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ユウキの出発







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2005年 4月 【富良野アスパラ収穫バイト】





バイトを終えて家で1人でご飯食べていたら中田さんから電話がかかってきた。



「おーい、ユウキ君帰ってきたよー。」



急いで中田さんの家に行くと、服を着替えてガクガク震えながらストーブにあたってるユウキがいた。


まだガンガン雪が残ってるこの時期の北海道をバイクで宗谷岬まで行くなんてマジで自殺行為だぞってみんなから心配されていたんだけど、見事生還してきたユウキ。



「半ヘルで……………ゴーグルもねぇし……………雪すごすぎるし……………マジで死ぬかと思った……………」




マジでバカだこいつ。

でもバカだから面白いことできるよな。













こうして北海道での最後のミッションを終えたユウキ。



とうとう、そんなユウキの出発の日がやってきた。


これから宮崎県までバイクで日本を縦断するという、なかなか思い切った計画だ。



ストーブで焼けたクッションフロアーも綺麗に張り替えたし、新プリのメンバーとも連日お別れ飲み会したし、これで思い残すことはない、はず。












出発の日の朝、挨拶回りに出かけていったユウキ。


最後に中田さんとこに行くと、おばちゃんが急いで卵焼きを作ってくれて、それをほおばるユウキ。


これまでたくさんたくさん食べさせてくれたおばちゃんの最後の手料理。



「あー!!待って待ってー!!」



エプロン姿で走ってきたのは、ペンション『ラベンダー』でユウキのパート仲間だった松永さん。



「気をつけてね、ユウキ君。」



「うん、今までありがとう。」



「また戻ってくるんだよ。」



「絶対戻って来んきゃ怒るよ!」





ブルルルン!!


バイクにまたがり、エンジンを轟かせる。




「待って!!そんなにすぐ行かないで!!」




おばちゃんの目にはすでに零れ落ちそうなほど涙が溜まっていた。



富良野に張りかけてしまった根を引きちぎるように、振り返らずに坂を下り見えなくなったユウキ。



すると、両手で顔を覆い、堰を切ったように泣き出したおばちゃん。



「…………うっうっ…………どうせ行くなら……………会わんきゃ…………よかった……………うぅぅーうぅー。」



「文武兄ちゃんも行っちゃうんだよ。」



「文武の時は…………泣かないんだから…………うっうっ……………」





約1年前。


ユウキを乗せて宮崎を出たあの日は、まだ桜が咲き誇る原色の景色の中だった。


そして同じく雪解けの緑が芽吹く光の中、遥かな宮崎へ出発したユウキ。



ユウキ、こけんなよ。


面白いエピソードいっぱい作ってこいよ!!











俺も新たな気持ちで旅人バスへ向かう。


暗くなるまで作業していると中田さんから電話がかかってくる。



「1人で飯食ってもうまくないべや。」



そう言ってくれるおじちゃん。


これからはユウキはいない。


そして俺が旅立つ日も迫ってきている。














新聞の取材、ラジオの出演、旅人バス、バイト、毎日が息つく間もなく過ぎていく。




そんな中、山部の歌謡喫茶『チェリー』のマスターが、俺の出発の前にワンマンライブを企画してくれた。



『富良野での思い出と出会いをハートで贈る
                メモリーライブ』





さ、さすが歌謡喫茶…………

タイトルめっちゃ昭和…………







時間になりステージに上がるとたくさんの拍手。


客席には中田さん、山田親方を始め、松永さん、福永さん、坪井さん夫妻、フクシカメラ一同、ブラストジェイルのイソエさん今野さん、新プリメンバー、ラジオ富良野のパーソナリティーさんたち…………


知らない土地で、俺のためだけに50人弱もの人が集まってくれた。




2部構成でフォークソング、洋楽、そして俺のオリジナル曲。


最後の『スタンドバイミー』では暖かい手拍子がお店に響く。


歌ってて本当によかったと思えた瞬間だった。


こんなにたくさんの知り合いができた富良野とももうすぐサヨナラかと思うと胸が締めつけられるようだった。







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