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五島美術館、下北沢、橋場、両国、東京の街をウロウロ







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2006年1月26日 【関東出発】






246で上野毛にやってきた。



わかりにくい地図で住宅街をグルグル回り、やっとこさ辿り着いたのは『五島美術館』という場所。


ここは茶の湯に関する貴重な資料や器が展示されている美術館だ。


岡山備前焼の作家、渡辺節夫さんがここの学芸部長である竹内順一さんという方との対話本を出しており、それを読んでから是非一度来てみたいと思っていた。








700円を払って中に入ると、薄暗い展示ホールにたくさんの器が並んでいた。


他のお客さんはみな年配の方ばかりで、着物を着ている人もいる。




1発目に目に飛びこんできたのは鼠志野茶碗『峯紅葉』。


重要文化財の一品だ。


本で読んだところ、口縁部のうねり、ヘラ目、亀甲紋、全てが完璧に計算しつくされており、見る人が見ればその姿に宇宙が見えるらしい。


何のこっちゃ。




楽長次郎の灰器、黒織部茶碗、古伊賀の水指『破袋』などなど、日本を代表するそうそうたる陶器、磁器の名品たち。


利休や小堀遠州、本阿弥光悦たちの茶杓、書…………



とまぁ茶文化が花開いた桃山時代の品をじっくりと見て回る。



茶を飲む、というだけの行為なのにものすごく深い世界がある茶道。


日本文化はほんとに深遠だ。










美術館を堪能したら、宮崎のハーピスト、ディッキー綾部さんが紹介してくれた方との待ち合わせ場所、下北沢に向かった。


東京にいるんだったら業界にコネのある男を紹介してあげるよと綾部さんは言っていたけど、一体どんな人なんだろ?



環七沿いの1時間100円のコインパーキングに車を止めて、歩いて下北沢の町に入っていく。


細い道が入り組む路地。


こんな住宅街の中にもちゃんと地域性のある街があるってんだから東京は恐ろしい。






しばらく行くと小さな店舗が増え始める。

高層ビルのような高い建物はないが、道が狭いから閉塞感で息がつまる。


駅が見えてきた。


なんだよ、この駅。





井の頭線と小田急線の駅が同じ位置で上下にクロスしているもんだから、いたるところに駅の入り口があり、踏み切りだらけで混雑しまくり。


自転車が道を狭め、細い路地がクモの巣のように入り組み、ものすごい数の人が溢れている。


ここが下北沢かぁ。








まだ時間があるのでちょっと探検してみようと街の中をブラブラしてみた。



古着屋、クレープ屋、飲み屋、ラーメン屋、雑貨屋……………


原宿みたいな若者の街だけど、こっちのほうが路地が多くてなんかワクワクしてくる。



そしてバンドマンの街でもある。


あまりライブハウス事情に詳しくない俺でも聞いたことのある名前の店がたくさんある。


ここで日夜デビュー目指して頑張ってるバンドが汗水涙たらしながら演奏しているんだな。








そして18時半。


少し早いが待ち合わせ場所に向かった。


ごちゃごちゃと入り乱れる看板の中にライブバー『ぐ』の文字を発見。






中に入るとアジアンな雰囲気で、とりあえずカウンターに座る。


端っこにおじさんが1人いる。



「………………ん?あ、カネマルさん?」



「あ、戸塚さんですか?」



ディッキー綾部さんの東京時代の同僚、戸塚さん。


そういえば『ぐ』のマスターも面白い人だから、と綾部さん言ってたな。







カウンターに座り、しばらくお喋りした。


音楽雑誌の編集者をしているという戸塚さん。


ワイルドな風貌のマスターは下北沢では有名な顔役だ。




「よっしゃ!!…………うち行くぞ……………シャワーとか浴びたいだろ?………ヒック…………よし!!行くぞ!!……………ヒック……………」




だいぶ酔っ払ってる戸塚さんに飲み代をおごってもらい、車で戸塚さんの家に向かう。



そしてしばらく調布街道を走っていたら、いきなり戸塚さんが口を開いた。



「あ、ここでいいよ…………うん、ありがと。それじゃ頑張ってね。」



車を降りて帰っていった戸塚さん。





え?


何これ?



家行くんじゃなかったの?






