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だんじり、阪神優勝、地獄のしごき







リアルタイムの双子との日常はこちらから







2003年、9月1日






旅1周年。



もう1年経ったか…………


1年前のあの情熱を思い出す。


ドキドキして、旅に対してあんなに夢を膨らませていたのに、今の自分の境遇を見るとガッカリしてしまう。




いろいろあったなぁ。

確かに濃い1年だった。


3年分ぐらいの経験と思い出を詰め込んだみたいだ。


果たして俺自身は成長してるのかな。


まだまだ足りない。


もっともっと張りつめていないと。













仕事の休みの日に、電車に乗って岸和田に向かった。


駅を出た途端に人、人、人。


そう、今日は待ちに待った岸和田だんじり祭り。




だんじりっていうのは、簡単に言うと太鼓やぐら。

岸和田市の各地区のだんじり(十基以上)が集結し、商店街や駅前の道、国道を全て規制して、そこを走り回るという。


気性の荒い南大阪の男たちが命をかけてるこのお祭り。


街中が熱気と殺気に満ちてるようだ。







人で埋め尽くされた街を歩いていると、威勢のいい歓声が聞こえてきた。


見ると、人混みの向こうからとんでもないスピードで巨大なだんじりが突進してきた。






危ない!!!!

人垣に突っ込む!!!!!



そう思った瞬間、だんじりの前で舵を取っていた人たちが思いっきり左に曲がると、巨大なだんじりがドリフトする勢いで傾きながら細い路地に突入!!!!



すげすぎる!!!!









ほんの少しでもズレたら路地の両側の家に激突だ。


それがスピードを落とさずに細い路地にピタリと突っ込んでいくから大歓声が上がる。


めちゃくちゃハラハラドキドキする!!!!



でももちろん全てのだんじりが上手くカーブできるかっていったら当たり前に無理で、早くも角の家のひさしにブチ当たってメキメキメキ!!!と破壊した。


毎年壊れされる家もあるらしい。


でもそれも岸和田の家の宿命なのかな。

逆に縁起がいいくらいのもんで。








だんじりの上に乗ってる人がまたかっこいい。













手すりなんかないだんじりの屋根の上で、仁王立ちしている男の人。


だんじりのスピードが上がると、いきなり屋根の上で飛び跳ね、うちわを振り回し、威勢よく舞う。


うおおお!!めっちゃかっこいー!!


足場の悪い屋根の上だから絶対振り落とされてアスファルトに叩きつけられる人もいるはず。


実際、毎年本当に死者が出るくらい危険な祭りみたい。



度胸のある、町の中心人物だけが上に登ることができるんだろうな。


















それにしてもすごい観客…………何万人来てるんだろ?


