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自分のすることを愛せ

2016年7月22日(金曜日)
【ノルウェー】 ボーデ






今日も目がさめると最高の天気だった。





窓の外は真っ青な青空。

雲ひとつなくて、抜けるようにどこまでも広く、車の中に熱気がこもっていた。



暑くて寝転がったまま足でドアを開けると、涼しい北極圏の風が車内に吹き込んで気持ちよかった。

遅い夏の到来だった。







ちなみに今ボーデで止めている駐車場は9時~15時が営業時間で、それ以外は無料になる。

1時間が15クローナ、180円なんだけど、コインを入れていって15時をまたぐと、次の日の日付の9時からまたカウントが始まるという具合。


つまりここに停めっぱなしでいいということなので、わざわざ寝床に移動する必要がないのはとても楽だ。

荷物を動かして車の後ろに寝床を作る手間も省ける。




























今日も昨日と同じくアーケードの中で路上開始。

やはり止められることなく、めちゃくちゃウェルカムな雰囲気で歌いやすいことこの上ない!!








ただ今日は昨日に比べて人が少なかった。



隣でDVD販売の露店を出してるジョーおじさんと休憩中に喋っていたら、どうやら昨日はクルーズ船が港に入っていたらしく、それであんなに観光客が溢れていたようだった。


クルーズ船がどんな航海ルートで回っているのかは知らないけど、おそらくこの北極海の色んなところを巡る豪華な船旅だろう。

お金持ちのヨーロピアンが船を降りて町をのんびり散策する時なのでそこが狙い目となる。


ギターケースの中にはスイスのフランやユーロ、アメリカドルとか、各国のコインが混ざり合う。




でも同じようにクリスチャンサンでもクルーズ船がついて町に人が溢れるときがあったけど、あの町では逆に全然稼げなかった。


やっぱり町によって性格ってのがあるんだよなぁ。一筋縄ではいかない。



今日のあがりは3時間やって1404クローナと7ユーロ、計17300円。



















今日は、たまにはお肉をガッツリ食べたいよね、っていう話になって天満の安い店で焼肉しまくりたいけど、ここはおとなしくユーロスパーのお惣菜で手を打つことに。


パンとお肉をゲットして広場のテーブルベンチに座ってお肉を広げる。


このチキン丸ごと1羽で60クローナ、740円。
物価の高いノルウェーでこれはすごく安い値段だ。







「めっちゃ美味しいー!!」



「皮美味しいー!!皮好きー!!」



カンちゃんと2人で美味しい美味しいと声を出しながらチキンをつついた。



















ご飯を終えたらあるところへ向かった。

俺がこのボーデが大好きなもうひとつの理由がそこにある。





おぼろな記憶を辿りながらメインストリートを抜け通りを歩き、確かのこの辺りだったよな………というところで、見覚えのある看板が目に入った。








ダマンディ。

そう、この場所だ。














日本からロシアに渡り、ウラジオストクの駅前で初めてやった海外での路上演奏。

あまりに緊張して震えながら歌ったけど、パラパラとコインが入り、現地の人との交流が生まれて、やっぱり音楽は世界共通だ、そして俺は海外でもやっていけるぞ!!と思った。


それからシベリア鉄道でロシアを横断し、数千円しか手元にない状態から北欧での路上という、もう外国のこと何にも知らない当時の俺にとっては謎すぎて笑えてくるレベルのところから野宿旅が始まり、ヒッチハイクしながらフィンランドを北上していった。



路上での稼ぎはどんどん上がっていき、コツもつかみ出して、とても楽しくなってきていた。


ノルウェーに入ってからは2万円近く稼げるようになり、俺はもう完全に外国でも通用する、俺の歌はどこでもやっていけるなんて、いやそこまでは思ってないか。でもある程度は自信というものが芽生えてきていた。