完全に足代わりになっちゃったな。


まぁ全然いいけど。

家行っても気まずいだけだし。




ライブハウスで会う、ということだったので歌うことになるかもと思っていたのだが、まったくそんなことなかったな。


喉の調子は戻りつつあるが、まだタンが鼻と喉にからんでうまく呼吸できない。


関東のラストライブは前橋『クールフール』。



日曜までにはなんとかしないとな。













翌日。









浅草のちょい上、別に何もない下町、ここは台東区橋場。


車を路駐して入ったのは東京都人権プラザ。


この前行ったハンセン病療養所で、この人権プラザにもハンセン病に関する資料があるという情報を入手していたのだ。




1人でふらりと入ってきて資料室を見せてくださいという怪しい男に一瞬とまどいつつも、快く案内してくださった職員さん。


今、俺の髪の毛は茶色かった部分がなくなり、かなり短くなっているので好青年っぷり全開だ。


やはりロン毛茶パツよりも全然大人に対してウケがいい。





資料室の中にはたくさんの人権問題、病気や部落、セクハラなどに関する書籍やビデオが並んでいる。


俺のために部屋の鍵を開けてくれたのでもちろん他には誰もいない。


あまり長時間路駐しているとまずいので、ビデオを1本だけ見ることに。


再生ボタンを押す。









……………………呆然。







実際に変形の後遺症を持つ方が何人かインタビューに答えていたのだが、その顔や指は目をおおいたくなるほどに歪んでいる。


世間一般の意見でこれを見て、驚いたり避けないでくれってのはまず無理な話だよ。


スーパー銭湯に行って体中にぶつぶつができている人が湯船で横に入ってきたら少なからず変な気分になるし、油ぎったおっさんが湯に膜をはったりしていたら女の人は間違いなく嫌がる。


人間とはそんなもんだ。


でも病気のことを正しく理解し、差別はしてはいけない、としっかり思っていれば、何も知らずにただ顔をしかめる人より格段にマシだろう。




資料館を出て車に戻ると、路駐の輪っかは…………


良かったよ、なにもついてなかった。


















それから浅草を通って両国にやってきた。


やっぱりここは外せないということで国技館に到着。


朝昇竜に武蔵丸、琴欧州と、有力どころはほとんどが外国人というもはや国技とは言いがたい現状の相撲。


相撲資料館には国技相撲の歴史を作った名力士たちの写真や絵が飾ってある。






昭和の始めころ、相撲は一団体じゃなかったということを初めて知った。


プロレスみたいに色んな団体があってそれぞれに興行をしていたみたい。


関西相撲、関東相撲と分かれていて、一時期はポマードで七三分けにして団体勝ち抜き戦なんてやっている団体なんかもあったようだ。


それだけ人気があったんだな。




心に残る名勝負、貴乃花対曙。


あの貴乃花の形相はまさに鬼神が乗り移った様だった。








国技館の見学を終えたら両国の街を歩いてみた。


春日野部屋なんかの有名な相撲部屋やちゃんこ屋さんがいたるところにあって、さすがは相撲の街。





他には江戸の大泥棒、鼠小僧の墓や赤穂浪士討ち入りの吉良邸なんかがある。


なんとも江戸風情を感じさせてくれる下町だ。


渋谷とか六本木とか、上京してきたやつが遊ぶのはだいたいあっち側だけど、もともと江戸として栄えていたこのあたりの東側のほうが東京は断絶面白いな。



鼠小僧の墓石は削ってその削り粉を財布に入れておくと小銭が貯まるということで、おばさんたちが必死に小石でガリガリ削っていた。












東京を背に6号線を登っていく。


大都会、東京。


初めてこの街に来た時は、東京という名前の持つ輝きに希望と不安を膨らませた。


コンクリートのジャングルに踏み込む探検家の気分だった。


しかし今はただの大きな街に見える。


上京という言葉が滑稽に思えるくらい、ここも日本の中の1つの街にすぎないんだ。










夜になり、茨城の土浦に到着した。


今日はここで歌おうと準備をしていると電話が鳴った。


富良野のヒロちゃんだ。


沈んだ声をしている。



「やりたいこと、やらなきゃいけないことはわかってる。けど面倒くさくてどうしてもさぼっちゃう自分が嫌で余計手につかなくて………………もういやだ。何もしたくない。」



ヒロちゃん、今の俺だってそうだよ。


向上心のある人間はみんな何かを模索し、常に自分と闘っている。


悩まない人間はそこそこの人生しか送れないよ。


自分に克つことができた時に本当の成長ができるんだ。






と自分にも言い聞かす日々。


さぁ、歌うか。





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