こんにちは!神田です。
今の時期、アジアと旅していると大学生の旅人を見かけることが多くなります。
ビエンチャンからルアンパバーン行きの夜行バスの中にも、6〜7人くらいの大学生が乗っていました。
前にひとりでタイに来た時、なんだか少し寂しくなって日本人がたくさんいる宿に泊まったことがありました。
その時私はすでに31歳で、あまりにその宿に10歳以上離れた子たちが多くて、もともと人見知りな私は更に萎縮して、ひとりでビールを飲んでいたのを覚えています。
そんな私を見かねてか、数人の子が話しかけてくれたりして、ああみんな優しいなーとか思ったなぁ。
10歳以上年上の私の方が気を使われてる!!!しっかりしないと!!!とも思ったなぁ。
いい思い出です。
おわり
2018年2月1日(木曜日)
【タイ】 バンコク
目を覚ますと天井でファンが回っていました。
固いベッドの上、レースのカーテンのような薄っぺらい布を体にかけて眠っていました。
熱気のこもった部屋の中、ファンが回る音が聞こえます。
部屋の外からは聞いたことのない動物の鳴き声が聞こえてきます。
背中に汗がにじんで、寝返りを打ちながら時計を見ると、時間は9時でした。
昨日、両家の親が日本に帰国し、久しぶりの2人きりになり、安宿に移動してきました。
町の中心部から外れたローカルの住宅地の奥にあるこの隠れ家のような宿は、静けさを求める欧米人のおじさんが何人か泊まっています。
カオサンに疲れて、ゆっくりと過ごしたい若い欧米人カップルもいます。
アジア人は僕たち以外にはおらず、欧米人さんたちは僕たちを見ると、ニーハオとか、サワディーカーとか、色んな国の言葉で挨拶してくれます。
欧米人さんにはアジア人の顔の見分けは難しいです。
裏庭から、女の人が歌うタイ語の歌が聞こえてきます。
マイナー調の美しい声が木造民家の路地に流れ、ふとここは映画の中か?という錯覚が頭をかすめます。
窓の外の古民家、暑い気温、
目に入るものがいつかの夏の光景と重なります。
でも本当はここがタイの片隅なのかと思うと、似通っていればいるほどに異国感を感じられるような気がします。
この裏通りには、一体なにがあるだろう?
親と過ごしている間、ブログも日記もほとんど手をつけられなかったので、絶望的なまでにやるべきことが溜まっており、カンちゃんと2人で集中して作業をしていきます。
ブログもついに予約投稿のストックが切れたし、日記も親との会話のひとつひとつを忘れかけています。
その時その時の大事な感情を落とし込めなかったら日記を書く意味がありません。
これ以上遅れないよう、ちゃんと追いつかせなればいけません。
でも1番優先なのはこの1週間の写真整理です。
僕のカメラフォルダ、カンちゃんのカメラフォルダこのタイ旅行の数千枚の写真をまとめ、アルバムにし、親に送ってあげないといけません。
金丸トラベルエージェンシーはアフターサービスにも手抜きはしません。
お腹が空いて、お昼ご飯を食べに外に出ました。
住宅地の中を歩いて行くと、路地に並ぶ屋台があります。
地元の人たちがぼーっと座っており、洗濯物が風に揺れ、犬があくびをします。
道端のお社、軒先の国旗、焼けたアスファルト
働く人、普通の人、普通の昼。
民家の中からテレビの音が聞こえてくる。
のど自慢か?いや、そんなことはないです。
でもこのシチュエーションだと、のど自慢でもなんの違和感もないと思いました。
トムヤムクン味のドライ麺を食べ、宿に戻りました。
ひたすらに文章を書き続けていると、時間の経つのはものすごく早くて、あっという間に窓の外が夕焼けに染まり始めました。
今ごろ街のほうでは帰宅ラッシュの人で溢れかえり、屋台が慌ただしく料理を作り、沸き返っていることでしょう。
しかし僕はそれと無関係の場所で、静かに文章を書く。
世の中は絶えず動いているのに、それと無関係の場所にいる。
取り残されるのは悲しいことだけど、自分から離れると心地の良いものです。
部屋の外、階段を降りたところにある椅子に座り、タバコを吸いました。
飼い猫が横の椅子で丸くなって寝ています。
僕の心は、ここにあるのか。
晩ご飯を食べに、また表通りの屋台へ行きました。
屋台の並びの中に少しお洒落なお店を見つけたので入ってみると、何やら日本食に似せたものを作ってる様子のお店でした。
僕はトンカツ、カンちゃんがグリーンカレーのオムライスを注文しました。
これはこれでなかなか美味しかったけど、量が物足りなかったです。
19時の屋台通りは活気に溢れていました。
東南アジア特有のねっとりとした生活感を泳ぎ、様々な物が売られている屋台を眺めていきます。
こうこうと光る照明が人々の顔に影を浮かばせる。
ゆあーん、ゆよーん、ゆやゆよーん、という擬音は的確です。
すると、そんな活気の向こうから、ハーモニカの音が聞こえてきました。
哀愁のある、輪郭のくっきりしたその音色につられて歩いていくと、屋台の隙間で1人のタイ人男性がハーモニカを吹いていました。
そのシチュエーションがあまりにも周りの風景とマッチしていて、足を止めて財布を取り出します。
男性の前には20バーツ札が数枚入ったカゴが置かれていたからです。
しかし、僕がお金を取り出した時、男性は急に演奏を止めました。
あれ?ちょうど休憩に入ったのかな?と思いました。
しかし彼は僕と同じく、路上で稼ぐストリートミュージシャンですので、すぐに演奏を再開するだろうと思いました。
目の前に財布を取り出したお客さんがいる。ストリートミュージシャンならばここが1番気合いの入る瞬間です。
ですが男性は一歩後ろに下がり、ハーモニカを手に握って遠くを眺めたりしてるまま。
再開する気配がありません。
僕らは彼の演奏を待ちました。
オケを使わない、ハーモニカひとつの哀愁漂う音色にすでに少なからず心を動かされていました。
行き交う人々。
男性の前に立つ僕ら。
そっぽを向くストリートミュージシャン。
すると、いきなりそのストリートミュージシャンが、ビイイイイ!!と激しくハーモニカを鳴らしました。
まるで、僕らのことを威嚇するかのような音でした。
早くどこかに行けと、音が言っていました。
僕らは歩き始めました。
すると、10メートルくらい行ったところで、背後からハーモニカの音が聞こえ始めました。
完全に僕らがいなくなったのを確認した上で、演奏を再開していました。
どうしてだろう?
僕らはただ彼の演奏を聞きたかっただけ。
それに対してお金も払おうとしていました。
なのに彼はそれを拒絶しました。
ストリートミュージシャンとして、はじめてのこの経験に少し腹が立ちました。
何か過去に外国人観光客との間で嫌なことがあったのか…………
いつも写真を撮られるだけなので嫌気がさしていたのか…………
屋台通りに染み渡る、儚い、美しい音色。
タイの夜に頬をつままれ、2人歩きました。