スポンサーリンク 憧れのスコッチの蒸溜所へ!! 2017/1/24 2017/01/01~スコットランド, ■彼女と世界二周目■ 2017年1月12日(木曜日)【スコットランド】 オバーン ~ キャンベルタウンふと何もかもが虚しくなってしまうことってきっと誰にでもあると思う。なんのために生きているんだろう、こんなちっぽけな一生にどれほどの価値があるんだろう。やりたいことに一生懸命打ち込み、大好きな人に囲まれ、順風満帆な未来があり、楽しい人生を送れている。それなのに、なぜか虚しくなってしまう。何も考えたくない、見たくないって塞ぎ込んで、空っぽになった心をぼんやりと見つめる。楽器のチューニングが合わないように、色んな感情がどうも不協和音になってしまう。そこに人生ってのはなぁ、なんて分かったような説教をされても腹が立つだけ。俺もたまにはそんな風にガタついてしまう時があるけど、それで病院に行ったり手首切ったりなんてところまではならない。すぐにまたやりたいことに立ち向かえる。誰でもきっと心が迷子になる時がある。そんな時は思いっきり泣くかなんかして心を洗えばいいはず。この迷いを弱さだと断じるやつの言葉なんて聞かなくていい。迷いがあるから魅力がある。そんな暗い小さな殻を開けて車から出ると、バラバラと氷が落ちてきた。夜のうちに車体が冷えてビッシリと氷で覆われていた。気温は1°Cくらい。でも相変わらず風がハンパじゃなくて、フィヨルドの海面がサーフィンができるくらいに波立っている。地面は雪というか霜というか、みぞれが風で冷やされてできた氷に覆われており、爽快ではあったけど少し不安にもなる。タイヤがスリップして海にダイブなんかしたらシャレにならない。とにかく慎重に慎重に走ろう。スコットランド西部は豊かな草原が広がる昨日までの風景から一変して、見事な雪国になっていた。山々も草原も、全てが白く染まっている。そして道路も真っ白。マジで勘弁してくれ!!ああああ……怖いよー怖いよー…………と全神経を集中させながらハンドルを握り、ゆっくりゆっくりと走っていく。カーブを曲がっていくと、道路脇の路肩に突っ込んでいるトラックがいた。さらにその先には道路から出て森に落ちてる乗用車の哀れな姿も。レンタカーを借りるとき、スノータイヤ?何それ?ってくらいイギリス人は雪道に興味がなさそうな様子だったけど、確かにみんな雪道の運転には慣れてなさそうだ。スコットランドでも、こんなに雪が積もってるのを見たのは今日が初めてだ。実はそんなに雪の多いところではないみたい。それに比べたらオーストリアは今マイナス10°C以下の極寒だ。今のイギリスの気温なんて秋にチロルを回ってた時と同じくらいのもん。イギリスの冬はそんなに寒くはない。やがて雪がなくなり、海岸沿いの一本道をどこまでも走っていく。荒れ狂った海、白波がたつ浜や磯、一本道と草原。ふと北海道を思い出させる荒涼とした風景。風の中にみぞれが混じって吹きつけてくる。草原には羊が散らばり、俺たちが速度を落とすとみんなで一斉にこっちを見てくる。もしゃもしゃと草を食べていたのをやめ、じーーーっとこっちを見てくる。そんなに人が珍しいのか。羊はそういう習性なのか。ボロボロに朽ちた小屋が雑草に埋もれている。生き物の気配のないこの最果ての地で、羊だけが静かに生きていた。あれは23歳。真冬の北海道を車で回っているとき、狩勝峠を越えて森を駆け抜け、釧路あたりで海に出てきた。海はキラキラと輝いて綺麗だったけど、漁師小屋の廃墟が多く、潮で錆びついてボロボロになった歩道橋が道にかかっており、とても寂しげだった。釧路湿原、屈斜路湖、知床、そして根室。道東の自然のダイナミックさは日本のどこにもないもので、そんな自然の中にかつて人が入植し、そして離れてしまった集落の跡地なんかを見つけると、心が震えたものだった。あの見知らぬ場所に向かう冒険心を今も持てているだろうか。朽ちた教会、海に面した墓地、ささやかな港町をいくつか通り過ぎ、やがて半島の南にある小さな町に入ってきた。