2006年3月10日 【和歌山県】
さぁやっと出発!!!
出発出発!!!!
面白い人たちと出会ったこともあって田辺に長居してしまったけど、早いところ先に進まないと。
今日もカズさんを車に乗せてファントムのエンジンをかける。
どこでもいいから熊野古道に行きたいと言っていたカズさん。
どこで降ろそうかなぁと思いながら本宮方面に向け車を走らせた。
カズさんとの路上、結構楽しかったよな。
でもあんまりずっと誰かといるのも息苦しくなってくるもの。
すっかり1人旅に慣れてしまって、1人でいるほうが楽になってる。
誰かとの行動はたまにあるから新鮮ってくらいだ。
やっと1人に戻ってガンガン進むぞーー!!!
「あれ………?ない…………ない!!!財布がない!!」
横で慌てふためいているカズさん。
……………………………
は?
オラアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
財布くらいちゃんと持っとけやこのハゲえええええええええ!!!!!!
ちょ、もおおおおお…………………
何してくれてんだよおおおおおお………………
一緒になって探すが車の中にはどこにもない。
マジでもおおおおおおおおお…………………
結局またミキさんちまで戻ってきた。
「あら!!なんやねんあんたら!!お酒つきおうてくれはんの?」
付き合うか!!!!
まだ昼じゃ!!!!
財布がないというとミキさんとマユミさんも一緒になって探してくれたんだけど、この部屋の中にもどこにもない。
いやいやいや!!!
ここじゃなかったらもうお手上げやん!!!
どうしようか…………と途方に暮れる困る4人。
「ん………………?ハゲチャビン、あんた電話鳴っとるで。」
「ん?あー、お母さんだ。いいからいいから。それどころじゃないよ。」
「あんたさっきからずっと鳴っとるやんけ。出よし!!母ちゃん大事にせなあかんで!!」
「う、うん、わかった……………もしもし、今ちょっと忙しいから…………………え?財布?」
どうやらどっかで落とした財布が交番に届けられたらしく、身分証から割り出して実家に電話が入ったらしい。
「なにしとんねん!!死ね!!」
「このハゲチャビン!!ピアニカ捨てたろか!!」
「えへへへ。」
それから4人で警察署に受け取りに行き、拾い主さんに挨拶に行くと、もう夕方。
「よし、もう今日はええやろ。飲もか。」
飲もかじゃねぇ!!!!
いやマジでもういい加減やばい。
これ以上ここにいたらクソ堕落してしまいそうだ。
「俺行きますよ。カズさんどうしますか?」
「え?どこに?グビグビ。」
グビグビじゃねぇ!!!
何ソッコーで缶ビール空けてんだコノヤロウ!!!
古道行けコノヤロウ!!!
すでに飲み始めているカズさんに、あとは自分でなんとかしてくださいと言って部屋を出た。
はぁ、ようやく田辺出発できる。
でもまぁ楽しい3人だったよな。
車を飛ばして一気に県北の和歌山市までやってきた。
アロチという飲み屋街はなかなかの規模で人も多い。
早く堕落した体を元に戻すぞと、焦りながら街を歩く。
ネオンに照らされていたらここが自分の居場所だって思えてくる。
早速繁華街の通りの真ん中で歌っていると、1発目に声をかけてきたのは、少し離れたところでギターを弾いて歌っていたおじさんだった。
長野県から全国を回りながら歌っているところらしく、色々路上の話も聞かせてくれた。
全曲長渕オンリーらしく、荒稼ぎだって。
路上で稼ぐなら長渕。
これ鉄則。
長渕好きは人情に厚い豪快な人が多いからすぐお金を入れてくれるんだろうな。
長渕やれば儲かるのはわかってるんだけど、なんか金目的だけでやるのも腑に落ちないので、俺はやっぱりやりたい曲だけをこれからも歌っていこう。
「よし、兄ちゃん行くで!!」
12000円くらいいったところで歌を聴いてくれた2人組のお兄さんに誘ってもらい、お店に行くことに。
やってきたのはクラブ『シルバーストーン』。
お兄さんたちと一緒にギターを弾いて歌うと女の子たちも喜んでくれた。
やっぱりあれだな。
こういうキチッとしたお店の女の人は接客がしっかりしてる。
楽して稼ぎたいからお水やってます、客に楽しませてもらうのが当たり前と思ってる系の金髪ヤンキー女とは大違いだ。
それからラーメンにも連れて行ってくれた岩城さんとギンさん。
ていうか和歌山ラーメンめちゃくちゃうまい!!
