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アフリカ最後の夕日



2017年5月16日(火曜日)
【南アフリカ】 マールロスパーク
~ ブロンコーストスプルート





朝5時。


寝ぼけながら部屋を出るとまだ真っ暗だ。


森は静寂に沈んでおり、夜空には星が光っている。




この時期の南アフリカの朝はかなり冷える。



余裕で10℃を下回っていて、ブルッと震えてくる。












お湯を沸かしてコーヒーを入れ、タバコを吸いながらぼんやりしていると2階からコールさんが起きてきた。



「グッドモーニング、よく眠れたかい?さぁ、出発しようか。」



昨日テロテロの服を着ていたコールさんが、今日はカッコいいサファリのガイドに変身していた。


半袖半ズボン、頭にはウェスタンハットをかぶっている。





そうして家の裏手に入っていくと、ガロンガロン!!と動物の唸り声みたいな音が聞こえ、カッ!!と光が森を照らし出した。


暗闇の中からぬぅっと出てきたのはワイルドなジープだった。






「さぁ、動物に会いに行くぜ!!」




乗り込むと、話し声が聞こえないくらいにデカいエンジン音で震えるジープ。



コールさんが力強くギアをぶち込み、ゆっくりと車道に出た。
















マールロスパークのゲートを越え、アスファルトを飛ばしていくコールさんのジープ。


開けた窓から冷たい夜風がびゅうびゅう吹き込んできて眠気が吹っ飛ぶ。







はるか前方の空の下、地平線が赤く染まってきている。


壮大な朝日がアフリカの荒野を目覚めさせようとしている。



美しいだろう、とコールさんが誇らしげに言うのがカッコよかった。















そうして走ること30分。



目の前に小さな橋が現れた。




これはクルーガーの境になっているクロコダイルリバーだ。


橋は柵もないような簡素なもので、落っこちそうでハラハラする。




もし落ちたら陸に上がる前に俺たちはクロコダイルの餌さ、とニヤリと笑うコールさん。


めっちゃ怖いんですけど…………………











そうして対岸に渡るとクルーガー国立公園のゲートに到着した。



そこにはすでに数台のジープやバンが止まっており、たくさんの白人観光客がサファリを楽しみにやってきていた。


この閑散期ですらこんなにたくさんの車が来てるんだから、シーズンになったら本当に世界中から観光客が押し寄せるんだろうな。







「ハーイ!!ホニャララホニャララ~!!ハハハハー!!」



現地民であるコールさんが窓を開けてパークのスタッフたちと楽しそうに会話している。


きっとコールさんはこのあたりでも古株のガイドさんなんだろうな。




話してる言葉はもちろん現地の言葉だ。


アフリカーナーであるコールさんは英語、オランダ語、ドイツ語、そして南アフリカの言葉、さらにはこの周辺地域の数種類の言語を話すことができる。








ゲートで1人304ランド、2550円の入域料を支払うと、パンフレットの他に大きな紙袋を渡された。



それはゴミ袋。





ゴミはパーク内に捨てずにちゃんと持ち帰りましょうってことだ。




そうか、俺たちアフリカを縦断してきたのにこれが初めての国立公園なんだよな。


ものすごく広大な敷地だけど、ちゃんと管理され、保護された地域なんだなぁ。
















「さぁー、俺たちは今クルーガーに入ったぜ。」




ゆっくりとゲートをくぐりながらコールさんが子供みたいに言う。


もう何十回、何百回とこのゲートをくぐってきてるはずなのにそれでも興奮してるコールさんを見ていると、本当に心から動物を愛してるんだということが伝わってくる。




まるで宝物を探しに行くみたいだ。






「ここは動物園じゃない。運が悪いと全然動物を見られない時もあるし、運が良ければビッグ5を全部見られる。何が見られるか入ってみなきゃわからない。それが素晴らしいところなのさ。」




ニコニコしながらそう言うコールさん。




俺たちに動物を見せるためにサービスで来たって感じでは1ミリもない。



むしろクルーガーに来る口実ができたぜイヤッホゥ!!って感じだ。



いやー、コールさん最高だ。

















ゲートをくぐるとどこまでも広がる広大な原野。



うわぁ!!ついに本物のサファリに来ちまった!!!




ケニアのチャリンコ自力サファリでも、昨日のドライブでもない、モノホンのサファリ!!!!



