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西表島の知る人ぞ知るお祭り







リアルタイムの双子との日常はこちらから







ベルトコンベアの上を、もろみ酢の入ったビンが次から次へと流れてくる。


34本ぐらい出来上がったかな。


泡盛の製造段階の中で生まれるもろみを使った健康飲料が今話題になってるらしく、請福酒造も初生産を試みたんだそうだ。


もしもろみ酢が大ブレイクしたら、


「これの初生産、俺も作ったんだぜ。」


って自慢しよう。








わずか数日間の清福酒造でのバイトも今日で終了。


短い間だったけど蔵の社長さんも設備屋の先輩たちもみんないい人で、すごくいい経験をさせてもらえたな。




「お世話になりました。」


と挨拶をし、事務所にいらない荷物を預け、又吉さんとフェリー乗り場に向かった。



「沖縄で困ったことがあったらすぐ電話しろよ。」



と名刺を差し出す又吉さんにお礼を言い、チケットを取りに歩いた。




石垣でのこの5日間…………

マジで2千円ぐらいしか使ってない。

しかも麻の編物につけるビーズとかの金だ。


飯もタバコもコーヒーも。

飲みまでおごって貰った。



みんなの恩に報いるためにも頑張って生きなきゃ。
















17時20分の高速船で45分程かけて西表島に到着した。


ここがどんなところかまったくわからないけど、とりあえず沖縄本島からも相当離れた、日本の端っこのほうの離れ小島だ。




船を降りたら早速星砂ビーチってとこに行ってみた。




すごい。


ビーチの砂全てが星の砂。

色とりどりの様々な形をした貝殻。


那覇の土産物屋で売ってるものがアホほど転がっている。






2時間ほど日が暮れるまでボーっとして、それから神戸出身の秋田さんに電話した。



秋田さんは那覇の安宿「南風」で知り合った旅人さん。


こんな謎の島に来た理由はほかでもなく、明日この島で行われる「節祭(シチ)」というお祭りのため。


その情報を教えてくれた人が秋田さんだ。



「本当に来たのかよー!!」



「当たり前ですよ。これを見逃す手はないです。」



秋田さんは星砂キャンプ場ってとこで3日間テントを張ってたらしいが、その間に友達になったという東京の大野さんと3人で真っ暗なバス停にろうそくを立ててささやかな再会パーティを開いた。



2人ともアウトドアグッズをたくさん持っており、ミニコンロ・鍋を使って神戸さんが今日釣ってきたミジュンというイワシみたいな魚を煮付けにしてくれた。


大野さんはパスタを作ってもてなしてくれた。


2人とも旅のベテランって感じで、道具にも料理の手つきにも年季が入ってる。

俺なんてまだまだ旅の初心者だ。






ビールを飲んでいると秋田さんが声をかけてた札幌の女の子キャンパーたちがやってきて、5人で旅の話をして盛り上がった。


最初、安宿で秋田さんと話したときは俺の知ってることなんて何でも知っててすごい旅人だなぁと思っていたが、この1ヶ月間、色々と勉強した沖縄の話をすると秋田さんも知らないことがあり、みんなも「すごいことしてるねー。」と驚いてくれた。






オリオンビールを飲みながら暗闇にろうそくの灯を灯し、笑い声を響かせた。


旅人はみんな自慢したがり。


会話は途切れることなく続いた。



札幌のチョクとはるかちゃん。

かわいかったなー。
  





酔っ払ってアスファルトの歩道にひっくり返った。


天の川がきれいに夜空に流れていた。



「おーい、大丈夫ー?」



みんなの心配する声を聞きながらゆっくり目を閉じた。
















目がさめるとバス停のベンチの上で寝転がっていた。


今だに日差しは強く、セミの声が汗ばむ肌にしみいる。




今日は待ちに待った節祭の日。


このお祭りは西表島にある祖納って地区と干立っていう地区の2ヶ所で行われるらしく、秋田さんも大野さんも干立のほうに行くらしい。



「干立ではオホホがあるからね。」



「あーオホホね。」



そういえば昨日も札幌の女の子たちとも、



「オホホはどっちであるんですか?」



「あーオホホは干立でしかないらしいよ。」



って話していた。





…………オホホって何ですか?




質問しても、それは明日のお楽しみというばかり。


謎だ。楽しみ。









というわけで朝っぱらから大野さんと2人で干立に向かって歩いた。



「こっちでいいのかなぁ?」



「いいでしょ!!ナンクルナイサー!!」



しかし全然ナンクルナイサーではなく、1時間ほど歩いても一向に着く気配がないのでヒッチハイクしようということに。



親指を立てようとしたが、車が通らない。



全然通らない。



日曜のお昼。



全然通らない。





西表には道が一本しかない。


海岸線沿いに島を半周する道。


あと半周は崖やらジャングルやらばかりで、自然を壊さないために道が作られていないらしい。


嘘かホントかわからんけど、一周しようとして歩いて森に入り、帰ってこなくなる旅人がよくいるとのこと。



周囲は130km。

人口約2千人のほとんどが海岸線の道沿いに住んでいる。


そのため、移動経路はその道だけなので車の交通量は多いはず、と思っていたのに、15分、20分に1台くらいしか通らない。


しかも観光バスとかばっかり。






やっと走ってきたワゴン車に2人で手を振りまくった。


ウィンカーをつけたその車に駈け寄り、干立まで行きたいんですけどと言うと、



「これタクシーだよ。」



タクシーかよ!!


