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スペイン最高の出会い

4月4日 木曜日
【スペイン】 ヘレス









足が冷たくて目を覚ました。


また雨が土砂降りで水が染み込んできて寝袋がビシャビシャになっている。




もう、スペインって雨多いんだよ…………




膝を曲げてもう一度なんとか眠る。













朝、雨が止んだのを見計らってテントから出てダッシュでたたむ。


寝袋を絞るとジャバーっと水が溢れた。
こんなんでバッグにしまったらカビはえるよな………



しかし太陽は厚い雲の上。

水がしたたるびしょ濡れのテントをバッグに詰め込んで、町に向かった。










今日ものどかな街並みのヘレス。

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通りのカフェバーではみんなほのぼとの談話している。

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そんな空気に引き寄せられ俺も適当なカフェでランチ。



これで5ユーロです。

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塩がなくなったら、隣の席のおばちゃんが塩を持ってきてくれた。


優しいなぁ。


パンをおかわりしたけど追加料金もなく、小銭の両替もしてくれた。


たまり溜まった小銭は全部で100ユーロあった。

いい調子。

あんまり思うように稼げてはいないけど、最低でも1ヶ国100ユーロは貯めていきたいな。



ヨーロッパでは宝くじかなんかを売って歩いてる人が多い。

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これスペインのお料理番組。
アシスタントがエロすぎる。レミパンも頑張って!(´Д` )

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カフェを出ると、また雨がパラついてきた。

こりゃ今日は歌えないかな。



行くあてもないので、ゆうべ飲みに行った路地裏のバーへ向かった。











たどり着くと、昼間からオッさんたちがワイワイ飲んだくれてた。


おー!!入れ入れ!!とゆうべもいたおじさんたちが招き入れてくれる。


さすがにまだ早いのでコーヒーをお願いしますと言うが、マスターは腕時計をトントンやって、もう酒の時間だよと言ってくる。


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まだ昼だから(´Д` )






外は雨足が強まり始めている。

もういっかとビールを注文した。










その時だった。


路地裏のどこからか、手拍子のような音が聞こえてきた。


耳をすますと、歌声とギターも聞こえる。




これもしかしてどっかでライブやってんのか?とビール片手に表に出てみた。


手拍子につられてフラフラ歩いていくと、古びたワインバーの前に着いた。



この中で何かやってる。




扉を開けた。










おー!!やってるやってる!!



映画に出てきそうなワイン樽が並ぶ老舗っぽいバー。

その中でオッさんたちがグラスを傾けながらフラメンコを演奏していた。

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ライブではない。

ただ歌が好きなオッさんたちが集まって遊びでやってるだけ。


みんなご機嫌で歌い、フラメンコ独特の手拍子を打ち、ギターをかき鳴らしている。







ていうかめちゃくちゃウメエ!!!!

ギターも手拍子も歌もクソウメエ!!!!!











ぐおー、こ、これが本場のフラメンコ…………

普通のオッさんがプロ並みの腕だ…………


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特にこのハットをかぶったクールそうなおじさんのギターがとてつもない。

フラメンコ特有の親指から小指まですべてを使った目にもとまらぬストローク。
感情がほとばしるようなオブリ。
そしてまったくブレないリズム。


その正確で美しいギターに、彼の人生を感じるようで痺れてしまった。





フラメンコの聖地、ヘレスの裏路地。
ちょっとのぞいたバーで歌を楽しむ地元のおじさんたち。

シチュエーションが完璧すぎる。














そのシチュエーションとフラメンコに酔いしれていたら、おじさんたち、演奏を終えて帰り始めた。


あー、もう終わりかーと思っていたら、あのハットのギタリストが声をかけてきた。


「英語喋れるかい?」


「あ、は、はい!!」


「よし、そこで一杯やろうか。」




なんとこのスーパーギタリストにお誘いを受けてしまった。


やった!!という思いと共にめちゃくちゃ緊張しながら、いつものバーに戻る。










「シェリー酒でいいかい?僕のお気に入りを飲ませてあげるよ。」



そう言って彼はマスターにスペイン語で注文した。


クーラーの中からではなく、足元に置かれた大きなプラスチックの容器に入った液体を注ぐマスター。

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「シェリー酒にはたくさんの種類があってね。その中でも外に出回らない特別なものがあるんだ。地元の人はそれぞれのお気に入りを持っているのさ。」



その色の濃い液体を口に含んだ。

うわ!!美味い!!

