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ネガティヴな気持ちになってしまう


こんにちは!神田です。



フミくんの読者さんから車中泊献立のヒントのメールを頂いて嬉しいかぎりです♪



最近作った料理が美味しくなさすぎてびびりました。


頂いたメールを参考にさせて頂いて新しいごはん作れたらと思います!



車中泊も残り数週間!最後まで満喫します♪




おわり








202017年10月4日(水曜日)

【オーストリア】 バーデン ~ ゼメリング








さすがに俺もカンちゃんも元気がない。


このままでいいのか?ってなってしまってる。


罪悪感というか、焦燥感というか、倦怠感というか。




昨日雨が降っていたことで何もできず、マックにこもって作業していたんだけど、1日マックでネットしてるとさすがに気が滅入る。


作業したり調べ物をしたり、一応建設的な時間ではあるけど、ネットばっかりしてると、もっと他に有意義な時間の使い方があるんじゃないか?って思えてしまう。




「このままじゃダメだねー………なんかしたいね…………」



「気分転換にどっか行きたいね…………チュニジアとか…………」




毎日毎日歌って、空いてる時間でネット作業。


日本に帰った時のために目標を高く決め、それに向かってガムシャラに頑張る。

上手くいかなかったら凹むくらいに、キッチリ毎日自分にノルマを課す。


これは旅中であろうと定住して仕事をしてる時だろうと、何かを頑張るためにはものすごく大事なことだと思う。




今回のオーストリアでは貯蓄に専念すると決めていた。

こんな短期間を頑張れんようでは日本に帰ってからもきっと上手くいかない。



昔どっかで聞いたことがある。


人生のうちには、1日3時間しか眠れない日が3年続く期間がある。

その勝負の期間を乗り越えられる人だけが、何かを成し遂げられる。


というようなこと。

大袈裟ではなく、きっとそうなんだろうなって思える。



でも、結構精神的に疲れてきてるな…………
















今日もギターを担いでバーデンの町にやってきた。




するといつも歌ってる定位置に女性ジプシーの新聞売りが陣取っていた。


いつもの黒人さんの新聞売りは14時になったら帰るので、その時間をめがけて来たのに、ジプシーの新聞売りか…………



一応何時までここでやってるのか話しかけてみた。

が、英語皆無。


英語皆無だけど、ここでずっとやるわよーと言っているのは分かる。



スムーズに会話するために最初にお金を渡してから交渉に入ったんだけど、こうすると向こうの敵対心も薄れるのでやりやすい。

笑顔で話してくれる。




しかしどうやら俺がここで歌うのはダメよー、とのこと。


うん、わかる。2組が近くでやっててもいい効果は生まない。


路上の場所取りは早い者勝ち。

俺はいつもここでやってるんだー!!なんて言えない。






なのでジプシーの女の人からこの場所を買うことにした。


5ユーロで場所譲ってくれない?と交渉してみた。


いきなり目が輝くジプシーさん。5ユーロもくれるの!?と笑顔で詰め寄ってきた。


ジプシーさんが1日にいくら稼ぐかはわからないけど、おそらくそんなには稼げてない。

お金をもらってるところなんてめっちゃたまにしか見たことない。


そこに5ユーロはなかなかの金額だと思う。



が、そこは百戦錬磨のジプシーさん。



5ユーロねー、ふーん、5ユーロだったらアレね、私はここにいるわ、でもあなたが横で歌うのは認めてあげるわ!!って言ってる。


おお、それ意味ねぇし……………



