2017年3月19日(日曜日)
【エジプト】 ダハブ
「はうううーー!!チケット捨てたいー!!ダハブもっといたいいいいい!!!」
ドアを開けると、スーパー快晴の空が部屋の中になだれ込んできて、柔らかい風で一瞬で目がさめる。
空が青すぎる。
あああ……………今日が最終日かぁ……………
アフリカ旅は今の所2ヶ月の予定。
2ヶ月で南アフリカまで行こうと思ったらかなり飛ばさないといけないはず。
イギリスをもうちょっと短くしてたらゆっくり回れたんだろうけどなぁ…………
この極上の沈没スポットには最低でも1週間は必要だよ。
別になんにもしないけど、シュノーケルしてカフェ行って旅人たちと交流してビール飲んで日本食食べて女の子バッグパッカーと恋して………
今のダハブ、日本人女子、皆無!!!
あああ!!アフリカを旅してて一見強そうに見えるけど本当は寂しがり屋で頼れる男との出会いを求めてるタンクトップの日焼けあとが色っぽい女の子とキャッキャ言いながらバーベキューとかしたいいいいいいい!!!!
えええぇ骨つきの鳥さんの食べかたとかわかんないいいぃぃぃいってクネクネするその子に、こいつの食べかたはよく知ってるくせになぁ!!ってズボンを下ろす!!
と見せかけて、そうだよねぇ!って相づちを打ちつつ全力で肉焼いてあげて、あーんしてあーんしてあああん!!
ダハブもっといたいなぁ……………でももう明日の夕方にカイロ行きの飛行機とってるし、そのあとのカイロからケニア行きもとってしまってる。
捨てるにはさすがに金額がデカすぎるよなぁ…………
いつもはそんなに観光地で大はしゃぎしないカンちゃんがダハブには一瞬で虜になっており俺よりも、チケット捨てる!?と悩んでる。
ぐうう、あと2日くらいとっときゃよかった……………
ていうかダメ!!そんなにのんびりしてる時間なんかないんだよ!!
アフリカの後も行くところはたくさんあるし、まだ見ぬ美しい景色と出会いが俺たちを待ってるっていうか日焼けあと女子とバーベキューからのクフ王様ゲームしたいエジプトだけにいいいいい!!!
というわけでダハブを満喫するために最終日の今日はもういっちょシュノーケルに行くことに。
目的地はブルーホールと呼ばれるダハブの有名ダイビングスポット。
ここはダハブ市街地から10キロくらい離れているオフロードの道のどん詰まりにある場所なので歩いて行くのはやめといたほうがいい。
ダハブの町の中に無数にあるツアー会社がそれぞれにツアーを催行しているので、それに参加するのがいい。
だって値段1人50ポンドとかだもん。300円。
300円で行き帰りの車、水中マスクと足ヒレがセットになっているので超絶安い。
俺たちは泊まっているセブンヘブンのツアーに参加することにした。
セブンヘブンのは60ポンド、360円と他のところより2ミリくらい高いけど、その分ランチがついている。
まぁあんまり期待できないけど、宿まで車が迎えに来てくれるし楽チンだ。
10時半に車がやってきたんだけど、他の参加者はおらず、俺たち2人だけを乗せて出発。
するとエジプト人のオッちゃんが運転する車はダハブのボロボロのローカル地域に入っていく。
え?どこ行くの?なに?
ひと気のない路地に連れて行かれて男たちが5人くらい待ち構えていて有り金全て強盗される系のアフリカでよく聞くアレですか?
え!怖い!!
すると路地の中の建物の前に止まる車。
5人くらい殺してそうな顔でニヤリと笑うオッちゃん。
ひいい!!
と思ったら建物の中から目だけ出したイスラムのカバーをした女の人が出てきて、俺たちに自家製のゼリーを渡してきた。
「俺の女房のゼリーは最高だぜ!!これ食って出発するぜ!!」
え、あ、ありがとうございますと言うと、カバーの隙間から覗いている目だけでニコリと笑う奥さん。
優しっ!!目しか見えんけどめっちゃあったかくて優しっ!!