西表のタクシーはワゴン車だ。





じゃあいいです、とまた2人して歩いているところに今度は観光バス。


ダメ元で手を上げると、



「いいよ。乗ってきなっ!!」



と運転手さん。


いっぱい乗ってる他のお客さんたちの視線が痛い…………


まぁいいや!
















お祭り会場につくと紅白の幕が敷地内を囲ってあり、古ぼけたお寺や鳥居の下には忙しそうに動き回るカリユシウェアーをまとった老若男女の姿。
         

全国から集まった物々しい格好をしたカメラマンたちが、至るところで場所取りに必死になってる。


巨木の間からゆれる木漏れ日。




節祭とは豊作祈願や地域の繁栄を神に祈るお祭りで、500年もの歴史があるんだそうだ。


国の無形文化財にも指定されており、独特な衣装やお面がお祭りファンにはたまらないものみたい。


そしてその中でもオホホを楽しみにやってくる人が多い。





オホホってなんだ?













太鼓とドラの音と共に祭が始まった。

















歌と太鼓とドラに合わせて輪になり、回りながら女性たちが踊りを踊る。
          

踊りが終わるとともに1人の男が中央に飛び出してきて、島の言葉を大声で叫びながら動き回っている。


そうして1人が終わって裏に消えると、また次の男が交代で走り出してきて、「カミツカサ」と呼ばれる老女たちに向け大声で派手に動き回る。



何て言ってるのか全然わからないまま、今度は2人の男が出てきて棒術の演舞。
           




































鎌や槍での演舞も終わると、一段落する間もなく今度はミロク様という神様らしきものの行列。


1人だけ派手な衣装を着込み、不思議な表情をしたお面をつけた神様に、女性たちがついてまわる。


あの神様役になることが出来るのは自分の夫婦、息子の夫婦、孫の夫婦の6人が健在なおじいちゃんだけらしい。























2周くらい周っただろうか。


そのときだった。






「オホホホホーーー!!」






という奇声と共に不思議な面をつけた男が飛び出してきた。


裏声で「オホホッ!!オホホッ!!」と笑いながら客を驚かしてまわり、ミロク行列の女たちの踊りを邪魔してまわる。


不思議な動きをしながら飛んだり跳ねたりしているオホホにカメラマンたちは一斉にシャッターを切りまくる!!!



うわっ!!!


あ、あれがオホホ!!?!?



あれだよな!?!?


あれ以外考えらんねぇ!!!



なんか紙切ればら撒いてる!!!


紙切ればら撒きながら飛んだり跳ねたりしてる!!!



写真!!!!


写真!!!!


写真って、ああああああ!!!!デジカメの電池切れてるウキイイイイイイイイイイイ!!!!!






デジカメの電池が切れて慌ててる俺の前でオホホは手招きしたりお札に見せた紙切れをばらまきながら裏へ消えていった。



で、電池…………






オホホとは昔、この島にやってきた外国人さんを見た島の人たちがこんなイメージだったと伝えたのが元になってるものらしい。


金ばらまくって、なかなかのダークユーモアな言い伝えだな。





え?オホホの写真ないのかって?



オホホ見たい?



見たいでしょー。面白いですよー。



想像つかないでしょー。


見たけりゃ西表行ってください!!




























最後に獅子舞の演舞が終わると、今度は行列になり集落の中を行脚し始めた。


まず向かったのは西表島に最初に住んでいた人たちの家。


そこを2軒回り、祖先たちを祀る祠の前でまた演舞が行われる。





            