そうしてたどり着いたこのボーデ。

まだ旅に出て1ヶ月半くらいだったはず。



アーケードで歌っていると地元の人が声をかけてくれ、夜に俺のバーで歌ってみないか?と誘ってもらった。彼の名前はベンツさん。

面白そうなので夜になって彼のお店にやってきた。それがダマンディだった。






音楽好きが集まるお店らしく、みんなフレンドリーだけどこだわりのありそうな人たちが多くて、結構緊張していたけど、なんとか歌うことに。


ビリヤード台があり、ガヤガヤした店内で、1人ギターを抱えて生声で思いっきり歌った。



それはもう驚くほどに散々な時間だった。




最初は好奇心で周りに集まっていた人たちも、2曲目、3曲目で離れていき、どんどんお店の中は騒々しくなっていき、5曲目くらいでほとんど誰も聞いてなくなって焦りまくりながら演奏をやめた。



もう粉々。

信じられんくらい自信なんて粉々。




俺がよくライブハウスにいる傲慢なやつなら、あれは客が悪いわ!なんて自分に言い聞かせてバーボンでも飲みながら現実逃避できるかもしれんけど、まぁ当然のごとくただの実力不足以外の何物でもないので凹むことしかできなかった。



俺の演奏が終わって賑やかさを取り戻した店内では音楽が爆音で流れ、みんな楽しそうに踊り、俺はそれを店の端っこに座ってぼんやり眺めていた。


気まずすぎて、超絶帰りたくて、でもお店のオーナーのベンツさんがうちに泊まればいいからと言ってくれ、それから3泊ベンツさんの家に泊まらせてもらった。




苦い思い出。

ただの苦い思い出。



上手い人なんて世の中にいくらでもいるし、自分がまだまだなのは日本のライブハウスをたくさん回っていた時に思い知らされていたはずなのに、やっぱりあんなにショックを受けてしまった。



今こうしてボーデの道路沿いでこの赤い看板を見ると、あの時の苦しみはそこまで蘇ってはこない。


でも確かにこの場所で打ちひしがれていたよなぁ。
















お店は20時オープンということだったので、それまで時間つぶしに横にあるガレージに入ってみた。

そこは雑然とした雰囲気で、お店のテラススペースみたいになっていた。


テーブル、椅子が並んでいて、壁にかなりアーティスティックなグラフィティーが描かれており、飾りつけも相当個性的だ。





お店の看板にはカオスバーと書いてあるけど、まさにその通りのお店だった。













こんな感じだったんだなぁって思った。

4年前の記憶なんてほとんど頼りにならない。なんなら頭の中で作り変えられてる時だってあるもんだ。


俺はこんなにカオスなお店で歌ったんだな。




日本でもそうだけど、だいたいカオスなお店には個性的な人たちが集まる。

そしてそういう人たちは、だいたいものすごくこだわりが強くて、排他的だったりする。


受け入れられたらとことん応援してくれるけど、ダメだったら、え?君ってなにがしたくて歌ってるの?バカなの?って豪速球で手榴弾なげてくる。



あの空気は嫌いではないけど、まぁハードルは高い。

でもミュージシャンはみんなそういう厳しい門を何度もくぐって、けちょんけちょんにされながら実力をつけていくもの。

みんなそうやって、自分のスタイルを確立していく。






あのダマンディでの夜は、めっちゃ辛かった。

イェーイ!!って歓声がもらえなくて、ボロクソになって打ちひしがれて、でもあれがあったからこそ、精進しなきゃって思えた。



ボーデに来た理由は、それを教えてくれたベンツさんにお礼を言うためというのがでかかった。

ベンツさん、足が悪かったけど元気にしてるかな。



スタッフらしき女の子がガレージの掃除に出てきたので聞いてみた。


うー、ドキドキする。4年前のこと覚えてくれてるかな。




「ハロー、ベンツさんを探してるんだけど今いますか?」



「ハーイ、彼はバケーションで5週間出かけてるからいつ戻るか知らないわー。」













終了。








うわああああああああああ!!!!

