2003年 11月24日
今日は祝日だったけどお願いして仕事に出させてもらった。
12月にまとまった金がいる。
どうしても避けて通れない、ファントム号の車検だ。
バイト先の先輩が紹介してくれた車屋さんに聞くと、どうやらシートを外してしまってるファントム号は車検に通らないらしいが、その車屋さんがヤミで通してやるとのこと。
値段は15~16万円。
やったぜ!
といってもまたすごい出費だなぁ…………
車で旅してる以上、確実に必要な金だけども…………
1日でも多く働かないとな。
でも働いてばっかりも嫌なのでたまには居酒屋に飲みにいくことに。
バイト先の社長さんから、この近くに宮崎県民が集まる地鶏屋さんがあると教えてもらったら行かないわけにはいかない。
美香と由ちゃんと宮崎人3人で突撃。
「クソまずかったらどうする?」
「吐き出して宮崎語るな!って行って帰ろうや!!」
しばらく走ると、周りに何もない真っ暗な道路沿いにポツンと光る居酒屋「日向屋」を発見。
勇んで中に入ると棚に並んでいるのはもちろん焼酎の山。
霧島、クロキリ、幻のアカキリもあるし、こっちでは一本1万円はする百年の孤独もズラリ。
この店、只者ではない…………
まずはモモ焼き。
ふむふむ、鉄板で出てきたぞ。
まずは合格。
みんなで一斉に口に入れる。
……………………
もうそっからはノンストップ。
チキン南蛮、手羽、ささみフライ、クロキリ、うーまーいー!!!
感動しまくって店長に話しかけると、なんと店長、美々津の隣町の平岩出身。
しかも店内にいる10人くらいのお客さん全員宮崎人!!
一瞬で仲良くなった。
「あー、俺は門川よー。」
「俺は高千穂やがー。」
「君かー、最近こっちで働いてる日向の子ってのはー。ちょっと待っちょけよー。」
店長さんがどこかに電話すると、しばらくしてゴッツイ怖そうな人が店にやってきた。
「おーお前かー、金丸君っていうのはー。よし、飲め!!!」
その人はこの居酒屋のオーナーである松葉工務店って型枠大工の社長さん。
俺が働いてるバイト先の社長と大の仲良しなんだそう。
「お前そっちやめたらいつでもウチの会社来いよ!!ガハハハハー!!」
グラスに注がれたのは幻の赤霧島。
20°の霧島に比べて25°のアカキリは香りが強く、しかし普通の霧島より飲みやすい。
たしかに美味しい!!
しこたま飲んで、そろそろ帰ろうかとレジに行くと、店長さんが社長さんのほうを見る。
「かまんかまん!!今日はいい!!また来いよ!!毎日来い!!」
「えええええ!!!はい!!ご馳走さまです!!!」
いやぁ、マジ美味かった………こんなお店が近くにあるなんて…………
最高の気分でアパートに帰った。
その数日後、雨の中仕事を終えて帰ってる途中に松葉工務店の社長さんから電話がきた。
「今日来いよ!!」
居酒屋「日向屋」に呼び出しだ。
今日は美香がバイトなので、1人ですぐに行くと、店内には今日も宮崎人がわんさか。
俺の出身校の日向高校の先輩たちもいた。
しこたま飲んでいると、よっしゃ!!次の店行くぞ!!ということになり、天久保の飲み屋街へ。
つくばは研究施設と大学とアパートと林しかないような灰色の町だけど、そんな中に突如現れるネオン街が天久保だ。
社長について雑居ビルの中のスナックに入る。
「イラッシャイマセー!!」
「ガハハハハー!!来たぞー!」
「キャー!!シャチョサーン!!アラ、コノコハダレ?カミノケナガイネ。アソコモナガイノ?」
「ヒャーーーーハッハッハッハ!!」
「あ、あー、マハルキタ。」
「キャアアアア!!ナンデフィリピンノコトバシッテル?!ワタシモアイシテルー!!」
四国の山の中で覚えたフィリピン語がこんなとこで役に立つとは!!
次の日の仕事にヨユーでさしつかえるほど飲みまくってアパートに帰った。
松葉社長とはそれからもちょいちょい遊びに連れて行ってもらえるようになった。
それにしても金がない。
酒気帯び運転の罰金は払い終えたけど、今度は車検で大金が飛んでいくし、今後の旅の資金も貯めないといけない。
美香と買い物に行っても、財布の中のお金が足りなくてカートの中の物を棚に戻しに行ったりして情けないことこの上ない。
美香の誕生日にあげたプレゼントも………
「…………はい!誕生日おめでとう!!」
「うわーー………ありがとー…………」
『肩叩き券・10枚綴り』
『全身マッサージ券・10枚綴り』
『お料理券・10枚綴り』
『車送迎券・10枚綴り』
こんなんでごめん…………
とにかくバイトに精を出すしかないので、雨だろうが寒かろうが毎日出勤して日当を稼ぐ。
幸い仕事はめちゃくちゃ楽だ。
鬼のような人たちしかいない会社で500円玉ハゲができるまで死ぬほどしごかれてきた俺からしたら、こんな田舎のオッちゃんしかいない足場屋さんなんて楽勝にもほどがある。
みんなスローでやってんのか?ってくらいのんびりだ。
「ここはこうだっぺぇ!!」
「違うっぺよぉ!!こうだべぇ!!」
オッちゃん同士でワーワー言ってる横でガンガン足場を組んではバラす。
これで1日1万円もらえるんだからいい仕事見つけたもんだ。
そして美香のお弁当もすごく美味しい。
お金ないからもう少し質素にしなよって言ってるのに日に日に豪華になっていく。
ご飯の上にはハート型の海苔。
美香ホントにありがとう。
朝、つくばから水海道の会社に向かう途中、朝焼けの空の遥か向こう、先っぽを白く染めた富士山が見えた。
関東平野ってやつなんだよな。
山がないからすごく遠くまで見晴らすことができる。
寂しくて、綺麗で、寒くて、ここがどこだかふとわからなくなる。
わからなくなるけど、行く先はわかってる。
あー、金稼がなきゃ。
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