やべえええええ!!!本当に動物見られるのか!!!!






いや、もしかしたらサファリとか言ったって大したもんは見られないかもしれない。


そうそう、期待をしすぎるとろくなことにならない。




だいたいそうだ。


巨乳の女の子が酔っ払ったーとか言って膝に手を置いてきて、やだー!とか言って過剰にボディタッチしてきて、これは誘われてる!!と思ってその気になってこっちもさりげなく、いやぁ僕も酔っ払っちゃったな!!よし、そこのホテルで休憩していかない?と言ったら、あー、私明日早いからごめんーって手のひら返したように帰られた時のあのどうにもならない気持ちを思い出せ。



明らかに思わせぶりな態度してきたくせにいざとなったら、えー、そんなんじゃないしーって寸止めしてくる女たちのアレなんなのバカ!?舐めんなこの野郎!!舐めろ!!




舐めろっていうか、ハゥアッ!!!!!!
















シマウマ………………















ウキョッ!!!!








バッファローの群れ…………


















カペッ!!!!!











ヌー………………

















カパパッ!!!!!!















キリン………………














クルーガー入ってまだ2分。



クルーガーすげすぎる。



クルーガー、寸止めどころかホテル直行からのシックスナインです。




「コールさん!!すごい!!すごすぎる!!!」



「そうだろう!!ホラ!!あそこにまたキリンだ!!」





観光客の俺たちが写真を撮るのはわかるけど、ガイドのコールさんが1番本気で1番気合いの入ったデカいカメラで興奮しながら写真を撮っている。


いやぁ、コールさんは仕事でこなしてるガイドさんじゃなくて自分が見たくてしょうがない人なので、動物探しに対する気合いが違う。


























クルーガー国立公園は世界でも屈指の巨大パークで、この公園内だけで6000キロの道があるらしい。


ライオン、ヒョウ、サイ、バッファロー、ゾウのビッグファイブだけでなく、147種もの動物が生息しており、アフリカで見られる動物のほとんどがここで暮らしているらしい。


さらには9つの原住民も公園内に住んでいるみたいで、話では外部との接触を極端に拒み何日も人目につかない民族もいるという。



もう、もはや動物よりもそっちのほうがレアな生き物なんじゃないか?











