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ギターのリペアしましょう

2016年7月5日(火曜日)
【ノルウェー】 オスロ ~ セイヨール






ヤイリのギター工房によく足を運んでいてよかったと思う。





俺が日本で使っているギターはKヤイリのそこそこ良いやつだ。

高校生のころに毎週末、延岡の路上に行ってお金を貯めて奮発して買ったもの。


初めて自分で買ったギターで、宝物のように大事にしてきた。






今使っているのは前回の世界一周に出る前に、リサイクルショップの端っこにあった5000円のパールのギター。

ヤイリは日本で俺の帰りを待っている。










日本一周の旅も、その後のライブハウス巡りもずっとヤイリを使っていた。

そしていつも岐阜の近くを通るときはいつも可児市にあるヤイリギターの工房に立ち寄っていた。


町外れの、え?ここ!?みたいなど田舎の脇道の先に、あの世界の名だたるアーティストたちが使用するヤイリギターの工房があるなんて最初はすごく驚いたものだった。







その頃も富士山に持って上がったり、四国遍路に担いで行ったりひどい旅をしていたもんだから、ギターは当然傷む。


しかしそこは手作り一本のヤイリギター。

ヤイリのギターは全て永久保証だ。



持ち込みでメンテナンスをお願いし、いつもクラフトマンのかたに反りや弦高など細かい調整をしていただいていた。





ヤイリは本当に職人集団で、工房の中はギターの木の削りカスが散らばっていて、その木の匂いがとても好きだった。

Kヤイリの名前の由来であるカズオ社長に、行くたびにいつもピックやらジャンパーやら、なんなら日本酒とかもらってた。


数年前に亡くなってしまったけど、今でもカズオさんの笑顔を思いだす。






そう、あの頃、よくヤイリの工房で自分のギターがメンテナンスされているのを横で見ていたので、どこをどうすればいいのか多少はわかる。


今日はオスロの楽器屋さんに行ってギターの壊れたブリッジを買って修理するぞ。

多分自分でやれるはずだ。

















「おはようございますー。よく眠れましたか?」



朝、ソファーで寝ぼけているところにサキコさんが入ってきた。

ゆうべの美味しい日本食とお酒のおかげでぐっすり眠れ、早朝にハルさんが仕事に出かける音にもまったく気づかなかった。








サキコさんが作ってくださった白飯×味噌汁×ヒジキ=破壊力がすごすぎて、もう花山薫並みに朝から元気が出すぎて今から抜かず3発いきますか!くらいの下半身で荷物をまとめた。真面目に。




「楽しかったですー!!またどこかでお会いしましょうね!キープインタッチ!!」




サキコさん!お誘いしていだいて本当にありがとうございました!!

素敵すぎる日本食と、あの愛しいノルウェーワッフル、最高でした!!!


今度は宮崎来てくださいね!!チキン南蛮死ぬほど美味しいところに連れて行きます!!
























サキコさんのおうちを出発したら一路オスロに向かった。


40分ほどで大都会の中に入っていき、あらかじめ調べておいた大きそうな楽器屋さんの近くで駐車場を探す。



しかしやっぱりオスロは高い!!!

1時間で56クローナもしやがる!!!700円!!もう笑えるわ!!日本も同じかそれ以上するけど!!日本の駐車場代も爆笑もんやわ!!




しかしちょこまか探し回ったところでどうせそんなに大きくは変わらんやろうし、時間とガソリン代がもったいないので大人しく56クローナの駐車場に車を止めて急いで行動開始!!


そして調べていた4サウンドっていう楽器屋さんに飛び込んだ。






「すんません!!このヘッドのナットが壊れたので探してます!!ありますか!?」



「ないよ。」





2秒。


マジ2秒。






終わった。

もう一生6弦を使わない曲をやるしかない。

なんなら5弦ギターっていう新しい楽器にしてしまうか?


あぁ、ハートオブゴールド好きなのになぁ…………




「15分ほど歩いたところにビンテージギターっていうギターの専門店があるよ。そこなら腕利きのクラフトマンがいるから大丈夫なはずだぜ。」





うおっしゃあああ!!!そこしかねぇし!!


猛ダッシュでオスロの街のど真ん中を突っ走り、人混みを間を縫って次のギター屋さんにヘッドスライディング!!!














「すんません!!このヘッドのナット、いい感じのアレでやらかしちゃってよろしゃす!!!」



「んー、ちょっと待ってね…………これね…………クラフトマンにどれくらいで出来るか聞いてくるね。」



そう言って携帯の待ち受けジョニーウィンターですみたいなロングヘアーの兄ちゃんが奥の作業部屋に入っていき、しばらくして出てきた。




「どうですか!?何分かかりますか!?あ、いや、何時間ですか?!」




「3週間だね。」




「ウケるー。」




この小さなナットに3週間てヤイリの松尾さんに怒られるぞこの野郎!!!

