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大好きな友達、それはオービー君



2017年2月10日(金曜日)
【北アイルランド】 ベルファスト
~【アイルランド】 ダブリン





2段ベッドの上で目を覚ますと天井が近い。



そしてふと目をやると天井の一部に穴が空きまくっているところがある。


ゆうべ夜中に魔人ブウが部屋で暴れまわった痕跡だ…………

カーテンが無残にレールごともげてしまっている。





よーし、あの魔人ブウをどうしてくれようか?

とりあえずあいつの荷物の中身を全てプリングルスに入れ替えといてやろうか?



いやいや、うん、待て、寝て朝になったのでムカムカは多少収まったかな。


そうそう、大人の対応、大人の対応。




「フミ君おはよー。きのうは怖かったね……………」



「おはよー、ねー、怖かったね。あんな言い方しなくてもいいのにねぇ。」




魔人ブウはすでにベッドにはおらず、朝ごはんを食べに行ってるようだった。

俺たちも今日はちゃんと寝坊せずに朝ごはんタイムに間に合っている。



「ハーイ、ゆうべはクレイジーだったわね。大丈夫?」



隣のベッドのコロンビア人女子が気を使って聞いてくれる。

夜中に騒いでごめんねと謝って、俺たちも朝ごはんを食べにキッチンに向かった。














狭いキッチンルームにはたくさんの旅人たちが集まっており、みんなでワイワイと朝ごはんを食べていた。

フルイングリッシュブレックファーストをスタッフがその場で作ってくれるというめっちゃ豪勢なここの朝ごはん。

安宿のインクルードの朝ごはんとしては奇跡的なものなので、宿泊客全員がもれなく食べに来ておりバタバタと慌ただしかった。




そんな人たちの中に魔人ブウがいた。

端っこのテーブルで1人でご飯を食べている。

ふてぶてしい顔でモグモグとベーコン食べてる。うん、顔がムカつく。



なんかみんなの中に微妙な空気が流れてるのを感じて、きっと魔人ブウと俺とのやり合いがすでに宿のみんなに噂で広まっているんだろうってのがわかった。




ここはどうすべきか。

みんなの前でゆうべのやり合いの続きをやるか?

なんとかして魔人ブウにひと泡ふかせるか?



いやいや、もうそんなのはやめよう。

実際まだ腹はたってるけど、あの粗暴な女と口喧嘩なんてそれこそ醜い。


ここはグッとこらえないと。





俺が魔人ブウに近づくと、一瞬キッチンにピリッとした空気が流れた。

おいおい、大丈夫か?ってみんなが様子をうかがっている。


そして魔人ブウの隣に行き、おい、お前は魔人ブウなのか?それともタイヤマンか?と聞きそうになるのを余裕でこらえて、ゆうべはごめんね、一緒に寝たらいけないってルール知らなかったからさ、と冷静に謝った。



「あーはいはい!!もういいのよ!!私もゆうべはファッキン疲れてたから機嫌悪かったのよ!!それにスタッフの女の子がちゃんとあんたたちにルール伝えたと思ってたんだけどね!!何も言われなかった?!」



「何も言われてないよ。」



「あっそ!!まぁいいわ!!」



そう言ってノッシノッシとキッチンから出ていった魔人ブウ。

本当品がねぇなぁあいつ……………


せっかく謝ったのにちゃんと和解できなかったのは残念だったけど、カンちゃんに対しては誇らしかった。

カンちゃんはあそこで俺が魔人ブウにひと泡ふかせるのを喜ぶ子ではなく、円満に穏やかにおさめるのを喜ぶ子だ。



すると魔人ブウがいなくなったのを見計らってスタッフの女の子たちが声をかけてきた。



「本当ごめんね!!あの人本当に態度が悪くて失礼な人なの!!なんかあると小さなことでもレセプションに来て文句言ってきてね。だいたい一緒に寝ることだって全然問題ないのよ。本当ごめんね。」