エジプトは平和です。そしてみんな優しいです。
「ジャパニーズ!!アリガスリー!!アリガフォー!!アリガファイブいやっほう!!」
陽気なオッちゃんの軽快なジョークで楽しいドライブをしていると、やがて建物がなくなっていき、オフロードの道になる。
ゴツゴツした岩山と海に挟まれた道をガッタンガッタン跳ねながら進んでいく車。
窓の外にラクダに乗った人たちの一団がゆっくりと砂を蹴って歩いて行く。
そうしてかなり奥地まで入っていったところにいくつかの建物が見えてきた。
道のどん詰まりに海の家みたいな開放的な建物がいくつかあり、ここがブルーホールのダイビングスポットだ。
たくさんの欧米人や韓国人たちがわらわらとダイビングの準備をしており、干されたウェットスーツが風に揺れている。
相当秘密のスポットって感じだけど、俺は前回ここに来ている。
ヨルダンからエジプトに入り、ひとりぼっちでヒッチハイクをしている時に乗せてくれたイスラエル人カップルがこのブルーホールに行く途中だったので、一緒にこの場所に来てシュノーケルをした。
ここが有名なスポットだということも知らずに連れてきてもらい、なんつー気持ちのいいところだ!!天国かここは!!とすごく驚いた記憶があるなぁ。
あそこにまた自分で戻ってこられるなんてな。
車を降りると1軒の海の家の中でとりあえず服を着替えたり紅茶を飲んだりしてリラックス。
ここがまた目の前は海だし、クッションによりかかって寝そべったりできるし、気持ちよくてたまらない。
日本の海の家もこんな感じのところってないのかなぁ。
お店のエジプシャンスタッフが外国人観光客のために忙しく飲み物を運び、ジョークを飛ばして仲良くやっている。
カッコいい筋肉ムキムキの男の人やタトゥーの入ったイケてる海の男たちが、慣れた感じで女の子を口説いている。
それにしても不思議に思う。
ムスリムの観光客たちも中にはいるんだけど、女の人たちって髪を隠すカバーをしているのでどうやって海に入るんだろ?
肌も見せたらダメだろうし。
そう思ってムスリムの人たちを見てたら、なんと1人の女の子があのカバーをしたまま上から水中マスクをして歩いている。
おお!!そういくの!?
しかも服を脱いで水着になる様子ももちろんないし、そのまま入っちゃうのか!?
いやぁ、当たり前だけどムスリムの人たちだって俺たちと同じようにビーチリゾートを楽しみに来てるんだよなぁ。
みんな一緒だよな。
紅茶を飲んでタバコを吸ったら海に突撃だ!!
このブルーホールとやら。もっと沖のほうとか険しい岩場の奥にあるようなものかと思っていたんだけど、マジで波打ち際の3メートル向こうからズドーンと落ち込んでいる。
陸からすぐそこに青いホールが見えるくらい目の前にある。
一見綺麗に見えるけど、不気味なのは周りの岩肌に人の名前が彫られた石板が埋め込まれていること。
この石板はなんとこのブルーホールで死んだ人の名前だという。
陸地の目の前にあるのに深さ130メートルもあるこのブルーホールでは昔から事故が絶えず、ダイバー墓地なんて恐ろしいあだ名もつけられてるんだそうだ。
そう考えると美しいブルーホールも地獄の入り口みたいに見えてくる。
よおおおおし!!!ここは旅人としての血が騒ぐぜコンチクショウ!!!!
数々のダイバーたちの命を奪ってきた悪魔の口に飛び込んで思いっきり探検してやろうじゃねぇか!!
ブルーホールを奥まで探検してやったら、ついでに宿にやってくる女子大生のブルーホールにもダイブして2秒で終わりそうになって中性浮力で回復しようとしたら我慢できなくて緊急浮上!!
という気持ちには一切ならず、ダイバーたちが酸素ボンベを担いで海に入っていく横でパチャパチャシュノーケルです。
そんな恐ろしいところに果敢に挑むような勇気もなければそもそもライセンス持ってないですからね。
カンちゃんはオープンウォーターは持ってるけど。
でもシュノーケルだけでもめっちゃ綺麗。
昨日のポイントも素晴らしかったけど、こっちは一面珊瑚礁だらけで熱帯魚の種類も多く、すごくたくさんの海の生き物を間近に見ることができる。
魚の群れの中に飛び込んでいってもみんな逃げずに一緒に泳いでくれ、マジで竜宮城状態。
ダイビングやってる人からしたら別に驚くような景色じゃないかもしれんけど、初心者の俺たちからしたらマジで天国だ。
ドクターフィッシュみたいに体の周りを魚たちがかすめていってめっちゃ楽しい!!!!
ブルーホールはというと、珊瑚の棚からいきなりズゴオオオっと深くくぼんでおり、下のほうはまったく見えないほど。
マジで奈落の底だ。
こんなところ潜っていくなんて怖すぎる!!
