リアルタイムの双子との日常はこちらから
一睡も出来ない。
物陰にいたのに吹き込んできた雨で全身ずぶ濡れになり、髪の毛から水滴がしたたる。
膝を抱え、暴風に形を変える雨のうねりを一晩中見ていた。
身体中が疲れ果ててる。
寝る場所がない。
食べるものもない。
お風呂にも入れない。
知ってる人1人もいない。
携帯の充電が切れて誰ともしゃべれない。
本当は160円あったのに、昨夜誘惑に負けて140円のりんごジュースを買ったから今20円しかない。
マジでどうしよう…………
やがて夜が明け、昼くらいになると風も穏やかになり雨も止んだので、ギターを取りにコンビニに行き、ヒッチハイクでヒメユリの塔に向かった。
戦争による負傷者たちを手当てしていた看護婦や職員たちは、突然の侵攻により後を追われ、追い詰められて自決の道を選んだらしい。
219名の名前を刻んだ石碑のあるヒメユリの塔。
石碑の周りには千羽鶴や売店で売っている花が強風でめちゃくちゃに散乱していた。
灰色の空と葉のちぎれ飛んだ痩せた木が、悲しみを一層引き立たせていた。
またヒッチハイクをして、止まってくれた兄さんに「どこでもいいです」と言うと、ちょうど暇だったらしく2時間ほどドライブに付き合わせてくれた。
街に戻り、あまりにも何も食べてなくて腹が減ったので、シャッターが半分開いているトルマリン専門店っていうお店にヌゥっと入ってみた。
なんだ?という顔をしている店長さんに、水を飲ませてくださいとお願いすると、快く飲ませてくれた。
お礼を言って店を出ようとすると店長さんはビニールに個包装されたチョコレートを何個かくれた。
アーケードの商店街の軒下に座ってチョコレートを食べた。
2日ぶりの食べ物。
涙が出そうなほど美味しかった。
でも明日のことを考えて半分残した。
ゆうべ一睡もしてなかったことで疲れた果てており、そのまま軒下に寝転がって目を閉じた。
翌朝、ガヤガヤという賑やかな音で目を覚ました。
ケータイを見るとすでに10時。
人が行き交う中、恥ずかしくてそそくさとその場を去った。
地元の友達が、「暇な時にしろ」と出会い系サイト【スタービーチ】のアドレスを送ってきたので早速やってみると、すぐに女の人からメールが入ってきた。
数回やりとりをしていると、「ウチに来たら?」ということに。
嘘おおおおおおおおおお!!!!
展開早すぎる!!!!!
やった!!!ご飯食べられる!!!
シャワーも浴びられる!!!
もしかしたらあんなことやこんなこともあるかも!!!
大喜びしていたら、なんか通りで踊ってた!!!
めっちゃ沖縄っぽい!!!!
大興奮しながら夕方になって指定されたマンションまでやってきた。
ドキドキしながら玄関のピンポンを押す!!!
あんなことやこんなことおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
すると出てきたのはどっからどう見てもオジサンのニューハーフだった。
ちょ………なにもううううう…………
なんでええええ…………
めっちゃ化粧をしたおじさん。
めっちゃ真顔の俺。
恐怖におののきながらも逃げることもできず、家に上がらせてもらうことに。
オジサンはやたら優しくしてくれ、出前でとったお弁当をご馳走してくれたり、タバコをおごってくれた。
そしてシャワーを浴びなさいということで服を脱いでいると、
「オチンチン見せてくれるの?ヒヒヒ。」
と言われ背筋が凍りそうになったけど、ほぼ3日ぶりのシャワーは最高に気持ちよかった。
そこからもおじさんは別に襲いかかってくることなく、コーラを飲み、タバコを吸いながらテレビでドラえもんを見てめっちゃリラックスさせてもらった。
「私今から夜の仕事だから。」
オジサンはそう言ってポークの缶詰と千円をくれた。
「服、洗濯しといてあげるから明日取りに来なさい。」
すごく怖かったけど、ものすごく助かったので何度もお礼を言い部屋を出た。
外は久しぶりに雨が降ってなく、国際通りで1時間ほど歌った。
通り過ぎる人たちの「頑張れよ!」が痛いほど胸に染みた。
今日も野宿。
あと2日ほどでバイトが始まる。
そうしたら素泊まり2千円の宿を見つけているのでそこに行こう。
もう少しの辛抱。
もう少しの辛抱だ。
頑張れ文武!!
リアルタイムの双子ユーチューブチャンネルはこちら