ホラな、分かってたけどやっぱりそんなルールねぇじゃねぇか。


他人の着替えが見たくないとか、人のイビキが嫌だとかだったら、はっきり言ってドミトリー泊まらないほうがいいよ。


それがドミトリーだもん。

お互い最低限気を使い合うことはもちろん必要ではあるけどね。


うん、あそこで謝れた俺、ナイス。




「よかったーフミ君があそこで怒鳴らなくて。ありがとうね。」



大好きなカンちゃんと一緒に寝るのって本当に心が安らぐ時間。
できることなら毎日一緒に寝たい。

でもゆうべのこともあったから、今度からドミトリーでカンちゃんと同じベッドで寝るときは同室してるメンバーと仲良くなってちゃんと聞いてからにしようかな。




今回泊まった宿はラガンバックパッカーズというホステル。

スタッフもみんな感じがいいし、宿の施設は古びているけど小ぢんまりして、昔ながらの旅人の宿って感じがとてもいい雰囲気。


値段はドミトリーで9.5ポンド、1340円。

このイギリスにおいては相当安いほうだし、さらに朝ごはんにフルブレックファーストがついてくるんだからめっちゃお得。


ユナイテッドキングダム、最後の宿がここでよかった。

















よっしゃ!!それじゃあ出発だ!!

宿から重たい荷物を引きずって歩いて20分くらいでやってきたのは、市街地にあるヨーロッパバスセンター。




ここからアイルランド島のいたるところへとバスが出ており、俺たちもここからバスでお隣の国、アイルランドへと向かう。


目的地は首都のダブリン。





もうこの日をどれほど待ちわびていたことか……………


大好きな大好きな友達と再会できるこの日を、オーストリアにいるときからずーーーーっと楽しみにしていた。

前回の世界一周中に出会った旅仲間の中でも、指折りに大好きな友達。



ちなみにイクゾーではありません。


あいつ今頃どこでなにしてるんだろなぁ。











やってきたエアコーチという会社のバスに乗り込み、快適に出発。

預け荷物も別に数制限があるわけでもなく、ギターは持ち込めませんなんて厄介なことも言われず、ワイファイも飛んでいて快適この上ない先進国のバス。


値段は1人15ユーロ、1800円。


これはチケットを買うのを直前まで忘れててこの値段になってしまったけど、ちょっと前に調べた時は9ユーロだったので、やっぱり予定がわかってるなら早割は活用すべし。



ドライブ時間は2時間半。

12時半に出発して15時にダブリンに到着だ。


バスはこの時期でも1日に何本もあったので、やっぱりこのベルファスト~ダブリン間は1番人が動く路線なんだろう。




驚いたのは北アイルランドとアイルランドの間に国境のパスポートコントロールがなかったこと。


北アイルランドはユナイテッドキングダムで、アイルランドは独立した国家だ。

れっきとした違う国だし、なんなら昨日あんなにもイギリスとアイルランドでいがみ合ってる現実を目の当たりにしてショックを受けたばかりだというのに、このゆるい感じに驚いてしまった。


同じアイルランド島民同士、この島内ではパスポートチェックはないってことか。




うん、ていうか住民たちはそれでいいかもしれんけど、俺たち旅行者はどうなるんだろ?


ダブリンのイミグレーションで、お前入国のスタンプ持ってねぇじゃねぇか!!なめてんのかソーローが!!よし!!全裸でU2歌え!!って言われたらどうしよう…………U2の曲全然知らねぇし……………











そんなこんなありつつも、バスは本当にあっという間にアイルランドに入り、そして首都のダブリンに到着した。

バスから降りると、まずその人の多さに驚いた。




歩道をわらわらと歩く人波はすごい数で、ベルファストの比じゃない。


道は広々として車が絶えず往来し、建物が規則正しく並んでいる。

こりゃかなりの都会だな。










天をつくようなものすごく細く高い針みたいなモニュメントが目抜通りの真ん中にそそり立っており、その両側に伸びるショッピングストリートは大混雑。

ショッピングモールもいくつもあり、1本路地に入るとパブやレストラン、ファストフード屋さんが軒を連ねている。


どのお店もどこかスタイリッシュで、カラフルで、街が明るく感じた。

カメラやスーツケースを持った人がたくさん歩いているところを見ると、観光都市としてもかなり人気があるようだ。


街全体が活気に溢れている。

それだけで楽しい街だなって思えてくる。

ダブリン、いいところだな。











ていうか物価高っ!!!!




