スポンサーリンク 小さな港町の絆 2016/8/28 2016/08/16~デンマーク②, ■彼女と世界二周目■ 2016年8月18日(木曜日)【デンマーク】 ボーゲンセ起きてリビングに行くとマークノプラーのギターが流れていた。この人のギターも分かりやすいよなぁ。「フミ、グッドモーニング!ダイアーストレーツは好きかい?私は彼のギターが大好きでね。このCDを見てごらん、チェットアトキンスとのセッションアルバムでね、これはあれでうんたらかんたら…………」音楽が大好きなベンツさん。最近では楽器のリペアにもハマっていて、楽器屋さんでジャンク品を買ってきて直したものを家の中のあちこちに飾っている。中には70年代のクリーム色のストラトキャスターもあって、自慢げに見せてくれた。フミ、お前ならこれの価値がわかるだろう!って感じで。「もうー、朝からこんなに大きく音楽かけてー。はい朝ごはんですよー。」いつみさんがリモコンをとってマークノプラーのギターを小さくするとオーゥと悲しそうな顔をするベンツさん。素敵なコンビだなぁ。半屋外になっているリビングはこれまたベンツさんが全て作ったもの。前はここはただの外だったんだけど、壁と天井と床を設置して家を広げてしまったんだそう。窓がたくさんあって光をいっぱい取り込み、とても明るくて気持ちいい。そんな中で美味しい朝ごはんをいただいた。可愛らしいパンをナイフでふたつに切り、そこに色んな種類のチーズを乗せてかじりつく。卵とベーコンの塩気が朝の喉に優しくて、久しぶりの牛乳を飲んだらなんだか昔を思い出した。なんだろ、とても心が和む。いつみさんとベンツさんといると、なんだか昔からの知り合いのように親近感がわく。同じ宮崎出身ってのもあるんだろうな。ところでチバ大三って人がいるんだけど、だいぶ頭のオカシイ人なんです。下半身に黒いタイツを履いて、頭に炭鉱夫とかがつけるヘッドライトを装着して、足首に鈴をはめて、ギュオオオオウウウエエエエエエ!!!!って叫ぶ人。それを市役所でやってたらただの変人だけど、ライブハウスでやるからアーティストになる。いや、やっぱり変人か。セミアコをかき鳴らしながら目をひんむいて、ギャアアアアアアアアンンウウンンピピハサ!!!とかそんな感じです。最初チバ大三を見たとき、お母さん都会怖い……って思いました。変ないる………って思いました。でもそのチバ大三が主宰している独唱パンクってイベントを見たら、もうそこは変な人まみれ。アリスインワンダーランド。全身タイツで詩の朗読をしてる人とか、可愛い女の子がパンツ糞まみれー!!パンツ糞まみれええええ!!!って叫んでたり、ウネウネなんか動いてたり、宮崎市の町で、明けがたによく見かけていた、全身ピンク色の服で頭にひまわり乗せたイカれたあのオッさんが普通に見えるレベルの人たちがライブハウスで唐揚げとか食べてて、本当お母さん都会怖い………って思いました。独唱パンクってのは音楽だけではなくて、1人で、型破りなことをしてる表現者ならジャンル問わずに出演できるという、半端なくディープなイベント。弾き語りやってるヤツなら1度は耳にしたことがあるはず。イカれの集団って普通の人は思う。でも表現を突き詰めていった先に、そういった難解で過激な方向に進むアーティストももちろんいる。みんなこだわりの塊みたいなモンスターたち。表現をしているのに普通なの?愛とか恋しか表現することないの?変じゃないのが変。型をぶち壊してこそアート。イカれてこそ美しい。そんな独唱パンクに出させてもらった時、チバさんが自分のステージの時にお兄ちゃんという歌を歌っていた。お兄ちゃああああああんんん!!!!!待ってよおおおおおおお!!!!お兄ちゃんの背中が揺れるううううううううう!!!!高圧電線の下を自転車こぐうううううううう!!!!!!お兄ちゃああああああんんん待ってええええええ!!!!!っていう、歌っていうか寸劇っていうかなんかよくわからんやつがあって、不覚にもカッコいいなと思ったあの日。今はあんな独唱パンクに出られるような型破りなことはしてないけど、20代の頃に弾き語りってなんなんだろう?って突き詰めまくっていたことはすごくいい経験になってる。アートに狂気は時として必要。というわけで自転車乗りましょう。自転車とか久しぶりすぎる!!!カンちゃんのチャリ姿がおばやんみたい!!