こんにちは!神田です。
昨日も書いたんですけど、現在地バンコクです。ひさびさのバンコク。
前回は定番のカオサンで宿をとってそこらへんをぷらぷらしてたんですけど、今いる場所は少し中心地から離れた静かな場所にいます。
宿には騒がしい場所に少し疲れたような中年の欧米人のひとり旅の人がたくさん泊まってて、居心地がいいこの場所に長居してしまいそう!!!
大忙しだった楽しい毎日がひと段落したので数日フミくんとのんびり過ごそうと思います。
おわり
2018年1月16日(火曜日)
【シンガポール】
シンガポールの観光ビザの滞在可能日数は30日。
なので俺たちは1月の20日に出ないといけない。
そしてマレーシアに行き、25日に飛行機でタイのバンコクに飛ぶという予定。
でも正直マレーシアで5日もなにする?ってカンちゃんと話す。
クアラルンプールに行って俺とカンちゃんが出会った思い出のサテー屋でご飯を食べられたらそれだけでマレーシアは充分なので、5日もあったら持て余す。
だったらあと3日くらいシンガポールを延ばして路上やったほうがいいんじゃないか?
ここ数日、風邪をひいて歌えてなかったし、最初のころに路上のコツが掴めなかったこともあって想像より全然貯蓄ができてないんだよなぁ。
3日だけでもキッチリ歌えるならかなり意味はある。
というわけで、シンガポールをもうちょいだけ延ばすことにした。
ではビザはどうするのか?ってとこだけど、これはマレーシアへのビザランになる。
シンガポールの北の国境沿いにはマレーシアのジョホールバルという大きめの町があり、そこに日帰りで遊びに行って戻ってきたらまた新たな14日がもらえるっていう寸法だ。
陸路入国の場合は14日。空路入国だと30日。
ただシンガポールは周知の厳しい国なので、そんな何度もビザランをかまして長く滞在していると、怪しまれて入国拒否を食らう可能性が高いので充分な注意が必要。
まぁ俺たちは今回が初めてのビザランだし、延ばすといっても3日だけだし、その後の航空券も持っているのでまず問題ないだろう。
なによりカンちゃんと一緒にいると平和オーラが出るので、今回の旅ではまったく国境で揉めることがない。
ヨユーヨユー。
スパッとジョホールバルに遊びに行って、そんでシンガポールに戻ってきて最後まで路上頑張ろう。
というわけで一応、ヒゲを剃り、綺麗な服を着て、ブーツを履き、今できる1番旅人っぽくない格好でアパートを出発。
またここに戻ってくるので荷物は全部置きっぱなしだ。
今日はこっちに戻ってきてから夜にまた人と会う約束があるので路上はなし。
昨日ズタボロだった喉を休めて、体も体力も温存しないとな。
「いやー、今日は楽しいデートだねー。違う国に日帰りデートってすごいよね。」
「ねー。デート嬉しいー。なんか安いもの買えるかなー。楽しみ!」
「お?カンちゃんカンちゃん、ガチャガチャだよ。あ、カンちゃんみたいなのがあるよ。」
「違うし!!こんなんちゃうし!!」
めっちゃ気持ち良さそう。
カンちゃんのほっぺたみたいやね!
というわけでこのキャオマルをゲットしてプニプニしながら今日1日デートを楽しもうと思ってガチャガチャ。
ガチャガチャとかめっちゃ久しぶりやし!!
もうなんなの…………
なんで全然関係ないの入ってるの…………?
なにこのスライム…………
いやぁ、確か子供のころもこういうことあったよなぁ。
表示の商品と全然違うの出てくるんですよね。クソしょうもないやつが。
そんで商店のおばちゃんに文句言うと、当たり外れがあるんだよーって言われる。
子供のお小遣いなんだと思ってやがんだガチャガチャ業者!!!!!
ちゃんと表示してる商品しか出てこんようにしろ!!!!
