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青荷温泉は深い山の中







リアルタイムの双子との日常はこちらから






2005年8月18日 【青森県 後半】





朝、カメラ屋さんでデジカメのデータを空けてから、朝ごはんを食べに昨日の食堂にやってきた。




ラーメンを食べてると、ゆうべ飲みに連れてってくれてグデグデに酔っ払ってたおばちゃんのマツさんがたまたまやってきた。



「いいもの食べさせてあげるから弘前行こう。」




え、ええ、えーっと…………



ゆうべ体いっぱい触られてあんまりいい気分じゃなかったんだよな…………



またされるのかな…………




んーーー、まぁいっか。



何事も経験。

ホテルに連れ込まれそうになったら走って逃げよう。








ということでマツさんと一緒にドライブ。


どこへ行くのかと思ったら、弘前市の市街地にあるめちゃくちゃ立派なホテルに着いた。



へ?どういうこと……………?


直球すぎじゃないですか?




ロビーを通りエレベーターに乗り、降りたのは12階の展望レストラン。



え、えええ?


マツさん何やってんの?


こんな高級そうなお店、勝手に入ったらダメですよ?




「あ、どうもいらっしゃいませ。この前はどうも。」



「あ、◯◯さん、また飲みに行きましょうね。」



スタッフさんたちがまるで上客を扱うかのようにマツさんに挨拶している。



「ここはね、気に入ったコだけ連れてくるのよ。」



嘘…………


マツさんってどっからどう見ても普通の、ていうか庶民的なおばちゃん。


今日もテロテロなTシャツ着てるし。


それがこんな高級レストランの常連って、一体何者…………?









鉄板焼きのレストランで、シェフが目の前で魚やヒレ肉を焼いてくれる。



うまい…………っていうか何この状況?

昼間からめっちゃ高級なレストランでおばちゃんとステーキて…………





食事を済ませたら隣のバーラウンジ移動。

ギムレットを飲んでいるマツさん。


俺はノンアルコールカクテル。





これってまさか……………


あの映画とかでよく見るやつでは…………


いきなり鍵を出して、部屋取ってるから、なんて言われたらどうしよう…………


こんなに色々ご馳走になったりして、お相手しないといけないのかな…………








とまぁビビっていたわけだけど結局ポケットから鍵が出てくることはなく、1杯飲んでお会計をしてホテルを後にする俺たち。



今度は田舎館村に田んぼアートなるものがあるから見に行こうというマツさん。


お城の形をした村役場に着き、建物の最上階に上がる。


展望台から外の田んぼを見下ろした瞬間、度肝を抜かれた。



でかい田んぼに写楽の浮世絵が描き出されていた。





垂れ幕でもひいているのか?と思うほど見事な構図なんだけど、これ、絵の具でもペンキでもプリントでもない。


色の違う稲で描いているんだという。


黄稲、紫稲、つがるロマンの3種の稲を、この展望台から眺めた時にきれいに見えるよう遠近感まで計算して植えつけてるんだという。


いやいや、苗が育ってみるまでどう見えるかわからないんだぞ?


すげーーー、自然と一体となったアートだ。


しかもこの展望台が無料ってのがまたグッド!!







次に道の駅の埋蔵文化財センターへ。


ここは2000年前の水田跡が保管されている。



水田跡には弥生人の足跡が見られ、この北の地でも稲作が行われていたことを物語る貴重な遺跡だ。


2000年後の現代じゃ稲作でアートなんてやってるよ、弥生時代のみなさん。






「じゃあ、頑張りなさいよ。」



結局、謎の人物のままだったマツさんを黒石まで送っていき、そこで別れた。


一体なんだったんだろう…………


普通にいい人だったんだろうな…………


んー、でも謎の人だったな…………




この日は時間も遅くなったので、黒石の町から少し離れたところにある烏城焼という窯元の近くに車をとめた。


うーん、あの鉄板焼き、美味しかったなぁ。













翌日。






世界一の登り窯をうたう烏城焼の登り窯はたしかにでかかった。


山を縦に割るような規模だ。


こりゃ見学したいなぁと思ったんだけど、美術館も併設されていて入場料1000円もかかる。


くそー………


まぁいいか。


それよりも今日のメインは全国的に有名なあの隠れ温泉だ。







黒石温泉郷を通りすぎ、102号線から山に入る。


森の中のうねうね道を走っていると、脇の電柱にかかった看板がやたらと目につく。



『コレ!!ヨソ見○♪×Åξ♀!!』



津軽弁で色々文字が書いてある。


呪文のような意味不明の看板が10メートルおきくらいに立てられているので、ヨソ見するなっていってもそっちが気になって逆に危ない。








マジ謎の言語。






ずんずん山奥に入っていき、見晴らしのいい場所から山並みを眺める。


こんなとこに宿なんてあんのか?


