込んでいった。







それにしても、さっきのユウキの言葉には驚いた。



萩原さんが、で?誰が作るんだ?って聞いてきた時、ユウキは「あ、2人です」と言った。


呆然としてしまった。


これまでユウキが色んな人に、「一緒に旅してるんです」みたいなことを言ってるのを俺はずっと我慢していた。


北海道を2人で周ると言い出した時も、マジかよと思いつつ何も言わないでいた。


車のないユウキ。



行動する時はいつも俺と一緒になるので、今週はあそこ、来週はあそこに行こうという俺の計画に着いてきては、次の日に「あそこ行ったんですよー」とみんなに話している。



そして今回の発言。




ダメだ、もーーーダメだ。



俺が今まで1人で頑張ってきた旅も、ユウキが一緒に周ってますって言うたびに2人のものになってしまう。




お前何しに北海道きたんだよ?


俺がやることを一緒にやるためか?


1人で何か成し遂げるために北海道来たんじゃねぇのかよ。



ユウキとの時間は確かに楽しいし、萩原さんとか中田さんに出会えたのもユウキのおかげではあるけど、そこはちゃんと線引いてないとお互いの大事なものを侵害してしまいそうだよ。



ちゃんと言わないとな。













中田さんは相変わらず晩ご飯に誘ってくれていた。


俺たちの財布事情を心配して、なるべくお金を使わせないようにしてくれてるのが分かってすごくありがたいんだけど、あんまり毎日毎日行きすぎるのもダメだと、最近は少し間を置くようにしていた。


でも3日も経たずにまた中田さんのおばちゃんから、カレー作りすぎたからおいでー、なんて電話がかかってくる。


そしてノコノコと俺たちもお邪魔してご馳走になる。


おばちゃんのご飯はめちゃくちゃ美味しいし、おじちゃんの話は社会人として勉強になるし、ヒロちゃんはお兄ちゃんお兄ちゃんって慕ってくれてすごく可愛いし、こんなに仲良くできてるのに変に遠慮するのもおかしいのかなとも思えてくる。


でも甘えすぎてるのもやっぱりダメなんだよなぁ。




この前、大家さんの川渕さんに3万円の家賃を払いに行ったら、


「あーー!!もう!!1万円でいいから!!私たち商売人じゃないんだから!!ホントは1万円ももらうつもりはないんだけどねぇ。あ、家の裏口にビール置いといたから飲んでね。」