とにかくそんな広大な敷地なので、どこまででも突き進むことができるんだけど、俺たちはこの後の予定があるのでお昼までの半日でコールさんにお願いしている。


それに合わせてルートを考えてくれているコールさん。




慣れた運転でゆっくりとオフロードの道を走っていく。

道は所々ボコボコしており、大きな水たまりになっているところもあり、二駆の自家用車ではちょっと大変そうだ。


















どこまでもただひたすらに草原が広がるのみの道を走っていく。


動物たちは確かに多いけど、さすがにライオンとかの大物には簡単に出会えない。


キョロキョロしながら注意して走っていくと、たまに何台か車が集まって止まっているところがある。


そういうところには何か面白い動物がいるので便乗させてもらうって感じだ。




あとは他のガイドさんのジープが来たら、すれ違う時に、何かいたかい?と情報交換する。


向こうにライオンがいたぞ、あっちでバッファローがいたぞと、みんなで協力し合って動物を探して回っていく。





キリン、ヌー、シマウマ、プンバの呼び名で有名なキバイノシシ、インパラなんかもうそっこらじゅうにいる。



これが動物園じゃないんだよなぁ…………


こいつらみんな野生動物なんだよなぁ……………










すげぇ、マジですげぇ。


こんなにデザイン性があって、美しくて、個性的な動物たちが、広大な原野の中で生きている姿を見ていると、震えるほど感動してくる。




この地球には本当に様々な生き物がいて、みんなでこの星に共存している。


人間が勝手に占領していいものじゃないんだよな。




うわぁ、なんかもうすっげぇいろんな感情がこみ上げてくる。

アフリカの大地は色んなことを教えてくれるよ。







「あ、あれ?………あれなんだろ…………?」




すると後部座席のカンちゃんが藪のほうを見ながら言った。





よく見えないけど…………



あ、何か茶色いのが動いてるような………





「オーマイガ!!2人ともハイエナだ!!」





すぐに車をバックさせて近づいていくコールさん。


体に黒い斑点があって、背中を丸めてヒョコヒョコ歩くそのハイエナ。


なんと向こうからこっちに近づいてきてくれ、それから離れたところにいるインパラを追いかけて草原の向こうに消えていった。











「やったな!!ナオよくやった!!」



「ハイエナってそんなに珍しいんですか?」



「クルーガーにいるハイエナはライオンと同じくらいの数しかいないんだ。それに相当奥地でしか見られない珍しいやつなんだよ。ハイファイブだ!!」




やったね!!と興奮してるコールさんとハイタッチをした。




















コールさんはさすがに動物を愛するガイドさんで、運転しながら色んなことを教えてくれる。



バッファローはとても強くて300キロもあるライオンをツノで跳ね上げて何メートルも吹き飛ばすとか、インパラは数体の大人が小さな子供たちを引き連れて幼稚園みたいにしてお出かけするとか、そんな話を聞きながら動物を見て回るのがサファリの良いところだ。


