スポンサーリンク 路上で稼ぐ4ヶ条 2017/8/6 2017/07/08~ ドイツ③, ■彼女と世界二周目■ 2017年7月19日(水曜日)【ドイツ】 ライプツィヒ目がさめるとサービスエリアの駐車場はガランとしている。夜はあんなに隙間がないくらいトラックまみれなのに、みんな朝早くから走るんだなぁ。俺たちも荷物を整理したらすぐに高速に合流した。それにしてもドイツの移動は楽でたまらん。なんせ高速道路が全部無料なんだもん。この国では道路に金を払うという概念は存在しない。そして高速道路の制限速度が上限なし。かっ飛ばし放題。制限速度があるところでも130キロ~120キロなので、とにかくひたすら距離がのびる。サービスエリアでは3ユーロ、380円でシャワーが浴びられるし、トイレ付きのパーキングエリアが無数にあるので寝床もバッチリ。本当は風景を眺めながら下道をのんびりと走るのが好きなんだけど、あのイタリア帰りだとどうしても無料で乗ることができるというお得感で高速を走ってしまう。おかげで町の移動がめっちゃ楽だ。風力発電の風車が森のように立ち並ぶ足元をすり抜けていき、ライプツィヒを目指した。途中、高速を降りた小さな田舎町で中華料理屋さんを見つけたのでそこで朝昼ご飯。これで4.5ユーロ、580円。めっちゃ安い。やっぱり田舎は物価が安い。嬉しそうなカンちゃん。そしてそこからもう少し走っていくと、やがて大きな町の中に入ってきた。ライプツィヒはかなりの都会みたい。トラムがバンバン走って行き交っており、建物もモダンなビルがすごく多い。この辺りの東部エリアはまだ来たことがなかったので、どんなところか楽しみにしながら車を止め、街へと向かった。うん、まぁ、ライプツィヒは普通のただの街かな。別に美しい旧市街があるわけでも、目を引く歴史的な建造物があるわけでもない。ただの現代的な街。きっと空襲で町が壊されたとかそういう歴史的な背景もあるんだろうけど、現代的なビルが多いと味気ないもの。でも都会のおかげで大きなアジア屋さんを見つけて、そろそろ買い足さないとヤバイなぁと思っていたガスボンベをゲット。ついでに焼きそばとかも大量に買い込んで、スイスに向けての準備も万端。ビールもたくさん買っていかないとなぁ。スイスは世界屈指の物価が高い国。ノルウェー並みになんでもウルトラ高いので、全部ドイツで買い込んでから入国しないといけない。前回のスイスでは差し入れでもらったおかゆのパックとか缶詰とかで気合いでしのいでたけど、今回もあの国で贅沢する気なんて毛頭ない。このソースのシリーズ美味しいです。うどんは一玉こんなもんです。2.9ユーロとか尋常じゃないです。そこらへんでディジュリドゥの人とかアコーディオンの人が路上をやっていて、その向こうにはバグパイプを演奏してる人もいる。とりあえず路上禁止ではなさそうだけど、あんまりそそられる町ではないなぁ。まぁとりあえず来たからには少しだけでもやってみるかと、ガレリア前のベンチの向かいで歌うことに。うん、反応はぼちぼち。とてもぼちぼち。都会の人は路上パフォーマーに慣れまくっているので、生音1人のアコギ弾き語りなんて風景の一部だ。すると30分くらいしたところで、町の警備の人がやってきた。「ハーイ、申し訳ないけど、この町では13時から15時の間は路上演奏は禁止なんだよ。今14時だからあと1時間したらやっていいからね。あ、あと30分ごとに場所移動も必要だからね。アンプは禁止ね。」とりあえず全面禁止とかライセンス制ではないみたいだけど、こうなるとまたやりづらい。仕方なく1時間待って15時からまた再開し、30分やって終了。あがりは1時間で22ユーロ、2800円。悪くはないけど、反応が薄いのであんまりやる気が起こらなくて、そのままベンチに座ってネット作業をすることにした。目の前にあるガレリアのフリーワイファイがここ数ヶ月で最強のスピードだったので、ここで一気にブログを上げてしまおうかな。すると、そんな俺たちが作業している真横にギターやカホンを持った若い兄ちゃんたちがやってきた。「ハロー、2人はここで演奏するの?」「あ、いや違うよ、今終わったところだから、どうぞどうぞ。」「そうなのね!!ありがとう!!」若い女の子と男の子の4人が入れ替わり立ち替わりでギター、カホン、ウクレレなんかを色々使って元気いっぱいに演奏を始めた。ビートルズとかサイモン&ガーファンクルとか、グリーンデイとか、まとまりはないけど、みんな好きな曲を楽しんでやってる感じがとても好印象。そんな明るい雰囲気につられて人々も足を止め、拍手が起こる。俺たちは真横のベンチに座って特等席で彼らの路上を楽しませてもらった。いやぁ、いいねぇ路上はねぇ、ってカンちゃんと作業しながら話していると、兄ちゃんたちが片付けを終えた瞬間に今度は南米のインディオのおじさんがやってきてセッティングを開始した。おお、ここってそんなに人気の路上スポットだったんだ。30分で終わらないといけないので、みんな入れ替わり立ち代りでこの場所でやってるんだな。