スポンサーリンク 車中泊の夜の怖い出来事 2016/10/28 2016/09/07~オーストリア②, ■彼女と世界二周目■ 2016年10月17日(月曜日)【オーストリア】 インスブルック「美味えええええええええええええええええええええ……………………」絶叫がアルプスのキャンプ場に轟きました。3日前のリンダおばちゃんのおかげでヨーロッパではカレーが簡単に出来ることが判明。スーパーマーケットに行ったら瓶入りのカレーが売っており、鍋で温めるだけでオーケーという手軽さ。味もかなり本格的だ。これに玉ねぎとジャガイモと豚肉を加えて朝からポークカレーを作ってくれたカンちゃん。お米も鍋炊きをマスターしたようで炊き加減バッチリだ。ウッマ!!と朝からカレーをやらかしてる俺たちを、パンとチーズとハムを食べてる欧米人たちが微笑みながら見ている。そう!!まだ朝から焼肉イケます!!トンカツも!!!お腹いっぱいになったら親の仇のごとくもう一度シャワーを浴びて綺麗に身だしなみを整え、これで週に1回のご褒美キャンプ場は完了。また今週1週間いっぱい頑張るぞ!!キャンプ場を出発して長い下り坂を下りていく。キャンプ場があったのはおそらく河岸段丘の段の上だ。平地のように見えていきなりズドンと落ち込んでおり、その下にインスブルックの町が広がっている。さすがにチロルで1番の都会だ。なかなか大きい。目の前に迫る屏風のような山は、町を外界から隔絶しているかのようにそそり立っており、すごいロケーションの町だなとワクワクしてくる。どんな町なんだろう!来る前からこのインスブルックはなぜか素敵な町のような気がしていた。なんせこの美しいチロル地方にある唯一の大都市だ。九州育ちの俺からしたらまるで福岡のような感覚になって親近感がわく。そしてインスブルックは予想通りに素晴らしく美しかった。チロル地方を横断するイン川沿いに形成されている町は、確かに福岡みたいな、地方の大都市といった穏やかな活気が漂っていた。大きなビルディングが並ぶ駅の周りに駐車場を見つけ、1時間1ユーロで止めてギターを持ってのんびり歩いた。現代的な建物が多い駅前から中心部に向かうと、やがて古めかしい建物が増えていき、そんな石造りの建物の隙間から壁のようなアルプスの山並みが覗いている様子はとても郷愁を誘う。人の数もとても多く、店も活気があって久しぶりの都会の雰囲気に心がわきたつ。そんな中、物乞いの数が半端じゃないのも目につく。通りの角ごと、バス停ごと、スーパーマーケットの入り口ごとに配置が完了しており、みんな気合いの入ったポーズで紙コップを差し出している。しばらくしてホコ天エリアにやってくると綺麗な広場があり、中央にたつ銅像の周りをたくさんの人が歩いていた。大きなシャボン玉を作るシャボン玉パフォーマーが子供の人気を集めているのがすごく感じがいい。そしてそこから細い路地に入り込んだら、一気にタイムスリップ。もうすごい。あみだくじみたいに細い細い路地がいたるところにのびているんだけど、建物はすべてが古びてくすんでおり、ひなびた迫力が滲み出していた。壮麗な彫刻が壁一面に施された建物、色あせた絵が大きく描かれた建物、重厚できらびやかで、でも歴史をどこまでも感じさせる寂しさがある。ヨーロッパの町は中世まみれどけど、ここは久しぶりに見る映画のセットレベルの中世っぷりだ。まさに石のアート。街全体が良くできた芸術品だ。そんな美しい町につきものなのはもちろん中国人観光客。すごい団体でワラワラ歩いている。インスブルックってこんなにも完成された観光地でもあったんだな。めっちゃいいわ。1発で気に入ってしまった。そんな観光地ならば路上パフォーマーももちろんいるんだけど、目につくのはピエロ系の人くらいだ。中世風の衣装を着、顔を白塗りにした魔法使いみたいなおじさんが指先を妖しく動かして雰囲気を演出しながら通行人にアピールしている。