いろんな動物たちの習性を垣間見ることができる。



そうして公園内を案内してくれるガイドさんたちだけど、もし乱暴な運転をして動物を傷つけたらもう二度とパークに立ち入ることはできなくなるらしい。


厳しく保護されてるんだよなぁ。
















9時くらいに朝ごはんを食べようとやってきたのは、パークの中にある休憩施設。








トイレ、レストランが入っており、みんなここに朝ごはんを食べに立ち寄るポイントになってるみたいだ。


施設はとても立派で、草でできた掘っ建て小屋にトイレは地面に穴を掘っただけ、みたいな原始的なものではなく、オシャレで先進的でありながら開放的な作りになっている。



街の素敵なレストランで出されるようなご飯メニューがあり、エスプレッソマシーンで淹れたコーヒーが飲める。



この辺りでよく見られる真っ青な美しい鳥が可愛らしく庭を歩いている。












そんなレストランで席に座り、目の前の川を眺めながらイングリッシュブレックファーストにカプチーノという優雅な朝ごはん。


1人70ランドくらい。600円。



「美味しい!!すごく良い施設ですね。」



「そうだろう。でも数年前にこの中にライオンが2頭入ってきたことがあるんだよ。ははは!!」




笑えねぇ…………



ちなみに今はキチンと厳重な柵を回しているので大丈夫らしいです。





昨日の歌のお礼ということでコールさんに今日のサファリに連れてきてもらっているけど、さすがに何もしないのは悪いのでここの朝ごはんは俺たちに出させてもらった。






























ご飯を食べたらサファリ後半戦をスタート。



それからもたくさんの動物を見て回った。


シマウマやバッファローの群れは圧巻で、雄大なアフリカ象も見ることができた。




















さらに湖に到着すると、恐竜みたいに巨大なクロコダイルが何十頭も水辺いて、コールさんの双眼鏡で夢中になってクロコダイルを眺めた。



そして驚いたのはクロコダイルの群れの横でカバたちが水浴びをしていたこと。



カバたち大丈夫なんですか?クロコダイルに食べられないですか?と聞くと、いやいや、そんなことしたらカバがクロコダイルを殺してしまうよと笑うコールさん。



カバって強いんだなぁ。













本当にたくさんの動物を見て回ったんだけど、ライオンが見られない。


さすがにライオンはレアな動物で、誰でも毎回見られるとは限らないらしい。



他のジープのガイドさんが、あっちにライオンいたぜ!って教えてくれて急いで向かってみたけど、すでにライオンはいなくなっていた。



これも本当に運なんだよなぁ。それが動物園じゃないリアルサファリの良いところだ。











「お、あそこにいるのはサイだよ。シロサイだ。」



最後に道路から結構離れてはいたけど、サイが2頭座っているのを見られたのはラッキーだった。



大きな大きなツノを持ったサイ。


穏やかで、可愛らしく、貴重な動物だ。






そんなサイを眺めながらコールさんが悲しそうに話してくれた。



このクルーガーにも、密猟者が来るらしい。



今も昔もクルーガーに動物を狩りに来る密猟者は後を絶たず、大きな問題になっているとのこと。



彼らはツノ目当てにサイを撃ち、それをブラックマーケットで取り引きしているんだそう。


サイのツノは非常に非常に高額で売買されており、漢方なんかにも使われているらしい。




クルーガー国立公園の中には5個のアーミーベースがあって密猟者を見張っているけど、それでも彼らはやってくるんだそうだ。




「南アフリカでハンティングは違法なんですか?」



「違法ではないんだよ。定められた量をハントするのは政府でも認められているんだ。しかし人間にとっては合法でも、自然の掟においては違法だと俺は思ってる。」


















俺は漫画のジャングルの王者ターちゃんが大好きだ。


何度も読み返すくらい。


下品な下ネタ満載で、嫌いな人は嫌いだろうけど、あの漫画の本質は人間と動物の関わりかたについてだ。




ターちゃんはいっつも密猟者たちからアフリカの動物を守ってる。


素手でマシンガンに立ち向かい、傷つきながら密猟者たちを追っ払っている。




しかしターちゃん1人で密猟者たちから動物すべてを守ることはできない。


さらに未来の世界では人口爆発により食糧難になり、人間たちが乱獲を始め、野生動物たちは絶滅。


ターちゃんは絶望し、動物を守ることを信じられなくなる。











地球の営みによると、一種の生物が自然の流れで絶滅するのにかかる時間は1000年らしい。



しかし人類が誕生してからというもの絶滅スピードは加速し、現代では1年の間に約4万種もの動植物がこの星から姿を消しているそうだ。




人間がいなければ地球はもっと健全でいられるんだ!!と唱える人々の主張はもっともだと思う。



人間は大地を汚染し、海を汚染し、空気を汚染し、ものすごい勢いで種を食いつぶしている。











何がベストなんだろう。


人間は今さら文明を手放すことはできない。


動物と共存する理想はあっても、俺たちは自然を破壊することを止められない。





漫画の中では、ターちゃんは未来を変えた。


人類は動物を守り、豊かな自然と共存する道を選ぶことができた。




では現実はどうだろう。


まだまだ密猟は後を絶たない。


あの穏やかに、雄大にアフリカの大地を踏みしめて生きている動物を撃ち殺し、ツノを切り取って世界のマーケットに流している。金のために。



あんなに美しい動物の命を、人間のエゴで簡単に奪い取っている。





「俺は動物を、自然を愛している。自然を壊さないこと、それが自分をベターにするんだよ。自分をベターにすること、それが自然をベターにするんだ。」




目を細めながらコールさんが言う。


その言葉がものすごく重かった。


























せっかく入場料を払って半日しか滞在しないのはもったいなかったけど、時間がないのでしょうがない。


ライオンを見ることはできないまま、残念ながらタイムアップだ。



あー、俺たち結構動物運あるほうだと思ってたんだけどなぁ。


まぁまたいつか戻ってこいってことなのかもしれんな。





クルーガーをあとにして、13時にマールロスパークの宿に戻ってきた。




「ハーイ!クルーガーはどうだった?たくさん動物は見られた?ところでこれ見てみて!」



庭仕事をしていた奥さんが、部屋の中で写真を見せてきた。



そこには巨大な蛇が写っている。


テレビとかで見るようなマジのめっちゃデカイやつ。大人の腕くらい太いやつだ。




「このパイソン、ゆうべいたのよ!そこの庭に!」




えええ!?マジで!?


こんな巨大な蛇がいたの!?




ゆうべみんなで飲んだ後、カンちゃんが1人で車に荷物を取りに行こうとしてたけど、動物がいたら怖いのでやめたと言っていた。



もしあそこで取りに行ってたらパイソンと遭遇してたな……………



3メートルくらいあるやんこの蛇……………




クルーガーより宿の周りのほうが動物いるんじゃねぇかな…………


















「それじゃあ元気でやるんだよ。またいつか遊びに来てくれ。」



「今度は子供を連れてきてね!!私たちはここにいるから。」



荷物をまとめて車に積み込んだ。


コールさんと奥さんとハグをする。




たまたま選んだ宿でこんなに素敵な展開が待っているなんて、想像もしていなかった。


この数日、本当に1番アフリカらしい経験のオンパレードだったな。


まさか最後の最後にサファリが待っていたなんてな。




そして観光だけでなく、アフリカーナーのコールさんと出会えたことがすごく大きい。


アフリカ人ってもののイメージをこんなにも変えてもらえた。






もう思い残すことはない。

アフリカ旅、最高の締めくくりだった。




あとはヨハネスブルグまで無事たどり着くだけだ。




コールさん、奥さん!ありがとうございました!!
また一緒にワインを飲める日を楽しみにしてます!!!!

