セミの声、30℃を超える日差し。



果てしない森の緑の中にうずもれて一軒の建物が見えた。

あ、あれか。







ようやく到着したのは、あのランプの宿として有名な青荷温泉。


ここの照明はすべてがランプによるもので、夜になるとそれはそれは幻想的な雰囲気だという。





なんでこんな山奥にあるんですか?と聞くと、ここらの川はどこを掘ったって湯が出るんですとのこと。


人里離れた場所にしたかったのかな。










さてさて、500円を払っていざ入浴。


2つの内湯と2つの混浴露天。





あー、気持ちいいー…………

マイナスイオンやべーー…………


すべての湯船を制覇して内湯でゆっくりくつろぎながら、地元のおじさんに話しかけた。



「青森の祭りは祭りじゃなくてイベントダァ。地元という誇りもないし、ただの客寄せの見世物ダァ。」



なるほど、確かに。


青森の、というか東北の有名な祭りはほとんどそうだが、観光客の自由参加を売りにしていたりする。


祭りはその土地の五穀豊穣や無病息災などを祈念するために地元の人がやるものだ。


なのに意味もわからない思い出作りの観光客が混じれば、一体誰のためのお祭りだってことだよな。


決められた服装も守らないでノリではしゃぐだけ、観客が多すぎて規制規制でろくに見物もできない。


だから俺は小さな田舎の祭りが好きだ。





めっちゃゆっくりお湯につかって青荷、満喫!!


夜までいてランプが灯る光景を見たいところだが、予約して宿泊している人たちに悪いので先に進むとしよう。








次にやってきたのは碇ヶ関村。


ここは津軽藩に入る人々を検閲した関所のあった村だ。


温泉が豊富なためたくさんの旅人や商人でにぎわっていたそうだが、その分、天下の関といわれた箱根の関所も遠くおよばないほど、堅牢で厳しいものだったという。



関所を模した建物になっている道の駅に、温泉資料館があった。


ノートを持ってきて気になる部分をチェック。




《温泉の定義》
湧出した際の温度が25℃以上のもの。
規定された19種類ある泉質のうち1つでも含んでいるもの。

《主な泉質と効能》
★単純温泉………肌にやさしく老人向き。病後や外傷の療養に効果あり。

★二酸化炭素泉………浸かると体に泡がつく。保温効果があり高血圧・心臓病によい。

★炭酸水素塩泉………重曹が肌を柔らかくなめらかにする。よくいう美人の湯。

★塩化物泉………保温効果。

★鉱泉………褐色の湯。造血作用があり貧血症に効果あり。

★酸性泉………殺菌力があるので水虫や湿疹などに効く。

★放射能泉………ラジウム泉とも呼ばれリラックス効果大。

★硫黄塩泉………血管を拡張するので高血圧症や動脈硬化の予防になる。

★硫黄泉………卵の腐った臭い。万病に効くといわれているが刺激が強いので肌の弱い人は控えめに。




とまぁ主だったものはこんなもん。

もちろんブレンドされているものもあるんだそう。


正しい入りかたは半身浴で、じっくり汗をかいて血圧を整える。


こういう良い成分がせっかく皮膚に染み込んだんだから、湯から上がる際はあがり湯とかで体を洗い流さないこと。

できれば自然乾燥が好ましい!!


これでみんなも温泉マスター!!








さてさて、弘前に向かいアップルロードという青森らしい名前の道をかけぬける。


いやー、すごい。


走っても走っても一面ひたすらリンゴだらけ!!!


小高い場所から見渡すと、リンゴの樹の樹海だ。





1本の樹にぶらさがっている何十個もの実。


まだ青いが、これがすべて真赤に熟れたらどんなに鮮やかな風景になることだろう。



そしてこれを収穫…………気が狂う。


リンゴに埋もれて死ぬ夢でも見そうだ。







リンゴの樹海から抜け出すと、津軽の山岳信仰の象徴、岩木山が悠然とそびえたっている。

裾野のきれいに広がった端正な山だ。









麓にある780年創建の岩木山神社に参ってから、山一周道路をぐるりと回ってみた。


あいにくの天気でどの角度からも雲をかぶっていて山の姿を見ることはできなかった。



津軽の人々の心のよりどころ、岩木山。


遠く離れても忘れないよ。









弘前の町にもどってきたら、さぁ路上開始だ。


ネオン街はなかなかの規模で、去年、アクセサリー売りのみんなが露天を出していた場所に陣取って歌い始めた。


しかし客引きのおじさんにケチをつけられたので移動して、オットビルという飲み屋ビルの前で再スタート。






おっぱいの大きな女の人に抱きついているお兄さん。


お相撲さんが汗ダラダラかきながら女の子に手をひかれて連れていかれた。


酔っ払いのサラリーマンが金髪のビラ配りのギャルにからんで無視されている。


じんべえに雪駄、セカンドバッグの怖いおじさん。


ケータイで話ながらぺこぺこ頭を下げているおじさん。


下ネタで馬鹿笑いしている品のかけらもない外回りのキャバ嬢。




毎晩これ。

日本中、世界中。



ネオン街って特殊なもんだ。

そこに人生捧げてる人もいれば、その存在さえ知らない人もいる。



夜の街ほど人間模様に溢れた場所はない。


今日のあがりは9000円。






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