だんじりが走る道のマップを片手に、いいポジションを探して歩きまわるんだけど、どこもかしこも人だらけ。


警察官やガードマンももちろんたくさんいるんだけど、すごいのはハッピを着た地元民の人たち。



「道をあけてくださーい!!」



と警察が叫んでる横で、



「オラー!!どかんかー!!ロープから出るなー!!ボケがああああ!!!」



と人を殴り倒す勢いで警備している。


めっちゃ怖い。

さすが気性が荒くて有名な和泉の男。














各だんじりの装飾も見事。













自宅の前でライブしてる人もいた。




だんじり愛がすごい。

ていうかイカつすぎ。




岸和田にはお城もあったり。












11時からから16時まで祭りを見てまわり、それから電車でミナミへ向かった。


会社の同期であるNくん、ウメくん、Yくんのいつものヤンキーメンバーがミナミに来ており、みんなで居酒屋へ。



Yくんの顔が腫れてる。


暴力大魔王のSさんが、駅でボコボコにされた事件のときに1人コンビニの便所に逃げ込んでいたY。


そのせいでSさんにボコボコにされ、会社に居場所がなくなり、完全に孤立している。


そりゃ、たとえ負けるとわかっていても、仲間がいるんだから最後まで一緒に戦うのが男だよな。




「重大発表があるさー。俺、とぶさー。」




沖縄出身のY君がウチナー訛りでそう言う。



…………アホだこいつ。




「今夜の夜中に決行するさー。バッグ1つでやってきたから出る時も楽さー。しばらくはサウナ暮らしになるやろうなー。でも給料もあるし。」




4人でアメ村を歩いた。


酔っ払ったY君は道の真ん中で大声出して叫んでる。

叫びながら通りかかる女の子を片っ端からナンパしている。



そろそろ帰ろうと駅に向かったけど、ナンパしているY君がなかなか来ないので、ほったらかして電車に乗った。


それがY君との別れだった。
















翌朝、会社に出勤すると、班長のKさんが深刻な顔して第2寮の中へ入っていった。


周りが少しざわついている。



…………やったか、Y君。



見つからないように逃げろよ。


捕まったらまたボコボコだ。





でもなぁ、なんで逃げるんだろ。


一度逃げたらまた逃げる。


逃げ癖のついたダメな人間を旅の中で何人も見てきた。



俺は逃げ続ける人生なんてまっぴらだ。














その日の仕事帰り、車内のラジオから流れるプロ野球中継にみんなが耳を傾けていた。


今日阪神が勝ったので、マジック1。


そんで、今ヤクルトの試合待ち。


ヤクルトが負ければ阪神優勝だ。



阪神っていつも弱いイメージだったけど、なぜか今年は神がかっていて、連勝につぐ連勝でついにここまできた。


やっぱり関西の人はみんな阪神が大好きで、どこに行っても阪神フィーバーで大盛り上がりで、星野監督は神様みたいにあがめられている。


今年阪神がリーグ優勝したらなんと18年ぶりというからすごい。




こりゃもう道頓堀、行くしかねぇ!!!







寮に到着したら飯も風呂も抜きで、服だけ着替えてソッコー電車に乗った。


電車の中にはすでにユニフォーム姿の男女がわんさか。


みんなメガホン片手にうずうずしている。





そうして心斎橋に到着。


ひっかけ橋に歩いて向かっていると、人がみるみる増えていく。


向こうに見える、凄まじい数のパトカーのサイレン。


叫び声や六甲おろしが聞こえてきた。


トラ模様にペイントされた車。


どいつもこいつもトラファッション。





さーついにきた!!














道頓堀の橋の上、ぜんぶ人!!!


密度は岡山の裸祭り以上!!!
 


「あかぼし~~!!」



「星野!!ハイッほ~し~の!!イェ~~~!!!」




もーすごすぎ!!!


次から次へと橋の手すりによじ登って、言いたい事言って川に飛び込む人たち。


ビール巻き散らかしたり、丸裸になったり…………


もうやりたい放題のカオス!!!!


















屋根に10人ぐらい乗せたワゴン車が六甲おろし爆音で人垣に突っ込んできたり、「梅虎」と書かれたハッピを着た6~7人の男たちが、橋の手すりの上でラッパ演奏始めるし。


中にはロッカーっぽいやつが、アコギ弾きながらダイブしたり。


街灯の上によじ登ってるやつもいるし、ただの無秩序な混乱状態。



「こちらはミナミ警察!!危険な行為はやめなさい!!ゴホッゴホッこら~!!やめんかー!!!」



警察も声が枯れてる。


















俺もその中に突っ込んだ。

もうとんでもない大パニックで、なんでもありのぐっちゃぐちゃ。


もちろん女の人もいるので、ドサクサに紛れてオッパイもお尻も触り放題!!!



でももちろん触りません!!



触りたい!!!











ん?





調子乗りの図。






道頓堀川に飛び込んだやつはみんなヘドロが身体中についてめちゃくちゃ臭いことになってる。

普通に考えたらこんな汚水垂れ流しの汚い川に入るなんて絶対に嫌だけど、もうみんな興奮しまくって飛び込みまくってる。



可愛い女の子が手すりの上に立つと大歓声が起こる。



「脱ーげ!!脱ーげ!!」



「脱ーげ!!脱ーげ!!」



脱げのコールが巻き起こり、女の子が嘘でしょー!!みたいな顔をしてる。


おおお!!!ホントに脱ぐか!???