ブレックファーストが9.75ユーロて………1200円…………


イギリスより全然上がってるじゃねぇか……………


アイルランド、話が違うし……………













街の真ん中を流れるリフィー川を挟んで南北に市街地は広がっており、俺たちが泊まる宿は南側のクライストチャーチ大聖堂という大きな教会のすぐ横にあった。




バスの走る通りに面した建物で、裏手にはダブリンの繁華街であるテンプルバーエリアも広がっている。立地はかなりいい。





宿の建物に入ったんだけど、まぁ巨大なホステルだった。




4階建てで、それぞれに何部屋もあり、俺たちの泊まる部屋はその中の12人ドミトリー。

一体何百人泊まれるんだ?ってくらいのマンモスホステルだ。









世界中から集まった若者たちが楽しそうに建物の中を行き交っており、なんかの大学施設みたい。


めっちゃ広いリビングでは世界各国の言葉があちこちから聞こえてきて、誰かがギターを弾き、お喋りし、パソコンをいじっている。


キッチンも半端なく広くて、シンクもコンロもオーブンも2セットずつあり、女の子たちが忙しそうにご飯を作っていた。

こりゃ旅人合宿所って様相だ。








宿の名前はキンレイハウス。
ドミトリーが1泊2000円。

これがダブリンの最安クラス。

















とにかく荷物を置いたらすぐに宿を出た。




そしてスーパーマーケットで少し食材を買い、酒を買い込んでバスに乗り込む。


向かうは大好きな友達の家。


うー、懐かしいなぁ。元気にしてるのかなぁ。


めっちゃ久しぶりだよなぁ。






バスは市街地から北にある住宅地に着き、すでに暗くなった通りを歩く。


そして教えてもらっていた住所に着くと、そこには懐かしいあの人が立っていた。



「うおおおおお!!!!!エビちゃんーーー!!!!」



「うわあああああ!!金丸さんお久しぶりですーーー!!!」



そう、再会したのは3年前にメキシコで出会い、その後グアテマラやエクアドルで何度も一緒に遊んだあのエビちゃんヨシコさんカップル!!!


中南米にいるパワフルに旅する旅人たちとは違い、マイペースにほのぼのと旅していたこの2人はどこか他のバッグパッカーたちにはない穏やかな空気があって本当に大好きだった。


はにかみながら太陽みたいに笑うエビちゃんと、めっちゃ美人なのにすごく気さくで冗談ばっかり言ってるヨシコさん。


この2人とまさかアイルランドで再会できるなんて!!!!



エビちゃんヨシコさん!!お久しぶり!!






ていうか玄関!!!







「いやぁ、アレから3年かー。色々ありましたよねぇ。」



「ねー、色々あったよねぇ。エビちゃんたち結婚したの?」



「はい、1年前に。金丸さんたちもですよね。」



「うん。ケータ君も日本で結納して、仕事でも開業したよねぇ。みんなあれから色々あったんだよなぁ。」



「フローレスとか懐かしいですよねー。みんなでカルボナーラばっかり食べてましたよー。」



あのころ、長い長い髪の毛を結んでヒゲを生やしていたエビちゃんが今では少年みたいな短い髪になっている。

でも笑顔は何にも変わってない。


ヨシコさんも相変わらずの美人さんだ。




「ヨシコさん、最近キャベゾウは元気にしてますか?」



「キャベゾウねー、最近妹ができたのよー。キャベリンっていうのよー。田原はいいところよー。」



愛知の渥美半島でご当地キャラのキャベゾウの中身をやりながらブロッコリーを収穫していたヨシコさんも今ではアイルランドで奥さん。



エビちゃんはあれから旅を終え、日本に帰国してすぐに海外での仕事の話が来てベルギーで就職したんだそう。


日経企業の営業の仕事なんだけど、海外で現地の人相手に営業なんてめちゃくちゃ大変なはず。

1年ほど前にアイルランドに異動になったそうなんだけど、こっちは英語がネイティヴなので専門用語のオンパレードでかなり苦戦しているようだ。


すげぇよエビちゃん。
海外で立派に仕事して結婚して、めっちゃカッコいいよ。


この2人が結婚してくれて本当に嬉しかった。




「さて、じゃあ金丸さん、最初はこれからでいいですか?」




エビちゃんがニコニコしながら見せてきたそれは!!





黒くて太くて真珠がブチ込まれたもの!!!






おおお!!エビちゃん!!そんな趣味があったんだね!!