それなりにたくさんの建物が並ぶ町は小さなものではあったけど、この人口の少ない西海岸では結構大きな港町だ。こんな遠い港町に来たのにはもちろん理由がある。このキャンベルタウンにはスコットランドを代表する有名なスコッチウィスキーの蒸溜所があるのだ。日本酒の蔵でもそうだけど、銘酒といわれるものはだいたい都市から離れた田舎にあるところが多い。日本一周をしているとき、各県を回りながら観光地だけじゃなく、酒蔵にもたくさん訪れた。酒蔵めぐりはただ美味しい酒を味わうためのものではなく、古びた屋敷や昔ながらのその土地の風土を垣間見られる生きた歴史探訪でもある。全国各地に散らばるその地に根付いた銘酒を探し求め、何十軒の蔵に行ったかわからない。こんなところに!?ってビビるような田舎の町やひっそりとした山の中に蔵の煙突が立っているのを見つけると、まるで秘密のお宝を発見したような気持ちになったもんだ。旅先で酒蔵に行き、杜氏さんにお話をうかがいながらお酒を手に入れ、夜に車の中でエアコンの暖房で燗をつけ、これまた各地の窯元で買ったぐい飲みで晩酌をするってのが日本一周の大きな楽しみのひとつだった。あの大好きな酒蔵めぐりをこのスコットランドでも出来るかと思ってずっとワクワクしていた。最果て感漂うキャンベルタウンは、そうしたロマンある酒蔵めぐりを求める者にとってぴったりのロケーションだ。いやぁ!!これはテンション上がるわ!!!そんでもってこのキャンベルタウンで目星をつけていたのはスプリングバンクという蒸溜所。日本酒の蔵はたくさん回ったけど、スコッチウィスキーに関してはまるで知識がないので、ネットでスコットランド中の蒸溜所を調べて優れたウィスキーを作っていると評判のこの場所をテキトーに選んだ。日本でも見学に行ったのは京都にある山崎の蒸溜所くらいだ。それにしてもウィスキーってやっぱり憧れの飲み物だよなぁ。ジャズの流れるバーでタバコをくゆらせながらカッコよくバーテンさんに、スコッチのシングルモルトをダブルで、なんて注文して人生の酸いも甘いも噛み分けたような顔してグラスを傾ける………そんな大人の世界に憧れて頑張って安ウィスキー飲んでゲボ吐いて死んだこと何回あるだろ。正直、10万のウィスキーと3000円のウィスキーの味の違いとかわからん。でも、ヨンチャでカッピーとうだうだビール飲んでるのも楽しいけど、やっぱり大人の男になるためにウィスキーのひとつくらいカッコよく注文できる男にならねば!!そして日本に帰って素敵なエロ40代の女性とジャズの流れるバーに行った暁には、マスター、トリスの10年ものをダブルで………って超知ったような顔して注文して、金丸君ってウィスキーに詳しいのね、素敵!!ってなって、その後ホテルでエロ40代のトリスをクリス!!「へー、そういうののためにウィスキー勉強するんだー、ふーん。」「ち、違うに決まってるじゃないか神田さん!!なにを言ってるんだねまったく!!やっぱりトムウェイツ好きとしてはウィスキーくらい飲めないとキマらないよね!!本当エロ40代とか地球の宝だよね!!」「あ、あそこにスプリングバンクって書いたーるよ。行こ行こー。」お酒大好きカンちゃんも楽しみにしていたこの蒸溜所見学。さぁ行くぞー!!と、スプリングバンクの敷地に入っていきオフィスの中で話を聞いてみると、どうやらここでは見学ツアーの受け付けはしていないようで近くのショップに行ってねと言われた。そうして教えてもらった通りに町の中を歩いていくと、5分くらいのところに1軒のウィスキーショップを見つけた。中に入ると簡単なお土産物が置いてあるビジターセンターみたいになっており、どうやらここで見学ツアーの申し込みをするみたいだ。「ハーイ、スプリングバンクの見学?でもツアーは朝の10時からと13時半からの2回なのよ。」すでに時間は15時前。うーん、仕方ない。見学は明日にするか。でも蒸溜所見学は明日だけど、ウィスキーのテイスティングは今からでも出来るみたいだった。ちなみにツアーもテイスティングもそれぞれ申し込み代がかかる。