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奇跡の湧き水に寄り添う人々



2017年7月2日(日曜日)
【スペイン】 ビエジャ ~ 【フランス】 ルルド






ピレネー山脈のど真ん中で目を覚ました。





車を開けると壮大な山並みが広がり、その谷間に小さな町が見えた。


あれがゆうべの夜景の町か。



こんな山ふところの奥地で暮らしてるなんて、どんな人生なんだろう。



でもそんなの俺の価値観であって、ここの人たちはニューヨークに行った時に、ここの人たちはどんなつもりでここで生きてるんだろう?って思うのかもしれないな。




町を見下ろしながら体をのばしたけど、あまりにも寒くてすぐに車に戻った。


ピレネーの7月の朝、気温は10℃以下。

















それからも昨夜と同じく山の中を駆け抜けた。





くねくねの山道はヘアピンカーブの連続で、そのたびに峠を越え、また谷底へと降りていく。


たまに現れる小さな町はどこも美しく、花が溢れる高地のリゾート地の雰囲気だ。


きっと夏はハイキング、冬はスキーの人たちで賑わうんだろうな。


どんな小さな町にもホテルがあり、ぱらぱらとシニアの観光客が歩いている。






















そんな中、道路際に水場を見つけて車を止めた。


ボタンを押すとジャバジャバと水が出てきて、空のペットボトルに入れていく。


冷たい水が手にかかり、気持ちよくて顔を洗った。




あ、そうだ、これってもしかしてピレネーの湧き水か。


ピレネーの湧き水で顔を洗うなんてめっちゃ贅沢だな。




















それからしばらくして山の中にフランスとの国境が出てきた。









いつものようにイミグレーションの建物が道路の端で役目を終えて廃墟になってる道を走って通り過ぎたんだけど、そこは今テロで警備体制を強化しているフランス。


道路にお巡りさんが立って検問していた。







「ボンジュール、どこに行くんだい?」



「ボンジュール、ルルドですー。」



「ルル……ド?なんだいそれは?」



「えーっと、どうやって発音するんだろ。ルルド、ルルドです。」



「…………うーん、わからん。」





まどろっこしくて地図を見せた。





「あー!ルードスか。そうかそうか、ボンボヤージュー。」





フランスの地名って最後にSがついてることが多いんだけど、フランス語ではそれを発音しない。


parisもパリっていう。英語ではパリス。



このルルドも最後にSがついているんだけど、どうやって発音していいかわからなかった。







今日の俺たちの目的地、それはルルド。


知ってる人は超知っている。

知らない人は全然知らない。


宗教的な名所なんてそんなもんだ。






















まだ日本を旅している頃、よく奇跡の湧き水ってのを見かけていた。



お寺の境内、山の中のあぜ道、海沿いの道路脇、



いろんなところで人々が容器を持って集まっていて、水を汲んでいた。


そういった湧き水には病を治癒する力があると信じられていて、よく末期の癌が治ったとか、皮膚病が跡形もなくなった、なんて逸話がそれぞれの場所にある。


人々はそれを信じ、遠方から水を汲みにやってきていた。





俺は別にそういった信心があるわけでもないし、体に治したいところがあったわけでもないけど、そういう人間の念が詰まった場所に行くのが好きで、よく訪れては湧き水を飲んでいた。


