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台風の夜の野宿







リアルタイムの双子との日常はこちらから







コンクリートの上では全然眠れなかった。


孤独感や、未知の期待からか、妙に目が冴えていた。







朝になり、早速活動開始。


とにかくまずは金を稼がないと。



イエローブックという求人情報誌にゆうべ軽く目を通していたんだけど、


「要玉掛け免許」


「1週間程度の期間」


「日給7千円」


というところがあったので、そこに折り目をつけていた。


俺はこの旅の資金を貯めるために宮崎で鳶職のバイトをしていた。

その時に取っていた玉掛け免許がこんなところで役に立つとは。





早速電話をかけてみると、今日にでも面接しましょう、午前中に、とのこと。


すごくわかりづらい簡易的な地図を睨みながらやっとのことで会社のビルまで辿り着き、場所を確認してから近くのフェリー乗り場で履歴書を書いた。



履歴書といえば証明写真を撮らないといけない。



近くのコンビニで600円の証明写真を撮った。



あと全財産167円。












一応ピアスと指輪を外し、髪の毛を結び、ヒゲを剃り、小綺麗にしてからビルの9階にある事務所に向かった。


面接は簡単なものだった。


ちょっとしたアンケートを書き、履歴書を渡すと、アロハシャツの男の人が説明を始めた。



「揚炭(ようたん)作業といって、外国から石炭を積んだ船が港に入ります。その石炭を巨大な掃除機みたいなもので吸い上げます。四隅のほうは掃除機で吸えないのでユンボで中央に寄せます。そのユンボをクレーンで中に入れる際に玉掛け者が必要なんです。そのユンボの玉掛け作業と、あと空いてる時間に中に入り壁についてる石炭をこそぎ落とす。それだけです。」



簡単とか楽とかいう言葉をやたら強調していたが、こんな日雇いの仕事が楽なはずがないよな。


台風が近づいてきてるので船が出港できないらしく、仕事が始まるのは来週の月曜日か火曜日とのこと。

今は水曜日。



それまであと160円。


根性で歌うしかない。












面接を終えてしばらくすると台風の影響が出てき始めた。


暴風雨は日が沈むにつれ激しさを増し、街路樹がこれでもかってくらいお辞儀を繰り返している。


話では近年稀に見るデカい台風なんだそう。


よりによって沖縄に着いてすぐにそんな台風が来るなんて。


道には骨組みだけの傘を持った人、ゴミ袋をかぶっている人がチラホラと見える。






たまらずフェリー乗り場に避難すると、隣の吹き抜けの通路から勢いよく人がスライディングで飛び出してきた。

雑誌とかメガネとかが叫び声とともにその通路から飛び出してくる。



「あっちにいい寝床があるよ。」



警備員さんがその通路の奥を指差す。


恐る恐る通路を覗き込んでみると、とんでもない風で一瞬で髪の毛がボサボサになってしまった。



マジかよぉ……と思いながらもなんとか風雨をしのげる寝床が欲しくて、意を決して通路に入った。



すさまじい風で一歩も前に進めない。


宮崎もかなり台風が直撃する県なので俺も慣れてたつもりだったけど、沖縄の台風は比べ物になないくらい強烈だ。

ちょっとでも気を抜いたら空に巻き上げられてしまいそうなくらいの暴風。





それでもなんとか一歩ずつ進み、50mのその通路の残り3mくらいのところまでやってきた。





あとちょっと…………


あとちょっとで物陰に避難できる…………




と足を進めた途端。




いきなりギターケースがドバッ!!と開き、風をモロに受けてハーモニカやカポタストとともに全速力で入り口までスライディング。


周りの人たちがニヤニヤしながらハーモニカを拾ってくれた。


あの警備員、絶対面白がって通路の先に行かそうとしたな…………












暴風が吹き荒れる街の中を行く当てもなく歩いた。


どこか雨風のしのげる場所はないか。



立体駐車場の中に入り、停めてある車の陰に身を潜めようとしたが、監視カメラが怖くてそれもできない。





台風は24時頃に目に入った。


体中びしょ濡れになってしまってどうしようもなくてコンビニの中に逃げ込み、ダメ元で店員さんに荷物を預かってくれないかとお願いした。



かなり怪訝そうな表情をする店員さん。


それはできないと言うところを、せめてギターだけでも食い下がると、しぶしぶギターだけは店内で預かってくれると言ってくれた。


良かった…………

ギターがびしょ濡れになることだけはなんとしても避けたかった。



お腹がペコペコだったので、ついでに賞味期限切れの弁当をくれませんか?とお願いしたが、断られた。








リュックを背負い、また街の中をさまよい、風が入ってこなさそうな建物の陰に隠れた。


すごく心細くて怖かった。





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