おとついから、新しい古民家改修に手をつけ始めました!!!
見れば見るほど、小さなするべきことがたくさん見つかって恐ろしいけど、
ひとまずはリビングスペースの抜きから!
1年半前は、バールって何ですか?てレベルだった私も、
ひなた屋で壁塗りやら床はがしやらいろいろしてきたからなんとなく手際がよくなってる
気がする!
こういう時にほんとに実感する、フミくんのしっかりさ。
鳶職を経験してるっているのも大きいと思うけど、この柱は取っても構造的に問題ないとか
いろいろの判断力がやっぱりすごい!
ほんとに頼りになります。うちの旦那さん。
おわり
フッキー来ました。
来すぎ!!!!
いやぁ、いつも遊びに来てくれてマジ嬉しいよフッキー。
ありがとうね。
よし、じゃあもうこの勢いで移住しちゃおうか!!!
「えええ~~、そりゃあもうカッコいい殿方との出会いがありましたらいくらでも移住しちゃううう~~。やだ~~。」
よおおおおおおおおし!!!!
フッキーを移住させるために俺のすべての力を振り絞って独身男性をあてがうぞおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!スタービーチイイイイイイイイイイイイ!!!!!
きゃあああああああああああああああああああはああああ!!!!!!
ていうか友達だいたい既婚!!!!
「よしフッキー!!!もうこうなったら性別が男でついてるもんがついてたらオッケー牧場ということでよろしいでしょうか!?!?」
「ちょっとアカンよお~~!!私もちゃんと選びたいからあ~~!!」
そんなフッキーが美々津に来たのは、そう、お祭りのためですね。
僕が神輿担ぐのとカンちゃんが踊るのを見てみたい!!ってことで忙しい中わざわざ大阪から来てくれました。
友達来たらいつもの場所でコーヒー。
アプリで遊んでみる。
これもアプリ。
あれ?顎は?
ふううううう……………
つ、ついに祭りの日が来た…………
人生初の神輿…………
町の人たちはみんな口を揃えて言います。
「神輿は大変ぞー!!体ボロボロになってしばらく腕が上がらんなるわ!!」
「無理したらいかんよ!!神輿は本当に大変だから!!怪我しないようにね!!」
「肩の皮がズルむけて泣きそうになるからな!!はっはっはー!!大将にかつげるかな!!」
みんなめっちゃビビらせてきます。
いやぁ、舐めてもらったら困りますなぁ。
僕これでも昔鳶職をやってましたからね。
死ぬほど重い鉄の塊を1日中担ぎまくって身体中ズタボロになって体力限界になって崩れ落ちそうになってからさらに何tも運ばされてあちこち血を流してゲロ吐くっていう奴隷のような仕事というか奴隷で鍛えられました。
「オオオオラアアアア!!!このボケどもが!!!なんも考えんでただ運べや!!!!お前らは奴隷よ!!奴隷のようにただ運べ!!!殺すぞ!!!死ね!!!」
っていう先輩という名の暴力大好きなたちにクソしごかれてました。
そんな中でまぁまぁ頑張って仕事してたんですよ。
まぁまぁ重いの持てて、まぁまぁ持久力もあるほうだったので、よく現場の職長さんから指名もらってました。
金丸よこしてな、みたいな感じで。
なので肩の痛みは慣れっこです。
あの奴隷に比べたらなんてことないはず!!!
金丸君、神輿担いでも平気そうにしてるねぇ、ってみんなに言わせるぞ!!!!
よおおおおおおおし!!!!やるぞおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
な、なんかおかしくない……?
「ぶひゃああああああっはっはっは!!!」
「ヒイイイイイイイイイイイイイヒッヒッヒッヒーーーーー!!!!」
「ちょ、爆笑しすぎじゃない…………」
カンちゃんとフッキーに爆笑されながら白法被を着込む。
こ、こんな感じだっけ?