謎の蜘蛛入りスライムという、クソどうでもいいことこの上ないものをゲットして、いきなりモヤモヤしながら街へ向かう。
ジョホールバルまでは街中から直通バスが出ているのでとても簡単。
ブギスのクイーンストリートバスターミナルに行くと、何台もジョホールバル行きのバスが止まっていて、ソッコーで乗り込むことができた。
1時間かからないくらいの移動で、値段は3.3ドル、280円。安い。
しかも驚くのはシンガポールの電車カードで支払いができるというところ。
もはや路線バス感覚。
ジョホールバルはシンガポールの街のひとつ、って言っていいくらいに人が行き来する場所のようだ。
チケットを買ってバスに乗り込み、高速を快適に走るバス。
キャオマルが手に入らなかったぶん、寝てるカンちゃんの頬っぺたをムニムニムニムニ触りながら日記を書き、わずか30分くらいで道路の先に巨大なカスタムの建物が見えてきた。
これがシンガポール~マレーシアの国境カスタムか。
バスは建物の下に到着。
他の乗客たちはみんな慣れた感じでぞろぞろとバスを降りていく。
それにくっついて俺たちもバスを降り、建物の中でイミグレーションカウンターへ。
何事もなくシンガポール出国スタンプが捺される。
カウンターを越えたら外で待っててくれていたバスに乗り込み、マレーシアに向けて海の上の道路を走っていく。
シンガポールはマレーシア半島の陸の先っぽのように見えるけど、実は島国で、こうして海で周りを囲まれている。
海の向こうに見えるジョホールバルの町は意外にもかなりの都会で、高層ビルが立ち並んでる様子はシンガポールにも引けを取らなさそうな近代的な雰囲気だ。
きっとシンガポールに隣接していることで経済的な恩恵にあずかってるところがあるんだろうな。
海を渡りきってマレーシア側に上陸すると、複雑に入り組んだ立体道路を走ってマレーシア国境カスタムに到着。
ここでもまたゾロゾロとバスを降りる人たち。
それについてバスを降り、デカいビルの中でスパッとマレーシア入国。
入国審査官と世間話するくらいヨユーな感じです。
よーし、そんじゃあジョホールバルの中心地に向かうぞー。
とカスタムの外に出ようとするんだけど、なかなか出口がわからない。
やばい、このままじゃあ外で待ってるバスに置き去りにされてしまう。
出口どこー!!
一緒に乗ってきた人たちどこー!!
って焦ってたんだけど、焦る必要なかった。
バスの終点がここだったから。
そう、ジョホールバルの中心地はこの国境カスタム。
このカスタムのビルに複合している無数の建物がショッピングモールになっていて、ここが1番賑やかな場所なんだそう。
マジか、国境が街の中心部ってすげえな。
しかもジョホールバルはマレーシアでクアラルンプールに次ぐ第2の都市。
それがこんなシンガポールのコバンザメみたいなところなんだなぁ。
すげぇなぁ。
実際、マレーシアの物価はシンガポールの半分から3分の1くらい。
なのでいつも大量のシンガポール人がお買い物をしにこのジョホールバルにやってきているんだそう。
シンガポールへの入り口ということで色んな旨味があるんだろうなぁ。
カスタムの中を学校帰りの子供が歩いてるとか、めっちゃ面白い光景。
学校だけシンガポールに通ってるとかそういうことなのかな。
まぁ俺たちは別にショッピングが目的で来てるわけではないので、さっさとやるべきことをやってしまおうと建物の外にあるローカルバス乗り場にやってきた。
「イイイイイイエエエエエウウエエエ!!!」
「ハニャハニャハニャハニャーーー!!!」
乗り場の前ではバススタッフの男たちが口々に行き先を叫んで客を呼び込んでいて、懐かしいこの雰囲気に一気に旅感が増してくる。
ボロいバス、ボロいターミナル、地面に寝そべる物乞いの爺さん、まとわりつく熱気。
これだこれ。
これぞ東南アジアだよな。
いやー、シンガポールから来るとやっぱりなかなかのカルチャーショックだよな。
とりあえずそこらへんの換金所でシンガポールドルをマレーシアリンギットに換金。
