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タンザニアの幻の酒を探しに行こう



2017年3月31日(金曜日)
【タンザニア】 イリンガ





初めてお酒に酔ったのは小学校高学年の時に、美々津の夏祭りでビールを飲んだとき。



暑い夜、お囃子とお神輿の活気で沸き立つ神社の境内で、地元のオッちゃんが飲んでるビールを少し分けてもらった。


飲んでしばらくするとぽわーっとしてきて、家に帰ってソファーで動けなくなったなぁ。






あれからずいぶん月日も経って、今ではお酒大好き。


日本を旅してるときも日本中の酒蔵を巡っていた。


世界を回ってる今も、なるべく現地のお酒は飲むようにしてる。


バッカスのエビさんみたいな、世界の有名なお酒から田舎の謎の密造酒まで探し求めるようなストイックさはないけど、それなりには色々試してきました。







お酒ってロマンがありますよね。


世界中、どこの民族も独特の酒と音楽を作り出します。

深い森の中や孤島など、どんなに隔絶された地域に住んでいても、人間は本能なのか遺伝子的になのか、自然に酒と音楽を作り出す。


それらがないとやってらんねぇってことなのかな。







つまり世界中に人の暮らしがあるだけ、酒の数があるってことだ。


輸出入で世界中に品物が出回るこの現代でも、その地だけに伝わる秘密の酒ってのが各地にあるもんです。



それはもう、酒好きには聖なる液体!!


ポリバケツの中で泡立ってるクソキモい謎の発酵液体とかが売られてるのを見つけたりしたら、すぐ見て見ぬ振りですよね!!


マジで勘弁して欲しいです!!飲めるか!!怖くて!!





でも飲んでしまうんだよなぁ。


酒っていいよなぁ。



今日はこのタンザニア南部の人々の間で飲まれている超ローカル酒、ウランジを探しにいってみよう。



















イリンガの町の中をのんびりカンちゃんと手をつないで歩く。











今日は天気がよくなく、朝からパラパラと雨が降っている。


そんな小雨の下でお肉を焼いてる食堂の兄ちゃん、服を売るおばちゃん、野菜を積み上げる女の子。


これだけ何日もいるとそれなりに町の人の顔もなんとなく覚えてきた。


マーケットの路上販売も、だいたいみんな定位置だ。





毎日こうやって同じ場所で同じものを売ってるんだろう。



先進国民の判で押したような人生は退屈、というけど、結局どこに行っても人の暮らしは大差ない。








古タイヤを切り取って作ったサンダル。めっちゃエコやな。カッコいい。






値段は5000シリングらしい。250円。







ナイスズボン。













そんなタンザニア南部の人々が好んで飲むウランジという謎のローカル酒。


竹の樹液を発酵させたアルコールらしく、幻の酒、なんて呼ぶ人もいるみたい。



いやぁ、怖えなぁ…………


どんな採取方法で、どんな材料を使って、どんな醸造過程で、どうやって保管しているんだろ……………



超テキトーなんだろな…………



そこらへん置いとけば勝手に泡立って勝手にアルコールが出てくるよー、みたいな感じなんだろ…………



だからこそ幻の酒なのかもしれんけど。






ネットの情報によると町から3キロくらい離れたところにあるイリンガ大学の近辺にある酒場でよく飲まれているみたい。


酒屋さんで販売されてるようなもんじゃないみたいだ。



怖いけどその幻の酒とやら、味わってみようじゃんか。






尾崎商店さん、タンザニアで大活躍中です!!






幼児バスがいかつすぎ。




































途中ドバッと激しい雨が降り、雨宿りしながら歩き続け、1時間以上かけてイリンガ大学の前までやってきた。


大学の門の前にはいくつかの食堂なんかが並んでおり、ちょこっとだけ賑わっている。










表通りから裏通りに入ると、そこには未舗装道路に掘っ建て小屋が並ぶ小さな村があり、まばらに人が歩いていた。






















これぞ村の暮らし、といった感じで、ズタボロの小屋に野菜が並んでいたり、カフェと書かれたバラック小屋があったりして、素朴というよりも極めて質素だ。


雨で地面のいたるところに水たまりができている。




これレストラン。怖すぎる…………
















確かこのあたりでウランジが飲めるはずなんだけどなー………とキョロキョロしながら村のメインストリートを歩いていると、お店の人たちや通行人が、なんだあの謎の生物は?といった感じで俺たちのことをジロリンチョと凝視してくる。


よほど外国人が珍しいんだろう、好奇心旺盛な子供よりも大人たちのほうがじーーーっと見ている。




そんな視線を浴びながら歩いて行くと、すぐにメインストリートを抜けてしまった。


あれ?見落としたかな?