戦闘態勢が整ったようで1ミリも整ってない見た目で集合場所へ。
薄い法被の下は裸。
11月なのでまぁまぁ寒い。
ふううう…………
よく町の中でお祭りの法被着て歩いてる人見てきたけど、自分がいざそうなってみるとなんだかちょっと誇らしい。
裸をさらけ出して町を堂々と歩いてると、なんか大胆な気分になってきます。
「お疲れ様ですー!!今日初めてですがよろしくお願いします!!!」
「おー、よろしくなー。」
「サラシの巻きかた教えてください!!」
「おー、じゃあここに立って。この端っこ持っといてな。いくぞー。よいしょ。」
「ぐえええ!!キツい!!!そ、そんなに締めるんですか!?!?」
「おーう、こんなもんぞー。よし、焼酎吹くぞー。ブフォォオ!!!」
「ひいいいいい!!!!つ、冷たい!!な、何するんですか!!!」
「こうやってサラシに焼酎を吹くとさらに締まるからな。清めみたいなもんよ。はい。出来上がり。」
ぐぐ…………ふ、ふううううう…………
キツ…………息がいつもの半分くらいしかできない…………
キツくサラシをするのは腰を固定して神輿の重さで腰と背骨を痛めないようにするため。
なのでしっかり締めとかないと…………
集合場所ではすでにみんな酒を飲んでる。
ワイワイガヤガヤと楽しそうに準備をしながら酒を飲む地元の男衆。
中心になってるのは50代のおじさんたち。
みんな地元で、この祭りを代々引っ張ってきてる人たち。
みんなひなた屋に来てくれたことのある人たちなので話したこともあるしお互い知ってるんだけど、なんかみんな慣れた感じで準備してるので初参加の俺は端っこで居場所がない感じ。
んんん…………微妙に溶け込めない…………
まぁ新参者はおとなしくしてないとな…………
そして時間は18時前。
陽が短くなった町はすでに暗く、その中をゾロゾロと歩いて立磐神社へ。
神主さんによる祈祷が夜の帳の中に響く。
ボンヤリとした明かり。
不思議な空間。
「よっしゃいくかー。」
祈祷が終わり、社殿の中に入る担ぎ手たち。
そこに鎮座してある神輿。
おおお…………こ、これか…………
神輿は小さな神社の形をしており、中心部分には白い布が巻かれている。
この中に今まさに立磐の神様が移動され、神輿に乗り込んでいる。
それを男たちが担ぎ、町の中を神様をお連れして歩くってわけだ。
いつもは人々が神社にお祈りにいく。
でも1年に1回だけ、神様が人々に会いに来てくれる日がある。
お運びするのが俺たちの役目。
そりゃ絶対落とせない。
神様の乗った籠みたいなもんだ。
絶対に落としたらいけない。
「いくぞおおおおー!!!やるぞおおおおおー!!!気合い入れろよおおおおお!!!」
「今年も頼んだぞおおおおおお!!!」
「おおっしゃああああああ!!!!せええええの!!!!」
男たちの手によって神輿が持ち上げられる。
そこまで重くはない。
人数がいるので分散できており、1人1人の負担はそこまでではない。
神輿をぶつけないように慎重に外に出し、屋根の頂点に金の鳳凰が装着される。
そして鳥居を出たところから巡行がスタート。
「よおおおおおし!!!肩入れろおおおおお!!!」
「アラチェエエエエイサアアアア!!!」
「アラチェエエエエイサアアアア!!!!」
全国各地、それぞれのお祭りにそれぞれの掛け声があるけど、美々津の神輿はこのアラチェイサーというもの。
由来はわからない。
きっと掛け声ってそんなもの。
肩にズシリと重みがかかった。
少しずつ進む神輿。
進むたびに歩く縦揺れで木が肩に食い込む。
大丈夫大丈夫、こんくらいなら大丈夫、のはず。
「よおおおおし!!サイタぞおおおおー!!!」
「サイタいくぞおおおおおおおお!!!!せええええの!!!!」
「サイタ!!サイタ!!サイタアアアアアアアア!!!!!」
「うおおおおおおおお!!!!」
中腰になって神輿を引き下げ、地面ギリギリまで下げ、一気に上に上げる。
3回上下に揺さぶり、最後の1回で頭上高くまで神輿を掲げる。
これがサイタ。
神輿に対して焼酎や現金のお花代を渡すと、これを家の前でやってくれる。
サイタは縁起物。
なので町の多くの民家やお店がこのサイタをやってもらうために神輿を呼び止めてお花を渡す。
子供のころから見てた勇壮な動き。
でもやってる側からするとこのサイタ、地味にダメージ。
この重い神輿を一気に激しく上下させるわけだから太もも、腕、指、全部がきしむ。
あまりの激しさに、こ、これマジか?!ってめっちゃビビった。
これを2日に渡って100回以上やるんだよな?!
