スポンサーリンク 社会不適合者ってどんなのだろう? 2016/8/25 2016/08/14~スウェーデン②, ■彼女と世界二周目■ 2016年8月15日(月曜日)【スウェーデン】 ヘルシングボリ~ 【デンマーク】 ストックホルム朝がた、バタバタと雨が車を叩いていた。森が雨でけむり、その木々の下にポツリと止まる車の中で寝ている俺たち。完全にこの森の中に孤立している。誰もいないひと気のなさは孤独に感じるけど、カンちゃんの体が触れていると、孤独が強い分、嬉しさが増す。僻地であればあるほど、2人の存在をはっきり感じることができるから。寒くてもぞもぞと寝袋の中で動いているカンちゃんの顔をペタペタ触ると、またもぞもぞ動いてくっついてくる。俺ももう一度目を閉じた。次に目がさめると、車の中に熱気がこもっていた。ドアをバーンと開けると清潔な森の風が吹き込み、空はどこまでも真っ青だった。さてー、今日も走るぞ。エンジンをかけて森から抜け出した。動物おりすぎ!!昨日、2人で特大パフェを食べるというリア充最高のデートをしたんだけど、今日もまたデートをする予定。でも今日のデートは一味違う。なんせあのクリスティアニアだ。この世界中でも指折りの異世界に遊びに行くぞ。ということは国境越えだ。スウェーデンからデンマークの間には小さな海峡が横たわっている。デンマークに行くためにはどうにかしてこの海峡を越えなければいけない。渡る方法は、マルメーからコペンハーゲンまで繋がっている高速道路の橋がメインで、値段は350クローナかな?4000円くらい。でももうちょっと北のところにヘルシングボリって町があって、そこからデンマーク側のヘルシンオーに船で渡るというルートもある。現在地からコペンハーゲンに行こうと思ったら、高速道路で行けば3時間。フェリーに乗るルートだったら4時間かかる。ただフェリーはきっと安い。航海時間はたったの20分だ。それなら車を載せても2000円くらいで渡れるんじゃなかろうか?というわけでヘルシングボリに到着。フェリーターミナルのゲートに着くと、受け付けの男前の兄ちゃんが言った。「はいー、490クローナねー。」まさかの5800円ウケる(´Д` )たけなっとる(´Д` )1時間ロスして1800円高いという謎のチョイス。苦笑いしながら震える手で490クローナを払った。フェリーは毎20分の間隔で出航しているので、ほとんど待つことなくすぐに港を出発。綺麗なフェリーではあるけど、おとといフィンランドからスウェーデンに渡った時の豪華クルーズが半端なさすぎたおかげで、このピカピカのモダンな船ですらなんとも庶民的に見える。でもひとつだけこのルートを選んだメリットもある。そのメリットはすぐに海の向こうに見えてきた。真っ青な海の上に浮かぶ巨大なお城。陸地の突端に作られている城郭がズゴーンと海にそびえている様子はあまりにも壮大だ。名前はクロンボー城。かの有名なシェイクスピアのハムレットの舞台になったお城で、世界遺産だ。そうかー、前回の世界一周でも俺はこの船でスウェーデンから渡ってきた。このクロンボー城の荘厳な風格こそまさにデンマークを象徴しているように思える。デンマークに戻ってきたぞ。20分ほどであっという間に岸壁に着いて船から滑り降りると、そこは華麗な港町、ヘルシンオー。美しいハーバー、モダンなボードやヨットが停泊し、整備されたマリーナではたくさんの観光客がマップ片手に町歩きを楽しんでいる。無数の現代アートのモニュメントがあちこちに配置され、その向こうに海に浮かぶクロンボー城が見える。カモメが飛び交い、潮風が鼻をくすぐり、古い町並みはアンティークの香り。それがヘルシンオー。前回も歌った大好きな町だ。人もものすごくたくさんいるのでこのまま路上に立ったら結構稼げそうだけど、今回はこの町はパス。早くコペンハーゲンに行かないとクリスティアニアデートの時間がなくなってしまう。