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種子島と屋久島の旅







リアルタイムの双子との日常はこちらから








フェリー乗り場の建物の外に座り込んでいたんだけど、しとしと降り続く雨が気になり、結局眠れずにずっと習いたてのヘンプの編み方を練習していた。


最近編んでなかったせいか、すぐに指にマメができ、プクッと膨れ上がっている。


ようやく1本編みあがったときに、建物に電気がついた。


入り口のところで寝袋に下半身を突っ込んでる俺に、警備のおじさんが自動ドアの電源を入れながら中に入んなよと言ってくれた。





そうして待合室で朝を待ち、8時半出港のフェリーに乗り込んだら、すぐに毛布にくるまって寝転がった。


種子島までは片道2500円。












12時半に種子島で1番大きな街、西之表市の港に到着した。

相変わらずしとしと雨は降り続いてる。




鉄砲とロケットとサーフィンの島、種子島。


1543年にポルトガル船がこの島に漂着して、日本に鉄砲を伝えたのは有名な話。


日本唯一の実用衛星の打ち上げ基地があり、今年2月にもロケットがこの島から打ち上げられたのも有名な話。


木村拓哉が奥さんとサーフィンをしによくこの島に来ていて、島のサーファーたちに静香と呼び捨てにされてるのも有名な話。なのかな?









早速島巡りをするぞ!と、小雨に濡れながら鉄砲館を見に行き、それからヒッチハイクでロケットセンターに向かう。


順調に乗せてもらい、日本一大きなソテツ、ポルトガル船が漂着した地、門倉崎を見てまわり、それから宇宙センターへ。


種子島でもヒッチハイクは順調だ。







ちょうど暇だったという子供連れのご家族に乗せてもらって宇宙センターにたどり着いた。


せっかくだからと見学につきあってくれるご家族。


すると10歳くらいの男の子が無邪気に聞いてくる。




「ねぇねぇ、お兄ちゃんはどこで寝てるの?」



「ん?野宿だよ。」



「野宿?」



「キャンプみたいなもの。」



「へぇーいいなぁーー。」



「よくないぞー。」




そんな話をしながら子ども達と宇宙科学技術館の中をかけまわった。







外にある原寸大のロケットと一緒に子供たちの写真を撮ってあげたりしてると妙になつかれてしまって、



「お父さん、今日お兄ちゃんうちに泊めてあげようよー。」



とダダをこねてる。


しかしお父さんはものすごくわかりやすく嫌ですっていう顔をしている。


知らん人を家に泊めたくないけど、バッサリ断るのも薄情な感じになって気まずい、というこの状況。


お父さん、気を使わせてごめんなさい…………



「お兄ちゃんねー、明日の朝、早いから。」



「そ、そう、お兄さんは朝早いからだめなんだ。」



俺に対して差し障りのない言い訳を必死に考えてるお父さんの顔を潰さないよう、そう言っておいた。














夜道を1人ポツポツ歩く。


バッグが肩に食い込んでものすごく痛い。


中之島で灯台まで7時間かけて歩いた時の筋肉痛がまだ残っている。


ちゃんと寝てないので体も疲れてるし、夜の中でひとりぼっちで寂しい。




でもさっきの食堂での出来事で心がすごく温まっている。



テキトーに入った食堂でカツ丼を食べ、ご飯の量が足りなかったのでご飯だけおかわりしたんだけど、会計のときにおばちゃんがカツ丼の値段だけを言った。



「あの、おかわりのご飯代は?」



「あ、いいよいいよ。」




すごい量の荷物を抱えて店を出ようとする俺を見て、さっと入り口のドアを開けてくれたおばちゃん。



ごちそうさまでしたと言う俺に、



「ありがとうございました。気をつけてね。」



と、深々とお辞儀をしてくれた。





高級な店でもないし、こんな田舎の古ぼけた定食屋のおばちゃんがあんなことしてくれるなんてすごく驚いた。


しかもものすごく笑顔で。


これだけで俺は種子島は最高にいい所だよって人に言えるし、俄然元気とやる気が湧いてくる。


お腹いっぱいにしてくれるお店はどこにでもあるけど、こんなに心までいっぱいにしてくれるお店はそうはないよ。


最高にいい気分だ。









しばらく歩き、24時間のコインランドリーを発見した。 

やったぜ!!!