だいたい日本酒の蔵見学ってのはどこも無料だ。そして見学の最後にはこれまた無料でお酒の試飲もさせてもらえるもんだけど、スコットランドではそうもいかない。蒸溜所の見学が1人7ポンド。980円。テイスティングが1人15ポンド。2100円。見学に関しては2人で来れば1人分無料というサービスもあるようだけど、それにしてもなかなか高い。両方やったら37ポンドだ。5200円。パブに行けばそこそこ飲める金額。しかしここまで来たからにはテイスティングもさせてもらおう!!ウィスキーの似合う男になってメガネエロ40代の前でイキってスコッチを注文しなければ!!というわけでテイスティングさせてもらったわけだけどこれが大正解。1人15ポンド以上の価値あるウィスキーを6種類も試飲させてもらえた。ショップの奥にある素敵な家具が並ぶテイスティングルームに通され、そこで専門家のお兄さんにマンツーマンで説明をしてもらいながらスコッチウィスキーを味あわせてもらえた。このキャンベルタウンには現在3つのウィスキー工場があり、スプリングバンクが1番古い蒸溜所とのこと。このスプリングバンクのように製造から出荷まで全ての工程をやっている蒸溜所は結構珍しいんだそうだ。驚いたのは、俺たちが日本人だと言った時にお兄さんが教えてくれたことで、この町の蒸溜所でかつてあの竹鶴さんが働いてたんだそう。ニッカウィスキーの始祖であり、日本ウィスキーの父といわれるあの竹鶴さんだ。そいつはすげぇ。やっぱりウィスキーを愛するものにとってこのスコットランドは聖地だ。ウィスキーは確かに美味しかった。ハチミツの甘さ、まろやかさの後にスモーキーなフレイバーが鼻からブワリと抜けていく。ていうか俺みたいなやつが飲むにはもったいないボトルばっかりだったんじゃないかな。これは世界に1万本しかないボトルだよと言われてめっちゃビビっていたら、最後に出てきたボトルはなんと世界に276本しかないものだった。そんな貴重なものこんな猿に飲ませていいの!?!?「ウィスキーって何年も熟成させた古いものが美味しいとか重宝されるイメージですけど、そういうものなんですか?」「そうとは限りませんよ。僕はどっちかといったら新しめのもののほうが好きですしね。」「ブレンデッドウィスキーって何種類のウィスキーをブレンドするんですか?」「ものによりますけど少ないものは2種類、多いものだと11種類ブレンドするものもありますよ。シングルモルトもいいですが、地元の人間はブレンデッドウィスキーのほうを好んで飲みますね。」お兄さんの丁寧で楽しいお話をお聞きしながら6種類もテイスティングしていたら、それぞれちょびっとずつしか飲んでないのにどんどん楽しくなってきた。この前エジンバラで500万のスコッチウィスキー見ましたけどヤバいっすよね!!って話したら、うちには750万のボトルがありましたよって言うお兄さん。はあああああああ!!!!750万!!!!!なにそれ!!!!!家買えるし!!!、そしてなんと先日、中国人がやってきてその750万のボトルを買ったそう。スプリングバンクの人たちも、ええ!?あれマジで売れたの!?って超ビビったんだそうだ。さすがは中国人…………恐るべし……………貴重なウィスキーを飲ませてもらい、お兄さんのお話もためになり、めっちゃ楽しいテイスティングで2人ともご機嫌になってショップを出るとすっごい雪が降っていた。地面が真っ白になっており、もうただの雪国。「さみいいいいい!!!テンション上がるうううううえ!!!!」「楽しいねええええ!!!このまま飲みに行きたいいいいい!!!」2人ともウィスキーで気持ちよく酔っ払い、雪が降るキャンベルタウンのささやかな町の中を歩いた。火照った顔に冷たい風が心地よくて、ただの散歩がすごく楽しい。寂れたメインストリートも、船が浮かぶハーバーも、何もかもが雪に覆われて黙りこくっている。すごく遠いところまで来てるんだよなぁ。こんなところでこんな美味しいお酒が作られているんだもんなぁ。お酒っていいなぁ。あー!楽しいいい!!浮かれポンチの図。