でも下からブクブクと気泡が上がってくるので、この下にダイバーたちが潜っていってるんだろう。
チキンの俺たちは海面でパチャパチャくらいでちょうどいいわ。
カンちゃんと一緒に天国みたいなシュノーケルを楽しむこと2時間ほど。
水温が低い上に風が強くて体が冷え、ガクガク震えながらシュノーケルを終えた。
そして海の家に戻ると、ご飯を出してもらえる。
今回セブンヘブンでお願いしたブルーホールツアーの内容は、水中マスクとフィンとランチ、それに送り迎えがついて60ポンドというもの。
この内容で360円なんだから半端じゃないよなぁ。
ブルーホールツアーは町のツアー会社がそれぞれやっているけど、セブンヘブンのやつはご飯がついているのでかなりお得だと思う。
焼き魚とチキンのご飯を食べ、ジュースを飲み、クッションにもたれてリラックスしながら海を眺め、もう本当たまんないよ。
ダハブ満喫だわ。
でも今日はダハブ最後の日!!
もっとダハブを満喫し尽くそう!!とシュノーケルを終えたら町まで送ってもらい、気になってたカフェへ!!
可愛すぎる!!
こんな秘密基地があったら最高!!という、子供の頃に思い描いたそのまんまの形のカフェ、タロアフリカンラウンジ!!
なんだこのタイヤのブランコは!!
水平線独り占めじゃねぇか!!!
犬可愛すぎる!!
そんな海辺のカフェで甘いネスカフェを飲んでいると、いきなりドレッドのラスタな野生児がカフェの中から飛び出して行って、浜辺にある棒の上によじ登り、海に向かってウオオオオオオオオオ!!!と叫びだした。
海と空のど真ん中、水平線に向かってウオオオオオオオオオオオ!!!!と叫ぶ兄さんを誰も気にしない。
みんないつものこと、といった感じだ。
すげぇ…………このダハブの開放感の中で育ったらあんな風に自然に抱かれた野生児に育つのかもなぁ…………
いろんなタガがブチ取れてるんだろうなぁ…………
先進国の忙しい人たちを骨抜きにする方法を知り尽くした彼らは怖いくらいに自由人だ。
さてー!!ダハブ最後の夜を満喫し尽くすために最後の晩ご飯は!!!
バーベキュー!!!!!
ああ!!なんて贅沢すぎるんだ!!!
カオリさんのお店には色んなメニューがあるけどその中にバーベキューメニューもあり、屋上で火をおこしてお肉を焼くことができる!!
ちょっと値は張るけど、前もって伝えておくと全部カオリさんのところで用意してもらえる!!
ちなみに今回は1人100ポンド、650円の予算で用意してもらった。
メンバーは今日の朝、宿で出会ったタカヒロさんというアフリカを北上してきた旅人さんと3人!!
うおおお!!!やっとアフリカ北上組と出会えたっていうか今のダハブで旅人の希少価値高し!!!
早速ビール買ってきて乾杯!!!!
「タカヒロさんって音楽とかやってるんですか?」
「あ、ギターやってて、今もギター持ちながら旅してます。まぁ宿でポロポロやるくらいですけどね。」
髪の毛がラックスのCM出れるくらいサラッサラで腰くらいまであって、さらにタイトなジャケットを着ていていかにも音楽やってそうな見た目のタカヒロさん。
原宿の中古レコード屋さんとかにいそうな雰囲気だ。
アフリカ北上して来た人なんてもっとズタボロのボロボロで、ケチャップ強盗にケチャップかけられても、ああ、晩メシのケチャップこれ使おう、くらいのタフガイってイメージだけど、普通にこのまま渋谷歩いてそうなオシャレさん!!
「旅しててもオシャレにはしていたいんですよね。」
ぐうぅ!!アフリカに向けて安いジーパンに衣替えした俺!!オシャレじゃないけどケチャップかかってこい!!
1番愛するアーティストはプリンスで、なんならプリンスになりたいと言うタカヒロさんと音楽や旅の話をしているとお肉が焼けてきた。
今日は鳥しかなかったんだけど、カオリさん特製のタレがある。
ニンニク醤油とピリ辛味噌!!!
いただきます!!!!
ぐおおえええええ!!!!!うめえええええええええええ!!!!!!
なんだこれ!!うますぎる!!!
プリンスに食わしてやりてえええええええええええ!!!!!!
やっぱり炭焼き最強すぎる上にタレがマジで美味くてI will die 4 U!!
うっま!!!!
「カオリさん!ご飯大盛りでお願いします!!」
白飯大好きカンちゃん!!一瞬で大盛りご飯が胃袋に消える!!カンちゃん可愛い!!