1ドルが2.98リンギ。ほぼ等価。
でも2ドル札なんかの小さなお札で換金しようとすると結構レートが下がるので10ドル札で換えるべし。
今日ジョホールバルに来たもうひとつの目的は、1週間後にクアラルンプールに行くためのバスチケットをゲットするため。
バスチケットを買いつつ、道順を確認して、今度荷物全持ちで来た時にスムーズにバスに乗れるように下見をしておこう。
荷物持ってウロウロさまようのって本当面倒くさい。
あとシンガポールからクアラルンプールまでの直通バスもあるんだけど、シンガポールでチケットを買うとめちゃくちゃ高いのでジョホールバルから乗るのがベストだ。
というわけでそこらへんのバススタッフのおじさんにクアラルンプール行きはどれですか?と聞くと、どうやらまずはここからローカルバスで15分ほど離れたラルキンという別のバスターミナルに行かないといけないみたい。
うーん、旅っぽい。
マレーシアから先はひたすら移動移動で日本に向かって行くので、またそれなりにハードな日々になりそうだ。
天井からエアコンの水がボタボタ落ちているバスに乗り込み、ラルキンへ向かう。
料金は1.7リンギ、48円。
バスも一気に古くなったし、道もガタガタだ。
窓の外に見えるマレーシアの風景は東南アジアらしいボロいもの。
建設途中で放置されてるようなビルが不気味に立ち尽くしており、さっき遠くから見たこの町の発展ぶりが、ほんの一部だけのハリボテだったのが分かる。
ただ人はとても親切で、バスまで連れて行ってくれたり、俺たちがバスの料金を払おうとしてるときにムスリムの優しいおばちゃんが代わりにお金を払ってお釣りを受け取ってくれたり、なにかと世話を焼いてくれる。
シンガポールの人たちはみんなイヤホンをしてスマホで韓国ドラマを見ながら歩いていて、こうした濃密な絡みはほとんど発生しない。
途上国の旅は、時にローカルのお世話がうっとおしい時もあるけども、やっぱり基本は心を温めてくれる。
窓の外の貧しい風景を眺めながら走ること15分くらい。
ラルキンの大きなバスターミナルに到着。
ここからマレーシア各地に向かう長距離バスが出ているよう。
ターミナルに向かうとすぐに客引きの兄さんが声をかけてきて、クアラルンプールに行きたいと伝えるとすぐにチケット売り場に連れて行ってくれた。
そこにはうなるほどバス会社がひしめいていて、クアラルンプール行きのバスを出している会社も無限にあるので、選びたい放題。
色々聞いて回ったところ、どうやら値段は35リンギで一律みたい。
移動時間は4時間で、朝から晩まで1日10本くらい走ってるよう。
朝からシンガポールから移動してきて夕方くらいに向こうに着けばいいので、13時のバスをチョイス。
そして料金を払おうとすると、つい今まで35リンギって言ってたのに、いきなり40リンギに値上がりするという謎のシステムが発動。
え?どういうこと?って聞いたら、アドバンスチケット、後日のチケットを前買いする場合はちょっと値段が上がるんだと言う。
確かに、俺たちの横で駆け込みでクアラルンプールに行くという人にもう出発するというバスのチケットを売っていたけど、それは31リンギだった。
席が余ってるので少しでも埋めるために駆け込みは安くなる、っていうことは途上国ではたまにあるシステムだけど、先の分を前もって買ったら値段が高くなるというイマドキの世界の常識の逆をいくこの値段設定、マジで不思議。
まぁでも、え?マジで?ってちょっとゴネたらすぐに35リンギにまけてもらえたけど。
すぐに値段が変わる。
いやー、東南アジア。
無事チケットをゲットして、ターミナルの中のローカル食堂なんかを眺めたりしながらまたボーダーに戻るバスに乗り込んだ。
カスタムにくっついてるモールの中を、なにか安くていいもんないかなぁとウロウロ歩いてみた。
綺麗で先進的なモールで、人もとても多い。
値段にはリンギとシンガポールドルのふたつの表記がしてあり、普通にシンガポールドルでお買い物ができるよう。