エビちゃんも好きだねええええええええ!!!!!





いよっ!!この変態!!




ていうかギネス!!!!!





ギネスってアイルランドのビールだヒョォオオオオオオオオオ!!!!!




「いやぁ!!中南米でも飲んだよねぇ!!ひたすらに!!」



「しこたま色んな酒用意してるんでやりまくりましょう!!」



「じゃあご飯食べようー、いっぱい食べてね!!」










ヨシコさんが作ってくれていた料理がテーブルに並んだんだけど、いつも地元のメルカドに行って現地の食材を買ってきて料理を作っていたこの2人だもん。

どれもめっちゃ美味しい!!


ていうかギョーザ死ぬ!!


ていうかこのアボガドのサラダ、ウルトラ美味い!!!


俺たちも買ってきた食材でアボガドと椎茸の田楽を作った。



美味しい料理、美味しいお酒、あのころの旅の話と今のお互いの話で盛り上がり、すごく楽しい家飲み会。









でも…………………







俺とエビちゃんヨシコさんたちの間でもうひとつ、絶対に欠かせないものがある……………






そう、それこそが俺たちの友情の証といえるアレ…………………










「さて、金丸さん、そろそろですかね。にやり。」



「さて、エビさん、アレは用意してありますか?あー今日の俺、マジキてる。」



「金丸さん、モノはこちらでよろしいでしょうか?」




テーブルの上にそっと置かれたモノ……………




それは…………………










「金丸さん!!手加減しないですからね!!




「ははは、それはこっちのセリフだよ、負けても恨みっこナシだからね、オービー君。」



「僕の名前はエビです!!間違えないでください!!」



「おっと失礼。」



「ちっ、ジジイ、わざと名前を間違えてイラつかせてやがる。根っからのギャンブラーだぜ。」←カンちゃん




そう!!!


俺たちの友情の証!!


それはニッパチ!!!!



ニッパチとはマージャンやウノに似ていながらも独特のルールを持つ高度なゲームで、相手の持ち手や捨てカードを常に覚え、表情を読み、時にはブラフも入れながらアガリを目指すという、ものすごく頭を使う非常に中毒性の高いゲームなのだ!!!!



あんまりメジャーなゲームじゃないこのニッパチ!!


前回の世界一周中、ニッパチを出会う旅人出会う旅人に教えていたんだけど、ルールがなかなか複雑なのであまりモノになる人がいなかった。


そんな中でもメキメキと頭角を現し、一番弟子となったのがこのエビちゃんヨシコさんカップル!!


俺のことを脅かすまでに強くなり、もはや猛者っていうか完全にジャンキーとなり、俺と別れた後もことあるごとに旅人たちにこのニッパチを普及していたという!!



金丸師匠、今日は3人、ニッパチを普及いたしました。明日はまた2人、普及する予定です。


というメールをいつもわざわざ送ってきてくれたりして、うわぁ、僕よりジャンキーって思ってたんだけど、実際俺もやりたくてやりたくてしょうがなかったんだよなぁ。


よーし!!ずっとやってなかったけど、久しぶりにカマスぞー!!




「金丸師匠…………あれから僕ら、普及した人数、50人は余裕で超えてます…………もはや師匠も過去のお人…………師匠の手札、何があるのか透けて見えますよ…………」



「お!!愚か者!!この私にかなうとでも思っているのか!!誰がこのゲームを教えたと思っているんだ!!こ、このオービー君め!!」



「ふふふ、私の名前はエビです。金丸さん…………それアタリです!!」



「きゃあああああああ!!!!エース入りいいいいいいいい!!!!!」











もうマジでビビるくらいクソ盛り上がって、時間も経つのも忘れて白熱した攻防戦。


ヨシコさんにアタられて、俺がエビちゃんにアタって、エビちゃん秘蔵の赤霧島とか出てきて、キャビアとイクラ食べて、アイリッシュウィスキー飲んで、柿ピーつまんで、また引きアガリして発狂して。


エビちゃんがかけてくれるBGMは俺たち世代の90年代ヒットメドレーで、ミスチルとかグレイ聴きながらまた発狂して。



うん、超楽しい。


アイルランド、初日にしてもはや最強に満足。


あああああああああ!!!!!!

楽しすぎるうううううううううううう!!!!

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