そこに集まっている人たちの多くが、病を抱えた家族がいたり、不安を抱えて生きてる人たちなんだと思う。



水に不思議な力があるものだというのは知ってる。


奇跡の水だと強く信じて飲み続ければ、癌細胞が小さくなっていくというのもあり得るかもしれない。











ある日のこと、どこかの田舎でまた有名な奇跡の湧き水を見つけた。



その時、湧き水の横の由緒書きの中に、ルルドという文字を見つけた。


なにやら世界にはとても有名な奇跡の湧き水があるという。


それがルルドの泉というものだとそこには書いてあった。


南フランスの田舎にその泉はあり、聖母マリアが顕現したという伝説をもつその場所のことをなんだか不思議とよく覚えた。





南フランスという、その当時ではまったく想像もつかなかった異国の風景。


そこにどんな奇跡の湧き水があるんだろう。



そう思うとロマンがかきたてられたもんだった。




ついにあの場所に行くんだな。








いやぁ、アンドラにしてもサグラダファミリアにしてもプロバンスにしてもコートダジュールにしてもシチリアにしても、



前回行きたくて行けなかった場所を確実にクリアーしていけてるなぁ。


南ヨーロッパに戻ってきて本当によかった。



















ピレネー山脈から抜け出すとのどかな平野の田舎道になり、ポツポツと民家が並ぶ住宅地に入っていく。


なんでもない静かな町を通り過ぎていくんだけど、そんな町の辻々に磔にされたキリスト像が立てられている。



ヨーロッパでは、日本のお地蔵さんのようにキリスト像がそこらへんに立てられているのでそれ自体は珍しいものではないんだけど、場所が場所だけにもう聖地に足を踏み入れているんだと身が引き締まる。







そうしてしばらく走っていくと、ひとつの小さな町に入ってきた。


どんよりした天気もあって、その寂しい町が余計に暗いムードを漂わせている。


ここがルルドの町か。

















早速車を止めたら町の中心部へと向かった。


今日は日曜日なのでお店はほぼすべてが閉まっており、人の気配もまったくない。


ただのゴーストタウンだ。


建物も古びており、本当にここがキリスト教の聖地なのか?と疑わしくなってくる。








そんな静まり返った町の中で、ポツポツと開いているお店があった。


それはお土産物屋さん。





どのお店にも置いてあるものは一緒で、マリア像、マリア様の聖画などのクリスチャンのためのものばかり。


おびただしい数のそうした宗教品が並べられている。


















どんどん町の奥へと進んでいくと、やがてそれらのお土産物屋さんが増えてき始め、町の中を流れる川を渡ったところから一気に観光客があふれた。


通りの両側にマリア像を置いたお土産物屋さんがズラリと並び、隙間もないほど。


















どこか日本にある大きなお寺の参道に似ている。


建物はどれも古びているし、古くからの伝統的な観光地って感じだ。




そんなお土産物屋さんの中に、様々な容器も売られていた。




大きな5リットルくらいの容器もあれば、首にかけられるような小さなサイズのものもある。



さすがルルド。


やはりみんな奇跡の湧き水を汲みにここにきてるんだよ。




















お土産物通りを抜けていくと木々が茂る場所に出てきて、その向こうが公園のようになっていた。


入り口の道の真ん中でお巡りさんが荷物チェックをしており、俺たちも荷物を調べられ、笑顔で通してもらった。



そしてドキドキしながら中へと入っていく。




木々が切れて視界が開けると、そこには大きな大きな教会が立っていた。





広々とした敷地に、まるで手を広げるかのようなアーチを描くスロープがあり、その中心に立派な教会がある。


美しい教会ではあるけど、ヨーロッパによくある圧倒されるようなド派手なものではなく、静かな品格をまとった上品な教会だ。



なんだかその神秘的な雰囲気に飲み込まれ、しばらく立ち尽くして教会を眺めていた。











ルルドの泉の伝説は1858年ににさかのぼる。



当時、何もない小さな寒村だったこのルルドで、14歳のベルナデッタという少女が薪拾いに出かけた。


するとそこで1人の婦人と出会う。



ベルナデッタにはそれが誰なのか最初は分からなかったんだけど、姿形などをみんなに話したところ、マリア様が出現したんじゃないのか?という噂が広まった。



しかし神父さんたちはその話を信じず、それがマリア様だというなら実際に聞いて確かめてみなさいとベルナデッタに言った。



そしてベルナデッタはまたその婦人に会った時に、あなたは誰なのか尋ねた。



婦人はそこで、難しい教会用語のラテン語を使って、自分は無原罪の御宿りと告げる。



教育もまともな受けていなかった14歳のベルナデッタがそんな言葉を知ってるはずもなく、このことによってマリア様出現の事実はヨーロッパ中を駆け巡り、瞬く間にルルドはカトリックの巡礼地となった。