ただ値段を見てみるとそんなにシンガポールと変わらない。
やっぱりシンガポリアンがたくさん買い物に来るところなので、ここだけかなり強気の物価に設定してあるみたい。
こうやってジョホールバルに買い物に来てくれることはマレーシアからしたらめっちゃありがたいことだろうけど、シンガポールの政府からしたらあんまり推奨はできないこと。
外国でたくさん金を使われるとシンガポールに税金が入らない。
なのでジョホールバルに車で来てガソリンだけを入れてシンガポールに帰る人は、ガソリンをメーターの半分までしか入れられないんだそう。
他にも、免税品は日帰りで買い物だけして帰ってくるのを防ぐため、マレーシアに1泊しないと買えないという決まりもあるみたい。
シンガポールは本当色々厳しいよなぁ。
ところで全然関係ないんだけど、シンガポール訛りの英語のことはシングリッシュと言うんだけど、マレーシア訛りの英語のことはマングリッシュって言うんだそう。
完全に下ネタやん…………
「いやぁ、マングリッシュってヤバすぎるよねー。」
「ねー、恥ずかしくて言えないわぁ。」
そんな話でほのぼのしながらモールを抜け、ボーダーへと向かう。
そろそろシンガポールに帰るかな。
が、ここからだった。
恐怖の事件の始まりは………………
モールと繋がっているマレーシアのイミグレーションカウンターに行き、何事もなく出国のスタンプをもらい、建物の外へ。
ここでシンガポールの各地に向かうバスのチケットを購入し、乗り込むわけだけど、面白かったのがその値段設定。
国境から街までのバスが3.4リンギなんだけと、シンガポールドルでも3.4ドルという謎の同じ金額。
3.4リンギは95円。
3.4ドルは290円。
ドルでもチケットは買えるけど、リンギで買ったらほぼ3分の1ってわけだ。
値段設定、雑やなぁ。
まぁシンガポール人だったら換金の手間を取るより200円払うよな。
俺たちはちゃんとリンギで購入。得した気分。
そうしてバスに乗り込んでまた海を渡り、シンガポールの島に上陸。
バスを降りてイミグレーションへと向かう。
ピカピカに輝く綺麗なシンガポールのカスタムを歩いて行き、スムーズにイミグレーションカウンターへ入り、入国管理官にパスポートを渡す。
うぃー、今日晩ご飯何食べようかなー。
何か美味しいもの食べられたらいいなー。
なんてことを考えていると、イミグレカウンターの検査官に、入国カードを記入しないといけないよと言われた。
あ、忘れてた、シンガポールは入国カードを書かないといけないんだった。
いけないいけない。
後ろのほうの窓際に行き、置いてあったカードにカンちゃんと2人で記入していく。
あー、今日はこれからニュートンまで行って友達と会うんだけど、久しぶりのあの人、元気にしてるかなぁ。
あの人に会うの懐かしいなぁ。
楽しみだ。
「アノー、スミマセン、ペンヲ貸シテモラエマセンカ?」
すると中華系の可愛い女の子がカタコトの日本語で声をかけてきた。
どうやら彼女も入国カードを書きたいだけど、ペンを持っていないみたい。
あぁ、もちろんいいですよとペンを渡す。
アリガトウゴザイマスー!ととても丁寧にお礼を言ってくれる女の子。可愛い。
俺たちはもう全部書き終わっているのでカウンターに行っていいんだけど、女の子にペンを貸したので彼女が書き終わるまで待ってないといけない。
まぁまだ約束の時間まではちょっと余裕があるし、そんなに急ぐこともないか。
いやぁ、それにしても髪の毛綺麗だなぁ。
肌も綺麗。
大きめのTシャツを着て、ホットパンツを履いているので、まるでTシャツ1枚しか着てないみたいな、日本だったらイメクラですか?みたいな格好をしているので目のやり場に困る。
まったく、そんなけしからん格好してたら後ろからTシャツまくり上げてあんなことこんなことしちゃうぞ!!!なんつって!!太もも触りたい!!!
「ハローミスター。」
お!!今度はインド系女性ですか!!
浅黒い肌に憂いのある目尻でこっちも可愛らしいですね!!!