さっきまで大丈夫と思ってたけど、これはさすがにヤバいかもって思い始めた。
「アラチェエエエエイサアアアア!!!!」
「アラチェエエエエイサアアアア!!!!」
神輿はゆっくりゆっくりと進んでいく。
明かりのない、暗い町をゆっくりゆっくりと。
ギャラリーのいない静かな町に、掛け声を響かせながら。
みんな酔っ払ってる。
足元がおぼつかない人もいる。
ぐるぐる回って、神輿もぐるぐる回って、振り払われそうになるけど、必死でしがみつく。
肩が痛くなってきた。
太ももがプルプルする。
サイタのたびに腕が震える。
だんだん余裕がなくなってくる。
必死で肩に重みをかける。
どの態勢が1番楽なのかを探りながら掛け声を出す。
サラシがキツくて声が出しにくい。
前後に人がつまっているので、お互いの足が引っかかってコケそうになる。
またサイタ。
またサイタ。
腕がキツい。
正直、担いでるフリをして力を抜いてもバレはしない。
痛くて肩を少し浮かす。
俺が力を抜いたくらいでは神輿は下がらない。
でもその分、俺が負担していた20キロが全員に振り分けられる。
俺が10キロ負担したら、みんなが0.5キロずつ軽くなる。
みんなそれを分かってる。
ズルしてる人もいるかもしれない。
でも、我こそはと力を込める。
1人の力じゃ神輿は担げない。
でもみんなが10キロ担げば神輿は上がる。
不思議な連帯感と謙虚さ。
自己犠牲、愛郷、
肩が痛くて、そんなとりとめのないことくらいしか頭に浮かばない。
その時、沿道の民家の前に1人のお婆ちゃんがいるのが見えた。
お婆ちゃんは手を合わせて俺たちに向かって一心に祈っていた。
まぶたに焼きつく。
人間ってなんだ。
俺たちは今、紛れもなく神様を担いでいる。
誰かが決めた、世の中のなんとなくのルール。
そのルールに従いたくなくて色々型を破ってきた。
天邪鬼で、本質が知りたくて、なんでそんな誰かの決めたルールに従わないといけないの?って思ってた。
神様?営み?信心?
神輿?掛け声?サイタ?
なんだそれ?誰が決めた?
理由も知らずにがむしゃらになれるか?
こっぱずかしくないか?
人々は祈る。
俺たちが担いでるのは紛れもなく神様。
人が決めた、人が勝手に定めた、人が連綿と受け継いできた印象を心の中の支えにして、人は疑うことなく生きてる。
お婆ちゃんの祈りが胸に突き刺さる。
人は神様に寄り添って生きてる。
「よおおおおおおおし!!!!いくぞお前らアアアアアアアア!!!!」
「オッサッメジャ!!オッサッメジャ!!オッサッメジャ!!」
「オッサッメジャ!!オッサッメジャ!!」
2時間半、美々津の町の中を巡行し、みんなかなり消耗したところで神輿は長い長い石段の下にさしかかる。
美々津神輿、初日のハイライト、石段登り。
この石段の上にある神社に神輿を安置して初日は終了する。
ここがもうホント過激。
かなり急な石段なので助走をつけて一気に駆け上がるんだけど、こんな重量物を担いだ状態でしかも細い石段に突進するわけだからかなり危険。
石段や手すりに挟まるし、コケるし、相当危険な上に、ここではお決まりの「オサメンナ」がある。
神輿を押し返す勢力。
ただ石段を登るだけでも危険なのに、収めようという組と収めさせない組の攻防が繰り広げられるので、何度も何度も何度も何度もこの石段前で突撃を繰り返さないといけないという、まぁ神輿の見せ所ってわけです。
「オッサッメジャ!!オッサッメジャ!!」
「オッサッメジャ!!オッサッメジャ!!!」
「オサメンナアアアアア!!!!まだオサメンナアアアアア!!!」
必死で食い止めすぎ。
後ろの人たちは全身全霊で神輿を押し上げる。
でも上から押し返される。
石段を後ろ下がりするのってかなり危険ですよ。
おかげでこの石段の下にある角の家は毎年神輿が突っ込んで軒が壊れてました。
お約束なんですよね。
もーーーー、しんどい。
肩痛い!!!!!