行列が祭の会場に戻る頃には夕焼けがきれいだった。


会場でもやはりまた同じメニュー。


ライトアップされた中で音楽に合わせ踊る人々。





これが500年も続いてるのか。


やいのやいの文句をつけてるお爺ちゃんたちも、若い頃やいのやいの文句つけられながらこの踊りを踊っていたんだろう。


あのしわくちゃのお爺ちゃんたちも若い頃は引き締まった体をしていたんだろう。









こんな小さな離島で脈々と受け継がれる伝統。


言葉にしろ、音楽にしろ、踊りにしろ、その形は様々。


若者がアレンジしてちょっとでも足の運びや歌のリズムを変えようとするとものすごく怒られるらしい。


伝統ってそういうものなんだろうな。




夜の中で踊りまわる人々を見ながら島の歴史に思いをはせていた。




















ゆうべお祭りの後に、秋田さんの旅友達の女の人が、



「野宿するんだったら私が泊まってる宿の部屋が空いてるから泊まっていいよ」



と言ってくれ、そこに潜り込ませてもらった。



「言っとくけど宿の人に見つかったらやばいからね。トイレとシャワーの時以外、部屋から出ちゃダメだよ。」



その言葉に従って誰にも見つからないようにおとなしくしていた。


エアコンの効いた部屋でシャワーを浴び、汚れを落とし、さっぱりした布団でくつろがせてもらった。




そうして夜が開け、朝早くこっそりと宿を抜け出し、宿が見えなくなるまで小走りに走った。


お姉さんありがとうございました。












お祭りも終わったので今日はジャングルツアーをしよう。


島の90%が亜熱帯のジャングルに覆われているこの島には、大きな2つの河が流れている。


その1つ、浦内川で往復1500円の遊覧船が出てるとの情報を聞いている。


ウキウキで親指を立てた。









あっという間に船着場に到着し、チケットを買って遊覧船に乗り込み、30分くらい川をさかのぼったかな?













両岸には何本もの根っこを川に突き刺すマングローブ林が広がっている。


内地では見ない不思議なその形。


背後にはズゴーンとそびえる荒々しい山々。








天然記念物のカンムリワシを写しそこねて悔しがってるうちに、船は上流の船着場に到着した。


俺だけ迎えの時間を2時間ほど遅らせてもらって、1人でゆっくりと見たこともない植物や虫を観察しながら歩いた。









小さな沢を飛び越え、倒れて道を塞いでいる巨木を乗り越えしばらく歩いていると、かすかに水の轟音が聞こえてきた。


急ぎ足で進んでいくと共にどんどん大きくなる音。


轟音がすぐ近くにきて森を抜けた瞬間、目の前に滝が現れた。






日本の滝百選にも選ばれているこのマリウドの滝は、落差5mほどの滝が2段あり、緑に覆われた森の中に白いしぶきをあげていた。


まわりの観光客たちに指さされながら岩肌を降り、落っこちそうな先っぽでシャッターを押しまくった。

鳶をしてたおかげで高いところは全然平気だ。











さらに上流へのぼり、神の座と呼ばれるカンピレーの滝でまた何枚か写真を撮り、川の中の岩をピョンピョン飛んで上へ上へ。













ここまでくれば誰も来たことないないだろうと思っていると足元の岩に年月日と誰かの名前が刻んであったので、さらにピョンピョン飛んで、かなり上流のあたりで平べったい岩に大の字になって爆睡した。















結構な時間眠っていたみたいだった。


森の中に充満するセミやら何やらの大合唱で目が覚めると時間は13時50分だった。


迎えの船は14時半。


やばいっ!!と森の中をダッシュした。






途中で変なトカゲがキョトンとこっちを見ていたのでまたパチパチと写真を撮ってると14時10分。


時間ないのにぃいいい!!と思いながらトカゲが逃げるまで写真を撮りまくり、またダッシュ。


何とかギリギリ間に合い、船に飛び乗ることができた。



危うくジャングルに置き去りになるところだった…………





無事ジャングルを抜け出し、マングローブの茎を何本か拾い、道路に出てまた親指を立てた。














大原の仲間港にやっとこさ辿り着いた頃にはもう日も暮れていた。


1日半ぶりのまともな飯を定食屋で吐くほど食って、港のフェリー待合所で日記を書いてると近くの芝生でバーベキューをしてた兄ちゃんがこっちに来て話しかけてきた。


「暇ならあっちの小学校の体育館でエイサーの練習やってるから見に行けば?」



やったぜ!!と思いながら教えられた体育館まで行ってみると、中からタイコの音が響いてくる。


中を覗き、



「すいません、見学させてもらっていいですか?」



と言うと、



「おーっ!!いいよいいよ!!」



といかにもウチナンチュらしいおっちゃんが笑いながら中に入れてくれた。


小学生くらいの男の子から20代、30代の男女を1人のおっちゃんが指導している。



熱心に聞き入る子供たち。


うつむきながら三線を練習をする女の子。


伝統が受け継がれる瞬間を食い入るように見つめた。





すると1人の子供が、



「お兄ちゃんもやろうよー。」



と言ってきた。



最後の通しの練習の時に俺も1番後ろで子供たちの動きを真似しながら踊ってみた。


激しい動きに汗が吹き出る。



掛け声とタイコが小さな町に響きわたる。










練習が終わり、お礼を言い、フェリー乗り場に戻ってベンチに横になった。


風が少し冷たくなってきたようだ。


内地ではすでにみんな長袖で街を歩いてるらしい。




そうかぁ、もうすぐ10月だもんな。


旅に出てもう1ヶ月が経とうとしているのか。




遅い秋がやっと沖縄にもやってこようとしていた。









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