本当モテる男はつらいね!!!
「どうしたんだい?君もペンを貸してもらいたいのかい?それとも僕のマッキーのほうがいいかな?え?ボールペンくらいだろ?おいおいー、冗談はヤメテクレヨ!!なんつって!!」
「こっちに来て。カモン。」
そしてスタスタと歩き出すインド系美女。
Tシャツ女子の太ももも捨てがたかったけど、やっぱりここは積極的な女の子のほうに軍配があがっちゃうよね!!インド系女子はアグレッシブ!!
Tシャツ女子からペンを返してもらい、インド系女子についていくと、ドンドンひと気のないほうへと入っていく。
いくつものドアを越えて、エレベーターに乗り、ドンドン建物の奥深くに入っていく。
ちょ、おいおい、どこに連れてくんだよ、このインディアガールちゃんは。
こんなひと気のないところに連れてきて、一体何をしてくれちゃう気なんだよ。
まったく、参っちゃうな。
俺たちまだ会って数分しか経ってないぜ?
それなのにこんなことまだ早いと思うんだよね。
やっぱり男と女はもう少し時間をかけてお互いのことを理解しあってから、距離を縮めて、それから最初はまずキスから始まって、次にスキンシップで、最後に一夜を共にするものだと思うんだよね、俺的に。
まぁでもそのうち慣れてきたらどんどん過激になっていって最終的には3Pとかしちゃったりなんかしちゃったりして!!!!てへぺろ!!!
「さて、貴様はなぜシンガポールに入国しようとしてるんだ?」
建物の超奥地にある超密室で審査官2人による地獄の3Pスタート!!!!
ぎえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!
なんでええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!
えええ!?なんで!!!
俺たちただ入国カード書いてただけなのに、なんでそんなピンポイントに密室送りにするの!?!?
めっちゃヒゲとか剃って小綺麗な格好してきたのに!!!!!
ウンコとか踏んでないのに!!!!
なんでえええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!
怖えよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
「おい、だからなんで貴様はシンガポールに入国しようとしているんだ?ああ?」
机を挟んだ目の前で、クソ高圧的に質問してくるインド系女検査官!!!!!
いやぁ、俺マジでタミル愛しちゃってるっていうかー、牛?マジ牛とかチョベリグじゃないっすか?あー、ギードーサ食いてー。
なんて軽口を叩こうもんならソッコーで警棒で頭カチ割られそうな勢いの張り詰めた密室。
俺の横にはもう1人中華系の男性検査官が座り、こっちをじっと見ている。
マジで怖すぎる!!!!!
「いや、あ、あの、あのあの、あ、あ、あああ、アナル、じゃなくて、シンガポールには友達がたくさんいて、友達に会いにきてます。」
「この薄汚いパスポートはなんだ?なんでこんなに色んな国に行ってるんだ?」
「海外旅行が好きで…………」
「今回日本を出たのはいつだ?」
「え?なんですか?ちょっとシングリッシュが聞き取りづらい…………」
「だから日本を出国したのはいつだって聞いてんだよ。」
「えーっと、2016年の2月です。」
「2年もなにやってんだ?」
「世界一周っていうか、ハネムーンっていうか、奥さんと旅してるところです。」
「仕事は何してるんだ?」
「ミュージシャンと作家です…………」
「2年も海外出て、おかしいだろう?なんでそんなに長期間も旅してるんだ?ああ?」
「いや、だから海外旅行が好きで…………」
「なんで今日の朝出国してるのにまた戻ってきたんだ?」
「8日後にクアラルンプールに行くのでそのバスチケットを前もって買いに来ました。」
「シンガポールからでもチケットは買えるだろう?なんでわざわざジョホールバルまで買いに行ったんだ?」
「それはシンガポールで買ったらものすごく高いからです。」
「マレーシアの後はどこに行くんだ?」