走ると神輿がバウンドするんですよ。
それが肩をブン殴るから痛くてたまらん!!!
「オラアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!いけやあああああああああああああ!!!!!」
「まだオサメンナああああああああああああ!!!!」
痛みを全身に感じながら石段に突っ込み、押し上げる。
押し返す人たちに負けないように全力を振り絞って。
でもまた負けて後退する。
汗だくになりながら隣のおじちゃんが言ってた言葉を思い出す。
「神様は1年に1度しか外に出ることができんとよ。その神様をいっぱい楽しませてやらんといかん。だから簡単に収めたらいかんとよ。」
その後、ようやく石段を登り、神輿は愛宕神社に入った。
社殿で神楽が舞われ、華やかな空気が満ちる。
これもまた神様を楽しませているんだよな。
男衆たちはヘトヘトに疲れながらも、もちろんそこから酒盛りですよね。
この2日間、みんな酒が切れることがないくらい飲みっぱなしです。
それをみんなお神酒と言います。
身体中、神輿中に酒をぶっかけてる。
酒を飲むことは酔っ払いの行為ではなく、この2日間に限っては神聖な行為なのかも。
みんな興奮冷めやらない感じで笑ってる。
大声で叫びながら、冗談を言って、ガッハッハ!!!と笑ってる。
俺はそれを端っこのほうで見る。
同級生のやつらやカンちゃん、フッキーとは一緒にはいるけど、俺たちはあの中心にはいない。
お調子者の若い子がズボンを脱いだりしてみんな爆笑してるけど、それを俺は離れたところから眺めてる。
「お疲れさん、どうや、疲れたやろ?」
そんな俺たちのところに、お祭りの中心人物であるおじちゃんが来てお酒を注いでくれた。
俺たちが今飲んでるこの場所はこのおじちゃんの仕事場なんだけど、毎年祭りに命をかけてるおじちゃんはわざわざ自分で飲みの席を作り、みんなをもてなしている。
「このオードブルもオデンも酒も、全部ウチが出してるとよ。神社の金は1円も使っちょらん。みんながこうやって飲める場がないと寂しいやろ。」
こんな何十人も集まって飲み食いするわけだから、これだけの準備をするのって相当大変だ。
お金だって相当かかってるはず。
奥さんももちろんしっかりサポートしてる。
相当理解のある奥さんじゃないと、こんなにも町のために献身的にはなれない。
「1年に1回のことやからな。1年間、この町で商売をさせてもらったんだから、町に対して恩返しをする。そういうことやとよ。」
商売をさせてもらったんだから。
その考えかただよなぁ。
すげぇなぁ。
本当、町に対する考え方が俺はまだまだ。
地元に生きる人たちの想いって、もっと町に寄り添ってる。
「まぁ神輿担いでるやつらはみんなロクデナシだけどな!!!ガッハッハーーー!!!」
「なんてやーー!!1番ロクデナシは誰やーー!!!」
「まったく息子の顔が見てみたいわーーー!!って俺やしーーーー!!!」
「ガッハッハーー!!」
「ガッハッハハッハッハーーー!!!」
この夜は日付が変わるまで飲んで、それから家に帰って寝た。
翌朝。
5時に起きて愛宕神社へ。
まだ真っ暗な町。
あんまり寝てない…………
でも気が張ってるからか眠くはない…………
それよりも体がバキバキ…………