ふーん、まぁいつもの感じだなーと通り過ぎていくと、そのおじさんのちょっと先にめっちゃイカしたパフォーマーがいた。透明人間。こりゃアイデアだわ。イカしたパフォーマンスに1ユーロ。よーし、そんじゃあ俺もこの大好きな町で路上やってみるか!!1番のベストポジションはすでに魔法使いと透明人間が陣取っているので色々歩き回ってみるんだけど、ちょうど旧市街エリアの真ん中で石畳の工事をしており音楽系のパフォーマンスはできそうにない。仕方ないので、声は響かないけど広場の一角でやることに。かなり道幅が広いので通行人全員をカバーすることはできない。忙しく行き交う都会の人々の中、ギターを構えると、なかなか違和感だ。俺はこの町に受け入れてもらえるのかな。気合いを入れてギターを鳴らした。めっちゃ反応いい。常に人だかりができ、1曲ごとに拍手がおこり、コインが入る。斜め前にカフェがあるんだけど、そこのテラス席からわざわざチップを入れに来てくれるお客さんもいる。マジでこの町バッチリだな。程よい都会でなんでも揃ってて、周りに驚くような大自然があり、歴史の香りも漂っている。しかも路上の反応もバッチリだ。やったぜインスブルック最高だなって、拍手をもらいながらひと回しを終えたところに、ヘイメーン、グッジョブだぜメーンと、犬を連れたガラの悪そうな兄ちゃんが話しかけてきた。2人組で缶ビールを持っていて、モヒカン頭、どうやらよくいる物乞いの兄ちゃんだ。物乞いって言っても路上に座って仲間とビール飲みながら目の前にコップを雑に置いているというタイプの人たち。ジプシーではないけど、彼らもきっと流れ者か。別に害はないのでそのまま休憩に入ると兄ちゃんたちが話しかけてくる。うーん、本当に害はないしいい奴らなんだけど、彼らと一緒にいると周りの目が気になる。同じ路上で生きるものではあるけど、ガラの悪い物乞いの一員と思われるのはちょっと心外だ。そんなところに警察登場。何も言われてないのにすかさず警官にパスポートを渡す物乞いの兄ちゃん。きっとウンザリするほど職務質問に慣れてるんだろうな。「あなたここで何してるの?」「音楽の演奏をしています。」「あなたカンファメーションは持ってるの?」「カンファメーション?確認書?パーミッションのことですか?」「そうよ。」インスブルックでの路上は今日が初日。もちろんまだライセンスは持っていない。なかなか高圧的な婦警さんが詰め寄ってくる。隣にいた男性警官は話のわかりそうな人で、この町では音楽パフォーマンスはライセンスが必要で、向こうの建物でパーミッションが取れるということを教えてくれた。20ユーロだということも……………高えよ…………2300円て……………警察たちは去って行ったけど、ライセンスがいるということを聞いた以上もうできない。20ユーロが1日券なのか1週間券なのかわからないけど、あんまり長く滞在する予定のないインスブルックでこのライセンスは買う気にならない。あー、いい町だったのになぁ。残念だなぁ。ヘイメーン!!警察の言うことなんか気にすんなメーン!!あっちの旧市街の中なら問題なしさメーン!!と兄ちゃんたちが言ってくるけど、今日はやめとくよとギターを片付けた。そうかい!じゃあ頑張ってな!!と兄ちゃんたちは少し離れた路上に座り込み、釣り人が絶妙なポイントにリールを投げるようにポイッと目の前に箱を放り投げ、物乞いを開始した。見事な手際だなぁ。あがりは1時間で71ユーロと10ドル。時給9000円。ぐぅ………いい町だったなぁ。気を取り直して次の町だ。プライマーク安すぎ。尋常じゃない。この前H&Mで買った革靴は5000円くらいという安さだったけど、プライマークなら2000円くらいだ。しかもオシャレだからすごい。少し町を散策して車に戻ってからテキトーにそこらへんでケバブを食べ、インスブルックを出て郊外の幹線道路沿いにパーキングスペースを見つけてそこに車を止めた。