4日間ぐらいずっと着っぱなしだったこの服。

もちろん靴下も、パンツも。



丸裸になって服を全部洗濯機に突っ込み、このままじゃ警察に通報されるので、下半身を寝袋に突っ込んでイモムシ状態で洗い終わりを待つ。


洗い終わった服を乾燥機にかけるのは金がかかるので、机やイスやあちこちに引っ掛けまくった。



今日はここで夜を過ごそう。


電気ずっとついてるみたいだし。



いやぁコインランドリー、快適だ。



















朝になり、コインランドリーの中で目を覚まし、まだ濡れてる服をバッグに詰め込みヒッチ開始。





港まで送ってもらい、まだ時間があったので近くの灯台に向かった。


海岸には山のようなゴミが打ち上げられていた。


世の中には海岸に落ちてる靴を何千足も拾い集めて、それを使って芸術作品を作ってる人もいるという話を思い出した。









島間港を出港したのが10時45分。


そして屋久島の宮之浦港に到着したのが11時50分だった。


港の至る所に「まんてん」と「縄文杉」のポスターが貼りまくってある。


NHKドラマの影響で観光客も結構増えてるんだろうな。






世界遺産に登録されている島、屋久島。


国定公園にも指定されている山奥には、樹齢何百年、何千年の杉がズドンズドンと立ってるらしい。


ここが南の島巡りの最後のひとつだ。





早速ヒッチハイクで向かったのは一湊という町。


噂に名高い屋久島の300円宿は、その一湊の町から車で山に10分ほど入ったところにある村、白川山にある。


これまで沖縄で出会った旅人たちからオススメだよと教えられていたその場所は、全国から個性的な人たちが集まるところなんだそうだ。


教えてくれた人たちも、やっぱり個性的な人たちだった。









一湊の小学校に赴任中の先生に乗せてもらい、走りながらその白川村について色々と聞かせてもらった。


なんでもこの白川山という村は、元々廃村で、ナントカさんという芸術家が移り住んできて、その人に寄ってくるように全国から芸術家たちが移住してきて、今じゃもともとの屋久島人は1人もいない、芸術家の村になってるそうだ。




