2005年9月3日 【秋田県】
デジカメ………………
1週間分の写真が消えた……………
はぁ………もう写真撮りたくないよ……………
モゾモゾと布団の中で悲しみに暮れる。
はぁ………それでも進むしかねぇか……………
死ぬほど落ち込んでるけど行動スタート。
横手はかまくらの町でもあり、小正月になると町中にかまくらが出現し、ちゃんちゃんこを着た子供たちが中で餅を焼いたりするという。
かまくらとはもともと水神様を祭るもので、屋根から降ろした雪で各家が作るもの。
最近では横手のかまくら作りのプロたちによる出前かまくらなんてものも企画されており、関東圏内に作りに行ったりしてるそう。
費用は雪の輸送費込みで70万くらいなんだって。
はぁ…………どうでもいいから写真………………
そんな名物なので、いつでもかまくらが見られるようにと、市役所に体験かまくら室というものがあった。
重い扉の中に入るとそこには本物の雪。
室内は-10℃の極寒。
肌がひりつく。
とはいうものの俺はもっともっと寒い富良野のスノードームの中でギター弾いて歌ったんだもんな。
今考えるとすげぇ。
市内から少し北にある、金沢の後三年の役資料館へ。
1051年、東北の奥六群を支配していた安部氏が調子に乗ってきたので、朝廷側の源頼義がやっつけに行くことに。
しかしなかなか手強いので、東北でどっかの豪族に応援を頼むことに。
安部氏とは長い付き合いだから嫌だよ、という清原氏を5年がかりで口説き落とし味方につけることに成功。
見事安部氏を滅亡に追いやった。
朝廷は応援してくれた清原氏に鎮守府将軍という位を与える。
え?
…………いやいや、何であいつらばっか?
メイン俺たちやけど?
と気に食わない源氏。
ここまでが前九年の役。
その後、今度は勢力をのばしていた清原氏の真衡さんが調子に乗ってきた。
おかげで家臣に暗殺されてしまう。
真衡さんの領地を引き継ぐことになった家衡さん、清衡さん。
どっちがどれくらいとるかの采配は源義家がまかされた。
前九年の役の遺恨で、源氏は清原氏が嫌いなので、藤原氏から嫁いできた母ちゃんの連れ子、清衡さんびいきで領地分けを行う。
すると予想通り戦争。
清衡さんの勝ちで清原氏滅亡。
これが後三年の役。
その後、清衡さんは元々の藤原姓を名乗り、みんなご存知、奥州平泉に黄金文化の一時代を築き上げることになるわけだが、でも結局は源氏に滅ぼされ、ひたすらライバルたちを蹴落とし続けた源氏が1185年に朝廷を蔑ろにした武家政権を確立。
その7年後に鎌倉幕府を開くに至る。
という、とにかくもう面子と権力争い。
ただのヤクザだ。
いつの時代も争いごとの理由はそんもんなんだな。
はぁ………写真……………
ゆうべ路上で地元のお兄さんに聞いたヤキソバ屋『藤春食堂』ってとこに行ってみようと、ぐるぐる探し回った。
かなり分かりづらいところにあったが、なんとか見つけ出し、家の一部をちょこっと改造したような小さなスペースで肉玉中450円を食べる。
うおーー、これだよー。
これがヤキソバだよー。
野菜、もやし、豚肉、そして生卵をつぶしてからめる。
安いのは300円からあり、小学生や部活帰りの学生がちょこっとおやつに食べに行く感覚。
大阪のたこ焼きみたいなもんだ。
うまかった!!
やっぱ地元の人の情報は確実!!!