マールロスパークからヨハネスブルグまでは5時間の距離。



ヨハネスブルグの市街地には入りたくないので、少し手前あたりで眠りたいんだけど、ちょうどいいポジションにキャンプサイトを見つけてある。



今日はここまで走り、明日の朝イチで空港に行きレンタカーを返却、そのまま飛行機だ。


完璧。



普通バスで回っていると、どうしてもヨハネスブルグのダウンタウンにあるバスターミナルに着くことになるので、相当危険だ。



レンタカーだと直で空港なので安心して向かうことができる。



ナイフで脅されて身ぐるみ剥がされる、ならまだマシで、前触れなしにいきなり後ろから刺されて倒れたところを身ぐるみ剥がされるっていう、他の凶悪都市がかわいく思えてくるような街、ヨハネスブルグ。



確かに大都会で、普通に人が暮らす先進都市だし、ガンジーやネルソンマンデラの博物館があったりして、ちょっと行ってみたい気もする。




でももういい。


せっかくここまで無事に旅してきたんだ。


最後の最後になにかあったら台無しだ。
















ていうか道が有料道路。









えええええ……………やめてそんなんー……………


南アフリカやめてよおおお……………




ヨハネスブルグに向かう大きな幹線道路に現れる料金所。

値段は乗用車で63ランド、530円。




くそぅ………最後まで金かかりやがるなぁ……………










まぁヨハネスブルグまで一直線で行ける道だし、下道で行こうと思ったらぐじゃぐじゃ入り組んでるので大変そうだし、しょうがないかー。




まぁ変に道に迷うよりいいかー!!




よっしゃー!!早いとこキャンプ場ついてしまうぞー!!










ってまた料金所!!!!!



おい!!!ナンボほど金とるんだよ南アフリカこの野郎!!!!



今度は86ランド、720円…………






チクショー………………


結局レンタカーしたほうが高くついてしまってる気がする……………








ま、まぁレソトもスワジランドもクルーガーも行けたし、色んな出会いもあってめっちゃ楽しかったけどね!!



いやー!!カバたくさん見たぜイヤッホゥ!!!











また料金所!!!



ドリフトでUターン!!!!





そして2秒で幹線道路を降りる!!!!




このボケ!!めっちゃ金かかるわ!!!!アホ!!!!








あと1回料金所をくぐれば目的地のキャンプ場まで行けてたんだけど、いい加減これ以上お金払いたくないので頑張って下道で行くことにした。






しかし…………ゆうべあまりに楽しくてネット作業をしてなかったので、地図をちゃんと読み込んでいない。


どの道がどう繋がってるのかがわからない上に、キャンプ場に付けていた印が消えてしまった。




これは……………ヤバいかもしれない…………



いつもの途方にくれるパターンなんじゃないのか……………







なんとかカンちゃんが頑張ってiPhoneを見ながらナビをしてくれるんだけど、地図を読み込んでいないので道がわからず、あっちに行ったりこっちに行ったりで、完全に迷子状態になってしまった。



