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物乞いも工夫すれば感謝されながら稼げるはずなのに

2016年10月20日(木曜日)
【オーストリア】 フェルトキルヒ






最近朝マックにはまってます。





ハッシュドポテト、ベーコンマフィン、それにカプチーノを頼んでたったの3ユーロ。340円。


安すぎ。そして美味しい。

日中のバーガーメニューは食べる気しないけどマフィン系は結構美味しい。




マックって店舗によって結構値段も変わって、バードイシュルではこのメニューで5ユーロした。このフェルトキルヒでは3ユーロだ。




朝からメールのチェックをして、それから隣にあるスーパーマーケットのメルキュールでお買い物。


このメルキュール、お会計をセルフサービスでやれる機械があったんだけど、嬉しいことにコインを全て受け付けていた。

よっしゃ!!とここぞとばかりに10セント以下の赤コインを投入しまくった。


だいぶ財布が軽くなったぞ。




フェルトキルヒ、生活基盤が整っていくなぁ。

小ぢんまりとなんでも揃ってて過ごしやすい町だ。












今日もギターを持ってホコ天のショッピングストリートに行くと、古めかしい映画のセットみたいな町中をたくさんの人が歩いていた。

くすんだ石造りのビルディングが人々の話し声を響かせている。















もうマジで、最近の俺の晴れ男っぷりすごい。

今日も本当は雨予報だ。

なのに太陽が出てとても気持ちのいい天気。

おかげでカフェのテラス席はたくさんの人々で賑わっている。

完璧だ。






ちょっと気になるのはジプシーの新聞売り。

若い年頃の女の子が2人で新聞を持って通行人に声をかけて回っている。

誰も相手にしていないようだけど、きっと稼げるからやっているんだろう。


まぁ気にせずやるとしよう。


ギターを取り出して丁寧に演奏を開始。






























今日も反応はいい感じ。

カフェのテラスから拍手が起こり、ほぼ全てのお客さんがチップを入れに来てくれる。

通行人も足を止めてくれ、常に人だかりがたえない。




たえないんだけど……………




そんな歌を聞いてくれてる観客に対して強引に新聞を売りつけて回るジプシーの女たち。

財布を取り出してくれてる人や、すでにコインを手を持っていつギターケースに入れようか歌を聞いてくれている人たちに売り込みにいけば簡単にお金がもらえると思ってるんだろう。


あいつにもあげるんだから私にもちょうだい、という理屈だ。




しかし当たり前だけど、人々はパフォーマンスに対してチップをくれている。

つきまとってくるジプシーを無視してギターケースにお金を入れてくれ、笑顔でシェアシューンと言って去っていく人々。



ジプシーたちは手当たり次第に観客たちに寄って行くが、誰もジプシーにはお金はあげずに、みんな俺のギターケースにだけチップを入れて行ってくれる。


その様子を苦々しく見てくるジプシーの女。


今歌を聞いてるところでしょうが!邪魔しないで!!と話しかけてきたジプシーを怒ってるおばちゃんもいる。




そうしてただ単に邪魔者扱いをされ、追い払われるだけのジープス。


地べたに座り、うつろに紙コップを振っている。



なんでなんの工夫もしないんだろう?


お金ちょうだい、お腹すいた、祖国に子供いる、お金ちょうだい、それだけで稼ぐにはやり方が一本調子すぎる。




路上にいれば、きっと色んなパフォーマーを見るはず。ヨーロッパならば日常的に。


こんなに若い、20歳にもなってないくらいの女の子ならば、まだ色んなことを覚えられるはず。


例えばゴミを拾うだけでいい。

ごきげんよう!って明るく笑顔でみんなに挨拶しながらタバコの吸殻なんかのゴミを拾って回っていたら、きっとヨーロッパの人たちはありがとうって言ってチップを渡す。


町が明るくなって、みんながいい気持ちになる。


なのに彼らは地べたに座って病気の子供が写ってる嘘の写真を手に持ってプリーズプリーズ言ってるだけだ。

普段はなんともなく歩いているのに紙コップを持った途端、身体障害者のフリをして足を引きずって歩いて情をひいているだけだ。




あぁーもう、イラつくなぁ。なんでなんだろうなぁ。

必ず人生変えられるはずなのに。









ひと回しを終えて休憩していると、通りをうろうろしているジプシーの女が新聞片手にこっちに近づいてきた。


わかってる、お金をせびりに来たんだろう。


そして予想通り、女は俺の前に来てドイツ語で金をくれと言い出した。


また言い方がめっちゃ横柄。


おい、金くれよ、なぁ、早くよこせよくらいの顔で堂々とギターケースの中のお金を指差してくる。


俺が今、一生懸命歌ってパフォーマンスして、オーディエンスのみんなからいい歌をありがとうって言っていただいて稼いでいるところを目の前で見ていたのに、よくもそんなことが言えるなと呆れてしまう。