「クアラルンプールからバンコクに飛びます。その飛行機チケットも持ってます。タイからはベトナム、中国、韓国と進んで日本に帰ります。」
「いつ帰るんだ?」
「3月です。」
「2ヶ月でそんなにたくさんの国に行けると思ってるのか?」
「はい、大丈夫です。」
「シンガポールではどこに泊まってるんだ?」
「アンモーキオのアパートです。そこに荷物も全部置いてます。」
「2年も海外を旅行して、いくら金を使ったんだ?」
「た、多分200万ほどだから…………トゥエンティサウザンドダラーくらいです。」
「あといくらあるんだ?見せてみろ。」
「確か手持ちは30万円くらいだけど、そのお金はアンモーキオにあります。」
「ふーん。」
手に汗をぐっしょりかきながらもなんとか滞りなく返答していく。
ビザランで滞在期間を延ばすということは別に悪いことではないし、それに延ばすのも観光ビザの30日からたった3日だけだ。
今から8日後のバスチケットも持ってるし、飛行機チケットも持ってるし、シンガポールからちゃんと出国するという証明としては充分なはず。
キチッと受け答えすれば問題ないはず。
大丈夫、今までも別室送りなんか数えきれんくらいあった。
むしろ別室に送られなかったら、え?いいんですか?って驚くくらいだった。
大丈夫、冷静にいこう。
でも冷静にいこうって思うほど心臓がバクバクしてくる。
それからもケータイの中にあるシンガポールでの写真チェックをされたりして、15分くらいかな。
みっちり質問されまくって、ひとまず外に出された。
個室を出るとそこはオフィスで、ちょうど病院の待合室みたいになっている。
椅子が並び、カウンターにはパソコンが置かれ、おじさんとおばさんの検査官がいる。
部屋の中には数人の外国人が座っていたんだけど、見るとだいたいがケバい女性だった。
濃いメイクをしていて、パッと見で夜っぽい雰囲気をまとっている。
もしかしたら売春をしにシンガポールに来ようとしてる女の人たちなのかもしれない。
そんな中に1人、パグみたいな顔をしたカンちゃんがキョトンと座ってる。
ちょ、そこだけディズニー。
カンちゃんの隣に座り、どんな質問をされたか話していると、今度はカンちゃんが呼ばれた。
不安そうな顔をして個室のドアの向こうに消えていったカンちゃん。
ふぅ、落ち着こう。
大丈夫、いけるいける。
度胸のあるカンちゃんだったらちゃんと答えているはず。
今までカンちゃんと2年間旅して国境でもめたことなんかほぼなかった。
お守りみたいなカンちゃんと一緒なんだし、リラックスしていこう。
それからまた15分くらい。
カンちゃんが個室から出てきた。
「はうううう…………めっちゃ久しぶりにテンパったあああ…………怖かったああああ…………」
ぷるぷる小さくなってるカンちゃんだけど、でもちょっと楽しいかも、ってこのシチュエーションを楽しんでるカンちゃん。
いやぁ、いい度胸してる。
まぁこんな無害この上ない見た目のカンちゃんといるんだ。
さっきの個室での詰問に対しても、2人ともしっかり答えている。
これで大丈夫だろう。
「フミタケ、カネマル、ナオ、カンダ、こっちに来なさい。」
するとカウンターのおばちゃん検査官が俺たちを呼んだ。
まるでドクターの診察を終えてお会計を払うときみたいだ。
はいはいー、と2人笑顔でカウンターへと向かう。
するとおばちゃん検査官はこう言った。
「ノーカム、シンガポール、ゴーバック、マレーシア。」
………………………………………………
ん?
なんて?
今なんて言いました?
「だからあんたたちはシンガポールには入れないからマレーシアに帰りなさい。」
あー、なるほどなるほど、シンガポールに入れないからこのままマレーシアに戻って、もうなんならイスラム教に改宗してサテー屋を開いて観光客にミニマムオーダーは6本からだよーって言いながらカンちゃんと平和に暮らして行くって流れですか。なるほど!!それも悪くない!!!っていうかすみません、トイレはどちらになりますか?クソが全部漏れましたもので。
キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!
え!?マジ!?!?
え?!マジなの!?!?
シンガポール入れない!?!?なんで!!!!