「フミ君、気をつけてね!デンマークの自転車って変わってて、ペダルを後ろに回したらブレーキがかか…………」「ウヒョホーイ!!自転車自転車楽しいぜえええ!!!えっ!なにこのブレーキ!!えっ!!ピギャアアアアアア!!!!」顔面からアスファルトにロケットダイブして前歯が折れて番町皿屋敷で帰国、にはならずに器用に乗りこなす美々津出身。というわけで4人でこのボーゲンセのサイクリングへ出かけた。いつみさんが大好きだという町の中の水路横の小径を通り、メインストリートに出たら、坂の上に見える変わった建物。壁や屋根が歪んでて、相当歴史のありそうな建物だ。ちなみに昔の文献で見たらこれ。なんも変わってないからヨーロッパすげぇ。役所とか、博物館とかそんな建物なのかな?とイメージするけど、実はこれ家具屋さん。さすが北欧。外観は中世みたいなくせに、中はめっちゃモダン。モダンっていうか椅子が一脚で6万超えってどういうことですか?6万の椅子に座ってる人と友達になれる自信ない。北欧の家具にかける根性半端ないよなぁ。実際めっちゃ体にフィットするし。色合いも素材もめっちゃオシャレだし。めっちゃ高いけど。この椅子10万超えです。こんな田舎の家具屋さんなのに品揃えも値段も半端ないぜ…………と中庭に出ると、何やらイベントの準備をしている店員さんたち。「これはね、ここにケンさんっていうスタッフが働いているんだけど、彼が20年勤続しましたっていうパーティなの。新聞にも出るのよ。」ケンさんが20年働いたからパーティするからみんなで祝いましょうって、なんてほのぼのした町なんだ!!素敵すぎる…………「日本では赤ちゃんはコウノトリが運んでくるって言うじゃない。デンマークでもね、赤ちゃんが生まれた家の前にコウノトリの置物を置くの。それで、あぁ、無事生まれたんだーってサインになるの。」そんな素敵なお話を聞きながら町のメインストリートを抜けて行くと広場があり、そこに市がたっていた。とうやら骨董品の蚤の市らしく、ヨーロッパらしい食器や古本が並んでおり、ぱらぱらと人が歩いていた。「この広場の下にハーバーがあってね、そこに船がついて、さっきの家具屋さんに荷物を運び入れていたの。この蚤の市は何百年も続いてる歴史あるマーケットなのよ。昔は毎日やってたらしいんだけど今は週一。あ、これ可愛いなー。」そう言って小さな小皿を手にとってお店の人に5クローナを渡したいつみさん。76円。これ大工道具に見せかけて栓抜き。並んでいる骨董品はどれも30クローナ、450円とかそんなもんで、たまにすごい掘り出し物があったりするんだそうだ。カンちゃんもネックレスゲット。30クローナ。それからハーバーに降りると、綺麗に整備された港にいくつもの船が並んでいた。かなり豪華なクルーズ船ばかりなんだけど、ちょっと前までここにベンツさんの船もあったらしい。この前修理の為に陸にあげてしまったようで、本当なら船で無人島とか遊びに行けたんだけどねーと残念そうないつみさん。「ちょっとビールでも飲んでいこうか。景色がいいところがあるのよー。」ハーバーの奥に行くと、そこに綺麗なレストランバーがあり、海を眺めながらビールを飲んだ。お休みの日にのんびり町で昼ビールなんて優雅この上ないなぁ。日本でもこんなこと出来てたっけなぁ。それからも町中にあるセカンドハンド、中古品屋さんを回ってヨーロッパの古い物を物色して楽しみ、一旦家に戻った。そして今度は車に乗ってちょっと走ったところにある学校にやってきた。ベンツさんはここで理事をやっていたとのこと。ここは学校といってもただの学校ではなく、かなり特殊な場所。デンマークにはフォルケホイスコーレと呼ばれる特殊な高校がある。現在デンマーク国内に70ヶ所存在しており、特徴としては17.5歳以上ならば国籍年齢問わず誰でも入学でき、さらに入学・卒業時に試験がない。完全寄宿制で、世界中から集まった人々が共同生活をしながら勉強をするという環境で個人の人格を形成するというもの。生徒の自主性や協調性を高める教育システムになっており、それが170年前から取り組まれているそう。面白いよなぁ。教育は人間性の基礎を作る。教育方針ややり方が違えば、そりゃ人間の個性も変わるよな。学校の見学させていただいてから家に帰り、少し休憩してから晩御飯に出かけた。