そう言って俺たちが差し出す3万円から2枚を取って瞬時に俺のポケットに突っ込んでくる川渕さん。



もう…………みんな優しすぎる。


これが本来の人間なのかな?って不思議な気持ちになってしまう。


もまれてもまれて用心深くなったり、人からの心遣いを期待しなくなったり、それが現代人のはず。


でも富良野ではまったくそんなことないってのを心底感じる。





感じるけど……………



どこまで甘えていいかが分からなくて不安にもなる。


どこから以上は断るべきなのかってのがわからない。



俺お金ないし、真心で応えようとは思ってるけど、それだけじゃ足りなさそうだし、でも距離置いたりするのも違うと思うし。


難しいなぁ。











そんなある日のこと。


この夜も中田さんの家で焼肉を食べさせてもらっていたら、中田さんがちょっと怒っていた。


なにやら近所の人から、中田さんのとこ、最近若い人が出入りしてるね、あんまり呼ばないほうがいいんじゃない?なんてことを言われたんだそうだ。


そんなのウチの勝手しょや!!って怒ってる中田さん。



変な流れ者が居ついて、中田さんたちを食い物にしてるみたいな風に見られて、それを近所の人が心配して親切で中田さんに忠告したような感じなのかな。






周りの人からそんなふうに見られてたのかと思うとめちゃくちゃ悲しくなってしまった。


おじちゃんおばちゃんにもそんな迷惑かけてしまってすごく申し訳ない。



そんなの気にしないでいいからね!!と明るくしてくれるおばちゃん。



「よし!!みんなでヒロ子の赤ちゃんのころのビデオを見よう!!」



「何見てるのー!!プライバシーの侵害しょやー!!」



「別にいいやん。へー、これがこれになるんやー。」



「これウチじゃないー!!」



こんなに暖かい中田さんたちと、どう距離をとればいいのかなんてわからないよ。


でもちゃんと気は遣ってないとな。












しかし、やっぱり人間関係って難しい。


この数日後に事件が起きてしまった。









仕事を終えてトラックで美瑛から富良野に戻っていると、ユウキから電話がかかってきた。


今日はユウキは別の現場に応援に行っていたんだけど、そこの親方とご飯を食べにいくことになったとのこと。



「終わったら電話するから迎え来てよ。」



「…………ああ。」



仕方ねぇなぁと思いつつ、コンビニで立ち読みしたり、「一丁目」っていう居酒屋でラーメン食べたりしてるうちに21時になった。


まだ電話かかってこない。



クソー…………


愚痴りたくなって中田さんに電話してみた。



「ちょうど良かった。俺も話あるから今からウチ来い。」



ちょっといつも違う雰囲気のおじさん。

何だろうと思いながら行ってみた。






机に向き合って座るおじさん。



「昨日の友達連れてくるって話。言っとくけどあれダメだからな。文武は分かってると思うけど。」



アレは昨日のことだった。


先日、地元の友達のマコトが今度富良野に遊びに行くよと電話してきて、ジンギスカンが食べたいと言っていた。

それに対してユウキが、富良野の家族と食べられるかもよと話していた。


軽い冗談だろうと思っていたんだけど、昨日中田さんちにお邪魔した時にユウキが言った。



「おばちゃん、今度友達が遊びに来るんだけど連れてきていい?」



「え?………いいよ。」



「でね、リクエストがあるんやけど。」




おいおい!!!

マジかよ!!!




「お前やめろよ。」



「いや、話すだけやが。」



「言うなよ!!そんなこと!!」



「いや、その友達がジンギスカンが食べたいって言うんやわー。材料は俺たちが買ってくるから。」



明らかに困惑していたおじさんたち。


今俺たちは中田さんたちに甘えすぎてて、これからは少し遠慮していこうと思っていたところだったのに、その矢先にこんなお願いするなんてどう考えても図々しかった。


案の定、あの件についての話だった。



「文武、お前たちもいったら他人。その他人がさらに他人を連れてくるなんて考えられんだろ?おじさんたちはお前たちといい関係でいたいから言ってるんだからな。」



そりゃそうだ…………



「今まで2人のことをずっと見てきてるけどな、ユウキは甘えてるな。移動手段にしても、休日の計画にしても、これからの計画にしても、お前に便乗してるだけしょや。お前がちゃんと言わなきゃダメだぞ。」



おじさんの鬱憤がとうとう溢れた。


結構ガッツリ怒られてしまって凹んでいるところにユウキから電話がかかってきた。



「あ、文武?俺もう家着いたよ。タクシーで。」



ユウキに伝えておきますと中田さんちを出た。









山部の家に着いて中に入ると、ユウキがガクンと肩を落として生気のない顔でうなだれてた。



「中田さんから電話があった…………待たされる身にもなってみろって…………」



どうやら俺が帰ってる途中におじさんが電話して軽く怒ったみたいだった。


ユウキは応援先の親方とスナックをハシゴし、電話をかけようと思ったんだがケータイの電池が切れたみたい。


でも俺に電話をかける方法なんて何かしらあったはずだ。



俺の旅は俺の旅、ユウキの旅はユウキの旅。

そこんとこちゃんとしようぜってところも含めて俺も軽く話した。



「…………もう…………わけわからんわ…………もう中田さんち行けんて………はぁ……………」




この世の終わりみたいな顔してるユウキ。


まぁ、明日ちゃんと中田さんに謝り行こうぜということにしてこの日は布団に入った。




富良野の優しい人たちに甘えすぎないよう、もっかいちゃんと気を引き締めよ…………








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