また引き返して同じ道をキョロキョロしながら歩く。

酒屋かバーでもあればきっと置いてるんだろうけど、おかしいな。



ていうかこんなウルトラ田舎の村にそんなお酒が本当にあるのか?




「あのー、すみません、ウランジを探してるんですけど。」



「キリマンジャロキリマンジャロ、マサイーマサイー。」



「あ、あの、ウランジってどこで飲めますか?」



「マサイマサイ、サンコン、メガイイ。」




さすがにここまで村に来ると英語を喋る人が少なく、ウランジのことを聞いても有力な答えが返ってこない。


んー、本当にここで合ってるのかなぁ。バーなんか見当たらないけどなぁ。




「ヘイ、ブラザー、ウランジを探してるのかい?だったらこっちだぜ。」




するとそこに1人のオッさんが声をかけてきた。

どうやらウランジが飲めるところに連れて行ってくれるみたいで、こっちこっちと俺たちの前を歩いて行く。





え?…………ここ?






オッさんはボロボロの民家の脇道に入っていく。



え?と戸惑う俺たちに早くこっちだよと手を振っている。




ええ?マジで?





半信半疑っていうかゼロ信全疑でボロボロの民家の入り口を入ると、さらにその奥に入り口がある。


怪しさがほとばしりすぎてオシッコ漏れかけるそのドアの中の暗がりに、光る目が見えた。


中に黒人が複数人いる。怖え…………













「イェーイ!ブラザー!シスター!カモン!!」



するとその暗い室内から陽気な兄ちゃんが出てきて、ビビってる俺たちを笑顔で迎え入れてくれた。


室内は納屋みたいな感じだった。


電気なんてもんはないらしく、室内はとても暗く、黒人特有の体臭が立ち込めている。


土壁に土の地面なんだけど、これはおそらく民家のリビングだ。






なかなかのシチュエーションにドキドキしていると、兄ちゃんがバケツを差し出してきた。


そのバケツの中には薄く白みがかった液体が入っていた。




「これがウランジ!!バンブージュースさ!!飲んで飲んで!!」




おお、こいつが!!






ついにお目にかかれたぞ!!



しかし怖え………



バケツで飲むってのも怪しさマックスだし、ここにいる6~7人の人たちでまわし飲みしてるってのも潔癖なところがある俺には抵抗がある。


それにみんなこうやって奥まった暗がりでこっそり飲んでて、なんか悪いことでもしてるみたいだ。







ふぅと一呼吸。

心頭滅却してバケツの中で泡を立てている謎の液体を口に入れた。



うん、ただのマッコリ。


酸味と甘みが混ざり合った味わいで、変なエグミも臭みもない。



アルコール度数が高くてむせるわけでもなく、とても飲みやすい。



本当にちょうどマッコリと同じような味わいだ。








「美味しいだろ!!1リットル1000シリング。」




1リットルで50円!!さすが自家製!!






でも話では自家製なぶん、それぞれ作ってる家で味が全然違うらしく、もっと美味しいウランジもあるかもしれない。


できれば他のところのやつも試してみたい!!




「ねぇ、この辺りにバーはないの?ウランジが飲める。」




「あぁ、表通りのほうにある、でもこの時間、飲んだらポリス、来る。」



そう言って両手首をあわせて手錠をかけられるポーズをする兄ちゃん。



なるほど、タンザニアって飲んだらいけない時間帯があるみたい。


こんな昼間っから飲んだら警察に捕まる法律があるんだな。


だからみんなこうして奥で隠れてひっそり飲んでたんだ。


そっか、なら他のウランジにはありつけないかもしれない。


というわけでここでウランジを買い、1.5リットルのペットボトルに詰めてもらった。


















それからもしばらくみんなでバケツのまわし飲みをした。

アルコール度数は飲んだ感じだと酎ハイと同じくらいかそれより低いくらいかな。


もしかしたらもっともっと強いかもしれん。




タンザニアではバーでビールを飲んだら2500シリング、125円する。

1リットルなら250円だ。


それがウランジなら1リットルで50円。


きっと現地人価格だったらもっともっと安いはず。



手っ取り早く酔っ払うための大衆酒ってやつだな。







みんな楽しそうにバケツを傾けてゴクゴク飲んでいる。

ちょっとテンションが高いのは酔っ払ってるからかな。



でもそのおかげでみんなすごくフレンドリーに話しかけてきてくれて俺たちもとても楽しい。



なんか初めて今回のアフリカで地元に溶け込めたような気がした。


酒の力は偉大だ。















買ったウランジをゲットして、みんなと握手して秘密の酒場を後にした。


いやー、楽しかったなぁと出口に向かっていると、後ろからさっきの兄ちゃんが慌てて出てきた。手に忘れてきた俺たちの傘を持って。




ヘイブロー!!忘れ物だぜ!!と人の良さそうな笑顔で言う兄ちゃん。



サンキュー!!幻の酒はアフリカに潜り込むための最高のツールだよ!!




