最終的にマリア様に18回も会ったというベルナデッタ。


ある時、あそこの泉で顔を洗いなさいと教えられたベルナデッタが岩山の裏で湧き水を発見。


この水を飲むと病が治癒するという奇跡が続出し、現在も世界中から病気を抱えた人が絶えず訪れている。


これまでに2500例もの、説明のつかない治癒が確認されているんだそうだ。






ベルナデッタさんは死後、列聖され、今もこのルルド地にたつ教会に祀られており、誰もが祈りを捧げていた。

























俺たちもお祈りをし、心の準備を整えたら教会の裏手へ回った。




さぁ……………それじゃあいくか。




とうとうルルドの泉を見るときがきたぞ……………





ドキドキしながら歩いて行くと、そこにたくさんの人たちが集まっているのが見えた。




うおおおお…………これか……………







教会の背後にある岩山。


その足元にくぼんだ洞窟のような部分があり、マリア様の像が安置されていた。


洞窟の周りにはたくさんの人たちがベンチに座ってマリア様に寄り添っており、横に人々の行列ができている。















俺たちも息を飲んで列に並んだ。





誰もが静粛な顔をしてゆっくりと歩を進めており、洞窟の中へと近づいていく。




半端ない神聖な空気。




今ここでズボン下ろして、全力でラジオ体操第2をやったらどうなるだろう。


2秒で頭カチ割られますね。




うん、並んでる時はこんなこと考えてる余裕なんか皆無です。


めっちゃ神妙な顔して並んでました。












すると、向こうから神父さんが近づいてきた。



お、俺みたいな信心のないアホは便所の水でも飲んでろってことでしょうか!!!すみません!!消えます!!




って逃げ出そうとしたら、神父さん俺の後ろに並んでいた赤ちゃんを抱えたお母さんを手招いた。


そして2人を列の先へと連れて行き、優先して洞窟の中へ。



その人だけでなく、子供連れの人はもれなく優先して列をすっ飛ばして中に入っていく。




めっちゃいいやん、子供は優先だなんてめっちゃ素敵だよ。









すると今度は向こうから数人に囲まれた何かが別の方向から洞窟に入ってくる。



それはなんとストレッチャーだった。

ストレッチャーの上に人が寝ている。



マジで震えた。


もう自力で起き上がることもできないような人が、この奇跡の湧き水に触れるためにここに来ていた。



フリチンでラジオ体操とかいってる場合じゃねぇ。


マジで誰もが、マリア様の寄り添うためにここに集まってきていた。
















行列が進み、俺たちも洞窟の中に入ってきた。


ドキドキが止まらない。

さすがにどんな変態でもここは緊張するはず。




洞窟の中にはたくさんのお花が供えられており、そこに子供の写真も一緒に置かれている。


これはどういう意味なのか。


若くして死んでしまった子供を供養するためなのか、それともここに来られない子供のために代行で祈りを捧げているのか。





前を見ると、洞窟の1番深いところで人々が天然の岩壁に手で触れ、その手を自分の顔や頭につけている。


どうやらこれが作法のよう。








俺たちの番が来た。




岩壁を触ると、わずかに伝っている水で手のひらがうっすらと湿った。



その手のひらで自分の顔を触り、そしてカンちゃんの顔を触った。






本当にあっという間のことだった。




洞窟を出ると、湿った頬がひんやりする。





はああああ……………ルルドの巡礼を果たしたぞ…………………






「フミ君、私の顔触ってもっと可愛くなれーって祈ったの?」



「このまま丸顔でいてねーって祈ったの。」



「ふーん。ルルドのご利益でシュッとしてまうかもしらん。」





マジで張り詰めた。久しぶりにこんなに背筋がのびた。


ここは聖地ではあるけども、クリスチャンだけでなく様々な宗教の人たちが訪れる場所。


誰にでも門戸を開いた、ありがたい奇跡の湧き水だ。



またひとつどうしても行きたかった憧れの場所に来れたよ。





あー、こりゃご利益あるわ。


この前はバチカン行ってるし、ヴィースにも行ってるし、世界中の聖地に行きまくってるし、俺たち巡礼しすぎだよな。



いつも元気に旅させてもらってます。これ自体が最高のご利益です。














最後に忘れたらいけない、お水汲み。


洞窟の横にたくさんの蛇口が設置されており、そこから水を出すことができるようになっていた。




昔はきっとあの洞窟のところでみんな並んで水を汲んでいたんだろうけど、これだけ世界中から巡礼者がやってくるんだから蛇口を増やさないととても間に合わない。


俺たちも持ってきていたペットボトルにありがたい奇跡の湧き水を汲んだ。


































さて、巡礼が終わったらやることはひとつですね。






「隣の爺ちゃん言ってたもん、このバチあたりもんがあああああああああああああああ!!!!!!バチあたりもん!!バチあたりもん!!バチあたりいいいいいいもんがああああああああああああああああああ!!!!!!!」



ルルドの町でオリジナル曲のバチあたりもんを絶叫。



なんかするわけないです。




レットイットビーがゲロウケる!!!!


