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心の中のタガ



2017年3月18日(土曜日)
【エジプト】 ダハブ





朝、目を覚まし、そのままベッドの中でカンちゃんともぞもぞ抱き合う。

時間を気にせず、窓の外の太陽も気にせず、壁のくすんだ安宿の部屋の中で2人きり。


外からどこかのカフェの音楽が遠く聞こえる。

そんな世界から離れて、2人だけの殻の中に閉じこもる。



「カンちゃんといるの楽だなぁ。こう楽だと他の人とコミュニケーションを取ることをさぼってしまいそうになる。」



「わかるー。」



「カンちゃんは俺といて楽?疲れる?」



「超楽。ビビるくらい。」



世界の中には人との関わりを避けて、現代社会から離れて、無人島で暮らしたり、極北で狩りをしながら暮らしたり、森の中で作物を作りながら生きている世捨て人がたくさんいる。


日本にもちょくちょくそういったぶっ飛んでる仙人がいて、山の中や孤島でひっそりと暮らしているけど、世界となると桁が違う。


文明社会に疲れて自然回帰を望んで生きる本物のヒッピーたちなんて普通にそこらへんにいて、外国ではそれなりにメジャーなジャンルですらある。


自由で理想通りの生きかたを提唱し、コミュニティを作って独立国家みたいにして生きてる人たちもたくさんいる。



きっと人間としていろんなタガが外れてるんだろうな。

日本で生きてきた俺たちにはガッチリと様々なタガが身体中にくっついてて、それをひとつ外すだけでも至難の技だ。


仙人みたいなぶっ飛んだ生きかたはとてもできない。怖い。




これから旅を終えて日本に帰れば、たくさんの人と関わりながら生活していかないといけない。

それが普通だと思うし、やっぱり人といることは楽しいし、人間が磨かれると思う。


でももしタガを外して、2人だけで地球のどこかで何にも関わらずに静かに暮らしていたら、また違う形で人間が磨かれていくんじゃないかとも思う。
















部屋を開けて殻を破ると眩しい光が差し込んだ。


年間通してほぼ毎日快晴のダハブなのに、今日は珍しく曇り空だった。

天気予報を見ると今日以外全て快晴という予報。


んー、すごいタイミングだなぁ。

3日しか滞在しないのにそこに曇りが当たるなんて。




しかも今回は面白い日本人の旅人と出会いたいという目的もあったのに、2日前に7人くらい宿を出ており、今は日本人がほとんどいないという見事なタイミング。


残念。これからのアフリカ南下に向けて色々情報交換したいんだけどなぁ。





ちなみにこのセブンヘブンはワイファイめっちゃ弱い。

メールくらいなら大丈夫だけど、サイトなんかはほとんど読み込めない。

そして外のカフェとかも全部壊滅的に弱い。


つまりブログに写真が貼れない。




んー…………今回のブログはあんまり写真の画質を落とさないようにアップしているので、早いワイファイじゃないと無理なんだよなぁ。

こりゃアフリカではブログ上げるの厳しそうだ…………


少し画質を落としてチャレンジしてみないとな。


















のそのそ起きたら隣の建物の屋上にあるサンレストランに行ってカオリさんにご飯を作ってもらった。












カレーと親子丼。

このカレーがめっちゃ美味しい!!

私はインスタントは使わないからねーというカオリさんのカレーはルーから手作りで、クリームとバターがたっぷり入ってすごくコクがあってまろやか。

親子丼も美味しい!!





2人で大喜びでパクパク食べていると、犬のシーザーとユキがやってきて俺たちの横に座って足に顎を乗せてくる。


かわいすぎる。



でも他のお客さんはいない。

前来た時はいつもたくさんの日本人がわいわいやってたのになぁ。


もちろん今でもたくさん来てるそうだけど、今のタイミングは日本人があまりいないみたい。




あー、ここでダイビングもしないでぐーたら沈没してるダメメンバーと昼間からビール飲みながら賭けポーカーとかしてたよなぁ。


いきなり、キエエエエエエ!!楽しいいいいいい!!とか発狂したりしてたよなぁ。




そうそう、あの時ここで一緒に遊んでいたショーゴなんだけど、読者のみなさん覚えますか?


だっぺよー!とかって一切そんな言葉使いしないのに俺がブログに書いてたおかげで、あれ?ショーゴさんってだっぺよーとか言わないんですね、って他の日本人に言われていたあいつ。


ダハブに来てダイビングしないでなぜかジムに通って筋トレをしていたという謎のバッグパッカーだったんだけど、あいつ今日本でお笑い芸人をやってて頑張ってます。


イエローゲートってコンビ名でやってるのでお時間ある人はユーチューブとか見てみてください!!


