大満足で車を走らせ平鹿町へ向かう。
広大な田んぼに囲まれた、歴史の香り漂う古い集落の一角に大きな屋敷があった。
『天の戸』の浅舞酒造だ。
地元米のみを使い、きっちり添え仕込みタンクをたて、さらに絞りは舟のみというこだわりよう。
残念ながら試飲することはできなかったので先に進む。
西馬内にて閉まりかけていた西馬内盆踊りの資料館へやってきた。
さんさ踊りや、花笠踊り、有名な踊りはたくさんあるが、この田舎のほんの小さな町に伝わる700年の歴史を持つ盆踊りもミステリアスで味がある。
鮮やかな端ぬいの着物、顔が見えないほど深くかぶった編み傘。
もうひとつはひこさ頭巾というK.K.Kみたいな黒い覆面をかぶったミステリアス衣装。
ビデオを見ると、手つき腰つきが妖しいほどに色っぽく、女の見せ所といった雰囲気だ。
顔を隠しているところも日本女性のおくゆかしさ、だからこそ引き立つ妖艶さを醸し出している。
西馬内の盆踊りは日本風ベリーダンスだ。
資料館を出たら、西馬内の古い町並みの中にある有名なそば屋、弥助そば屋でかけそばを食べた。
味は、まあ普通かな。
ていうか漬物がうまい。
貝沢の水路集落を散策してから湯沢市内に到着。
今夜はここで歌うとして、その前に汗を流しとこうと、市内から少し走ったところにある湯の原温泉にやってきた。
きれいな旅館より、秘湯好きが集まるひなびた湯治場より、こういう目立たない地味な温泉町の旅館のほうが俺は好きだ。
小ぢんまりしていて人が少なく、なにより心が休まる。
秘湯を巡って温泉通を気取ってる人がいるけど、こういう地元密着の名もない温泉町こそ日本の温泉だよな。
さっぱりしたら湯沢の繁華街にやってきた。
うーん……………まずい。
飲み屋街の中に住宅が混じりすぎてる。
これじゃあ歌うのは心苦しい。
最近苦情言われたばっかりだもんなぁ。
まずいなぁ。
稼がないとマジでまずいんだよ。
悩んだ末、ちょっと車を走らせて大曲までやってきた。
ここなら勝手知ったる路上。
いつもの場所でギターを鳴らすと、いつものスナック『酒香』のみんなが聴きに出てきてくれたり、たくさんの人が立ち止まってくれ、なんとか5000円までいった。
弦が切れても、新品なんか張らないでいつものように結び直して再生。
すでに全部の弦を3~4回ずつ再生しているので音も限界だ。
「何ぃ!?あぁ!!おめ誰ダァ!?あぁ!!誰よ!!」
あーあ、また始まった。
歌っている目の前で怖い人たちによるプライドが開戦。
兄ちゃんをアスファルトに転がし、顔面にスピーディーな右を5連発。
拳が顔にめり込む鈍い音とフォークソングのセッション。
「すがスおめ、そんなに弱くでよぐがらんデきだっきゃー?」
倒れてる兄さんに怖い人が覗き込んで挑発する。
血まみれでヨロヨロと立ちあがろうとする酔っ払いの顔にボレーキックが炸裂。
「脅かしでごめんナァ。ハッハッハー。」
怖い人たちはギターケースに2000円を置いて去っていった。
血が飛び散ってるアスファルト、サーチライトのようなパトカーと救急車の赤い瞬き。
夜の女たちはなぜか警察の捜査に非協力的だ。
子供たちはこんな危険な世界を知らずに暖かい布団で夢の中。
はぁ、どうでいいから写真……………
翌日。
神岡にある『福乃友』の福乃友酒造にやってきた。
ここは『個性日本一を目指す』、『社長が面白い』などの噂を聞いており、勉強になりそうなので秋田最後の蔵としてとっておいたのだ。
ちょうど昨日あたりに見学コース、喫茶店などを併設した施設をリニューアルオープンしたみたいで、そのイベントでたくさんの観光客がやってきていた。
一通り見学してから試飲。
幻の米といわれている酒造好適米『亀の尾』で作った、大会で1位をとったお酒も飲ませていただいた。
別に特に個性的!!って感じの酒質ではない。
むしろ正統派といったイメージ。
それより驚いたのは、試飲のお酒を注いだりコーヒーを運んだりしている元気でにこやかなおじさんが、実はここの蔵元だったこと。
蔵元自らこんな接客をするなんて、気合い入ってるんだろな。
「今、秋田市で県内の酒の試飲会やっでまスよ。」
なにー!!
行くしかねぇ!!!
て、また北上か…………
もう秋田県は南下するだけだったのに。
仕方なく車を走らせ秋田市内まで戻ってきた。
大きな病院の駐車場に車を止めてのんびり歩き、駅近くのデパートの企画ホールにやってきた。
中に入るともうウジャウジャ。
これが試飲会か!!!
めっちゃ混雑してる上にすでに出来あがっている人が多いからうざい!!
県内にある酒蔵30蔵が、それぞれのブースで5種類くらいずつを並べ、他に、燗酒コーナーや企画物コーナー、古酒コーナーなどがあり、とにかく多彩でどれからいこうか迷う迷う。
というわけで、もーーーひたすら飲みまくった。
普通、利き酒は口に含んだお酒を舌の上で転がし、味わい、香りをチェックしたらバケツに吐き出す。
そうしないとたくさんの銘柄の試飲をしているうちに酔っ払ってわけわかんなくなってしまう。
しかし、酒は喉ごしも重要なポイント。
飲まないと利いた気がしない。
そしてこの試飲会はタダなんだから飲まなきゃ損!!
燗コーナーでは色んなお酒を色んな温度で試し、企画コーナーでは日本酒を家庭でハーブに漬けこんで香りを楽しむアロマ酒のレシピを教えてもらったりと、とても勉強になる。
おかげさまで完全泥酔。
ふらふらしながら車を止めている駐車場に戻り、ふらふらしながら意味もなく病院の中を徘徊。
静まり返った病院。
コツンコツンという足音が廊下に響く。
あー、ねむ………………
しばらくして目を覚ますと、病院の中の図書コーナーで爆睡していた。
すでに20時。
酔いもほとんど覚めたので、車を走らせ、今夜も大曲にやってきた。
休んでる暇なんてない。
歌うぞ。
明日秋田県を出る。
デジカメの写真が消えたことを除けば順調に進んでいる。
さぁ、東京まであと1県だ。
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