芳醇な甘さが口いっぱい広がる!!


すげえ!!これが本物のシェリー酒か。






「バルログ!?ギター!?ハポン!?バルログバルログ!!」


「ギター!!バルログ!!バルセロナアタック!!」




や、ヤベエ。

俺のギターが見つかってしまった。


色めきだつおじさんたち。

そう、彼らはフラメンコの聖地で暮らすギター大好き人間たち。

ギターが生活の一部にある人たち。


ギターを弾くとわかれば、もはややらないわけにはいかない。







マジか…………

怖えすぎる…………

つい今しがた、あんなプロ級のフラメンコを見せつけられたところで俺の歌………










い!!今実は指を複雑骨折していまして…………








とは言えない。


やるしかねえ。




狭いバーの中、興味しんしんで日本人のギターの音を待つ猛者たち。



も、もうどうにでもなれ!!!












思いっきり歌った。


ディランの風に吹かれてをやった。



歌が始まると、驚いたように笑顔で何か言っているおじさんたち。













ドキドキしながら曲を終えた。




ぶん殴られるか。



ワインぶっかけられるか。






しかしそんなことはなかった。

全員が俺を抱きしめ頬にキスをしてくれた。



はぁぁぁぁ、よかったぁぁぁぁ(´Д` )
全身の力がどっと抜けた。











「素晴らしいじゃないか。君の歌は本物の路上の歌だ。心があるよ。」


シェリー酒を差し出しながらハットのギタリストが笑った。





「よーし!!じゃあ俺も!!」


「オレオレ!!俺がやる!!」




三度の飯よりギターが好きっておじさんだらけ。
我先にと俺のギターをとって歌っている。

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しかもうめぇ(´Д` )




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なんていい笑顔で歌うんだよ。

そしてみんなも最高の笑顔。


音楽ってこんなに楽しみながらやるもんなんだなぁ。



店内にスペイン語の大合唱が響いた。





















「よーし!!次行くぞ次!!」



おじさんたちと一緒に町を歩く。

路地裏をグルグル回って、フラメンコ好きが集まるバーをハシゴ。

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どこに行ってもお店にギターが置いてあり、誰かがギターを弾いている。


それもすべて観光客が行くようなショーをやってるフラメンコバーではなく、地元の人たちが楽しむバー。

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「あ、ここはやめよう。違うとこ行こう。」


「どうしてですか?」


「俺、あのギタリスト嫌いなんだ。」



そう言ってお店の中でギターを弾いてる人を指差すハットのギタリスト。


あー、こういう人間関係もまた、田舎っぽくていいなぁ。

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「よし、フミ。もっと面白いところに連れてってあげるよ。俺の行きつけのフラメンコバー。」


このハットのギタリスト。

彼の名前はシモン。

あなたは有名なんですか?と聞くと、まぁこの町ではそうだね、とニコリと笑う。


知的で上品で、50歳くらいなんだけど、男のセクシーさを持つフラメンコギタリスト。













彼の車に乗って郊外へと向かう。


街を抜け、住宅地の奥に入って行く。


こ、こんなとこにバーなんてあるのか?