めちゃくちゃ美味しいお肉を食べきれないほどたっぷり用意してくれており、それをつつきながらアフリカの情報を色々教えてもらっていると、ヨシさんがお話しに加わってくれた。
ヨシさんは世界を8年旅してるもはや変態の域に突入してる達人旅人。
エジプトで足を怪我してしまい、その治療のためにダハブに滞在しており、足が悪いカオリさんのためにこのお店にお手伝いに来ている優しいかただ。
この数日、挨拶はしていたけどちゃんとお話するのは今日が初めて。
このヨシさん、すごく丁寧で柔らかいかたで、見た目も別にゴリゴリの旅人って雰囲気ではない。
自分から、いやぁ俺の旅ってこうなっちゃうんだよね、マイッチャウよね!!テヘペロ!!みたいな武勇伝を語ってくる人じゃないんだけど、実際話を聞いてみたらマジでハンパじゃなかった。
★その壱
アフガニスタンは人がとても優しくて、みんながご馳走してくれるので滞在中ほとんどお金を使わなかったんだという…………
★その弐
カウチサーフィンでアフリカのどっかの国の大使公邸に泊まってて仲良くなって無料で中央アフリカ共和国のビザをもらって行ったんだという……………
ちょ、まずカウチサーフィンで大使公邸て!!
★その参
パプアニューギニアの地図に載ってない秘密の島にとあるコネで行くことができたそうなんだけど、外国人がその島に入ったのは2人目だったという…………
話の桁が違う………………
マジでイッてしまってる。
ヨシさんが掲げているのは世界全周というもの。
国連加盟国はもちろん、非承認国家や、地域、自治区、全ての場所を10年計画で行き尽くす予定なんだそう。
マイクロネーションなんていう言葉も初めて知った。
これって自分たちで、ここは今日から私たちの国ですーと主張している人たちの、非承認国家にもなっていないマジのコミュニティエリアなんだそう。
このマイクロネーションが世界には75あるらしく、中にはビルが国なんてところもあるというからすごい。
ヨシさんはそのビルが国のところにはさすがに入れなかったそうなので、入り口のゲートの隙間から足だけ入れて、領地というか地面を踏んどいたんだそう。
ちなみに現在そのビルのゲート下部分には板が張られて足を入れられないようになってるんだそう…………
いやぁ、すげぇ……………
世界一周なんて今やメジャーなもんで、モデルコースや流行りのルートなんかがある誰にでも出来ることだけど、世の中にはそんな流行りとかかけ離れたマジの旅人さんもいるんだよなぁ。
俺なんかまだまだだ。
「グリーンランドには行った?もし行くならグリーンランドの1番北に日本人が住んでて、ハントしたシロクマの毛皮と頭をかぶって狩りをして暮らしてるるらしいんだよね。もし行くなら探しに行ってみたら面白いんじゃない?」
なんかもう話がファンタジーすぎる…………
いやぁ、日本で人里離れて暮らしてる仙人なんて可愛いもんやな………………
そんなぶっ飛んだ旅人であるヨシさん。
こんだけの武勇伝を持ってたら語り倒されたとしてもハハー!!と感心するしかないようなレベルなのに、本人はすごく謙虚で柔らかい。
そんなヨシさんが話してる中で何気なくすごく言った言葉にすごく共感してしまった。
日本の常識は世界の常識と思う。というもの。
これ本当俺も思う。
ものを盗んだらいけないとか、人を騙してはいけないとか、そういう当たり前なことはもちろん、相手への配慮や気配り、礼儀なんかにしても、日本人が持っている常識ってのは世界で通用するものだと思う。
外国で何か嫌なことがあった時、日本の常識を外国で押しつけたらいけない、我慢しなきゃいけないって言う人は多いけど、俺はそうは思わない。
よっぽどなこと以外は、例え国が違っても人種が違っても宗教が違っても、やっていいこととやっちゃいけないことはそんなに違わないはず。
物を盗まれた、ぼったくりにあった、わけわからんところで怒鳴られた、それを外国だからってことで我慢しないといけないなんてことないよ。
堂々と、日本人として持っている常識でこの世界を旅していいと思う。
これだけ様々な地域に言ってるヨシさんからこの言葉を聞けて嬉しかった。
あ、まぁアフリカとか南米の奥地に住んでるインディオとか、どっかの島の人食い人種には当然こんな常識は通じないけどね。彼らには彼らのルールがあって、いくらグローバルな現代だからといっても、こっちの良い物があっちの良い物とは限らないもんな。
干渉しすぎるのはダメだと思う。
そこんところはバランスよく考えて旅していかないとな。
あー!!それにしてもバーベキュー最高!!
星の下で世界の旅の話をして、こんな夜本当に久しぶりだ。
アラビアンナイトから始まるアフリカ旅。
明日は古代文明の中枢、カイロに移動だ。