村に向かう途中、山道をトボトボと1人歩いているバックパッカーを見かけた。



「あ、あの人もたぶん行くんじゃないですか?」



車を止めて声をかけるとやっぱりそうだった。


その女の子バッグパッカーも一緒に乗っけて村へ向かう。










こんなところに村なんてあるのか?と疑わしくなる細い山道を奥へ奥へと進んでいくと、やがて森の中に何軒かの木造の建物が散らばる集落にたどりついた。


「道場」と呼ばれている小屋に入ると、そこには3人ほどの旅人が泊まっていた。


中には囲炉裏があり、料理はすべてそこ。


電球はある。


雑魚寝で10人くらい寝れるかなぁ。


布団は一応あることはあるけど汚い。


ってか、全部汚い。


とても宿なんて呼べるような場所ではない。




「管理人さんは18時ごろに来るから、それまで適当にやってて。」



と泊まってる2人が車でどっかに行ってしまった。


今日は帰らないらしい。






小屋に残され、ぼんやりと囲炉裏にポイポイ小枝を投げ入れる。


どうしようかなぁ…………


面白い出会いはあるかもしれないけど、なんか個性的すぎて嫌だなぁ…………



さっき乗せてくれた先生が、良かったらうちに泊まんなよ、とケータイ番号を教えてくれている。


普通なら迷わず行くんだけど、さっき一緒に来た女の子バッグパッカーのヒロヨちゃんが結構かわいいんだよなぁ。


あー、どうしよう…………















結局悩んだ末、一湊の町に戻ってきた。


もういい加減あんな個性的な人が集まるボロい安宿は沖縄で満足している。


ていうかなんか性に合わない。




「すいません、小学校の◯◯先生のお宅、ご存知ですか?」



「おー知ってるよ。乗せてってあげようか?」



地元のおばちゃんに乗っけてもらい教員社宅にやってきた。



「こんばんはー!!」



「あれっ!!来たのー!!あがってあがって!!」



まだ若い先生は新婚ホヤホヤで、部屋のいたる所に2人の写真が飾られてあった。


奥さんは今日は出かけてて戻らないみたい。



「今から生徒の家に行くんだよ。一緒に行こうか。お寿司らしいから。」




シャワー浴びさせてもらって、ギターを持って出陣。



「こんばんはー。」



「こんばんはー。」




生徒さんの家に着くと、先生が連絡を入れてくれてたみたいで、俺のこともどうぞどうぞと迎えてくれた。


みんなもうお腹いっぱいになってお話してるのに、俺だけずっと寿司をむさぼってると、もちろんギターコール。


暴れまわっていた3人の子ども達が目を輝かせて俺の目の前に座る。


2~3曲歌うと、気に入った!!と生徒さんのお父さんが焼酎を持ってきた。


甘みがあってすごくおいしいその焼酎は、三岳っていうこの島の焼酎だった。



「屋久島ではなぁ、4~5月に漁業がすごく忙しくなるんだよ。全国からバイト生がやってくる。バイトでもいい時には月に45万とかもらえるんだよ。」



沖縄ではキビ狩りのバイトとかしてましたっていう旅の話をすると、そんなことを教えてくれた。


色んな土地にそれぞれの季節労働があるんだなぁ。













帰りの車の中で先生に聞いてみた。



「今日みたいに特定の生徒の家に食事に行くのってまずいんじゃないですか?」



「んー本当はそうなんだよねー。でも俺はあんまり気にしないことにしてる。誘われたらどこでも行くし。みんな暖かい人ばかりだから。ここには都会の親みたいにとやかく言う人もいないしね。」



先生の家に戻り、あったかい布団で爆睡した。


新婚さんの愛の巣は清潔感にあふれかえっている。




















翌朝早く、昨日の生徒さんのお父さんが教員社宅にやってきた。


明日屋久杉を見にいくんですと言った俺のことを、わざわざ迎えに来てくれたんだ。


お父さんありがとうございます!!




そんなお父さんの車に乗り、町で3日分の食料を買い込み、登山口である白谷雲水峡までやってきた。


余計な荷物は先生の家に置かせてもらってる。






屋久島の中央部はほとんどが深い山で、あの有名な縄文杉は島のちょうど真ん中あたりにあるらしい。


西日本最高峰の宮之浦岳(1935m)に登ろうと思ったら山の中の小屋に2泊はしなきゃいけないらしく、そのための食料だ。



屋久島は「月40日雨が降る」と言われるほど、雨ばっかりの島で、霧も深い。


そのため年4~5回は遭難者が出るらしく、その8割は助からないとのこと。


このお父さんも地元の人間として遭難の救助にあたったりするらしい。



遭難者ってのはだいたい下に下に降りて、沢の付近とかで死んでることが多いそう。


助かるためのコツは、遭難したと思ったら下に降りるのではなく、上に登ること。


そうするとヘリから発見されやすいんだそうだ。





あとみんなが知ってる有名な縄文杉。


実はアレと同じレベルの樹齢の縄文杉がこの島にはもうひとつ存在するらしいんだけど、それは観光地化されないために地元の人しか知らない秘密の場所にあるんだそう。


それぞれの土地に、地元の人しか知らない秘密が色々あるんだろうな。




とにかく、山はナメたらいけない。















というわけでウェスタンブーツにジーパン、地図なし、というクソナメた格好で山に入る。




人の話全然聞いてねぇ。







…………ていうかキツすぎる。



道悪すぎ…………









      
息も絶え絶え木の根っこの階段を登り、濡れた岩の道をすべりながら歩く。


人生で山登りっていう山登りはこれが初めて。



大丈夫!!大丈夫!!


道なんか迷うかよー!!