ていうか俺たち荷物全部アンモーキオに置きっ放しだからマジなんも持ってないよ!!!??!
あ、1個だけ持ってるわ。
小腹が空いたからってさっきショッピングモールのパン屋さんで買ったカレーパン。
カレーパン片手に入国拒否を言い渡される人類、多分史上初!!!!
えーっと、アンモーキオに全部荷物があるからこのまま入国できないならジョホールバルの宿に泊まってジェイクにお願いして荷物を取りに行ってもらってマレーシアまで持ってきてもらって…………とかそんなことできるわけねぇええええええ!!!!!!!
ここは引き下がるわけにはいかん!!!!!
「でも僕たち荷物全部アンモーキオの部屋にあるんです!!!お金も服とかも!!!」
「知らないわよ。兄弟にでも取りに来てもらったら?」
「えええ!?日本からですか!!??」
「だいたいあんたたち2年も旅行してるなんておかしいでしょう?」
「ハネムーンです!!」
「ハネムーン?2人で?」
「1人でハネムーンする斬新な人います?!」
しかしいくら食い下がろうともまったくもって聞き耳を持たないおばちゃん検査官たち。
血の気がサーっと引いていく。
あの厳しくて有名なシンガポールのイミグレーション。
一度入国できないと判決が出た以上、ここからひっくり返すのはほぼ不可能。
今までたくさん聞いてきた、シンガポールの強制退去にまつわる話がグルグルと頭をまわる。
どの人も容赦なく例外なく追い出されている。
ほんの数秒の時間なのに、色んなことが頭の中を渦巻いて混乱してくる。
するとその時、横のおじさん検査官が他の席に座っていた韓国人の若い女の子を呼んだ。
そしてものすごく冷たい口調で、ノーカムシンガポール、アンダスタンド?韓国に帰りなさい、と言い放った。
え…………と動きが止まって泣きそうな顔で呆然としている女の子。
こ、怖すぎるうううううううううううう!!!!!!!
ちょ、待ってくれえええええええええええええええええええええええ!!!!!!
「僕たちすぐにシンガポールを出ます!!チケットも持ってます!!荷物もお金もなくてマレーシアで何にもできません!!カレーパンしかないです!!あああ!!忘れてた!!!朝ガチャポンでゲットした蜘蛛入りのスライムもある!!!!」
「そのアンモーキオの宿のスタッフに荷物を持ってきてもらいなさい。」
「いや、そこAirB&Bだから誰もいないんです!!」
「はぁ?なんだって?」
「AirB&Bだと?」
「はい、そうですけど何か?」
「おい、シンガポールでAirB&Bは違法だぞ。」
斜め45°から新たな問題コンニチハ。
し、知らんし!!!
シンガポールでAirB&Bが違法とか知らんし!!!
普通に検索かけたらめっちゃいっぱい出てくるし、いくらでもみんな泊まりまくってるし!!!!
やめてえええええええええええ!!!!!
「まぁそれはいいわ。だいたいあんたたちなんでシンガポールに戻るのよ。クアラルンプール行きのバスチケット買ったんでしょ?そのまま行けばいいじゃない。」
「まだ友達と約束があるんです!!今夜これからもあるし、明日もあるんです!!」
「日本に帰るのはいつなのよ。」
「だから3月です!!」
「あと2ヶ月もシンガポールに滞在する気ね。」
「ちょ!!だから8日後に出ます!!チケット持ってます!!!」
ここで引き下がるわけにはいかないのでゴネ倒してゴネ倒して、説明しまくった。
向こう側でなにやらごにょごにょ話しているおばちゃん検査官たち。
するとおばちゃんの1人が口を開いた。
「特別に8日間だけの滞在を許可します。」
絶叫がマラッカ海峡を越えました。
「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!カンちゃん!!!!カンちゃん!!!!カンチャナブリイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!」
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!心臓が口から出かけた!!!!!緊張したああああああああああああああああああああああ!!!!!」
2人とも手汗びっしょりで冷えてめっちゃ冷たくなってる!!!!
っていうかあそこからひっくり返したぞグオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!すげぇ!!!!
こんなことあるか!!!!???