幹線道路沿いのパーキングスペースは、すぐ目の前を車が走り抜ける音がして気になってしまうのであんまり選ばないんだけど、今日は疲れていたのであんまり場所を探す気になれなくてここに決めた。荷物を移動し、寝床を作り、さぁあとはのんびりビール飲みながら映画でも見ようかーと後ろのドアをカンちゃんが閉めようとした時だった。向こうから車が走ってきて、そのヘッドライトで、ドアを閉めようとしているカンちゃんが照らし出された。あ、マズイな、と思った。女の子がいることを見られてしまった。すると…………いきなり不自然な動きで車はスピードをゆるめてパーキングスペースに滑り込んできた。そしてこんなに何台も止めるスペースがあるパーキングの中で、俺たちの車の真横にピタリと止めてきた。おいおい、なんだこいつ?とすぐに電気を消してドアをロックする。真横にいるんだけど向こうも電気をつけていないので暗くて車内の様子はわからない。でもおそらくこっちの様子をうかがっているはずだ。まぁ、気にしないでいいか、オーストリアは安全な国だし、と映画を見始めたわけなんだけど…………その怪しい車、いきなりバックして回りこみ、今度は俺たちの車の反対側の真横にまたピタリと止めてきた。なんなんだよこいつ…………面倒くせえなぁ……………するとちょっとしてから車はバックして道路に戻り、走って行った。もう、ビックリさせんでくれよ。カンちゃんもドキドキしていたみたいだった。それから30分くらいかな。楽しく映画を見ながら、完全にくつろぎモードに入っているところだった。また1台の車がこの広いパーキングスペースの中にやってきて、俺たちの車の真横に止まった。もうダメだ。さっきと同じ車だ。カンちゃんがパジャマで車のドアを閉めようとしたところをこの車の運転手はバッチリ見ている。おそらく車の中の寝床も見えただろう。この中で今から寝るということを教えたようなもの。女の子が。このドライバーが何を考えてるのかはわからない。窓越しにうっすら見えるのはおじさんだということ。このオーストリアだ。女の子が車中泊しようとしてるのを心配して、大丈夫かい?と声をかけにきてくれてるんじゃないか。1度走り去ってから戻ってきたのも、何か家に差し入れでも取りに帰っていたんじゃないか?でも、もしかしたら取りに戻ったのはナイフかもしれない。女の子が車中泊しようとしてる、そうして家にナイフを取りに戻ったんだとしたらどうしよう。真横の車はエンジンを切って黙ってそこにいる。ダメだ、ここは移動しよう。寝床も作ってくつろぎモードだったので、もう荷物の移動とかしたくないけど、ここは俺が判断しないといけない。「カンちゃんは外に出ないで。中でじっとしててね。」「う、うん。」俺1人で車を降りて隣の車を見た。かかってきやがれ。ウドンデイからのロッパガエシくわらしてやる。するといきなりヘッドライトがついてすぐに動き出し、その車は逃げるように走り去って行った。男が出てきてビックリしたのかな。なんにせよよかった。いや、よくない。もしかしたら仲間を呼びに行ったのかもしれない。すぐに荷物を移動して車のエンジンをかけてそのパーキングを離れた。夜の道を走り抜ける車の中は暖房がきいて暖かい。ヘッドライトがアスファルトを照らしている。「あぁぁ、怖かった…………フミくんがちょっとでも怪しいと思ったらこれからも移動しようね。」いつもホームレスに取り囲まれたり、ヒッチハイクの車の中でピストル出されたりしてきた俺がいうのもなんだけど、それなりに危険予知能力はあるほうだと思う。おかげで大きな怪我をしたこともない。今はカンちゃんがいるんだからさらに慎重にならないといけない。カンちゃんがドアを閉めるところを見られたのは迂闊だった。俺も野宿する時は必ず人に見られないように寝床を決めていたのにな。やっぱりヨーロッパ続きで少しは感覚がなまってるのかな。気を引き締めよう。夜の闇の中、山の麓にオレンジ色の教会が浮かび上がっていた。あそこで寝ようかとハンドルをきった。