英語喋れないの?英語じゃないとわからないよと言っても、ニヒ、イングリッシュと言ってただしぶとく金くれ金くれと言い続けてくる。


彼らの戦法のひとつだ。

しぶとくつきまとい続けたら、根負けしてどっか行ってもらいたくて金を渡す人もいる。




この女が何かしらのポジティブなものを与えてくれるなら俺も喜んでお金をあげる。

でも、芸で稼いでる身からしたら、やっぱり何もしないやつにはお金は渡せない。


横柄に金くれや?と言ってくるだけで、もはや新聞を売ろうともしてないやつにあげる金なんてあるわけない。



無視し続けていたんだけど、その時、女が言った言葉が耳に入って驚愕した。


フンフユーロ、と言っている。




5ユーロだと!!!!!?????


頭おかしいんじゃねぇかコノヤロウ!!???!!!



物乞いで5ユーロをせびるってどんだけ横柄なんだよ!!!信じられねぇ!!!


だいたい普通の物乞いは、それが相場かのように紙コップに50セントコインだけを入れている。

でも実際は50セントも入れない人がほとんどだ。


1ユーロ入れる人もいるだろうけど、だいたい10セントとか20セントコインが多いと思う。



それを5ユーロて……………



あまりにも驚いてその女を見ていると、それからも2~3回5ユーロくれよと言ってから諦めて歩いて行った。



でもその後も俺の周りをウロウロして、近づいてきては5ユーロくれよ、なぁ、とせびってくる。


休憩を終えて演奏を開始してからもずっと目の前に立ってギターケースの中の金を指差して金くれ金くれとしつこい。



マジでこのボケ…………と思っていると、歌を聞いてくれていたおじさんがそのジプシーの女に結構強めの語調で何か注意してくれ、それで女は離れていった。


しかしそれでも少し離れたところからこちらを睨んでいる女たち。


こうなるとカンちゃんが少し心配になる。


逆恨みをされて弱いカンちゃんのほうに何か危害を加えてきたりしないだろうかと考えてしまう。

その時はなんとしても俺が守らないと。









すると向こうからお巡りさんが歩いてきた。


別に何かの要請があったからという雰囲気ではなく、ただの見回りのような感じだ。


しかしそのお巡りさんを見た瞬間、ジプシーの女たちはそそくさと逃げていった。


何かやましいことでもあるかのように。



ジプシーの人たちの中でも、笑顔で明るくフレンドリーにやってる人はたまにいる。

町の人に陽気に話しかけて、お金をもらえなくても礼儀正しく、良い1日を!と挨拶して引き際も綺麗。

そんな人はやっぱりよくお金を渡されている。


さっきの女みたいに、オラ、そんなに持ってるんだから少しくらい分けろよ、って横柄に来られても誰もいい気分はしないよ。
















ジプシーがいなくなってから、またカフェのお客さんたちに拍手をいただきながら歌っていると1人のおじさんが話しかけてきた。



「素敵なパフォーマンスだね!!君の歌はタッチマイハートだ!!いつもどこで寝てるんだい?」



「ありがとうございます!!車の中です!!」



「そうかいそうかい!!寒くはないのかい?」



「布団いっぱい積んでるから大丈夫です!」



「なるほどね!でもシャワーはなかなか浴びられないだろう?シャワーだけでもうちに浴びに来ればいいよ!!」



「うわああああ!!本当ですか!!」



「君たちはナイスカップルだからね!!シャワーくらいいつでも浴びに来ればいいさ!!ハハハ!!」




笑顔がめっちゃ素敵な白髪のおじさんはハルバルトさん。

路上を終えてから来ればいいからねと住所を教えてくださり、颯爽と自転車に乗って去っていった。

英語もネイティヴ並みに堪能で、優しさオーラ全開の人だ。

マジでありがたい。















素敵な出会いがありながら楽しい路上を今日も3時間。


ギターケースにはユーロには混じってスイスフランも入っている。

ここからわずか2~3キロでリヒテンシュタインだもんな。


あがりは310ユーロと2.3フラン。計35300円。








テコンドーはヨーロッパで大人気。














晩ご飯はここでいいかーとテキトーに決めたチャイニーズレストランがめちゃくちゃ残念な結果で、美味しくないチャーハンと焼きそばを高い値段で食べ、気を取り直してそれからハルバルトさんのお宅に向かった。