やってきたのはハーバーにある魚料理レストラン。なにやらこの辺りではかなり有名なお店らしく、店内は20人の団体から家族連れまでたくさんのお客さんで賑わっている。ベンツさんの話では夏季しか営業していないレストランなんだそうだ。ブュッフェスタイルのお店のようで、早速お皿を持って取りに行ってみると、もうマジで宝石箱。ものすごくたくさんの種類の魚料理がズラリと並んでおり、どんなにちょっとずつ盛ったとしても全種類食べるのは難しいほど。そして味ももちろん美味すぎる!!!!このスープが絶品中の絶品だった!!「さっき学校の近くにあったゴルフ場に銅像があっただろ?靴を脱いで、ズボンの裾をまくってる男性の像。あれはアンデルセンの銅像なんだけど、ちょっとエピソードがあるんだ。」「どんなエピソードですか?」「オーデンセの町がとある彫刻家にアンデルセンの像をオーダーしたんだよ。でも完成したはいいものの値段が高くてオーデンセの町がその像を買えなくなってしまった。普通ならその像をどっかに安く売ればいいんだけど、そこは彫刻家も芸術家の意地があるからそんな他に売るなんてことをしたくない。だから彫刻家は海に沈めたんだ。しかしそれをもったいなく思ったさっきのゴルフ場のオーナーが像を海から引き上げて買い取った。あのアンデルセンの像はズボンをまくって足だけしか濡れないようにしてるけど、全身びしょ濡れになったってわけさ。ハッハッハー!!」自分たちの分は払いますと言ったんだけど、これは2人が婚約したお祝いだから!と受け取ってもらえず、めちゃくちゃ美味しいディナーをご馳走になってしまった。いつみさん、ベンツさん、ありがとうございます!!今度宮崎でお会いしたら爛漫のチキン南蛮ご馳走させてください!!家に帰る途中、面白いものがあるからと寄ってくれたところに小便小僧がいた。町の中に確かにポツリと、あのブリュッセルの小便小僧とほぼ同じ男の子の姿が。どうやらこれは1934年にこの町に来たものらしく、ブリュッセルの小僧のいとこにあたるんだそう。「ふふふ、フミ、面白い話があるんだ。昔この小僧のオシッコが出なくなったことがあったんだ。そこで1人のお爺さんが直そうと思った。水道の部分に何かが詰まってるから水が出なくなっているんだろうとそのおじさんは穴に息を吹き込もうとした。それを見ていた町の人が驚いたのさ!!フォッフォッフォー!!」サンタさんがそんなブラックなジョーク話すとこっちが驚きます(´Д` )ほろ酔いの大満足で家に帰ってからも、コーヒーを飲みながら遅くまでみんなでお話していた。日本に戻ってからはゲストハウスをしたいんですと言うと、宿の中にコミュニティスペースを作るといいわよと言ういつみさん。いつみさんは福祉のスペシャリストだ。日本にも特殊な施設を作ったりしてて、それが国の認定するモデル施設に認定されていたりするほど。いつも日本に帰国するときは講演なんかで日本中を飛び回っている。そんないつみさんが言うコミュニティスペースとは、地域の人たちの憩いの場ということらしい。そうすることによって、国から支援金が出るようなシステムがあるんだそう。でも悲しいことに、こういったシステムを理由して震災の時なんかは色んな団体が支援金目当てのNPOや組織を作って支援金だけを持ってトンズラするようなことがたくさん起きたんだそう。悲しいことに。法律に縛られるのではなく、法律を上手く活用すること。世の経営者ってのはきっとそういうのに長けてる人が多いんだろうなぁ。「目先のお金とか甘い話に食いつくのは私は好きじゃないんだよね。絆ってのは必ず繋がっていくもの。出会った人との絆を大事にしていけば必ず自分に返ってくるし、無駄にはならないから。」淡い暖色の明かりがリビングを照らす。今日は本当に素敵な1日だった。俺もこの絆をちゃんと大事にしないと。そのためには何が必要なのか?お土産?お金?それらを渡してイーブンの関係にしようとすることか。もちろんそれも大事。でもいただいた恩を次に繋げていくことはもっと大事だと思う。でもさらに大事なのは、お世話になった人に対していつまでも感謝の気持ちを忘れず、もしその人が困ってる時にはいつでも力になるという想いを持ち続けることだと思う。それが繋がっていることが、絆ってことなんじゃないのかな。未熟者すぎて全然まだわからんけど。でも絶対に忘れないぞ。