車は静かな町はずれに止まった。

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これか。


日本にもありそうな、町から離れたライブハウスって感じ。

こんなとこ日本人来たこと絶対ない。










中は意外にも広く、数人のおじさんがビリヤードをやったりカウンターでシェリー酒を飲んだりしていた。

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一角にはステージがあり、いくつものガットギターが置いてある。


すげぇ。
まさに地元のライブバー。



「これ、僕だよ。」



そう言うシモン。

壁に貼られた立派なポスターには確かにシモンの絵が描かれていた。

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「バルログバルログ。」



これを見るんだ、みたいな感じでバーのマスターがなにやらYouTubeを再生した。


そこには何かの映画のワンシーンが流れた。

古ぼけたフィルム。

フラメンコの舞台の場面のようだ。


劇場の中で華麗に、勇ましくフラメンコダンスを踊る1人の美しい男に観客が喝采をおくっている。










実はこれ、シモンだった。





シモンはかつて、名うてのダンサーとしてアンダルシアにその人ありと言われたすごい人だったのだ。



「昔はバンドと一緒に世界中を旅したんだ。でも子供ができてね。その子供が大きくなったからまたギターを始めたのさ。」







穏やかに話すシモン。
しかしその顔のシワが激動の人生を物語る。

すげー人と出会っちまった。






シモンのたくさんのビデオを観ながらシェリー酒を飲みまくった。

そしてアンダルシアの有名な生ハムも。

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この生ハムが信じられんほど美味い。

口に入れると脂身がとろけ、ひと噛みするごとに赤身からまろやかな旨味が染み出る。

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シェリー酒との相性のよさ!!

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気持ちよく酔っ払い、ここでも歌わせてもらうと、俺の分の飲み代をタダにしてくれた。

シモンが後から払う、という風に手回ししてくれてたのかもしれない。

その優しさがたまらなく嬉しかった。







「今夜はウチに泊まればいいよ。子供たちは今夜違う家に泊まってるからゆっくりしてもらって構わない。」


「いいんですか!!」


「もちろんさ。だって僕も今までたくさんの人に助けてもらった。僕は君に何かをしてあげたいんだよ。それが僕の喜びなんだ。」















シモンのアパートに着いた。

彼の人柄を表すように、綺麗で清潔に保たれている。

いくつもの部屋、オシャレなキッチン、ステンレスのシャワー。


そして何本ものギターと楽譜があった。







部屋の壁にはたくさんのポスターや絵がかけられている。

シモンのものもあった。

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「これは僕の父親だよ。」


白黒の古いポスター。
そこには逞しく美しいダンサーがうつっていた。

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父親もまた偉大なダンサーだったそう。













キッチンのテーブルでシェリー酒を飲みながら、シモンがギターを弾いてくれた。

悲しくも力強いギターの音色。


ギターを渡される。


シモンにストロークの指づかいを教えてもらった。


「フラメンコギターにはものすごくたくさんのテクニックがあるんだ。練習練習だよ。ダウン、ダウン、アップ、ダウン、ダウン、アップ。そうそう。」


中指でダウンストローク、追いかけて親指でダウンストローク、すぐに親指でアップストローク。

これを滑らかに繰り返すことで、あのフラメンコの独特なジャカジャカを生み出す。



「フラメンコで大事なのはギターでもダンスでもない。歌が1番大事なのだよ。」










このスペイン南部、アンダルシア地方で、フラメンコに人生を捧げてきた男。


父親の背中を観て育ち、きっと子供の頃から町の小さなバーや劇場で、毎日のように大人たちの歌うフラメンコを見て育ったんだろう。



ニューシネマパラダイスの風景が浮かぶ。小さな田舎町で1人の男が様々な出来事の中で大きくなっていった。


そして栄光をつかみ、誰もが彼のことを讃えた。



彼は歳をとり、今もこの町の小さなバーでフラメンコギターを弾き、勇ましくダンスのステップを踏んでいる。


かつての栄光はないかもしれない。


でも彼は今もこの町の英雄なんだ。

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「最初は難しくて出来ないさ。ゆっくり慣れていけばいい。」



2人だけの真夜中のキッチン。

懸命にギターを弾いた。
フラメンコの英雄に見守られながら。





ダウン、ダウン、アップ。


ダウン、ダウン、アップだ。

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