でも10ユーロくれるなら私はすぐにここから離れて他の場所でやるわー、と言う。


ニコニコしながら明るく話してくれるし、うーん、交渉上手だなぁ。



今ここでごちゃごちゃやってる間にも通行人はたくさん通り過ぎていく。


このスパー前のポジションならば10ユーロはすぐに取り返せる数字。


うん、時間もったいない。




「よし!8ユーロでどう!?」



「えー、10ユーロよー、10ユーロー。」



「8ユーロでいってみよう!!はい!!」



「アハハ~、グッドビジネスね~。」



8ユーロを渡すと、仕方ないわねぇって感じで、でもめっちゃニコニコしながらジプシーさんは去っていった。








よーし、それじゃあ歌おうかなと思っていると、今度は向こうのほうから物乞いのお爺ちゃんがやってきた。


首から何か書いた看板をぶら下げていて、通行人に手を差し出しながらゆっくり歩いている。


このお爺ちゃんは最初にバーデンに来た時から毎日いるお爺ちゃん。

きっとこうやって毎日毎日町を歩きまわってお金をもらって生活しているんだろう。

だいぶ古株さんだ。




このお爺ちゃん、俺がバーデン3日目くらいからかな。

俺が歌ってる前を通る時に、苦々しい顔をしていた。

そしてギターケースの中のお金を覗き込んではドイツ語で何か言っていた。


まぁ良い言葉ではないことは想像つく。



それが何回か続いたので、お爺ちゃんも古株さんだし、新参者の俺としては友好の証にお爺ちゃんにコインを渡した。


さっきまで苦々しい顔をしてこっちを睨みつけていたのに急に笑顔になって、オ~、ダンケ~と言った。




そして今日。

またお爺ちゃんが前を通る時にコインを渡すと、ニコニコしてダンケ~と言った。


もう俺に敵対心を向けてくることはない。

少しのお金で町の人たちと友好的な関係になれるんだったらこれは必要経費。













それから快調に歌った。

相変わらずこのスパー前は音が響いてやりやすい。

向かいにあるキッチン用品店のスタッフさんも笑顔でコインを入れに来てくれる。




が、しばらくしてからいつもの男の子がやってきた。


この前も書いた、落ち着きのない変わった男の子。

ニヤニヤしながら目の前までやってきて、ギターケースの中のお金を覗き込み、俺の真横に立ってくる。

歌ってる最中だろうがお構いなしにずっと話しかけてくるし、演奏中なのに楽譜をめくってしまう。


小学校の時、学年に1人はこういう子いたよなぁ。


物事を理解するのが人より遅くて、みんなにからかわれてた変わった子。




大人になった今、そんな子をぞんざいに扱いたくはない。

なるべく優しく接してあげたい。


ヨーロッパの人たちはみんなとても優しくて、この男の子があちこちのお店に入って行ってひたすら店員さんに話しかけたりしてるのをちゃんと相手してあげている。


同じことを何回も何回も何回も何回も聞いてくるけど、それに優しく答えてあげている。


カンちゃんも、演奏してる俺の邪魔にならないように、この子が来た時は根気よく接していた。




が、そうしたことで、この人は相手をしてくれる人だって思ってようで、ひたすらずっと俺たちのところから離れなくなってしまった。


そして今日は男の子の態度がエスカレートしてしまい、歌に足を止めてくれた人に、10ユーロ~、10ユーロ入れなきゃダメ~、とか言ったりしだした。


ついには演奏に合わせて真横でハチャメチャに歌いだしたりして、いい加減イライラしてきた。


カンちゃんがずっと、シーって指を口に当てて静かにしないとダメだよって注意してるのにふざけて一向にやめない。





分かってる。こういう子にはできるだけ優しく接したい。発達障害ってやつかもしれん。


それなのにムキに怒るのか?


