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北関東でのお正月







リアルタイムの双子との日常はこちらから






2004年 1月1日




男2人の元旦。


センジ君は台所で煮しめを作っている。



センジ君の作った三平汁っていう酒カスの入ったシャケの汁物と煮しめを食べ、どっかドライブに行こうかと車に乗り込んだ。



向かったのは足尾銅山で有名な足尾町。

粟野町を抜けて山越えをする道を走っていく。



すると登っていくにつれどんどん雪が多くなってきた。

しまいには道路真っ白。







マジかよ、と20キロくらいでトロトロ進む。


ファントムはもちろんノーマルタイヤ。


こんな山の中でスリップしたらえらいことだ。




そんなところに対向車が来た。


勘弁してくれよと思いながらゆっくりブレーキを踏む。




スススーーーー




「あああああ、うそ!!あああああああ!」



「うわあああああああ!!!」




思いっきり滑りだした!!!



目の前に迫る崖と対向車!!!!




正面衝突しそうになった瞬間!




思いっきりハンドルを切ったら道路脇に積もってる雪山に突っ込んだ。



ボスン!!!



奇跡的に雪がクッションになって事故らずに済んだ。



「頼むよ金丸君ー………ハァ、焦ったあああ………」








銅山観光をするためにやってきたのに、トロトロ運転で峠を降りたころにはもう16時を過ぎていた。


山々の谷に現れたのは隠れ里のようにひっそりとたたずむ雪の町、足尾。




昭和で時が止まったような町並みの間を進んでいくと、いい感じのお茶屋さんを発見した。


中に入るが誰もいない。奥から楽しそうな笑い声が聞こえる。



「あー、はいはい、いらっしゃい。」



孫を連れて出てきたお婆ちゃん。


そうだ、今は正月か。

この過疎の故郷にたくさんの人たちが帰ってきて、みんなでなつかしいお袋の味を食べてるとこなんだ。



「うちはねぇ、もうここで200年もお茶屋やってるんだよ。」



掘り出し物がありそうなレトロな店内に非売品と書かれたグイ飲みを発見。



「あー、それはねぇ、足尾焼のものなんだけど、作った人が死んじゃってねぇ。もう無いから売らないようにしてるんだぁ。」



でも他にもすごくきれいな青の釉薬のかかったグイ飲みがあり、そっちを買った。









お茶屋さんを出るとすでに山の中は真っ暗。


こんな中あの峠道を走ったら100%事故るので桐生から足利を回る道で西方に戻った。



岡山のおばあちゃん直伝の雑煮とセンジ君の煮しめをつまみながら、石岡の地酒を足尾焼きのグイ飲みで呑る。



最高だな。

うん、日本らしいことできてる。


日本一周してるんだからもっと日本の色んな楽しみ方を見つけないとな。













3ヶ日の2日目は日光へ行った。


東照宮は初詣の客でごった返し、参道にはまき散らかされた出店のゴミとソースの臭い。


俺はこの間来たばっかりだったので、センジ君がお参りに行ってる間に輪王寺の社務所へ。



明日、色んなとこの事業主が日光の裏にある外山という小さな山の頂上にあるお堂に福銭を借りに来るっていうお祭りの情報を入手している。


見どころはご来光へ向かっての大万歳三唱。


社務所で場所や時間を確認し、これで準備オッケーだ。








それから2人で日光の町を散策した。


日光は伝統工芸の宝庫。


話では日光東照宮を建造する際に日本全国から腕利きの大工たちが栃木に集められ、東照宮が完成した後、そうした大工さんたちがこの地に残り、木工芸品を作りはじめたことでこうした質の高い伝統工芸が根付いたんだそうだ。