俺は大丈夫!!とガンガン進む。


















なぜか悲しくなる木。






もののけ姫の舞台にもなった、コケが辺り一面びっしりはえた森を抜け、トロッコ道へ。


プワーンと汽笛を鳴らしながらゴトンゴトンやってくるトロッコをギリギリでよけて、紅葉の橋を渡り、さらに山道へ。





















ウィルソン株、大王杉を抜け、ゼェゼェと息をしながら気合いで森の中を突き進んでいくと、なにやら今までと違う空気が満ちたエリアに差しかかった。



なんかちょっと神聖な空気が漂っているような気が…………



そしてズドン!!






は、ハンパじゃねぇ…………


こいつが縄文杉か…………






この荘厳さは実際見た人じゃないとわからない。


ここまでやってくるのがきついから、車で行けるヤクスギランドという所で済ます人もいるらしいが、これは見ないとわからんわ。


高さ23m、胴回り16mのこの木は、7千年間この地球を見つめ続けてきた。


聖徳太子よりも、仏陀よりも、キリストよりも、はるかはるか昔からこの世界を知ってるんだ。




霧の立ち込める中にそびえる縄文杉。


しばらく前を動けなかった。

















よし、そろそろ先に進むかと思ったら、いきなり森の中に大粒の雨が降ってきやがった。


しかも急激な暴風。



こ、これが屋久島の洗礼か!!!




そ、遭難したら下に降りるんじゃなくて上にいいいいいいい!!!!



とパニクっていると向こうに山小屋が現れ、大急ぎでガバッと飛び込んだ。



「こんにちはー。」



「あ、こんにちはー。」



中には先客が2人。


どっちも女の人なんだけど、装備が凄まじい。


床に敷く銀色のシートに、俺の持ってるやつの3倍はあるような分厚い寝袋。


大量の食料に、ガスボンベやら鍋やらヤカンやら。


カッコいい水筒、紙が濡れないための防水の容れ物、ホント色々持ってる。


そんなのいらんくない?って思ってしまう。






6枚入りの食パンに魚肉ソーセージとマヨネーズをはさんで食い散らかし、寝袋にもぐりこむ。


まだ17時なんだけどすでにかなり暗い。


簡素な山小屋には電気なんてもちろんなく、何もできないので寝るしかない。




うー…………それにしても寒い。


鼻で呼吸すると、鼻の奥が痛くなるほどの冷気。


頬がこわばる。


山ってやっぱ舐めたらいかんわ。















というわけで山を舐めまくってたおかげで、ろくに眠れないまま朝を迎えてしまった。


あまりにも寒すぎて、一晩中寝袋の中で太ももをこすってた。


他に2人泊まってたベテランおばさんたちは暗いうちから出発していった。







ようやく明るくなり、荷物をまとめて外に出てみて驚いた。


森の中が真っ白。


一瞬、え!!ここどこ!?って思ってしまった。


雲海の中にいたんだな。








今日のメインは宮之浦岳。

天気はサイコーの快晴!!



よっしゃいくぞおおおおおおお!!!

イヤッホオオオウウウウウウウウウ!!!!