いや、だからって怒ったらいけないなんてことはないだろう。

したらいけないことはちゃんと教えてあげないといけない。




「ハニャハニャ~!!ハニャハニャ~!!」



「おい、静かにしろ。静かにするんだ。」



「い、いやだもん~、俺静かにしないもん~。」



「じゃあ向こうに行け。ほら。」



「行かないもんー………俺ここにいるもんー…………」



「じゃあ静かにしろ。分かったな?おい分かったのか?」



「いやだもん~!!ハニャハニャ~!!ハニャハニャ~!!」



「おいコラいい加減にしろよ。」




いくら俺が怒った顔で言ってもずっとニヤニヤして、遊んでもらってるかのよう。


あまりにもふざけてるから詰め寄って腕を掴んで向こうに行けと強めに言った。


い、いや~!!俺ここにいる~!!とニヤニヤしながら踏ん張ってどうしてもここから動こうとしない男の子。



ふぅ……………


頭叩きたい…………





腕を掴み、かなり強めに押すと、少し驚いたのか後ずさりした。


が、もうこうなると向こうもムキになる。

相手をおちょくって楽しんでる感じに突入してるので怒る意味がない。

本気で怒って頭ゲンコツして泣かさないと自分が怒られてることを理解しない。


大変だわ…………





男の子はそれからもカンちゃんにひたすら同じことを話しかけ続けていたんだけど、カンちゃんが機転を利かせてスタスタ歩いて行ったらニヤニヤしながらそれについていった。


おかげで演奏を再開することができたんだけど、カンちゃん、連れて行ってくれてありがとう。


後で聞いたら、カンちゃんがベンチでパソコン作業してる間、ずっと隣に座ってひたすらパソコンを覗き込んで来て、何度やめてって言っても聞かなくて大変だったみたい。




俺も子供のころは落ち着きのない調子乗りのバカガキだった。

大人をからかって、遊んでもらえると思ってエスカレートしておちょくって、そんで最終的にウルトラ痛いゲンコツを食らって泣いて反省する。



この男の子は毎日町をふらふらしてる変わった子。

理解して優しくしてあげないといけないのは分かるけど、誰かがゲンコツして教えなきゃダメだよなぁ。













ちょっと悪いことしたかなぁと歌いながら考える。


男の子は遊んでもらいたいだけなのに、あんなに強く怒ってしまった。

あそこは怒らなきゃいけないところだったけども、やっぱり純粋な子供に強く言うのは後味の悪いもんだ。

ネガティヴな気分になってしまう。



そうして歌ってると、やっぱりネガティヴなものはネガティヴを引き寄せるってことなのか、お巡りさんがやってきて演奏を止められてしまった。




「ライセンスを持ってるかい?この町では路上をやるのにライセンスが必要だよ。」




マジか……………

もうバーデンでは何日もやってるのに初めて言われてしまった…………




ライセンスは警察署で取れるもので、値段は無料。

演奏許可時間は10時~13時、15時~19時までの間。

30分ごとの場所移動。

あと6ヶ所くらいの演奏場所指定。




とりあえずライセンスさえ取れば毎日やってもいいみたいだけど、気持ち的にちょっとやりづらくなったな。

今日でバーデンを出る予定だったので、最後まで注意されずやりたかったな………………













「あー、今週もあんまり稼げてないなぁ。次はあの町行って、その次はあの町に行って、週末はあそこを狙って、ライセンス取って、毎週ノルマを達成して、歌って歌って歌って歌って…………結構疲れたな…………」



「ねぇ…………このままだといけないねー…………1回忘れようか、ノルマのこととか。」



「うーん、それで大丈夫かなぁ。」



「大丈夫だよ、なんとかなるよ。ノルマを課して今のこの旅を楽しめなくなったらもったいないもん。もうこうやって2人で世界をまわることなんて、この先多分ないやん。」



「そうだよねぇ、今の時間を楽しまないともったいないよなぁ。」



「そうそう、意外と肩の力抜いたほうが稼げたりするかもしれないしね。そうと決まればオーストリアにいる間にいくら稼がないといけない、っていう目標を下げましょう!!それでリラックスして旅しよう!!」



「うーん……………………そうだね。うわああああああ!!!!めっちゃ気が楽になったあああああああ!!!!肩の荷がおりたああああああああ!!!!のんびり観光とかするうううううう!!!」



車を走らせながら、すごく楽になった気がした。


頑張らないといけない。

これくらい頑張れないでどうする。


そういう気持ちはすごく大事だけど、正直、最近結構疲れてた。


疲れてると心に余裕がなくなって、景色も楽しめなくなってくるような感じがして、それがまた余計に心を塞いでしまう。


泣き言でしかないのは分かってるんだけど、このままじゃあ俺もカンちゃんも生気のない毎日を送ることになってしまいそうだ。





そうならないために目標額を下げることにした。


これまでは、今までの路上の平均額から割り出して、頑張ればなんとかこれくらいイケるんじゃないか!?という相当高めの目標を毎週かかげてやっていた。

毎日かなり頑張らないと達成できない金額。


それを少し下げよう。



これからもやることは変わらない。

路上にはこれまで通り出る。


でも目標額を下げたことで心に余裕が出る。

稼げなくてもガッカリせずに、その日の路上を楽しめる。




「そうだよ。今私たちヨーロッパにいて、これから先いつまたこうやって2人で自由にヨーロッパに来られるかわからないもん。今の貴重な時間をもうちょっと楽しもう!!」



「うんー、そうだねー。でも頑張ることは頑張るけどね!!」













日はすっかり沈んで、20時前には真っ暗になってしまった。


もうずいぶん日が短くなったなぁ。


ヘッドライトが山の中のアスファルトを照らしている。



クネクネした細い山の中、道路際の看板にゼメリングという文字が見えた。





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