美味しい朝昼ご飯を食べたらせっかくなのでシュノーケルをしに行くことに。


道具はセブンヘブンで借りることができ、水中マスクが10ポンド、60円。
足ヒレもつけたら15ポンド、90円。

クソ安い…………


そんで歩いて30秒でシュノーケルポイントまで行ける。
だって目の前全部海だから。


よし泳ごう、と思って1分で海に入れるというダハブのクオリティ!!



でも今回はちょっと離れたところで泳いでみよう。

カオリさんが是非行ってみるといいよと教えてくれた場所はあんまり人もいなくて静かでとても綺麗なところみたい。






というわけで教えてもらった通り、町を海岸沿いにひたすら南へ歩いていく。












楽しそうな南国ムード溢れるカフェが並ぶ中心地を抜けるとやがて建物が少なくなっていき、空き地が目立ち始める。


遊歩道の脇には使われていない建物、建設途中で放棄されたコンクリートの骨組み、水汲みポンプなんかが茶色い大地に散らばっており、その背後に巨大な岩山の険しい頂きが連なっている。


ダハブは有名リゾート地だけど、日本の温泉街みたいに中心地だけが賑やかで、その周りは廃れた建物が放置されたままになっていた。





















かつてはダハブももっともっと広域に観光施設が広がるビーチリゾートだったのかな。


ひと気のないホテルやレストランなんかがボロボロの姿で取り残されており、波打ち際にはパームツリーの葉で作られたパラソルが崩れて風に吹かれている。


外灯は潮風で錆びつき、ただ海の潮騒だけが静かにさざめき、遠くにサウジアラビアの対岸が見えた。


置き去りになったベンチの上で犬があくびしている。


いいなぁ、ダハブにはいろんな顔がある。






























そんな海沿いの遊歩道をどこまでも歩いていくと、やがて建物もなくなり、風が吹き渡る一面の荒れ地に変わった。

そして遊歩道もなくなったころに、ぱらぱらと人の姿があった。


みんな海水浴客みたいだ。



ちょうど雲間から太陽がのぞきはじめ、太陽が降り注ぐと、さっきまで深い青だった海が鮮やかに輝きだした。









うおおおお!!めっちゃ綺麗!!!!!

エメラルドグリーンに透き通った海は遠浅になっており、これが海の色か?とびっくりするほど鮮やか。


まさに南国ビーチリゾート!!さすがダハブ!!!











ミサンガ売りの子供。














早速、他の人があまりいないあたりで服を脱ぎ、猛ダッシュで海にダイブ!!!!



すると見せかけてヒイイイイ!!冷たい!!と2人で震えながらそろりそろりと海に入っていく。

砂漠地帯のダハブだけどさすがに3月はまだ涼しい。


いやあああああ!!!と頑張って体に水をかけ思い切って海に飛び込むと、そこには天国が広がっていた。



様々な形の珊瑚礁、真っ白な海底の砂、水族館でしか見たことないような熱帯魚の群れが可愛らしく泳ぎ回っている。



うーーーー!!!!

うーーーーーー!!!!!


って2人で大興奮しながらプカプカ海を漂って別世界を覗き込む。



ていうかウニの数が尋常じゃない!!!!!

日本にいるようなトゲの短いやつではなくて、体の何倍もあるような長さのトゲを持ったウニが珊瑚の周りにウジャウジャーーーー!!とひしめいていて、もうちょっと気持ち悪いくらい!!!


ウニが死ぬほど好きなカンちゃんがマジで持って帰ろうとしていたけど、後からカオリさんに聞いたらこのあたりの海は水温が高いからか全然美味しくないみたい。

カオリさんも食べられないか色々試したけどどうもならないんだそうだ。


残念。ウニ丼食べたい!!








あああ、それにしても綺麗すぎる……………


静寂の海の中、2人きりで熱帯魚と一緒に泳いでいるとか、なにこれハネムーン?


うんハネムーンか。

ミコノスに続いてダハブとか、ただのめっちゃ新婚カップルだなぁ。




「カンちゃん綺麗やねー!!」



「ウニ食べたい!!あ、綺麗やねー。」



「今まで野宿とかゲイに襲われたりとかばっかりの旅だったけど、好きな人とこんな旅ができるなんてなぁ。同じことを楽しめる人と出会えるってすごいことだよね。」



「ねー、私もずっと旅が大好きで1人で色んなところ行って、でもいつかそういう人生を諦めないといけない時が来るんだろうなぁって思ってたけど、この生き方を我慢しないでいい人と出会えたなぁって思う。」



「でもお金はちゃんと稼ごうね。めっちゃ稼いでカンちゃんにルイヴィトンを買う!!」



「ルイヴィトンいらない!!暮らしていけるだけでいい!!忙しくなって旅行に行けなくなる人生は嫌!!でもレーザーでシミ取りはしたいです。」







砂浜に座って海を眺めながらいろんな将来の話をした。


遠くでどこかのレストランの音楽が聞こえる。


心の中のタガがぽろりと取れそうで引っかかってる。




人間の生きかたはきっと無限だ。



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