日光彫りの大胆な流線、赤い漆、すごくきれいだったな。





17時になると人が急に消えて店もバタンバタンと一斉に閉まる。


なんかいいとこないかなと探したんだけど、やっとこさたどり着いたのは韓国料理店。


日光まで来て韓国料理かよ…………とは思いつつもマッコリ、マジでうまかった。





西方に帰る電車に乗り込んだセンジ君を見送り、俺は1人凍えながら外灯がわびしく光る町を歩いた。



一大観光地の日光も、夜になれば普通の静かな田舎町だ。




車に戻って毛布にくるまる。

久しぶりだな、車で寝るの。


ここまで来ると不思議に寂しさはない。














3ヶ日、3日目。



朝5時に起きた。


今日は狙っていたお祭りの日なんだけど、こんな極寒の中、早起きなんてやってらんねぇ。


眠すぎ寒すぎ。


気合でドアを開けると夜風に震え上がった。





参道といってもただの山道だ。


懐中電灯で足元を照らしながら、木につかまりながら、落ち葉に滑りながら登っていく。


一歩一歩、ウェスタンブーツで雪がシャクシャク音をたてる。

額にうかぶ汗。



ここは鳴虫山。







30分くらいで頂上に着くと小さなお堂があった。


こたつに入って受付をしているお坊さん。

前に机と紙が置いてあり、住所と名前と金額を書く欄がある。


ここで福銭という縁起のいいお金を貸し出していて、ご利益にあやかろうという事業主さんが借りに来るのだ。


俺も貧乏すぎて10万円ほどお金を借りたいところだけど、いくら縁起が良くても借金はしたくないのでやめとく。



返済は来年のこの日。

なんと倍返し。

いい商売だ。










焚き火にあたりながら空が白んでいくのを見ていると、ぞくぞくとおじさんたちが登ってきた。


狭い敷地に、今年の躍進を胸に誓う人々が100人ほど。


鳴虫山の谷にうずくまってる日光の小さな町。


日が顔を出した。





「わーー!」



「うおーーー!」



歓声に続いてお経があげられ、最後に万歳三唱。


太陽の光に向かって両手を挙げる人々。


奇妙であり神々しくもある。


青に染まる空に、雪をかぶった山々が波打つ。


















ピョンピョン山を降り、次に向かったのは粟野村というところ。





どんどん山奥に入り、凍結した道を走りぬけていくと、森の中に小さな集落がひらけた。


民家が30軒くらいしかないような集落、発光路。


屋根や軒先に積み上げてある薪の上には、こんもりと雪が光っている。




この前足尾に行く際にこの道を通った時、小さな看板に発光路の紹介文が書いてあって、毎年1月3日にとある行事が行われると書いていた。


それを覚えていたのでやってきたわけだけど、一体どこでやってるんだろうな。




キョロキョロしてると、細い坂道の脇にある民家に、30~40人のじいちゃんばあちゃんと里帰りっぽい子供たちが群がっていた。


そこは公民館らしく、小さな黒板に、



『平成16年 強飯式』



と書いてある。


観光に染まってない、地元の人たちのためだけのささやかな、でもとても重要な儀式。










畳の広間に並べられた不思議な形をした赤飯、魚なんかのお膳。


スーツや袴のじいさんたちの中央に座っている着物を着たかわいらしい4人の子供。



その口には何かの紙がくわえられている。









ドキドキの中、儀式が始まった。


太鼓の合図とともに登場したのは山伏に扮した若者。


山伏とは神仏融合の中から生まれた日本独自の宗教、修験道の修行者のこと。


この儀式はもともと日光の修験者によって始められたものらしく、東照宮の近くにある輪王寺で4月2日に行われる強飯式が分かれてこの発光路でも始められるようになったみたい。


1360年ごろから続いているんだそうだ。











山伏が詩吟のような口上で何かを招き入れたその時だった。



「ああああ!!あああああ!!!」



藁で編んだぶっとい綱を体に巻きつけた、赤い面のなまはげみたいなやつが部屋に入ってきた!!!


一斉に動き出すカメラマンたち!!!



「強力ー!これについて参れー!」



「ああああ!!ああああああ!!!」



強力と呼ばれるそいつは山伏の召使いみたいなもんらしい。





その強力が宮司さんの前にやって来た。


ひれ伏す宮司さん。



「酒なら33杯ー、湯が5杯ー、強飯75杯がー、あぁぁお定まりぃー。一粒一菜の許しはないぞーー。」



「そちは去年からの宮司であるかー!今年も盛大な式で大変満足しておるぞー!食え!」



宮司や来賓の前に並べられている、日本昔話並みに山盛りになっている赤飯をとって、無理やり口に押し込もうとする強力。


そしてY字になった杖で宮司の首を押さえつける。





「そちは県議会議員かー!隣の村は道が広くなったというのに、この辺りは道が狭い!もっと予算を組まぬか!」



「そちは花婿か!この村は子供が少ない!仕事などしてないで子作りに励むのじゃ!」



「あーはっはっはっはー!」



「いっひっひっひっひー!」







大笑いの中、一周が終わると、見物客全員に炊きたての赤飯が配られた。



「ほら!兄ちゃんも!」



「下さいー!」



しゃもじで手にボトッ。





暖かい日差しの中、むしゃむしゃ食べる。


これで行事は終わり。


あの一連のやりとりが約700年も、この小さな村で連綿と続られているのか。


人間ってすごいなぁ………



いやぁ、いいもん見たわ。











満足して車を走らせていると、山の中にボロいお寺があったのでふらっと立ち寄ってみた。


字が消えそうに色あせた看板にはだれだれの墓と書いてある。


その昔、ここいらを支配してた小山義久の側室だった人の墓のようだ。





裏山を沢沿いに1時間ほど登っていくと、森の中にひっそりと小さな自然石が立っていた。


こんな絶対人の目につかないようなとこにあるなんて寂しい墓だな。


荒れ果てた道を戻っていると、1人の爺さんがバケツとひしゃくを持ってこっちに歩いてきた。



「お若いのに興味あるんだっぺかー?」



新年なのでお墓の掃除に行くんだな。


ただそれだけのことなのに、振り向いたときの爺さんの背中に人間の業の深さを見た気がした。







廃墟あったのでとりあえず探検。









廃墟好き。










つくばに戻ったのは17時。


部屋の掃除をして洗濯物を干した。



濃い3ヶ日だったな。


北関東ってやっぱ江戸に近かったこともあってかすごい歴史が深くて面白い。


この調子で今年はガンガン行くぞ。





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