時間はどんどん過ぎていき、日が沈み、どんどん焦って行く。







「あああ、わからない、あっ、こっちかな、いやこっちかな、あああ、どうしよう、無理、わからない。あああ、もういやあああ………」



「カンちゃん、もう嫌って言っててもしょうがないんだから、なんとかナビしてくれないとキャンプ場たどり着けないよ。どっち方面に行けばいい?」



「そんなこと言われても地図見るのはフミ君のほうが上手いんだし、難しいのわかってよおおお…………ああ、ここ右かな、左かなぁ…………」




俺はハンドルを握っているので地図を見ることはできない。


なのでいつもカンちゃんがナビをしてくれるんだけど、早めに指示を出してくれないとどんどん変なところに進んでいってしまう。


もうわからないいい、って投げやりになられてもどうしようもない。




そんなこと言われても、間違えたら責められるし、プレッシャーなんだから、ってカンちゃんは言う。



それいったら俺だってアフリカの土地を長時間運転して神経すり減らして疲れてるんだからナビ頑張ってよ、って言いたい。






そんでハッとなる。


またやってしまってる。



お互いに相手に求めるんじゃなくて、自分を省みること。


もやもやしていても、ごめんって言って抱きしめること。




アフリカ旅の中で、何度もそういう場面になることがあったなぁ。



本当、アフリカはたくさんのことを教えてくれたよ。







「カンちゃんごめんね、ナビ大変だよね、地図読んでないのに。」



「ううん、フミ君運転たくさんして大変なのにちゃんとナビできなくてごめん。わかった!!ここ右に行ってみよう!!なんとか回って別方向から行ってみる。」




2人のことをアフリカ最後の夕日が照らす。


黄金色の光がアフリカの大地を輝かせていた。






































夕闇迫る中、信じられないくらい巨大なスラムに迷い込んだり、冠水した水たまりの中をジャバジャバ走ったりしながらなんとかキャンプ場を目指した。



そうしてやっとのことでキャンプ場の近くまでやってきた。


あとはこの辺りの脇道の先にあるキャンプ場を探し出すのみ。





ああ、もう少し、もう少しで眠れるぞ…………


疲れた…………


アフリカ旅最後の夜は、最後までこんな感じか。


マジでバタバタだったなぁ…………






道の脇にキャンプセリティの看板を見つけた。


よし、この脇道の先だ。











真っ暗なオフロードをガタガタと進んでいく。


畑の中の農道というかあぜ道というか、とにかく荒れた一本道。



こんな道の先に本当にキャンプ場が存在するのか?と不安になってくるけど、一応さっきからキャンプセリティの看板がポツポツ立っている。




あぁ、お腹すいた。


目がしょぼしょぼする。




ゆうべは4時間しか寝ないで5時起きでサファリに行っているので、本当に体が疲れてる。


ご飯も食べてないけど、キャンプ場にたどり着けばもしかしたら軽食くらいは販売してるんじゃないかな。





オフロードをひたすら突き進んでいく。




ヘッドライトが畑を照らし出す。




















そうしてやっと、マジでやっとのことで、キャンプセリティにたどり着いた。






あああああああ!!!やっと眠れるぞおおおおおおおおお!!!!!



















廃墟。





マジ殺す。





キャンプセリティ、マジ殺す。






「ほ、ほへ…………な、なんかそんな気はうっすらしておりました………」



「はぁああああ…………嘘おおおあお…………」




ヘッドライトに浮かび上がる寂れたゲートには大きな鎖と南京錠がかけられており、中は草ボーボーでひと気はまるでない。



終わってる……………



体限界です……………





「フミ君どうする…………?」



「寝たい…………正直このまま寝たいです…………ここで…………」




ここは車道から10キロ以上オフロードを入り込んだ畑のど真ん中。


まず人が来ることはない。


キャンプ場も廃墟だし、きっと誰も来ないはず。



もうこのままこの暗闇の中で車中泊したい……………







でも、頭に浮かぶのは先日のフィリップさんの言葉。



「life is more than that.」



命は何にも代えられない。



ここまでトラブルなしで来てるのに、アフリカ最後の夜に何かあったら終わってる。



最後まで無事に、安全にこの大陸を旅しきらないといけない。




「ああああ!!根性で宿探そう!!」



「フミ君大丈夫?」



「大丈夫!!次の町まで行って手当たり次第に宿を回ろう!!」




気力を振り絞って車を走らせ、また1時間かけてオフロードから車道に戻ってきた。



そして隣町のブロンコーストスプルートというところにやってきて、あちこち走り回って目に入る宿に値段を聞いて回った。




しかしやっぱり高い。


どこも500ランド、4200円とかだし、もはや時間は21時を過ぎているので、田舎のホテルはレセプションも閉まっているところが多く、応答がない。











ひたすら走り回った。



マジで意識飛びそうなくらい頑張って運転した。



そしてとうとう1軒の宿にたどり着いた。




「フミ君!!ここ400ランドだ!!」



「ぐおおおおおお!!!ここ決まりいいいいい!!!」




3360円!!!もうここしかない!!!


しかもレセプションも開いてて、今すぐ入れる!!!



車を止め、チェックインして部屋に入るとそれはもう豪華な部屋だった。










あああ、南アフリカのゲストハウスは本当にどこも綺麗だなぁ…………


そりゃ何千円もするわ…………





「うわあああああ!!!もう21時だけど3300円の元取るぞおおおおおお!!!」



「よおおおし!!とりあえずワイファイに繋いで動画流しっぱなしでお風呂入ろう!!」



「もうウンコ漏らそうかな!!嘘!!」




ものすごい勢いで全ての設備をフル活用しようとしてベッドに倒れたら、何も使わないまま2秒で気絶。




も、元全然とってねぇ…………!!








あぁ、アフリカ最後の夜。


これもまたTIAだったのかな。





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