ひとつだけこの町で寄っておきたかった場所があったので、車を止めて歩いて中心部に向かった。おぼろげな記憶を頼りに、このあたりだったかな………と路地を曲がっていく。可愛らしいお店が通りに並び、その中でも骨董品のお店が多いのがこの町の特徴。現代アートと中世の暮らしがミックスしている。どうしても行っておきたかったのはお惣菜屋さんだ。前回そのお店で食べたお惣菜があまりに美味しくて、ずっと記憶に残っていたほど。とても綺麗なお店で、オシャレなディスプレイと色鮮やかな料理が人気のお店だったんだよな。世界のあそこの町のどこどこの通りを曲がったところにあるお店が好きなんだよねー、ってそんなカッコつけなことが出来てることがなんとなく嬉しい。というわけでまたあの美味しいお惣菜をカンちゃんと食べられるぞ!!ってワクワクしながらお店にたどり着いたら、普通に閉まってた。はうぅぅぅ………………なんだよチクショウ………………もうまた何年も来られないのに………………残念。仕方なく車に戻ってエンジンをかけて町を抜け出した。デンマークは草葺き屋根の民家が多くて日本の田舎みたい。海沿いの高級住宅地の中を走り抜けていく。大きな屋敷が並び、芝生もかりこまれ、とても美しいこの道。この辺りはコペンハーゲンに住むお金持ちたちが住むところなんだよって、ここでヒッチハイクで乗せてくれたおばさんに聞いたのが4年前だ。そのおばさんは、コペンハーゲンのどこに行きたいの?コペンハーゲンは広いから色んなエリアがあるわよ、と聞いてきたんだけど、なんにも知らなかった俺はどこでもいいですと答えた。するとおばさんは、あなたにオススメの場所があるわ、きっとあなたはあそこが好きなはずよと意味ありげにニヤリと笑った。そうして連れて行ってくれたのがクリスティアニアだった。あの日と同じ道を走り、コペンハーゲンの街に入ると、やはり大都会の街中はとても走りにくい。車が多くて信号も複雑で、どこの車線を走ったらいいのか混乱してきてしまうんだけど、このコペンハーゲンはさらに厄介なものがある。それは自転車レーン。車道と歩道の間に自転車専用のレーンが設けられており、そこをすごい数の自転車がバンバン走っている。そしてあまりにも数が多い!!オランダ人チャリ乗りすぎってオランダ行った時めっちゃ思ったけど、あのオランダに負けず劣らずの自動車レース会場。さらに彼らは自動車とほぼ同じような交通ルールで走っているので、いきなり車道の真ん中を突っ走ってきたりするので半端なく危ない。交差点には車用の信号機と歩行者用の信号機、それに自転車用の信号機もあって、複雑この上ない。デンマーク人チャリ乗りすぎ。そんな危ない街の中心部を抜け、大きな川を渡ると、そのあたり一帯がついにクリスティアニア地域だ。あの異世界クリスティアニアってのは、クリスティアニアっていうエリアの中にある一地域のこと。この辺りは大きなアパートが並ぶ住宅地で、ファストフード屋さん、スーパーマーケット、コインランドリーもあるようなローカルエリアになる。テキトーに2時間無料の路面パーキングに車を止めたら、とりあえず腹ごしらえ。何気に今回のデンマークで初めての外食にピザ屋さんに入った。このウルトラ巨大ピザが95デンマーククローナ。1420円。スウェーデンやフィンランドに比べるとグンと物価が上がった。こうして北欧を全部回ってみて物価のランキングは、1位、ノルウェー2位、デンマーク3位、スウェーデン4位、フィンランドって感じかな。ビールに関してはスウェーデンがダントツ安かった。ノルウェーはもうこの中でも2位を大きく引き離して超絶物価が高い。でもデンマークもかなり高い。こいつは気をつけないと、すぐにお金が吹っ飛んでしまう。2人でも食べきらないほどのピザを食べ、大満足でクリスティアニアに向かった。街の中を歩いて行くと、突如現れる木々が生い茂る公園のようなブロック。古ぼけた廃墟が公園の中に見え、かなり荒れた雰囲気だ。