そりゃ聖母マリアの歌だもん!!!世界で1番この曲がウケる場所、間違いなくここ!!!








ていうかルルドで路上とかマジビビリすぎて興奮する!!!



観光客がほとんどだけど、神父さんやシスターもめっちゃいっぱい歩いてて、こんなところで歌ってたら、キエエエエ!!!ってエクソシストの十字架で頭エグられるかなと思ったんだけど、エイトデイズアウィークを歌ってたらおばちゃんシスターが踊りながらコイン入れてくれた。



嬉しすぎてブリッジしながら階段駆け降りるところでしたよ。
















世界中から訪れたたくさんの人たちが足を止めて歌を聞いてくれ、チップを入れて行ってくれる。


俺がカントリーロードを歌っているとオッちゃんのグループがやってきて、みんなで合唱するとなかなかの人だかりができた。



周りのお土産物屋さんの人たちも店から出てきてニコニコしながら写真を撮っている。





もちろんさすがに気をつけてここではホテルカリフォルニアとイマジンはやめといた。


敬虔なクリスチャンの中にはホテルカリフォルニアはサタンの曲だと考えている人がいるし、イマジンはメッセージが強すぎる。









そうして歌っていると、俺が立っている横の道から、なにやらゾロゾロと車椅子の団体がやってきた。


これが10人とか20人なんてもんじゃなく、数え切れないほどの車椅子が一列に並んで進んでいく。



乗っているのは老齢の方がほとんどだけど、重い身体障害を持った人の姿もある。

中には車椅子ではなく、ストレッチャーの人も。


若い、同じTシャツを着た若者たちがそれぞれに車椅子を押しており、きっと彼らはボランティアの人たちなんだろう。



道の向こうを見てみると、その車椅子の一団は俺が歌っている背後にある大きな建物の裏口から出てきていた。







これは…………もしかして養護施設なんじゃないかな。


病を抱えた人たちがこのルルドで、マリア様に寄り添って奇跡を信じて毎日を過ごすための施設なんじゃないか。


治癒を願っているのか、それとも人生の最後をここで穏やかに迎えたいのか。





一団は途切れることなく列を作って泉のほうへと進んでいく。


1週間に1回、こうして施設から泉へ行っているのか、それとも毎日のことなのか。


だとしたらすごい数のボランティアが必要なはず。



神父さんが道に立ち、車椅子の人たちに1人1人笑顔で声をかけていた。









この場所が人々にとってどれほど重要な聖地なのか、俺なんかには想像もつかない。


でも感じることはできる。


気持ちを込めて、丁寧に歌っていると、俺の前を通り過ぎる車椅子のお婆さんが笑顔で拍手してくれた。


今日のあがりは3時間で132ユーロ、17100円。























ルルドの巡礼を終え、なんだか透き通った気持ちで車を走らせた。


奇跡の湧き水で顔も喉も触っといたし、体が綺麗になったような気分。


あー、ルルドに来られたのはマジで嬉しかった。





次の目的地はついにあのモンサンミッシェル。


ここフランスの南端から北の海沿いまでフランスを縦断だ。


パリでの約束は明々後日。



このデカいフランスを端から端まで走り、モンサンミッシェルを見て、3日でパリまでたどり着かないといけない。










フランスは田舎が多いのでイタリアみたいに混雑しないとは思うけど、3日で走れるかなぁ……………


まぁ根性で走ろう。



この日もルルドを出て体力がもつまで北へと走り、テキトーなところで寝床を決めた。


















この日の晩ご飯は…………もちろんこれですよね。









ルルドの泉辛ラーメン!!!!!!!








きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!


ルルドの奇跡の湧き水で辛ラーメン作ったああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!



ルルドの水で辛ラーメン作ったの多分俺たちが史上初!!!!




染み渡るううううううううう!!!

体に辛い聖水が染みていくうううううううう!!!!







辛ラーメンの会社様。

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