インディオのおじさんは大きな胴体に無数の弦が張られた南米の民族楽器を出してきて、フォルクローレの演奏を開始した。あ、この楽器見たことあるな。前にペルーのクスコかどっかにあるカフェでライブさせてもらった時に、地元のおじさんが弾いていたものだ。ものすごく美しい音色に観客みんな魅了され、拍手喝采が起きたのをよく覚えている。あれをまさかドイツでまた見られるなんて。おじさんが路上で奏でる音色は確かにあの日クスコで聞いたものと同じで、本当に繊細で可憐で、アンデスの空気を感じさせる切ない旋律だ。めっちゃ綺麗だなぁ。すげぇいい音楽だよ。がしかし、誰も足を止めない。こんなに大きくて目立つ楽器で、こんなにも美しい音色を奏でているのに、誰も見向きもせずに歩いていく。あの何十本もある細い弦を両手の指を使って見事に弾くのは相当な技術だ。でも誰も足を止めない。南米のおじさんはもくもくと演奏を続け、結局30分の持ち時間が終わるまでに6人しかチップを入れなかった。そのうちの1人は俺たち。片付けをしてるオッちゃんの背中に哀愁が漂ってる。すると今度はクラシックのカルテットが準備を始めた。バイオリンとチェロの4人組で、みんなかなり本格的な雰囲気を漂わせている。面白いのはクラシックやってる人って、みんな真面目そうやなってこと。風俗とか行かなさそう。準備が終わると、すかさず演奏が始まった。おお、これもまた見事なハーモニー。全員息ぴったりで、一寸のズレもない。いやー、さっきからこんな連続で色んなパフォーマンスを見させてもらって贅沢だなぁ。が、クラシックの演奏にはさらに誰も足を止めない。全くもって素通り。こんなに高い楽器で、こんなに高等技術の演奏を、4人というメンバーでやってるのに、まったくチップは入らない。結局30分の間に入ったチップは3人のみ。こうして立て続けに色んなジャンルの路上を見てると、すごく勉強になる。最初の兄ちゃんたちのスタイルは、賑やかなポップミュージック。リズムも音程もだいぶ不安定だったけど、勢いと楽しそうな雰囲気に乗せられてたくさんの人たちが足を止め、チップを入れていた。彼らのウリは、通行人のみんなが知ってる有名なポップソングをオリャー!!と若いエネルギーで賑やかにやるというところ。彼らの稼ぎはざっと15ユーロくらいだったかな。次に南米のおじさんの大きな琴。静かに流れる民族音楽スタイルで、技術も素晴らしい。おじさんのウリは珍しい外国人であること、見たこともない珍しい民族楽器と耳慣れないフォルクローレ。人目を引くための要素は充分なはずなんだけど、おじさんの稼ぎは5ユーロくらい。そして最後のカルテットさんたち。誰もが知ってるクラシックの名曲を寸分の狂いもなく見事に演奏するスタイル。彼らのウリは4人という大人数。これにより派手さが出る。そして誰もが知ってる名曲をやるので足を止めやすい。が、カルテットさんたちの稼ぎは2ユーロくらい。これらを見て、路上に必要なものはなんなのかと考えると、まずは目立つこと。次に引きつけること。次に珍しいこと。最後に実力。これが日本の路上だったら、実力ともうひとつストーリーが大事になってくるけど、海外の路上ではこんな感じかな。大きな音や演出でまずは人目を引く。そして耳馴染みのある曲や面白そうなパフォーマンスで足を止める。さらに世界一周中なんて珍しさが加わるとなお良し。ここまで来たら肝心であるはずのパフォーマンス力はある程度のラインさえ超えていたら、高確率で人々は財布を開けてくれる。こうして見てみると、技術を磨くことが無駄みたいになってくる。実際、路上ってのはアイデアで9割決まってくると思う。アイデアさえされば、練習なんか積まなくても次の日からそこそこ稼げる。じゃあなんでみんな上手く稼がないのか?って、それはもうパフォーマーみんなのこだわりでしかない。あのカルテットの人たちがそれぞれバッハとかベートーベンなんかの有名音楽家のコスプレをして、なんならもう1人指揮者を置いてその人がコミカルに動いて指揮をすれば相当人だかりができるはず。そんなん明日からできる。でも彼らはそれをせずに、真面目そうな服装のままだ。ヨーロッパでクラシックのカルテットなんて珍しくもなんともないのに。結局路上は人の楽しみの前に自分の楽しみのほうが強いってことなのかな。みんなそれぞれにやりたい音楽と路上のスタイルがある。それでお客さんに楽しんでもらえたら最高なんだけど、譲れないところは譲れない。なかなか矛盾してる。大事なのは何でも屋にはなっちゃダメってことかな。商売でもなんでもそうなんだろうけど、こんなに便利な時代だからこそ、個性のある、そこにしかないものが輝くはず。ライプツィヒは楽しい町ではなかったけど、自分の理想と譲れないところをキチッと持ってこれからも路上しようって、色々勉強させてもらえたな。ライプツィヒを出て隣町のハレという町まで移動し、駅裏の寂れたエリアに車を止めて今日の寝床にした。さ、明日も頑張って歌うぞ。