と、勢いよく出発したものの、2日連続の登山は素人にはめちゃくちゃキツかった。


もーだめ、もーだめと思いつつも、ガクガクする足を無理矢理進める。



ハァハァ…………


こりゃしんどいわ…………






だいぶ標高が上がってくると木がなくなっていき、代わりに腰くらいの高さの草があたり一面の山にきれいに生えてる。


その中にゴツゴツと巨大な岩が転がっている。


目の前の宮之浦岳がやたら近くに見えて、よし、頂上まで頑張って登って休憩しよう!!!と思うんだけどなかなか近づかない。



マジで死ぬ、マジで死ぬ…………


ハァハァ…………





こんな時、いつも思い出すのが鳶の仕事。


毎日毎日太ももが上がらないくらいきつい日々だった。


40~50kgの鉄の資材を担いで朝から晩まで歩き続ける日々。


あれに比べれば大抵のことはどうってことねぇって思えるから、鳶の経験は無駄にはなってない。













やっとこさ登りつめるとそこにはものすごい景色が待っていた。




頂上にある岩に登ると360度の絶景。

  
連なる山々。

水平線まで広がる雲海。

青すぎる空…………



あああ、達成感やべええええ…………






しばらくその景色を堪能していると、旗を持った若い兄ちゃんに引き連れられた爺ちゃん婆ちゃんがゾロゾロとやってきた。


岩の崖をロープをたぐって登ったり、びしょ濡れの丸い岩を四つんばいで越えたり、若者ならまだわかるけど、この爺ちゃん婆ちゃんたち、あのルートをよくここまで登ってこられたな。


俺も何度もブーツを滑らせた。



「はーい、昼食の前にもう1つだけみなさんにお仕事をおねがいしまーす。みなさんにはこれからモデルになってもらいまーす。ではこちらの方に並んで座ってくださーい。」



15人くらいいるんだけど、そのメンバーそれぞれのカメラでパチパチ写真を撮ってるガイドの兄ちゃん。


大変な仕事だなぁ。













景色に満足してぼちぼち降り始めると、草むらがガサガサと動いた。


何だ何だとよく見ると、ぬっと草むらから鹿が顔を出した。





モシャモシャ草を食いながら、なんだお前って顔でじーーっとこっちを見てる。


屋久島には猿もいるらしく、目を見ると襲い掛かってくるそうだ。


ただし女、子どもしか襲わないというなかなかナメた奴ら。













2泊はしないといけないって聞いていたけど、ピョンピョン降りたおかげで15時半には登山道の入り口までたどり着くことができた。


駐車場に停めてある車の近くで待ちぶせして、下りてくる登山客たちに声をかけまくり、町まで乗せてもらう。


本当は、明日の昼くらいに下りる予定だったのが早まったので、今夜どうしよーと思いつつ、とりあえずヒッチハイクで先生の家に向かった。



「こんばんはー…………」



「はーい。」



ドアが開くと、ものすごくかわいい女の人が出てきた。



「あの、先生いらっしゃいますか?」



「おー。早かったねー。」



何事もないかのように快く中に入れてくれ、お茶をだしてくれた。


奥さんが俺の分まで晩ご飯を作ってくれて、3人でテーブルを囲む。



「いただきます!!」







あああ、新婚さんっていいなぁ。


清潔感があふれてて、家具もみんな新しいし、至るところにいろんな2人の写真が飾られてある。


俺もこんな風にしたいなぁ。





先生はもともと鹿児島の学校に赴任してたみたいだけど、屋久島に行くって周りに言ったら相当反対されたらしい。


こんな離島の学校なら奥さんの親も反対するのかな。



でも、いいなぁ。


奥さんと2人で誰も知らない島での生活。


真面目で、学校の先生で、お酒もあまり飲まず、2人での外出が大好き。

しかも力持ちで、俺みたいな若者にも理解がある。


奥さん、幸せだろうなー。



何かお礼しなくちゃ、とヘンプの完成品を見せた。




「これ、ほしいですか?」



「え、マジで!!くれるの!!いや、ほしい、ほしい。」



ビーズや貝殻を見せて、2人にどんなのがいいか選んでもらい、30分くらいでバシッと編みあげた。



「いやーマジでうれしいよ。ありがとー。」




あったかいシャワー。

あったかいバスタオル。

あったかい布団。


あぁぁ、サイコーだー…………















まだ日が昇らないうちに、宮之浦フェリー乗り場まで先生に送ってもらった。


新婚さんだっていうのにこんなわけのわからないやつを泊めてくれた先生には感謝してもしきれない。


先生、ありがとうございました!!!