と思ったら恥ずかしがって脱がずにキャッ!!と川に飛び込んだ。


可愛い!!!





こちらは飛び込もうとしたもののビビって飛び込めなくて、戻ろうにも戻れなくなってめっちゃ気まずいことになってる人。





そのパンツを脱がそうとする人。





いやぁ、みんな阪神好きだなぁ。



狂乱の夜はいつまでも続いた。











が、この次の日、飛び込んだ男が1人死んだというニュースをテレビでやっていた。


こんなことで人生が終わるなんて悲しすぎるわ。

















それからも仕事は続いたが、相変わらずヒロシさんのシゴキは半端じゃなかった。



「このクソカスがぁ!!」



「おい動物!!お前辞めろ!!今すぐ会社に戻って辞めるって言え!!」



「カスがぁ!!宮崎人はロクなやつおらんな!!」




つらくて、つらくて、暑くてきつい時は、水飲ませてくださいって本当は言わなきゃいけないんだけど、ヒロシさんにそんなこと言いたくないから頑張る。



「おい、カス、お前いらんから辞めろ。な。今月いっぱいおるかしらんけど、もう迷惑やから宮崎帰れや。」



「すいません。」



「すいませんやないやろが、ボケ!!」



ズガッ!!


スガン!!



工具で思いっきり頭を殴られ、ヘルメットにヒビが入った。


目の前が真っ白になって星が飛び、耳鳴りで何も聞こえなくなる。



いつものことだけど、今日は特にひどかった。


ヘルメットにヒビが入るなんて、殺そうとしないと無理だよ。





でもセンパイによるしごきは、これでも昔に比べたらだいぶ優しくなったんだそうだ。



バールで殴られてアバラが折れても仕事させられる。

コケて鉄筋が体に刺さって、血がピュッピュッって出ているのに、それでも仕事を続けさせられる。

安全帯をかけろと言われ、かけたらいきなり足場から蹴り落とされて宙ぶらりんになる。



そんな悪魔みたいなシゴキが日常茶飯事だったんだそう。

ほとんど白虎隊の人たちの所業だけど。





イマドキの若いやつは根性がないのでそんなことしたらすぐ辞めてしまうってことでだいぶマイルドになったらしいが、それでもだいぶキツい。



ていうかシゴキっていうかもはや犯罪だよ。

根性があろうかなかろうが、そんなことされたら辞めるべき。










死にかけて仕事を終え、帰りの車の中で100円のレモン水1リットルをガブ飲みする。


足がつって、そのまま5分くらいつったまんま。



会社に着いても飯が食えない。


昼もうどんの麺5本くらいしか食えんかったのに。


口に入るのは水分だけ。


ここ3日ぐらいそんな状態だ。




それで会社では食堂でセンパイの酒を注ぎ、タバコに火をつけ、俺もセンパイから飲まされ、スナックに付き合わされてカラオケに手拍子して、すぐに乱闘を始めようとするのでそれを体を張って止める。


やっと解放されて寮に帰り、玄関にへたりこんで靴を脱いでいたら、そのままの体勢で力尽きて気絶。





次にハッ!と目が覚めると朝。


脱ぎかけていた靴をそのまま履いて出勤。



そんな地獄みたいな日がしばらく続いた。











そんなある日、会社に行くと同期のN君が声をかけてきた。



「お前、ハゲとるよ」



は?どういうこと?



めっちゃ笑いながら頭を触ってくる。



ハゲてる…………?


なにそれ?



「いや、ほらウメくんここ、ハゲとりますよね。」



「おーカネ!!ハゲとんで!!どないしたん?!」



「マ、マジっすかー!!!」



ケータイで写真を撮ってもらって見てみると、めちゃくちゃハゲていた。


頭の後ろのところ、ポッカリと丸く髪の毛がなくなっている。


10円どころではない。

500円玉くらいの大きさ。



…………終わってる。

人生初だよ。




ていうか円形脱毛ってこんなにも見事にできるもんなんだ。


ここ最近のストレスと過労で体がヤバいことになってるよと合図を出しているってことだった。




そのハゲを見たせいか、今日のヒロシさんは心なしか遠慮気味だった。






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