ヤイリ行ってこい!!



「ごめんね。ウチには出来上がりのパーツはないんだよ。だからこの先にもうひとつ他の楽器屋さんがあるからそこに行ってみるといいよ。そこがラストチャンスだね。」





もう、この時マジですでに萎えてた。

この大都会のオスロで買えなかったらこの先どこで買えるかわからない。



割れたナットのままの中途半端な演奏で金をもらうなんて、もうこれ以上は無理だ。



でも2軒回ってパーツすら置いてないなんてマジで絶望的だった。



しかもナットはそのギターにバッチリ合うものでなければ取り付けることができない。

少しでも型が違えばハマらないし、弦の幅も高さも変わってしまう。


本来なら1から新しいものを削り出して作らないといけないようなものだ。


それをパーツだけである程度の同じ形のものを見つけ出して、ギターに合うように加工することができるのか?



もうほとんど期待できないまま最後の楽器屋さんに入った。























小ぢんまりした楽器屋さんだった。

ギターもそこそこ置いてあるけど、さっきの専門店みたいな本格的な雰囲気はない。


とりあえずイングヴェイと飯食ったことありますみたいな格好をしたおじさん店員さんに聞いてみた。



「あー、ちょっと待ってな。」



すると奥に入っていき、戻ってきた手にはプラスチックのケースがあった。

おじさんはテーブルにそのケースを置いて開くと、中にはマジでありとあらゆる形の何十個ものナットが入っていた。





うおおおおおおおおおおおおっしゃあああああああ!!!!!!きたあああああああああああああ!!!!!





めっちゃ興奮しながらその中から大きさ、弦の幅が同じものを探していく。


ていうかさっきのパーキングのチケットを1時間分しか買ってないので早く車に戻らないといけないのにナットの数が半端なさすぎてなかなか選べない!!


1時間まであと15分!!

ここから駐車場までは歩いて12分かかる!!



オーバーして見つかったらまた500クローナ、6100円の罰金だ!!!





でもここは焦ったらいけないので慎重に慎重にパーツを吟味して、最終的にひとつのナットを選んだ。






こいつが1番形が近い。若干弦の幅が広がるのでギターの指板に合うかわからんけど、多分大丈夫だと思う。




あとは値段………

この物価がウルトラ高いノルウェーでこんなギターのパーツとか買ったらどうなってしまうのか…………


5万とか言われないよな…………




「45だぜ。」




イングヴェイと飯食ったことあるおじさんが渋い声で言った。


え?45クローナ?550円?


半信半疑で45クローナ払ったら、毎度ありーとおじさんは他のお客さんのところに接客しに行った。




よっしゃあコンチキショウ!!
とりあえずパーツゲットだバカやろう!!!!




また急いでオスロの繁華街をダッシュして駐車場に戻ってきた時の残りの時間1分!!

完璧!!


よーし、次は自分のリペアだ。























オスロの街を出て、郊外のショッピングモールに行き、まずはホームセンターで紙ヤスリを買った。

ナットを削って形を合わせないといけない。


















それからスーパーに行ってお惣菜コーナーのご飯をゲット!!













ベーコンのミートボールと手羽先!!


これ懐かしいいいいいい!!


ノルウェーとフィンランドでいつも食べてたこのお惣菜!!



外国で何食べていいかわからなくて、スーパーでこのミートボールと大きなラグビーボールみたいなパンを買って、それをベンチに座って食べた時のあの美味さをはっきり覚えてる。

あー、思い出の味だなぁ。



それにしてもノルウェー、パンが高ぇ!!


50クローナて!!610円て!!

パンが600円って本当、食の最低ラインが高いんだよなぁ。








ブラウンチーズもゲット!!!















腹ごしらえしたら、郊外のパーキングエリアでギターのリペアを開始。


まずは割れたブリッジの破片が接着剤で固まってギターにこびりついているので、その破片を削りとって取り付け部を綺麗にしないといけない。


工具を使ってガリガリガリ。












次にブリッジの削り出し。

まずは幅を合わせてはめこまないといけない。


真っ直ぐに削るために、平らな場所に紙ヤスリを置いて、その上でゆっくりと削っていく。







何度も形を合わせながら慎重に削っていく。削りすぎたら終わりだ。






そして幅が合わさってカポッとはまったら、今度は高さ調整。


ブリッジの高さが変わると弦高が変わる。


ギターってやつは弦高が低ければ低いほど弾きやすい。

抑える力がほとんどいらなくなるからだ。


でも低すぎると弦がフレットに当たったり、充分に振動しなくてギター本来の鳴りが出なかったりする。

俺はいつも1.8ミリから2ミリくらいで弾いているけど、クラプトンなんかは3.5ミリで調整してるというからすごい。


弾きにくいだろうなぁ。








慎重に慎重に削って、その度に弦を張ってみて弾きやすさと音の鳴りを確認し、また弦を外して削って削ってまた弦を張って音を確認して、という地道な作業を繰り返し、最終的に今までよりも少し高めに設定した。



