4月5日 金曜日
【スペイン】 ヘレス ~ セビリア ~ ウェルバ
フカフカのベッドで目を覚まし、10日ぶりのシャワーを浴びて綺麗にヒゲを剃る。
1階に降りると、身支度を整えたシモンがいそいそとパンを頬張っていた。
「ちょっと今日は用事があるからね。準備はいいかい?」
メガネをかけたシモンは、昨日のセクシーなギタリストモードとはガラッと変わった、普通の優しいおじさんだった。
そんなシモンにバスステーションまで送ってもらった。
「フミ、またEメールで喋ろう。元気でやるんだよ。」
「シモンも。いつかシモンのバンドを日本に呼んでライブを開きたいです。」
「はは。そうなると嬉しいよ。ダウン、ダウン、アップを忘れたらダメだよ。」
シモン、本当にありがとう。
あなたのギターの音色、あなたの優しさ、絶対に忘れない。
いつか必ず日本に招くから。
それまでこのアンダルシアに美しいフラメンコを響かせていて下さい。
あまりにも多くのことを感じさせてくれたヘレス。
もう心はすべて満たされた。
進むぞ。
8ユーロのバスに乗りこみ、美しい草原の中を駆け抜けてバスが到着したのは、アンダルシア地方最大の街、セビリア。
スペイン第4の都市で大航海時代から交易の拠点として栄えた由緒正しき街だ。
闘牛発祥の地であるアンダルシア。
このセビリアにはスペインでも最も権威のある闘牛場があり、さらに巨大な大聖堂や塔など、世界遺産盛りだくさんで、観光客を魅力してやまない美しい街並みが広がってるそうなのだが、
もうシモンとの出会い以上のものをスペインには期待しない。
俺の旅の中でも指折りに素晴らしい出会いだった。
このまま先にポルトガルまで行ってしまおう。
バスはセビリアのターミナルに到着。
ここから乗り換えて国境近くまで行こうと思ったのだが、そっち方面へのバスは別のターミナルからしか出てないという。
ちょうどよかった。
街を観ながらそちらへ歩こう。
まぁー、このセビリア。
華麗だね。
華麗。
すべての建物が豪壮な石造りで、街全体が美術館のように味わい深く、それでいて洗練されている。
まるでウィーンのようだ。
そんな美しい歴史的景観の街並みの中、整備された並樹が揺れ、その足元を最新のトラムが騒音もなく静かに走って行く。
行き交う人々も、今までの田舎にはいなかった都会的なオシャレさんばかり。
パンフレット片手に歩いている観光客も多く、彼らの目当てはこの歴史香る美しい街並みの中に点在するいくつもの教会などの史跡。
史跡の周りには観光客向けのカフェやレストランが軒を連ねているが、もちろん下品な客引きなんて一切なし。
何本ものびるオシャレなショッピングストリートには、アコーディオン弾きやお決まりの銅像パフォーマーがこれでもかってくらいひしめいている。
超激戦区。
まさに都会。
歴史と現代が融合する華麗な街だ。
南部の大都市ってとこでは、日本でいう福岡ってイメージかな。
あ、ラーメン食いてえ(´Д` )
福岡とか禁句。
ラーメン食いたくなったから見つけた中華料理店で酢豚食べた。
6ユーロ。
中華料理屋のおばさんはどこも愛想が悪い。
何しに来やがった?みたいな顔をされる。
あー、この感じもヨーロッパだなぁ。東欧でもいつもムカついてたもんな。
でも米食いたいから行くけどね。
でも吐くほどマズイけどね、ヨーロッパの中華料理店の米。
下水で炊いてるんじゃねえか?っていうくらいの臭いがする。
美味い米が食べたいなぁ。
よし、ちょっくら歌うか。
国境の町までは10ユーロもあれば行けるだろう。
1時間だけやろう。
綺麗なショッピングストリートで銅像に挟まれた場所でギターを鳴らす。
んんー、さすがは激戦区。
なかなか渋い。
が、それでもポツポツと入り、計算通り1時間弱でジャスト10ユーロゲット。
よっしゃよっしゃ。
バス代でたぞ。
バス停に向かう前にマクドナルドに寄ってブログの更新だけ。
あとついでにバッテリーの充電も。
ああー、アンダルシア最高だなぁ。
シェリー酒、フラメンコ、牛追い。
草原の中の街と、美しい海岸線の古都。
なにより奇跡的なまでに親切な人々。
ここが故郷だったらどれだけ誇らしく思えることだろう。
もちろん九州が1番だよ。
でもこの草原を吹き渡る風はどこか懐かしささえも含み、ノスタルジーに浸らずにはいられない哀愁がある。
フラメンコのギターとダンスは遠い日の幻。
ああ、これが旅情だなぁ。
愛してる、アンダルシア。
そう思いながらトイレに行き、席に戻ると、充電していたバッテリーがなくなっていた。
ぶち殺すぞコラアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!