さて今日はとうとう島巡り最後のフェリー。


鹿児島に戻る船に乗って、そこから内地の旅が始まる。


1番早いのは高速船のトッピーってやつだけど、鹿児島まで5300円。

俺の所持金は2500円。


普通にお金足りないんだけど、今日ちょっとした裏技を使って鹿児島に帰るつもりだ。









まだ船まで時間があるので、観光案内所に荷物を預けてヒッチハイクで吉田という集落に向かった。


この吉田はNHK連ドラ「まんてん」の舞台になった集落。


ドラマの中では船田って名前だったかな。






町に着き、とりあえず撮影があった運動場でアホみたいに走って、さぁ次何しようって他に何もないので、もうちょっと先にある大川の滝ってとこに行ってみることに。



しかしあまりにも車が通らなくて、待ってる間歩道に寝転がってたら、いつのまにか寝てしまっていた。










アスファルトの上で目を覚ますと14時半だった。


ヤバいヤバいと、すぐに宮之浦に引き返した。




港に戻ってきたら、早速今日やろうと思ってた裏技を試してみることに。


港に入ってきた貨物船に近づいていき、コンテナやらトラックやらの積み込みをしてる作業員に声をかけ、船長さんを探す。



ゴウンゴウンと機械の音が鳴り響く中に船長を見つけた。


さぁ交渉だ。



「すみませーん!!あのー!!鹿児島まで乗せてもらいたいんですけどー!!」



「あー!何人かー!!」



「1人でーす!!」



「おっしゃー!!そっから登って入っとけー!!」




おっしゃ!!!

うまくいったぞ!!!!


鹿児島でこの裏技を教えてくれた兄さん、ありがとう!!!


でもこれって結構危ない賭けなのであんまりオススメはできないです。









フォークリフトの走り回る間をすり抜け、船に乗り込んで待っていると、しばらくして船長さんがやってきた。



「おう!!2千円!!」



「あ、はい。」


 
「よし、マッサージしろ。」



船長は俺にマッサージさせながら、いろんな話をしてくれた。



「俺は高校を卒業してすぐに船に乗った。今まで行ったことのない国と言ったらロシアぐらいだ。ほとんどの国の女とヤッたもんさ!!!」



1時間半ほど全身をくまなくマッサージし終わると、



「よし!!もういいぞ!!ちょっと待っとけ!!」



外に出てった船長が戻ってくると、手にカップラーメンを持ってた。



「食え!!で、お前雨が降ってたら今夜はここで寝ていいぞ!!」



いえ、今夜中に宮崎に行くつもりですから、というと、おう、わかった!!もう俺は寝る!!と出て行った。


イカす船長だ。

まさに海の男ってやつだなー。














無事22時に鹿児島に着くと風がものすごく冷たかった。


そうそう、これだよ。

これが生まれ育った内地の空気。


2ヶ月間の島巡りですっかり南国の空気に体が慣れてしまっていた。


秋をすっ飛ばして一気に冬に突入した感覚だ。





上着を着込んで港から10号線まで歩いた。


荷物が重すぎてマジで腕が壊死しそうだ。


沖縄でどれだけこの重い荷物を抱えて歩き回ったことか。


10m歩いては休憩して、また10m歩いては休憩して、そうやっていくつもの島を見て回った。


この辛さももうすぐ終わる。


宮崎までたどり着けばそこからは車での旅が待ってる。











何度も道を間違え、行ったり来たりしながらやっと10号線に出た。


歩道にうずくまり、ギターケースの裏にシュパパ!とガムテープを貼り、国分と文字を作る。


本当は宮崎まで行くんだけど、ヒッチハイクは目的地が遠い場合は刻んで進むのがいい。






ハラハラと小雨が舞う鹿児島の光の中、道路に向けギターを立て、ビシッビシッ!と親指を立てる。



昔、ヒッチハイク初心者の頃、乗っけてもらったおばちゃんに言われた。



「もっと自信を持って親指立てなさい。」



怪訝そうな顔でジロジロ見ていく歩行者。


薄笑いを浮かべて走りすぎる運転手。


俺のやってることがおかしいか?

お前らにはできないことだろうな。



せいぜい10本の花の匂いをかいどけばいい。

俺は1万本の花をかいでみせる。




遠くから近づいてくるヘッドライトの光にギターのシルエットがくっきり浮かび上がる。



止まった車に駆け寄った。






【鹿児島の離島編】


完!!!





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