全身くまなく痛い…………
そんな体で愛宕神社に行くと、数人が集まっていた。
「はいよ。」
当然のごとく焼酎が注がれる。
くいっと口に含む。
喉が焼ける。
もっとたくさん集まってると思ってたけど、5人だけだった。
そんなに来ないんだな。
こんなに朝早くからここに来たのは「絡め」をするため。
神輿の周りに巻いてある白い布を締め直す作業。
ちゃんと色んな工程を見て、覚えていかないと後進に伝えていけない。
なのでなるべくすべての工程に参加しないと。
神輿に白い布が巻かれる。
神輿を締めこんでいる綱を隠すように巻いていく。
「ここを通してな、ここで1回締めるとよ。そんで次にここを回してから、」
丁寧に教えてくれるおじさんたち。
静寂の社殿から、朝焼けの日向灘が見える。
とても綺麗で、厳かだった。
2日目。
2日目は日中のお神輿になるので衣装が変わる。
お祭り夫婦。演歌的な。
そして神輿が始まる。
この2日目がメインのお祭りの日。
神輿だけじゃなく、各地区の舞踊隊や子供神輿、太鼓台や仮装行列など、町民全員参加くらいの勢いで町に人が溢れる。
カンちゃんも今日は舞踊隊で踊りなので離れ離れ。
フッキーが写真を撮ってくれるけど、フッキーも昼過ぎには大阪に帰る。
フッキーありがとうね。
あ、休憩の時に踊りも少しだけ見られた。
神田を探せ。
ちょ!!大輔!!!
いとこの大輔は隣の地区がやってる仮装行列に参加。
まさかのアラジン。
神輿は昨日ほどの勢いはない。
みんなヘトヘト。二日酔いもいるかも。ていうかみんな朝から飲んでる。
俺も肩が死ぬほど痛い。
肩にアリが乗っただけでも痛い。
足もガクガクする。
腕と指の筋肉が終わってる。
でも今日は朝から夕方までひたすら担ぐ。
昨日みたいに2時間半じゃない。
今日は6~7時間。
なかなか気が遠くなる。
ひたすら担ぐ。
全身の痛みに耐えながら。
今年は10年ぶりくらいに担ぎ手が多いらしく、今年の神輿は元気だわーって町の人たちが言ってる。
それを聞くとかなり誇らしい。
元気のない神輿って寂しすぎる。
神輿の周りには交代要員がついているので、きつくなったらバトンタッチができる。
すみません!!お願いします!!って抜けて途中休憩をすることができる。
担ぎ手が少なかったらそれができないのでかなりしんどいはず。
でも逆にもっと昔は、担ぎ手がたくさんいすぎて一度神輿から離れてしまうと、もう中に戻れなくなってしまっていたんだそう。
だからみんな何が何でも神輿から離れず、場所の奪い合いだったみたい。
俺も何が何でも神輿から離れんぞって思ってた。
肩が痛くて痛くて、骨折してるところブン殴られてるようなそんな感じだけど、絶対にねをあげない。
もうー限界……!!ってなっても、根性を振り絞る。
道路の真ん中でもサイタをする。
昔はもっともっと暴れん坊ばっかりだったので車を止めて道路を占拠してやりたい放題やってたそう。
今では赤信号の時だけ道路に出て、青になったらそそくさと道路から出る。
神輿なのに信号優先かよって思ってしまうけど、色々警察に言われてるんだろうな。
中学校でのサイタもやった。
まさか野球グラウンドのピッチャーマウンドの上でサイタするなんて。
このグラウンドで遊んでたよなぁ。
あ、あれ?