さて、幻の酒体験も無事クリアーできたんだけど、ウランジよりも大学の前にあった食堂のご飯がマジうまかった。





ボロい掘っ建て小屋なんだけど、店員さんが白いコック帽をかぶってて、お客さんもたくさんいて人気店って感じだ。


小腹が空いたので一人前だけ注文してみることに。










最初にお米やウガリの中から主食を選び、それからオカズコーナーで色々盛り付けしてもらうスタイル。


うん、こりゃ大学の学食みたいな感じだな。



確かにお客さんには大学生が多くて、盛りつけの量もボリュームがあって若者向けだ。


熱湯消毒しているお湯の中からスプーンを取り出し、チキンの焼き鳥ももらった。









いやー、なんか見た目すごい質素な感じだなぁ。



やっぱり学生向けの安食堂って雰囲気なので食べ物も豆とかお肉のカケラとか菜っ葉とかそんなもんだ。



まぁ今日はウランジも飲んだし、物は試しってことで色々食べてみようかなーって美味えええええええええええ!!!!!





なにこれ美味っ!!!


めっちゃ美味いやん!!!




スープも豆も菜っ葉も、そしてご飯も、全部ほどよい塩加減で味が良く、めっちゃパクパクいけてしまう。


チキンの串も美味しい!!!

ご飯が進む!!





いやー、これアフリカの飯でダントツ1番美味しかった。


健康的なものを食べたいカンちゃんも大喜び。




しかも値段がやばい。

さすがの大学生向け食堂なので、プレートがなんと奇跡の1000シリング、50円!!!



やしすぎる!!!


それに串が1本1000シリング。



いつも8000シリングのカレーとか食べてるのがいかに贅沢かってことだなぁ。



ここ美味しかったなぁ…………
















大満足のご飯を食べたらトゥクトゥクに乗って町に戻り、明後日の移動に備えて先にバスチケットを取っておこうとターミナルにやってきた。


今日も賑やかなターミナルの中はバスとバンと客引きで溢れかえっていて、すごい活気だ。



「うわっほい!!チナ!!どこに行くんだ!?ダルエスサラーム!?アルーシャ!?」



「俺のバス会社のほうがいいぞ!!そっちはクソだから!!」



「なんだとこのゴミ野郎!!ひっこんでろカス!!さぁチナ!!こっちだ!!」




一瞬にして客引きたちが群がってきて、俺たちの争奪戦を繰り広げ、すぐに喧嘩を始める。


お、大人気ないなぁ…………




「てめー後から来て客とるんじゃねぇよおおおおおお!!!!!」



「うるせぇぼけ!!黙れチンカスが!!あっちでウガリでも食っとけこの猿!!はっ!!」



「なんだとこのやろ……おっ!!」




壮絶な口喧嘩をするおじさんたちなんだけど、俺が持ってる白い液体を見ると急に笑顔になって、これはウランジか!!バンブージュースイェーイ!!とニコニコしてくる。


いきなりダッシュしてどこかに行ったかと思ったらコップを持って戻ってきて、ちょっと飲ませてくれよぅ!!と言ってくるオッさん。



バスの運転手も、路上で服を売ってる兄ちゃんも、俺がウランジを持ってるのを見ると、お前も好きやなぁ、みたいな感じでニヤニヤして親指を立ててくる。


本当お酒は人を繋ぐツールだ。


ウランジ持ってるだけで、お前は仲間だ!みたいな感じで接してくれる。


いいなぁ、どこの国も一緒だよな。






チケットはイリンガからムベヤまでで12000シリング、600円。


ターミナルの中にはたくさんのバス会社があって、他はどこも15000シリングだけど、チャウラっていうバス会社だけ12000シリング。















この日はそれから宿に戻って、ウランジを飲みながらパスタを作って食べた。


なにそれー?と聞いてくる宿のみんなにもおすそ分けして、楽しい晩ご飯。



酔いはあんまり回らないけど、ゆっくりじんわりときいてくる感じだ。


味は本当マッコリ。





謎の自家製酒ってアフリカなんかだったらマジで無限にあるんだろうなぁ。


名前もないような原始的なものとかありそうだ。

もしまた出会えたら色々試してみよう。



あー、気持ち的にも体的にも、ちょっとずつアフリカに慣れてきたぞ。



面白いものたくさん見つけるぞ!





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