ベンツさんんんんんんんんんん!!!!!

あの時はありがとうございましたあああいああさああああいあああ!!!!
























ベンツさんが帰ってきたら渡してくださいと、スタッフの女の子にCDを預けてお店を出た。


こればっかりは仕方ない。残念だけどCDだけでも預けられてよかったと思わないと。



それからビールを買って車に戻り、ワクワクしながら車の後ろを映画館仕様にセッティングした。


この前スバールバルでシュンさんにいただいた映画6本の中で、最後までとっておいたやつをついに見るぞ。


大好きな大好きな映画、ニューシネマパラダイス。




「ヒィッ!!…………ううう………」




もうスタートボタンを押してモリコーネの音楽が流れてきただけで泣ける。

最初のカーテンがパタパタ揺れてるシーンだけで泣ける。




あぁ、ニューシネマパラダイス最高すぎる。








舞台はシチリアの小さな村。

1950~60年代のまだ戦争の傷跡が生々しく残るイタリアの田舎の町で、小さな少年トトは村の唯一の娯楽施設である映画館、パラディソに入り浸っていた。


映画はもちろん、それを映し出す映写技師にも興味を抱き、施設の映写室に遊びに行くようになる。


そこには小学校もろくに出ずにこの仕事についた心優しいおじさん、アルフレードがいつもいて…………







まぁ映画のあらすじなんていいや。



もうとにかく、全てが愛。


家の前に水をまくおばさんも、村の人の告白に親身に受け答える神父さんも、町の真ん中にある広場を自分のものだと思って一生懸命守っている変わりもんのおじさんも、全てが愛でしかない。




何気ない風景。そして時の過ぎ去った無常。

なんてことないのに、それらの全てが、全てのシーンが人間への愛に満ち溢れている。


シーンに無駄がない。

全てに意味がある。







こんなところに行きたいんだよ。

こんな人々の何気ない日常が見たくて旅をしているんだ。



そしてこんな歌が歌いたい。

劇的なドラマじゃなくていいから、人々の笑顔とか、その笑顔の意味とか、ささやかな涙とか、心にこびりついている思い出が香る場所とか、そんなものを飾らずに表現できたらなぁ。







最後の最後まで感動しっぱなしで、映画が終わってからいつもならそのまま寝るところだけど、カンちゃんを誘って散歩に出かけた。

そんな気分だった。



金曜日の夜は静かだったけど、ところどころにあるバーではたくさんの人がお酒を飲んでいて盛り上がっていた。


そんな人たちの横を通って、ぷらぷらと岸壁沿いを歩いていく。











23時だけど美しい夕日が空を染め上げていて、ハーバーに係留してある船が波のない海の上で静かに佇んでいた。






胸がいっぱいになる。


何気ない暮らしは、世界中のどこにだってある。

もちろんここにも。



空の色や、気候は全然違っても、人が生きている限り、みんな同じような感覚を持って生きている。


どんなに日本から遠ざかっても、不思議なことに人間は一緒なんだよな。




「体重の重い者は足跡も深い。」



映画の中でアルフレードがジョンウェインの言葉を引用してトトに話していた。


意味が深くてすぐには理解できないけど、すごい言葉だ。





俺は誰にもなれない。
でも感じることはできる。

違う人生への渇望はどこか遠い郷愁に似てる。





もうひとつ、アルフレードが故郷を出るトトに駅で話した言葉が頭の中でくるくる回る。



「トト、自分のすることを愛せ。」





もっともっとたくさんの人生に触れて、人間を愛そう。

それが自分を愛することになるはず。








~~~~~~~~~~~~~~~~~


ノルウェーのベルゲンとオスロのホテルをアゴダでとってくださったかたがいました!


リアルタイムで同じ国とはなんだか不思議な感じです!

本当にありがとうございます!




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