なんか変なのが混じっていたような…………
神輿を担ぐアラジン。
そして2日目のハイライト。
祭りの1番の見どころ、川渡り。
神輿を担いだまま川を渡るって、全国的にもなかなか珍しいんじゃないかな。
11月の冷たい川に入る。
このところ雨が降ってなかったので例年に比べて水量はそこまででもないとのこと。
でも逆に長いこと雨が降ってないと川底の石にぬめりがついて滑りやすくなってしまうんだそうだ。
長年の経験が物語る知識。
たしかにめっちゃ滑る。
ていうかこんな重いもの担いだ状態で、石ゴロゴロの川に入って水で身動きが取れなくて、そりゃあもうみんなコケまくり。
誰かがコケるたびに荷重がズシリと増す。
水を吸った神輿がさらに重みを増す。
その川の真ん中でサイタ。
うおおおおおお!!!って叫びながらバシャンバシャンと水を跳ね、神輿を頭上に掲げると、ザーーーッと流れ落ちる水が太陽に輝いて、その向こうに男衆たちの笑顔が見えた。
暑苦しい男の世界。
これがきっと絆になる。
川渡りで死ぬほど消耗して、全員ぼろぼろになりながら神輿は港に向かって戻っていく。
サイタも最初のころの勢いはない。
そしてようやく最後のチェックポイントである浜に到着。
かつて神武天皇がお船出をした浜に、神輿が鎮座する。
晴れ渡る空の下、神様に奉納する神楽が舞われる。
これがめっちゃすごかった。
抜けるような青空、神輿、神楽、
静寂、風の音、
マジで今まで見たお祭りの中で3本指に入る神々しさだった。
今まで日本全国のお祭りをたくさん見てきたけど、こんな身近に、こんなすごい祭りがあったなんて。
フッキーはすでに帰っていたのでケータイがなく、写真は撮れなかったけど、この浜での神楽の光景は深く目に焼きついた。
美々津すげぇなぁ。
最後の神楽が終わると、ここからはもう本当にあと少し。
収める立磐神社は目と鼻の先だ。
みんなやり切った感があって、清々しい表情をしている。
「おおおし!!!寄せろ寄せろおおおおお!!!」
な、なにが起きるんだ?と思ったら神輿がいきなり港の岸壁から落ちそうになった。
うわっ!!危ない!!!落ちる!!!
と思ったら神輿はギリギリでストップ。
そして、端っこを担いでいた若手のやつらが川の中に叩き落とされた。
観客から歓声が上がる。
「うおおおおーー!!!」
「いやっほおおおおおううう!!!」
何度も何度も叩き落される。
今度は向きを変えて後ろから岸壁に近づき、おじさんたちも突き落とされる。
「おおおおおいい!!やめろーーー!!!」
「バカ!!なんで俺やとか!!やめろって!!!」
若手がおじさんたちを道連れに川にダイブ。
みんな大笑いで、観客も大笑い。
それを見ている俺。
俺を突き飛ばしてくれる人はいない。
俺はまだ新入り。そこまでみんなと仲良くないので、みんなも俺に遠慮しているんだと思う。
俺は乾いた服のまま、うわぁ、青春な感じのやつだなぁって見てる。
そこに混じって、おちゃらけてダイブできない俺がいる。
ずっと昔から知ってる、いつもの俺だ。
ようやく突き落としあいが終わったら、ついに締めの収めになる。
「オッサッメジャ!!オッサッメジャ!!」
「オッサッメジャ!!オッサッメジャ!!」
通常の掛け声からオサメの掛け声に変わると、まるでファイナルファンタジーのボス戦みたいな感じだ。
緊張感が高まる。
そして立磐神社の境内に突進していく神輿。
これが最後。本当に最後。
もうこれで終われる…………
しかし…………
ここでももちろんありますよね…………
収めさせない組との攻防。
神輿の前を担いでいる若手組が力の限りに踏ん張って神輿を境内に入れさせないようにするんです。
後ろを担いでるおじさんたちは、もういい加減早く収めて休みたいのに、若手組がそれを必死で阻止する。
「オサメジャ!!オサメジャ!!」
「うおおおおおおおおおお!!!!」
何回も何回も何回も何回も。
入ろうとしてはギリギリで押し返される。
もー、いい加減よくない!?
もう10回くらいやってるよ!?
全員マジでエネルギー底ついてる。
肩も崩壊してる。
もうーーーいい加減収めよう!!って空気になってオサメジャとともにダッシュで境内に突進。
が!!!また食い止める若手組。
ぐおおおおおおおおお!!!!!
オラああああアアアア!!!!!