リヒテンシュタインとの国境からほんのすぐのところにある郊外にやってくると、緑の多い住宅地の中にハルバルトさんの家があった。


ハルバルトさーん!と外から呼ぶと、2階からベランダに出てきて手を振ってくれたハルバルトさん。


少し家の周りを案内するよと散歩したんだけど、木々に囲まれた林の中には川があり、湖があり、カモがグァグァ言いながら可愛く歩いていた。

すごい自然に囲まれたお家だなぁ。





ヨーロッパの人たちって本当それぞれの家にこだわりがある。

オシャレなインテリアであったりガーデニングであったり、みんな自宅に対する思い入れがすごく強い。

そして驚くのはそれらをみんなよく手作りで作っていたりすること。


イカしたお家だなぁ。















「タオルはこれだから!!好きなだけエンジョイしな!!バスタブももちろん使いまくりOKだぜ!!」



シャワールームに連れて行ってもらったんだけど、なんとなんとシャワーの横にバスタブがついており、え?これ?お湯、ためる?とインディアン嘘つかないみたいな話し方になりながらお湯をためてダイブ!!!



オパアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!


波紋くらって溶けるときみたいな絶叫を林の中に轟かせて放心。

骨の髄まで放心。



こんなん神しかやったらいかんやろ………………


日本人ってなんて贅沢なんだ、っていうか日本人ってちゃんと疲れのとりかた知ってるんだよなぁ……………


湯船につかるって本当すごい喜びだなぁ…………


めっちゃリラックスできた!!!!













お風呂から上がるとハルバルトさんの奥さんが帰ってきていた。奥さんもまためちゃくちゃ素敵な人で、お喋りが楽しくてお互い会話が止まらない。



「フミ、ナオ、ごめんな、俺たちこれからちょっと出かけなきゃいけなくて悪いけど晩ご飯を誘うことはできないんだ。ごめんな。」



とんでもない!こちらこそお忙しいところにお邪魔させてもらってすみませんでしたとこの辺で帰ることに。




「んもう!!シャワー浴びてすぐに帰っちゃうだなんて残念よ!!いつまででも話していたいのに!!フミ!!ナオ!!また遊びに来てね!!」



「そう!シャワーが浴びたくなったらいつでも来ていいんだからね!!あ、そうそう、これ2人にプレゼントだ!!」




なにやらいろんな種類の紙と鳥の羽を収集するのが趣味だというハルバルトさん。

小さな美しい羽が入った小瓶を俺とカンちゃんそれぞれに渡してくれた。


あ!ちょっと待ってて!!あ!あれも!!と、玄関先まで来てから何度も家に戻っていってはセーターや果物なんかを持ってきてくれるハルバルトさん。



最終的に両手でも持ちきれないくらいのたくさんの優しさをいただいてしまった。




「じゃあ、元気でやるんだよ!!」



最後に2人とハグしたんだけど、ハルバルトさんの大きな体で抱きしめられるとすごい安心感に包まれた。

ギュッと力を込めてくれるその腕の力がすごく愛に溢れていた。

















「あぁ…………素敵な人たちだったねぇ……………」



「ハグに愛が溢れてたね…………ハグっていいなー…………」



お風呂をいただき、たくさんの優しさのこもったプレゼントをいただき、身の心も芯まで温まっていた。


車の中は少し冷えていたけど、おかげで体がポカポカしているのを実感できる。



あぁ、出会いっていいなぁ。

人の優しさって素晴らしいなぁ。


物乞いの人に無条件で分け与えられるような気持ちってきっとかなりハイステージな優しさなんだろうけどなぁ。


でも俺は俺の気持ちに正直でいよう。


素敵な人間になれるようにもっと色んなことを学ばないと。

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