ビビった!!!!マジビビった!!!!!
ああああああああああああああ!!!!
久しぶりに痺れたあああああああああああああああああああああ!!!!!
「本当焦ったああああ!!!ケータイの中にエロ画像とか入れてなくて良かったああああああああああああああ!!!!」
「私人生初の別室送りだったーーー!!!心臓バクバクしてるうううううう!!!」
マッジで怖かった!!!
もう本当、みんなシンガポール~ジョホールバルのビザラン、マジで気をつけて!!!!
ナメてたらマジでやられます!!!!
もうテンション上がりまくってめっちゃハイになりながら、カスタムの外にあるバス乗り場でニュートン行きのバスに乗り込み、待ち合わせ時間の19時の10分前に到着!!!!
そこに現れたのは!!!!!
チューさん久しぶりですううううううううう!!!!!
「チューさんんんんんんんんんん!!!!たった今こんなことがあったんですううううううう!!!!」
「えええ!!そうなんですか!?それは大変でしたね。でもちゃんと入れて良かったですね。」
3年半前にチャイナタウンの路上で出会い、2年前にシンガポールに来た時もお会いしたお友達のチューさん!!!
真面目を絵に描いたようなチューさんの優しい笑顔の安心感がパナすぎて、もうこんな絵をトイレの壁にかけたい!!!!
本当はチューさんも新年会にどうかなぁと思ったんだけど、前にジェイクたちと飲んだ時に真面目なチューさんにはみんなのノリがキツそうだったので、今回は別で会おうと思っていた。
いつも穏やかで、優しくて、知的で、そしてたくさん色んなことを質問してくれて話を広げてくれるチューさんとの会話が大好き。
ああ、チューさん会えたあああああ…………
安心感でオシッコ漏れそう…………
ニコルハイウェイという駅に行き、チューさんオススメのホーカーでゆっくりご飯を食べ、それからチューさんがよく行くという映画館へ。
ここってもう何十年も前からある古い古い映画館なんだけど、今ではオシャレに改装されてバー兼映画上映場みたいな形で使われているみたい。
内装もとてもモダンレトロな感じで、古き良き映画館の姿がそのままに残っている。
それでいて現代的なアート空間のアレンジも加わってめっちゃオシャレ。
デートとかで来るのにもってこいって雰囲気だ。
なになにー、チューさんめっちゃオシャレなところに来てるんだなぁ。
どうやらここでは最近の映画でなく、古い名作映画ばかりが上映されているらしく、夜な夜な映画好きが集まってるんだそう。
金曜日の夜なると、裏の駐車場がオープンエアーの野外バーになり、たくさんの人たちが夜風を浴びながら飲んでるみたい。
めっちゃ良いやん。
シンガポールでこんな穴場的なところに来られてすごい嬉しい。
ああ、それもこれもちゃんと再入国できて、チューさんに会うことができたからだ…………
良かった…………
チューさんとの楽しい時間を終え、また会いましょうー!!と別れて俺たちはいつもアンモーキオへ。
通い慣れたアパートに戻り、荷物が置きっ放しになってる部屋のベッドに横になる。
あああ、戻ってこられたああああああああああ………………
今日は本当久しぶりに国境恐怖症が出たわ…………
長いことなんにもなくやってこられてたもんなぁ…………
まぁ、でもなんだかんだ無敗記録更新だけどね。
幾度となく別室送りにされてモメまくってきたけど、イミグレーションで全裸にさせられたり、テーブルにコンドームまきちらかされてこれはなんだ?っていう辱めを受けたり、検査官たちの前でアカペラで歌わされたり、検査官たちとみんなでギター弾いたり、そうやって訳のわからないまま毎回とりあえず国境は越えてきた。
一度たりともその場で追い返されたことはないって、ちょっとした自慢だったりする。
まぁスイスの時だけ4日以内に出て行けっていうタイムリミット付きだったけど。
とにかく!!!!!
シンガポール再入国完了!!!!
これから残り8日!!!!
思い残すことのないよう充実した日々を過ごしてから東南アジアを北上していくぞ!!!!