また収められなかった。
押し返す若手。
するとおじさんたちが、お前らやるじゃねぇかあああ!!!って叫ぶ。
それはもうなんとも清々しい笑顔で。
それを見ながら、俺はどちらともない。
怒号と肩の痛みに包まれながら、俺はどうしてるんだろうと考える。
俺はいつも群れるのが嫌いで、天邪鬼で、人がワイワイなんかやってるのを外からクールぶって眺めてきたようなやつだ。
斜に構えた、変わり者気取って。
でもそんな俺も、美々津に帰ってきてからはみんなと上手くやれていて、だいぶ町に馴染んでると思っていた。
そりゃあ地元なんだし、みんな知り合いだし、馴染めて当然だよって感じで。
でも全然だった。
俺全然馴染めてない。
それってなんでだろうって考えていると、気付きたくないのに、気づいてしまう。
俺って、俺は他のみんなとは違うって心のどっかで思ってないか?
日本を旅して、世界を旅して、いろんな経験をして、いろんな人に会って、
それが田舎に帰ってきて、素朴な人たちの中で俺はなんか優れた人間みたいな気になってないか?
最先端のことをやってる友人がいて、アーティストの友達がいて、いろんな社長さんたちに応援してもらってて、
俺は心のどこかで田舎をバカにしてんじゃねぇのか?
体が熱くなる。
ちょっと待て。
建前じゃなく、自分の心に本当に正直になったら、きっと、きっと俺は心のどこかで人と一線を引いている。
調子に乗ってる。
昨夜の飲み会で俺は輪の中に入っていかなかった。
さっきの突き落としあいでも、頼むから俺はやめてくれよって冷たいオーラを出してたはず。
全然心開いてないやん。
何が町おこしだよ、何が地元の絆だよ。
町のことばっか見て、人を見てないやん。
町を作ってるのは人なのに。
色んな地方自治体の町おこし事業とか見てていつも思ってた違和感ってそこやん。
人と距離あるもん。
移住者はローカルと壁があるって言うけど、俺もまったく一緒やん。
アラチェイサー!!って大声出して叫ぶのが恥ずかしい?
なんかそんな一生懸命になるのって恥ずかしい?
今はさすがにそこまでは思わんけど、昔なら思ってたはず。
なんか冷めた感じでいるのをカッコいいと思って。
みんなが屈託無く笑っている様子を見ながら一線を引いてしまっている自分が情けなくて、でも今まさに肩に感じている痛みは紛れもなくみんなと共有しているもので、ホント、俺もっと心開かなきゃ。
ホントに、マジで。
なに調子に乗ってんだよ、何者でもないのに。
調子に乗ってる自分を、神輿の重さが叩き壊そうとしてる。
お前は何者でもなく、1人の美々津の人間。
それなりに長いこと生きてきて、体にへばりついた経験とか知識とかってへともしれん殻に、神輿が肩に食い込むごとにヒビが入る。
パキパキと亀裂が入る。
でもここから最後に殻を取っ払うのは自分にしかできんよな。
神輿マジすげぇ。
俺は神様を担いでる。
人間と神様ってこんな関係なんだって、今まで見て学んで頭で理解していたつもりだったことの100倍を一撃で理解できた。
神様に対する想いが変わる、それはそのまま人間の捉え方が変わること。
人間すげぇよ。
シンプルになればなるほどに、深くなっていくよ。
神輿がついに鳥居をくぐった。
収まった。
来年も、再来年も、これからずっと神輿を担ぐ。
それこそ町を守るってことに他ならないんだ。
死ぬほど疲れたけどシャワー浴びて服着替えてそのまま店オープン。
疲れた…………けど店はやらなきゃ。
身体中痛すぎてお爺ちゃんみたいな動きだけど。
まぁ、旅してた時はもっともっと絶望的にズタボロになることいっぱいあったし。
アレに比べたらそこまででも…………
ホラ、また旅のこと考えて。
まぁ、でもそれも含めて俺の個性かな。
全部、ひっくるめて生きていく。
もっともっと、心も体も町になった時、人間の営みってもんが見えてくるはず。
神輿すげぇ。
祭りすげぇ。
町って、マジで存在してるだけでめっちゃなんかレアな盆栽みたいに貴重だよ。
あー、疲れた。
最後に一言。
抽選券、紙ばっか。