その一角だけあらゆる壁という壁にグラフィティーのスプレーアートが隙間なく描かれ、完全に周りとは異質な空気を放っている。前におばさんにこの辺りで車を下された時、こんな薄汚い危険なオーラ全開のスラムがあなたにはお似合いよ!!みたいなことなの!?ってちょっと笑えたけど、実はそうじゃなかったんだよな。このクリスティアニアは世界の中でも指折りのエキサイティングでユニークなスポットだ。「わー、めっちゃ楽しみー!どんなところなんだろ!?」ウキウキしているカンちゃんの手を引いて、クリスティアニアの看板が掲げられたゲートをくぐって中に足を踏み入れた。一歩立ち入った瞬間、鼻をくすぐる香ばしい匂い。そこら辺に座ってお喋りしてる人たちが煙を吹かしている。あれらはもちろんマリファナとハシシだ。そして少し奥に進んでいくと広場が見えてくる。広場にはたくさんの屋台が並んでいるんだけど、これらは全てマリファナとハシシの屋台。堂々と、誰もが店を出してグリーンとチョコを売っている。そして人々は老いも若きも男も女もそれらを買って、そこら辺でふかしながら楽しそうにしている。クリスティアニアは、これらのソフトドラッグを楽しむことが容認されている地域だ。もともと戦争中に兵舎として使われてこの地域。戦後に廃墟になり、しばらく何年も放置されたままだったらしいんだけど、そこにヒッピーたちが移り住みだしてコミュニティを作っていったんだそう。今でもたくさんの人々がこのクリスティアニアの廃墟に住んでおり、独自の法律を持ち、コペンハーゲンの中にありながらコペンハーゲンではない、アンタッチャブルなエリアになっている。ソフトドラッグもこの中でやる分には問題なし。「どう、カンちゃん、これがクリスティアニア。」「すごいねー。面白いねぇ。あー、ツアーの団体さんもいる。観光地でもあるんだねー。」いつ頃からかはわからないけど、ここはコペンハーゲンに来る観光客にとって、ディープではあるけどひとつの観光ポイントになっているので、敷地を団体さんがガイドさんに引き連れられて歩いてるのも見ることができる。もちろん入場料なんてないし、嫌がる住民もいない。家族連れやお爺ちゃんお婆ちゃん、仕事帰りのサラリーマンがちょっとリラックスしにやってくるところだ。外国ではそれくらいソフトドラッグは身近なもの。日本みたいに全部覚せい剤と同じ扱いではない。敷地の中にはボロボロの廃墟を利用した商店とか、カフェ、グラフィティーまみれのレストラン、バーがいくつかあり、みんなそこでビールやコーヒーを飲みながらジョイントを吸っている。そこら辺の野菜屋さんの前でボブマーリーも吸ってたらしい。向こうのほうでは、空き箱に棒をブッ刺してそれに紐を結んだ手作りベースを演奏してパフォーマンスしてるオッちゃんもいる。ちなみに中は写真禁止。というわけで俺たちもバーに行き、ビールで乾杯。1本22クローナ。330円。ビールを持って芝生公園に行ってカンちゃんとゆっくりお喋りした。自由だなぁ。人間は本当に。多くの人々は社会に縛られながらでなければ生きられないって、思っている。でも実はこんなに生きるのも死ぬのも自分の決断次第ってのを、こういう所に来るたびに思う。あいつは社会不適合者だって言って、自由に生きてる人を下に見る人たちがいるけど、ではその人たちはどれほど社会に適合しているんだろう。それが人を上から見ることができる、自慢できることのひとつなのかな?どっちにしろ、それらの人々もまた大きく見た社会の一部なのに。税金おさめろ、会社に勤めろ、必死に働け、それが社会に適合すること。それが出来なければつまはじきで笑い者。俺のことを言ってるんじゃない。世の中にはそんな人たちがものすごくたくさんいて、素敵な生き方をしてる人も多い。何が正しい生き方なのか。それを示せる人ってよほど素晴らしい人だけだ。いい気持ちでクリスティアニアを出て、カンちゃんと手をつないでぼちぼち歩いた。夕日が綺麗で、ヨーロッパの街並みを照らしている。あぁ、今本当に自由を感じるな。