ど、ど、ど、どどどどどどどいつだ!!!!!
縛り上げて牛追い祭りの道の真ん中に放置して放置して放置するううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!
即店を出てバスステーションに行き、バスに飛び乗りました。
はい、僕が悪いです。
西欧ではスリとか盗難が多いってあれほど言われていたのに、このアンダルシアの奇跡の人たちがそんなことするわけねーって思ってました。
見事に充電ケーブルは残してバッテリーだけ消えてました。
iPhoneを2回フル充電できるナイスなやつでした。
山田電気で買いました。
宮崎市の北バイパスにある山田電気で5000円で買ったやつです。
山田電気の横にはセブンイレブンがあります。
宮崎のセブンイレブンにはチキン南蛮弁当というのがあってとても美味しいんですが数年前に味つけが変わってそれからは食べてません。
要するに僕が悪いんです。
別にそんなにショックじゃないです。
iPhoneに比べたらたかが充電バッテリーです。
いくらでも代わりはあります。
それに僕はもうひとつ3回フル充電できるバッテリーを持っています。
これで十分です。
これも山田電気で買いました。
山田電気から田んぼの中の道を抜けて西都線に抜けたところにあとひきラーメンというお店があって金曜日に行くと普段500円くらいするラーメンが280円で食べられます。味は山岡屋とだいたい同じです。次回使えるギョウザ無料券をくれます。
要するにヨーロッパこれから気をつけます。
ムカつくから男性読者サービスしときます。
ろ、ロリコン!?
8.5ユーロのバスで国境近くの町、ウェルバに到着。
もう22時前。
もうポルトガルへのバスはない雰囲気。
近くのバーでビール飲んだくれて、ケバブ食べて、寝床を探して歩く。
少し離れたところに橋を見つけて、久しぶりの橋の下野宿。
暗がりに潜り込み、ゴミが散らかる中、綺麗な地面を探す。
土の上にマットを敷き、体がはみ出して汚れないように慎重に寝袋に入って横になる。
先日の雨でまだグショグショの寝袋。
一瞬でズボンもグショグショに。
それでも根性で目をつぶる。
が…………
物音で目を覚ます。
寝袋の口を少しだけ開けてチラリと外を見る。
物音がする。
首を動かして視線を横にスライドさせていく。
暗闇の中、黒人が立っていた。
心臓が飛び出しそうになるが、あくまで寝返りのふりをする。
落ち着け。
大丈夫、襲う気ならもうやってる。
橋脚の方を見た。
さっきまで暗くてわからなかったけど、ホームレスの家が並んでいる。
どうやらここはホームレスさんたちのアパートだったよう。
家の方に2人の黒人がいる。
大丈夫、襲う気ならもうやってる。
飛び起きたりしたほうが警戒心を与えてしまう。
真横の黒人さんは、どこから持ってきたのかスーパーのショッピングカートを押しながらノソノソと歩いて街の中に消えていった。
これから空き缶かなにかを集める仕事なのかな。
時間は朝4時。
そのまま目をつぶった。