少し低音弦のビビリが気になっていたので、これくらい上げれば大丈夫だろう。


そして弦を新品に張り替えるついでに、すべてのペグを外して中身の締めなおしをやったら、もうこれで完璧だ。







チューニングしてジャラーンと鳴らしたら、マジでもうウルトラ良い音がした。


音が伸びて、全部の弦が綺麗に振動して、ボディがビリビリ震えてくる。


この中低音のバランスがマジで最高だ。


本当、5000円で買ったギターとはとても思えない鳴りだよ。ギブソンのビンテージとなんら遜色なし!!


パールギター!完全復活!!!






こんな修理、ギター好きのマニアックな人からしたら何を大袈裟に、って思われるかもしれないけど、俺からしたら大仕事したような気分だ。


よーし、明日から思いっきり歌えるぞ!!

























色々やっていたら時間も遅くなってしまったので、今日は行きたかったあの場所に行きつつ移動日にすることにした。



次の目的地は南部の港町、クリスチャンサン。

海沿いを下っていくほうが近いけど、山を抜けて行くルートだったらアレを見ることができる。


前回のノルウェーで、これが北欧か……と度肝を抜かれたアレ。



今回のノルウェーではスバールバル、フィヨルド、そしてアレの3つを見ることが大きな目的だった。
















ドランメンから山側に入り、そこから1時間半くらいかな。

小さい町をいくつか通り過ぎ、のどかな田舎道を走っていると、ふと右手にあいつが現れた。











ぐおーーーん。





スターブチャーチ、やっぱり半端ねぇ!!!





「うわー!すごい何これー!!」




大喜びのカンちゃん。


こいつを初めて見たら絶対誰でも驚くはず。











草原の田舎にポツリと立つ木造の教会。

その姿はあまりにもファンタジーの世界で、ロールプレイングゲームの教会のアイコンそのまんまですみたいな見た目だ。


中にすっごい魔法使いがいて、なんか授けてくれそうだ。












スターブチャーチのスターブってのは支柱のことで、この支柱を中心に釘を使わない技法で作られた教会のことをスターブチャーチって呼ぶ。

まだノルウェーでバイキングが暴れまわっていた時代の造船技術の名残りなんだそう。


このノルウェーの中南部の各地にいくつも散らばっており、古いものでは900年前に作られたものもある。







そのどれもがとても個性的な姿形をしていて、フィヨルドの谷間や、高原の川のほとりにポツリと立ち尽くす様子は完全におとぎの世界。


これが北欧か………ってその存在感に魅了されて頑張ってヒッチハイクして何ヶ所か見に行った。


めぼしいスターブチャーチは前回見たんだけど、まだひとつだけ気になっていたところがあった。



それがこのヘッダールのスターブチャーチ。

ノルウェーに残っているスターブチャーチの中で1番大きなものらしい。











教会の周りにはお墓が並んでいた。

でもそれが日本みたいにおどろおどろしいものではなく、芝が刈り込まれ、お花が散りばめられてとても可愛らしく平和だ。


こんな景色には本当にトロールが似合うなぁ。




いやー、スターブチャーチすげぇ。

こんなのがまだいくつも散らばってるんだもんなぁ。


スターブチャーチ巡りのためだけでもノルウェーに来る価値がある。


























そこから先はどこまでも大自然の中を走っていく道だった。






連なる山々、川と湖、モミの木や白樺の隙間に赤い可愛らしいキャビンがひっそりと佇んでいる。


自然とともに暮らすっていうノルウェー人の生活スタイルって本当に素敵だと思う。

自然の景観を人工物が邪魔してないんだよなぁ。





























RVキャンプ場のキャンピングカーの数が尋常じゃない。

もうサマーホリデーシーズンは始まってるんだな。






















しばらくして、湖沿いのパーキングに寝床を決めた。

22時過ぎの真っ赤な夕日が湖の向こうに沈もうとしていた。














そんな夕日の中でご飯を作る。

カンちゃんもアウトドアの料理に慣れてきて、ご飯の手際がいい。








ゆっくりと太陽が沈み、夜がそれなりに夜らしい黒さを見せてくれる。完全に真っ黒にはならないけど。


やっぱり夜は暗くないとなぁ。




あー、ノルウェー最高だ。







~~~~~~~~~~~~~~~~~



福岡のホテルをアゴダでとってくださったかたがいました!!


福岡多い!!


あー、また仲のいいみんなで飲み会したいなぁ。裏路地のもつ鍋屋さんとかで。


どうもありがとうございます!!







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