今まで食べてきたラーメンの中でも断然美味い!!!
豚骨なんだけど九州の豚骨みたいにあっさりじゃなくて、味が濃厚ですっごい好み!!!
「コブクロのあいつら、さんざん飯食わせてやったのに電話少ななってのー。」
路上時代のコブクロにもこうして今の俺みたいご飯ご馳走してあげてたんだそうだ。
あの有名な2人にもそんな時代があったんだよなぁ。
岩城さん、ギンさん、めちゃくちゃ楽しかったです。
また歌いましょう!!!
ありがとうございました!!
お金もそれなりに稼げて、楽しいお酒飲んで美味しいラーメン食べて、身も心も満たされて大満足で車に戻った。
あー、和歌山めちゃくちゃいいなぁ。
翌日。
車の中で目を覚ますと電話が鳴っていた。
誰だ…………?
もっとゆっくり寝させてくれよ…………
やっとカズさんいなくて1人でゆっくり寝られてるのに……………
「ギタリスト、あんた眼鏡忘れとるで。」
電話の主、ミキさん。
キエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!
昨日カズさんに財布忘れんなハゲって思ったのに俺ええええええええええええええええ!!!!
ちょ、もおおお、財布くらいちゃんと持っててよおおお……………
って俺エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!
ぐおおおおお……………
せっかく和歌山市まで来たのにマジかよおおおお………………
こっから田辺まで100キロぐらいある……………
ハイパー面倒くせぇ………………
カズさんになんにも言えねぇ……………
どんなに悔しがっても仕方ないので渋々田辺までアクセルを踏む。
そして2時間かけてやっと田辺に戻り、ミキさんの部屋のドアを開けると、出発したと思ってたカズさんがまだ中でビールを飲んでた。
ヤバすぎやろ……………
とことん沈む人だなこの人…………
もう今からどこにも行けないので、仕方ないので今日は田辺の路上で歌うことにした。
土曜の夜。
ネオンが光る味小路には結構な人が歩いている。
少しは働きましょうとカズさんも連れ出してきたので、今夜も2人で演奏スタート。
ピアニカとギターの息の合った演奏でジャンジャンチップが入る。
連日の路上で俺の声はもうひどいことになっているが、それもまたいい感じだ。
深夜になり、チップも充分溜まり、そろそろあがろうかというところに、スキンヘッドでヒゲを生やし、甚兵衛を着た車椅子のおじさんが近づいてきた。
やば、どう見てもカタギじゃねぇ…………
なんか怒られるんじゃないか……………
「いいね君。これで一軒付き合ってくれるか?」
差し出されたものを見るとなんと1万円。
マジか!!!!!
一気にテンションが上がってそれから車椅子のおじさんとスナックに行ってしこたま盛り上がった。
怖そうな人だったけど、実はすごく優しくて面白くて、久しぶりにスナックであんだけワイワイ騒げたな。
お店の中でもたくさん歌わせてもらい、連絡先をもらって無事おじさんと別れ、それから車に戻ってカズさんと稼ぎを数えるとなんと4万円もあった。
こりゃすげぇ!!
田辺マジで稼げるなぁ。
2万円をカズさんに渡し、それからここ数日だいぶお世話になったミキさんのところにお弁当を買ってってあげた。
部屋の中には相変わらず酔っ払ってるミキさん。
お弁当に大喜びしてくれた。
「たっだいまー!!」
そこにいつものマユミさんがドレスを着て、ケバい化粧をして帰ってきた。
2人とも夜のお店で働いてるので、この深夜が仕事終わりの時間ってわけだ。
紀伊半島の小さな町の、小さなアパートの部屋。
そこに転がり込んだ2人の流れ者。
地元の面白い女の人たちとの数日間の出来事。
楽しいけど、いつまでもここにはいられない。
でも楽しいよなぁ。
明日必ず出発しようと思いながら、4人で朝が来るまで飲んだくれた。
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